令嬢である妹と一緒に寝ても賢者でいられる方法を試してたらチート能力が備わった件

つきの麻友

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追憶の先にあるものはなんですか?

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「どいたどいたー!」

 勢い良く叫びながら浴槽を滑らせながら向かってきたのはルーチェとセリカだった。カイトは自力で立つことができている。なんとか順調に回復しているようだ。

「はい、クラッチのオッチャンは上半身持って、私らは足元持つから、せーので持ち上げるんやで!」

「せーのーで! じゃないの?」

「なんやその、で! って。で、なんていらんで。いくで、せーの! いや、持ち上げーな」

「いや、だからせーのーで! じゃないとタイミング合わないって」

 二人のやり取りが終わるのを待っていると、魔王は出血多量であの世行き待ったなしだろう。

「もういいから、さんはい! でいこう」

 俺の決めつけにグダグダ言ってたがラチがあかないので渋々でもその掛け声に従ってくれることになった。

「ほな行くでー、せーのーさんはい!」

 結局三人バラバラで持ち上げられた魔王はぐでんぐでんになりながらも浴槽に浸かることができた。

 喪失感がなければクラッチロウ一人で持ち上げれば造作もないことだったし、俺が担いでも良かったのだが生憎丸裸の男性を抱えてあげる程の精神は鍛えられていない。

 世界を再生する為に一旦滅ぼそうとしていた魔王がか弱い、と言えば語弊があるかもしれないが女の子に手伝ってもらって浴槽に放り込まれている。なんともシュールな絵図である。

「普通、水に浸したら血は余計に流れてくるんやけど、私が回復の魔法を傷口に掛けてるから止血はできてるで。後はこの浴槽に浸かってたら治るやろ」

「何故、止めをささない?」

 クラッチロウの質問にはミゼルが答えた。

「だって、魔王さん死んじゃったら現世にお兄ちゃん帰れないでしょ?」

「回復させて危険を感じないのか? コイツさえいなくなれば我々は……」

「細かいことはええんやって。先の事は今度考えたらええねん。オッチャン、ポジティブに物事考えて突き進んでいかなハゲるでぇ」

「ハゲるって……」

 突拍子もないことを言われたクラッチロウは後頭部を押さえた。

「それにしてもやっぱりここは氷の世界やから寒ぅてかなわん。馬車に先に戻ってるからな、後でウタルも来ぃや」

 ミゼルとセリカはカイトに肩を貸して馬車に向かった。

 暫く行ったかと思うとルーチェが戻ってきて俺に呟いた。

「馬車に戻ったらカイトの濡れたズボン乾かすのに時間かかるからゆっくりでええで。その間カイトはすっぽんぽんやしな。グヘヘヘ」

「お前はシーヴァイル狙いじゃなかったのか?」

「それは変わりないんやけど、カイトのような美形の下半身拝める機会なんてそうそうないからな。有難く拝んでくるで!」

 変態である。俺も人の事は言えないが、ルーチェも変態であろう。そもそも女性が変態なのは男性の俺からしたら宇宙の謎より神秘的なものなのだ。それなのにこんな身近に女の子の変態が一人いたら宇宙もかたなしだろう。

 いや、待てよ? カイトへの本命はセリカだ。カイトのズボンを乾かす間の裸に一番興奮しているのはセリカなんじゃないのか? セリカはツンデレなところもあって口には出さないが本命の男が狭い馬車の中で裸で居るなどというシチュエーション、理性と変態が拮抗するに間違いない。加えて天然でまだまだお子ちゃまのミゼル。あの狭い馬車の中はカオスに違いない!

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