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ネズミ人間2
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巨大ネズミ人間の怒号が響き桜子は身をいっそう固くして縮こまったが自分が別に痛くも痒くもない事に気がついた。
「え……」
恐る恐る頭を上げて、そっと目を開いてみる。
腕の隙間からそっとネズミ人間の方を見てみると、
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
頭で理解するよりも先に悲鳴の方が口から流れ出た。
桜子の目の前に立っているネズミ人間の腹のあたりから人間の手が突き出ている。
その手はネズミ人間の内臓を鷲づかみにして、血に塗れていた。
ネズミ人間は苦しそうに身体をよじって鳴いた。
腹からどんどんと血や体液が流れ、床に血だまりを作る。
桜子は思わず自分の口を押さえた。昼に食べた物が逆流してきそうだったからだ。
手がネズミ人間の腹から抜かれると、ネズミ人間の身体は前倒しにどうんっと倒れた。
その向こう側で血塗れの手をしていたのは、転校生の赤狼由良だった。
「赤狼君!」
赤狼はネズミ人間の身体を跨いで桜子に近づき、
「自分の力を過信しているとは思わないが、不用意にこんな場所に入り込むのは感心しないぞ」
と言った。
「へ?」
「下等な妖はどこにでも沸く。土御門の権力内でも関係ないからな」
「赤狼君……あなた、もしかして妖なの? ネズミ人間を一撃だなんて……」
「そんな下っ端じゃねえ」
と赤狼がぷいっと横を向いた。
桜子は立ち上がって、ぱんぱんと制服のスカートの埃を払った。
次の瞬間、赤狼に腹を破られて倒れたネズミ人間の身体が動いた。もがきながら起き上がろうと身体を動かしている。
くるっと赤狼の身体が反転し、長い足がネズミ人間の頭を蹴り飛ばした。
その衝撃でネズミ人間の頭だけが階段の下まで飛んで行って落ちた。だがそれと同時に首から血を吹き出しながらネズミ人間の身体が桜子に向かって飛びかかってきた。
「キャー!」
がしっとネズミ人間に背後を取られ、桜子はあっさりと捕まってしまった。
赤狼はふんっと鼻を鳴らして、
「汚い手で桜子に触るんじゃねえ。くそ野郎」
とネズミ人間を睨んだ。
「分かってるんだろう? お前と俺じゃ格が違うんだぜ?」
赤狼の姿からぞわっとするような禍々しいオーラがあふれ出た。
桜子ですらそれを感じて全身が冷たくなった。
「?」
ヂュヂュヂィ……と頭がないはずのネズミ人間が鳴いている。捕まれている桜子にすらネズミ人間の恐怖が伝わってくる。ネズミ人間はガタガタガタと震えている。
だがそれでも最後の抵抗とばかりに桜子の顔を潰してやろうかと鋭い爪を振り上げた。 それと同時に赤狼が怒号を発してネズミ人間に飛びかかった。
「ヂュッ!!」
次の瞬間には桜子の目には大きな赤い狼がネズミ人間の肩に噛みついて右腕を引き千切る場面が映った。
「う、嘘……」
腕を失ったネズミ人間はバランスを崩して桜子の身体を離した。
自由になった桜子は慌ててネズミ人間から離れて距離をとったが、目の前には瀕死のネズミ人間と牙をむいて唸っている大きな真っ赤な狼がいた。ネズミ人間も巨大だがこの赤い狼が後ろ足で立てばさらに大きいだろうと桜子は思った。
桜子は目を皿のように見開き赤い狼とネズミ人間を見た。大きな赤い狼は咥えていたネズミ人間の右腕をペッと吐き出した。その瞬間、床に倒れていたネズミ人間の身体が右腕とともにばらばらと崩れ始め、やがて砂埃のような細かな粒になり消えた。
「え……」
恐る恐る頭を上げて、そっと目を開いてみる。
腕の隙間からそっとネズミ人間の方を見てみると、
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
頭で理解するよりも先に悲鳴の方が口から流れ出た。
桜子の目の前に立っているネズミ人間の腹のあたりから人間の手が突き出ている。
その手はネズミ人間の内臓を鷲づかみにして、血に塗れていた。
ネズミ人間は苦しそうに身体をよじって鳴いた。
腹からどんどんと血や体液が流れ、床に血だまりを作る。
桜子は思わず自分の口を押さえた。昼に食べた物が逆流してきそうだったからだ。
手がネズミ人間の腹から抜かれると、ネズミ人間の身体は前倒しにどうんっと倒れた。
その向こう側で血塗れの手をしていたのは、転校生の赤狼由良だった。
「赤狼君!」
赤狼はネズミ人間の身体を跨いで桜子に近づき、
「自分の力を過信しているとは思わないが、不用意にこんな場所に入り込むのは感心しないぞ」
と言った。
「へ?」
「下等な妖はどこにでも沸く。土御門の権力内でも関係ないからな」
「赤狼君……あなた、もしかして妖なの? ネズミ人間を一撃だなんて……」
「そんな下っ端じゃねえ」
と赤狼がぷいっと横を向いた。
桜子は立ち上がって、ぱんぱんと制服のスカートの埃を払った。
次の瞬間、赤狼に腹を破られて倒れたネズミ人間の身体が動いた。もがきながら起き上がろうと身体を動かしている。
くるっと赤狼の身体が反転し、長い足がネズミ人間の頭を蹴り飛ばした。
その衝撃でネズミ人間の頭だけが階段の下まで飛んで行って落ちた。だがそれと同時に首から血を吹き出しながらネズミ人間の身体が桜子に向かって飛びかかってきた。
「キャー!」
がしっとネズミ人間に背後を取られ、桜子はあっさりと捕まってしまった。
赤狼はふんっと鼻を鳴らして、
「汚い手で桜子に触るんじゃねえ。くそ野郎」
とネズミ人間を睨んだ。
「分かってるんだろう? お前と俺じゃ格が違うんだぜ?」
赤狼の姿からぞわっとするような禍々しいオーラがあふれ出た。
桜子ですらそれを感じて全身が冷たくなった。
「?」
ヂュヂュヂィ……と頭がないはずのネズミ人間が鳴いている。捕まれている桜子にすらネズミ人間の恐怖が伝わってくる。ネズミ人間はガタガタガタと震えている。
だがそれでも最後の抵抗とばかりに桜子の顔を潰してやろうかと鋭い爪を振り上げた。 それと同時に赤狼が怒号を発してネズミ人間に飛びかかった。
「ヂュッ!!」
次の瞬間には桜子の目には大きな赤い狼がネズミ人間の肩に噛みついて右腕を引き千切る場面が映った。
「う、嘘……」
腕を失ったネズミ人間はバランスを崩して桜子の身体を離した。
自由になった桜子は慌ててネズミ人間から離れて距離をとったが、目の前には瀕死のネズミ人間と牙をむいて唸っている大きな真っ赤な狼がいた。ネズミ人間も巨大だがこの赤い狼が後ろ足で立てばさらに大きいだろうと桜子は思った。
桜子は目を皿のように見開き赤い狼とネズミ人間を見た。大きな赤い狼は咥えていたネズミ人間の右腕をペッと吐き出した。その瞬間、床に倒れていたネズミ人間の身体が右腕とともにばらばらと崩れ始め、やがて砂埃のような細かな粒になり消えた。
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