底辺Dランクのおっさんが拾った剣が女子っぽいんだが、魔剣で悪役だった。

猫又

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少年を助けるおっさん

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 誰が置いたのかは知らないが、入ってすぐに「まだ間に合う帰れ」と書かれた木片がたてかけてあった。かなり難易度の高いダンジョンなんだろうな。
 入ったすぐから階下への岩の階段が続き、ずっと暗い。
 普通ならば松明をつけるか光の魔法だが、俺は魔力がないので、松明をつける。
 松明って片手がふさがるから不利なんだがな。
「うわー、まだ一階しか降りてないのに」
 地下一階は毒蜘蛛で一杯だった。
 一匹なら噛まれても痺れるだけの弱いモンスターだが、何十匹も集られ噛まれると動けなくなるし、そっからちょっとずつ肉も骨も柔らかく溶かされて食われる。
「どうしよ」
 と思ってるうちに、見えてしまった。
 奥の方で少年が毒蜘蛛に囲まれている
 少年は消えかけの松明をかざして毒蜘蛛を近付けないようにしているが、きっと一晩中そうやっていたんだろうな、その松明も消えかけている。
「あれが孫かな。しょうが ねえな。まだすぐ見つけられてラッキーか」
 剣を構え意識を集中する。
そんなに格好つけるほどの物ではないが「一閃!」
 剣からの衝撃波で壁、床の毒蜘蛛がバラバラと落ちてきてきゅっと足を縮めてひっくり返った。
「おい! 大丈夫か!」
 毒蜘蛛はまだかなりいるが、臆病なのですぐに近寄ってはこない。
 警戒して俺の動きを気にしている。
「は、はい」 
 少年は顔面蒼白で、だが俺が駆け寄ったので一気に気持ちが緩んだのだろう。
 身体がふらついて俺に倒れかかってきた。
「え、マジか」
 少年の身体を支えようと受け止めはしたが案外重く足を取られ、そしてトトッと後ずさったその瞬間、ピカーと足下が光った。
「や、やべえ、転移魔法陣、踏んじまった!」
 後悔した時には遅くダンジョン魔法によってどこかの階層に転移させられてしまう瞬間だったが、俺は少年の身体を床に放り投げた。
「おい! 今なら蜘蛛も近寄ってこねえから走って逃げろ!」
    
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