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若者に死刑宣告されたおっさん
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「あんた、クビな。俺達Aランクに上がったからさ、やっぱ相応の腕前じゃないとパーティは組めないだろ?」
俺に十五も年下の剣士が言った。
ああ、これが、所謂、無力なおっさんが若者に捨てられる図か。
俺はパーティに捨てられそうになっている。
俺を囮にして先に行ってしまった薄情な奴らとはこちらからお断りだ、と言ってやるつもりだったが先手を打たれたようだった。
剣士のケント(♂)に宣言され、魔道士のニール(♂)も治癒魔法師のミント(♀)もそれぞれに肯いた。
「そうか、分かった。これまでだな」
「でさ、その装備一式、返してもらえる? パーティとして購入したんだから。特にその長剣」
とケントが言った。
ケントは剣士で素早い動きとクリティカルヒット連発のスキルがある。
「それは困る。これからの事だってあるし」
「え? まだ冒険者やるんですか? その年でぇ?」
と言ったのはニールだ。魔法使いで攻撃と治癒の両方を使える赤魔道士という奴だ。
その後ろにいたミントも肩をふるわせて笑っている。ミントは紅一点の治癒魔法師だ。戦いはせず回復専門で、よほどでなければ魔力切れにならなので頼りになる。
「そうだ。何か悪いか」
「もう冒険者は無理なんじゃないですか? その年でランクDなんですよ? 拾ってくれるパーティもあるませんよ?」
ミントが言った。
俺はケビンで剣士だ。こつらの言う通り、冒険者になって二十年、ベテランといえばそうだが、後から冒険者になった若い奴らにはすでに追い越されている。
「それはそうかもだが、ソロでやるという道もあるし、装備は渡せない。装備がそっちなら金でも貰えないと路頭に迷う。それにパーティを辞めさせたいメンバーだとしてもダンジョンで囮に……」
俺の声を遮るように、
「いいよ、いいよ。恵んでやるよ」
とケントが布袋から金貨を二枚取りだして俺の方へ投げた。
だがそれは俺の手に落ちずに床にカンっと甲高い音を立てて落ちた。
「自分の実力を棚にあげて、金を寄越せとかあつかましいおっさんだよな!」
とケントが大きな声で言った。
ここはギルドでたくさんの人間がいて、受付嬢もこちらを見て隣の同僚とヒソヒソ話している。
「まったく、身の程も知らないおっさんはあつかましくいけねえ。何の役にも立っていないのに金に執着してさ。DランクのくせにAランクのパーティに混ざって、金の取り分だけは一人前だからな!」
ヒソヒソ話が広がっている。
ケントは今や勢いのある若手のパーティでAランク。
そしてこのたびパーティとしては複ランクAAに上がったんだ。
AAランクと言えば冒険者の中でも高位ランクで、災害級魔獣が出た時には国から依頼を受けて任務につくほどの腕前だ。
そのAAランクにこき下ろされ嫌われた俺はもうどこのパーティにも入れないのは確実で、ケントはわざわざ人の大勢いるギルドで俺に死刑を宣告したんだ。
ギルドの中ではまだ冷たい空気と乾いた笑いが続いていたが俺は金貨二枚を拾って、
「じゃあな、みんな元気でやれよ」
と言ってギルドを出た。
「もうどこのパーティにもお呼びがかからないだろうな。受付のねーちゃんも笑ってたしな……ダンジョンでも行くか。金ぇ稼がないと」
ダンジョンとは魔素が濃く立ちこめる陰鬱とした場所に現れる、モンスターや魔獣が発生する箇所の事だ。
冒険者は魔獣を倒し、その屍からはぎ取った牙や皮、肉、魔力の素である魔石を売って糧に代える。倒せば倒すだけ経験値が増え、レベルアップにも繋がる。
野や山にいくらでも魔獣はいるが、特にダンジョンと呼ばれる洞窟の奥深くでは魔獣が次々発生するので、手っ取り早く狩りやレベルアップをするのに最適だ。
だがダンジョン内では手持ちの薬草、回復液、そして自分の治癒魔法だけが頼りだ。
次々に襲ってくる魔獣、それは自分もレベルよりも強力で危険な魔獣がいつ何時襲ってくるやもしれない。
