令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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報酬交渉と魔王討伐

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 セリカが馬車の御者席に戻って手綱を握ってからしばらくすると、目的の場所と思われる建物の群れが見えてきた。ここまで通ってきた目的地までの道は通りやすく、以前に一度整地されていたのだろうと思われる。

 目を向けると一番奥の小高い場所に立派な建物が建っていた。建てている途中というのが正しいのだろうが、ほぼ完成間近だったのだろう。手直しをすればすぐにでも使用できそうな外観で、この地域のメインとなる場所になるだろうと直感した。

 そのメインとなる建物に一直線に道があり、その両脇には建物が建ち並んでいた。

「誰かいるぞ」

 メインの建物へ馬車をゆっくり進めていると、手綱を握るセリカの言葉に俺達は荷台から顔を覗かせた。

「ホンマや。馬に乗ってこっちに向かってきてるで」

「敵か?」

 仮に敵であった場合、名乗ってから攻撃してくれるとも限らないので、いつでも応戦できるようにしておかなければならなかった。少し慣れっこになったと言えど、ピリピリしたこの感覚に俺は少々ストレスを感じていた。十倍の速度で回避でき攻撃を繰り出されるとしても、生活の途中でいきなり戦闘という流れは好ましくないのが本音だ。

「ヘイ! ユー達は何しにここへきたんだい?」

「なんかテンション高めで質問してきたで。なんて答えておく?」

「本当のことを言って相手の出方を見てみよう」

 止めた馬車から降りて、丸腰をアピールするように両手を広げながら前進しながら言った。

「俺達はこの地域の下見にきただけだ」

「下見? 下見をしてどうするつもりだい? まるで町興しでもするつもりかい?」

「そのつもりだと言ったら?」

「ハハハハハハ! それは面白いジョークだ!」

 男は高笑いをしながらカウボーイハットを前後に被り直し、再び笑い出した。

 よく見ると全身、西部劇に出てきそうなカウボーイの恰好をしている。

「あんたこそ、ここでなにをしていたんだ?」

 俺の質問に、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの笑顔を向け、前足を高らかにあげた馬を俺の前まで進めてきた。

「よくぞ聞いてくれた。ミーはさすらいのカウボーイ、エディ・ロバーツだ。私は時間があるとここへ来て、亡き祖父の無念を晴らせまいかと考えているんだ。まあ毎日時間は有り余っているんだがね。ハハハハハハ!」

「ちょっとウタル、こいつ危ないニートちゃうの?」

「ヘイ、ユー! 聞こえているよ。聞こえたついでに言っとくけど、ミーは危ない奴でもニートでもない! じゃあ何者かって? 泣く子も黙る、さすらいのカウボーイ……ってちょっと待てぇい!」

 途中から呆れて馬車を進めたセリカの判断に同意をした俺は、そのカウボーイというエディ・ロバーツの横を通り過ぎた。

 慌てて馬を反転し、俺達の横に並んだロバーツは両手を広げ、呆れた顔をした。

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