令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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氷山の中で見たもの

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「あら?」

 氷山の中は空洞だった。氷上を滑っていた聖剣が止まり、馬車を下ろして中から三人が出てきて無事だったことに一安心した。

「ってか、ミゼル着いて来ちゃったのか?」

「まぁあの状況でミゼル一人で帰らせるのも何かあったら責任感じちゃうからね」

「えへへへ。元々ミゼルは最後まで着いていくつもりだったし。ニヒヒ」

「それより馬車に酔ったわ。早くたどり着いたのは助かるけど、一歩間違ったら氷の壁にぶち当たって皆即死だったんだよ」

「まぁ結果オーライってことやろ。私の魔法も役に立ったみたいやしね」

「僕の弓の威力のお陰が大半だろ?」

 馬車から降りて早々、二人のいつもの口喧嘩が始まった。それだけ元気であるという証拠なのだと俺は受け取った。

 氷の上を歩きながら辺りを見渡したが、それらしきものは何も見つからなかった。

「ホンマにここが魔王のアジトなんやろか?」

「何よりもカイト様の無事が一番だよ」

 確かな証拠もなく香龍が降ろしてくれたこの場所を、俺達は勝手に魔王のアジトと決めつけていただけだ。この場所がそうなのかどうかは、張本人の魔王に合わなければならないのだが。

「カイト様を早く救出する為にここが魔王のアジトであってほしいけど、魔王には会いたくないようなそんな感じ」

「どんな感じやねん。敵さんがカイトを連れてってんのに、良く来ました、ほなってすんなり返してくれるわけないんやから、さっさと遭遇して倒して帰らなアカンわ。何言うてもここ……」

「寒いよぉぉぉ、お兄ちゃん」

 どうやら薄着でしかも鎧が肌に当たる部分が冷たくて震えるほどミゼルは寒いようだ。

「そりゃ氷の中じゃ寒いのも仕方ないよな。ルーチェ、なんか魔法で燃やしてくれよ」

「ほいきた。ってちょっと待ってよ。私の魔法を便利グッズかなにかと勘違いしてへんか?」

「実際便利なんだからいいじゃないか。明かりを灯すのにも使えて一石二鳥だし」

「ったく、しゃーないなー。セリカの矢を一本借りて燃やすでぇ」

「ちょっ、なにすんだよ」

 セリカの抵抗空しくルーチェは矢を一本取り、詠唱を呟くと先端に火を灯した。

「うはっ! よう燃えるなぁ」

「あったかぁい。それに天井の方まで見えるようになったよー」

 どこからか入ってくる程度の光で照らされていた四方は薄暗かったが、矢に灯された火のお陰で随分先の方まで見渡すことができた。

「お兄ちゃん! あれ!」

 急に驚いたミゼルが天井の方を指さし、一同は慌ててその方に目をやった。

「……龍?」

 天井の氷の中に巨大な龍が凍ってた。

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