駆け出しの冒険者や自分の腕前を過信している者はそこで命を落とす。
それでも一流の冒険者になる為に皆、せっせとダンジョンへ通うのだ。
俺に十五も年下の剣士が言った。
ああ、これが、所謂、無力なおっさんが若者に捨てられる図か。
俺はパーティに捨てられそうになっている。
俺を囮にして先に行ってしまった薄情な奴らとはこちらからお断りだ、と言ってやるつもりだったが先手を打たれたようだった。
剣士のケント(♂)に宣言され、魔道士のニール(♂)も治癒魔法師のミント(♀)もそれぞれに肯いた。
「そうか、分かった。これまでだな」
「でさ、その装備一式、返してもらえる? パーティとして購入したんだから。特にその長剣」
とケントが言った。
ケントは剣士で素早い動きとクリティカルヒット連発のスキルがある。
「それは困る。これからの事だってあるし」
「え? まだ冒険者やるんですか? その年でぇ?」
と言ったのはニールだ。魔法使いで攻撃と治癒の両方を使える赤魔道士という奴だ。
その後ろにいたミントも肩をふるわせて笑っている。ミントは紅一点の治癒魔法師だ。戦いはせず回復専門で、よほどでなければ魔力切れにならなので頼りになる。
「そうだ。何か悪いか」
「もう冒険者は無理なんじゃないですか? その年でランクDなんですよ? 拾ってくれるパーティもあるませんよ?」
ミントが言った。
俺はケビンで剣士だ。こつらの言う通り、冒険者になって二十年、ベテランといえばそうだが、後から冒険者になった若い奴らにはすでに追い越されている。
「それはそうかもだが、ソロでやるという道もあるし、装備は渡せない。装備がそっちなら金でも貰えないと路頭に迷う。それにパーティを辞めさせたいメンバーだとしてもダンジョンで囮に……」
俺の声を遮るように、
「いいよ、いいよ。恵んでやるよ」
とケントが布袋から金貨を二枚取りだして俺の方へ投げた。
だがそれは俺の手に落ちずに床にカンっと甲高い音を立てて落ちた。
「自分の実力を棚にあげて、金を寄越せとかあつかましいおっさんだよな!」
とケントが大きな声で言った。
ここはギルドでたくさんの人間がいて、受付嬢もこちらを見て隣の同僚とヒソヒソ話している。
「まったく、身の程も知らないおっさんはあつかましくいけねえ。何の役にも立っていないのに金に執着してさ。DランクのくせにAランクのパーティに混ざって、金の取り分だけは一人前だからな!」
ヒソヒソ話が広がっている。
ケントは今や勢いのある若手のパーティでAランク。
そしてこのたびパーティとしては複ランクAAに上がったんだ。
AAランクと言えば冒険者の中でも高位ランクで、災害級魔獣が出た時には国から依頼を受けて任務につくほどの腕前だ。
そのAAランクにこき下ろされ嫌われた俺はもうどこのパーティにも入れないのは確実で、ケントはわざわざ人の大勢いるギルドで俺に死刑を宣告したんだ。
ギルドの中ではまだ冷たい空気と乾いた笑いが続いていたが俺は金貨二枚を拾って、
「じゃあな、みんな元気でやれよ」
と言ってギルドを出た。
「もうどこのパーティにもお呼びがかからないだろうな。受付のねーちゃんも笑ってたしな……ダンジョンでも行くか。金ぇ稼がないと」
ダンジョンとは魔素が濃く立ちこめる陰鬱とした場所に現れる、モンスターや魔獣が発生する箇所の事だ。
冒険者は魔獣を倒し、その屍からはぎ取った牙や皮、肉、魔力の素である魔石を売って糧に代える。倒せば倒すだけ経験値が増え、レベルアップにも繋がる。
野や山にいくらでも魔獣はいるが、特にダンジョンと呼ばれる洞窟の奥深くでは魔獣が次々発生するので、手っ取り早く狩りやレベルアップをするのに最適だ。
だがダンジョン内では手持ちの薬草、回復液、そして自分の治癒魔法だけが頼りだ。
次々に襲ってくる魔獣、それは自分もレベルよりも強力で危険な魔獣がいつ何時襲ってくるやもしれない。
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それでも一流の冒険者になる為に皆、せっせとダンジョンへ通うのだ。
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