上 下
26 / 138
バナナはお好きですか?

26

しおりを挟む
 勝手に男かと思い込んでいたのだが女の子でしかもエセ関西弁。異世界なのに。

「仲間か?」

「お前等、この方が来てくれたからにはビビッてトイレ行けなくなるで! 今のうちやったら許してやるから尻尾まいてとっとと帰りやがれ! 兄貴、頼んまっせ」

「いやいやいや、何言ってんのお前、初対面だしあいつらを煽るなよ! 何があったんだよ!」

「いやな、腹減ったけど金ないからあいつらにちょっとくれよって言ったら、何かおもろいことしろよって急に言うから、あのノッポの髪を燃やしたら殺してやるーって追いかけてきて。かなわんで」

「いやそれ、お前が悪いんじゃん」

 少しは自分の都合良いように改変してたとしてもこいつが悪い。

「お前が代わりに俺らの相手するのか!?」

「いえいえいえ、どうぞ。俺らは帰りますんで」

「そんなぁ!殺生やでぇ」

 悪い事は悪い。ただ、相手が悪すぎて恐らくこの娘は殺されるだろうと思った。簡単に人を殺せる男だ、ダンパーという奴は。

 敵も緊迫感が少し薄れているのだろうと思い、五人をブラックソードで切り付けた。

 本人に傷は負わせれないが、悪の心であるWが出てきて真人間になるはずだ。それならこの娘も命は取られない。

 はずだった。

「何をした? そよ風しかしてないぞ」

 気を失うはずなんですけど、ロイエルーン達にも効かなかったし異世界ではブラックソードは無効化されるのか?

 とにかく効き目が無いのは明白で、今最もピンチであるという事実。

 こんなことなら素直に帰っておけばよかった。だって悪党にも効き目ないって思わなかったし。

 もう喧嘩売っちゃった感じなので、何もなしで帰れそうにないかも。

「消えろ、ぶっ殺されないうちにな」

 ミゼルは中指立ててカッコつけてる。

「なぁぁぁにぃぃぃ言ってんだぁぁぁ!」

 俺はミゼルの口を押え中指立てた手を隠す。

「威勢がいいな貴様ら、皆殺し決定だな」

 あわわ、こりゃ絶体絶命か。

「なにか武器はないのか?」

「私はこの杖しか持ってないで」

「ミゼルはバナナとキュウイ!」

「なに!? バナナあるんかいな? 一つ貰えんやろか」

「いいよー」

「おおきに。ホンマおおきに」

 こいつら一体なにやってんだ! 大体誰のせいでこうなっと思ってんだよぉ。

「バンパー様、こいつら舐めてますよ」

「あぁ、このバンパー様を舐めるとどうなるか、死をもって思いしれ」

「ダンパーだろ。名前間違うなよ」

 細かい所を突っ込みながらミゼルのカバンをまさぐる。

 取り出したのはキュウイだった。

しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...