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鈍感主人公 如月夏紀
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「おはよ、夏紀」
毎朝のことだが、隣家の幼馴染みが俺よりも先に飯を食っている件。
「おはよう、周防」
千崎周防は幼馴染みで幼稚園からずっと一緒にいて、今は高校二年生。
同じ高校で同じクラス。
同じ高校なのは地元だから当然だけど、ずーっと同じクラスなのだ。
幼稚園から小、中、高、ずっと同じクラスを更新中だ。
不思議だろう?
けど親父が言うには、
「ご先祖様がそうやってお前を守って下さってるんだ。神社の息子に産まれながら霊感ゼロのお前に対して、周防が通った道の跡には雑霊一匹残っていないほどの強力な霊能力。お前は霊を引き寄せる体質なんだから、周防から離れちゃだめだぞ?」
なんだそうだ。
つまりご先祖が誰か何かを操って、俺と周防を一緒のクラスにしてくれてるって事らしいが、普通ならそんな馬鹿げた話、と思うだろうけど、霊を相手にしている商売だからあながち嘘だろ、とも言えない。
確かに……親父の言う通り俺は霊感というか、霊能力みたいなのはないはずなんだが変な霊が寄ってくるという体質でもある。
中には悪霊みたいなのに操られた人間に襲われたりする時もある。
でも側に周防がいて一睨みすれば悪霊は消え去り、変な人間は周防の一撃で撃退してしまう。周防は身長189で腕っ節が強く、霊も人間も周防がじろっと睨んだだけで逃げていくんだ。更に勉強も出来てイケメンで学校ではみんなが周防の友達になりたくてそわそわしているってやつだ。
対して俺は霊能力もなく、背も低く、痩せたガリで、腕っ節にはてんで自信がない陰キャそのものなんだけど、周防はそんな俺でも仲良くしてくれて、神社の仕事でこきつかわれている俺に付き合ってくれるありがたい友人だ。
「そうだ、夏紀は俺から離れちゃ駄目なんだぞ?」
先に食い終えた周防が、俺の肩を抱き寄せてそう言った。
「は? ああ、そっか、またお祓いに行くんだっけ、今日、どこ?」
親父は眼鏡をかけ直しながら、タブレットを操作して、
「五丁目の新山さんのおばあちゃんが、孫の美代ちゃんにまた妙な霊が憑いてるから祓ってほしいそうだ」
「孫の美代ちゃんて……あの子だろ?」
俺は美代ちゃんを思い出した。
同じ地区だから中学までは同じでその頃は普通の女子だったけど、私立の高校に行ってから出来た友達が悪かったらしく不良化してしまい、今じゃ立派なヤンキー少女だ。
金髪ヒョウ柄、口が悪い、親子喧嘩でプチ家出もざら、近所でも評判だ。
けどおばあちゃんだけは美代ちゃんを心配して、本当は心の優しい子、だと今でも信じているらしい。
「何回目だっけ、定期的にお祓いするけどあの子の素行が悪いのは悪霊のせいじゃないんじゃない?」
と俺は言ったが、
「それで新山さんのおばあちゃんの気がすむならいいんだよ。お祓い料金、ちゃんともらってこいよ」
と親父は言った。
「あのさぁ、親父が行けないんだったら断るか、行ける日を調整しろよ。俺、お祓いなんて出来ないんだからさ」
「周防が側にいるだけでたいていの霊は怯えて離れていくからいいんだよ。お前は拝むふりだけしてろ」
と親父は飯を食いながら事も無げにそう言ったが、
「だから! 周防に迷惑だろ! いつも一緒に来てもらって! だいたい周防の手に負えないような霊だったらどうすんだよ! よその息子さんと実の息子を危険に遭わせていいのかよ!」
と俺は言った。
まったく非常識な親だ。
親父は一瞬驚いたような顔をしたが、ぶっはっはっはと笑って、
「周防の手に負えない悪霊なんかいない」
と言いきった。
「あのなぁ」
「夏紀、俺は平気だ。夏紀といっしょならどんな悪霊にも負けないし」
と周防が言った。
毎朝のことだが、隣家の幼馴染みが俺よりも先に飯を食っている件。
「おはよう、周防」
千崎周防は幼馴染みで幼稚園からずっと一緒にいて、今は高校二年生。
同じ高校で同じクラス。
同じ高校なのは地元だから当然だけど、ずーっと同じクラスなのだ。
幼稚園から小、中、高、ずっと同じクラスを更新中だ。
不思議だろう?
けど親父が言うには、
「ご先祖様がそうやってお前を守って下さってるんだ。神社の息子に産まれながら霊感ゼロのお前に対して、周防が通った道の跡には雑霊一匹残っていないほどの強力な霊能力。お前は霊を引き寄せる体質なんだから、周防から離れちゃだめだぞ?」
なんだそうだ。
つまりご先祖が誰か何かを操って、俺と周防を一緒のクラスにしてくれてるって事らしいが、普通ならそんな馬鹿げた話、と思うだろうけど、霊を相手にしている商売だからあながち嘘だろ、とも言えない。
確かに……親父の言う通り俺は霊感というか、霊能力みたいなのはないはずなんだが変な霊が寄ってくるという体質でもある。
中には悪霊みたいなのに操られた人間に襲われたりする時もある。
でも側に周防がいて一睨みすれば悪霊は消え去り、変な人間は周防の一撃で撃退してしまう。周防は身長189で腕っ節が強く、霊も人間も周防がじろっと睨んだだけで逃げていくんだ。更に勉強も出来てイケメンで学校ではみんなが周防の友達になりたくてそわそわしているってやつだ。
対して俺は霊能力もなく、背も低く、痩せたガリで、腕っ節にはてんで自信がない陰キャそのものなんだけど、周防はそんな俺でも仲良くしてくれて、神社の仕事でこきつかわれている俺に付き合ってくれるありがたい友人だ。
「そうだ、夏紀は俺から離れちゃ駄目なんだぞ?」
先に食い終えた周防が、俺の肩を抱き寄せてそう言った。
「は? ああ、そっか、またお祓いに行くんだっけ、今日、どこ?」
親父は眼鏡をかけ直しながら、タブレットを操作して、
「五丁目の新山さんのおばあちゃんが、孫の美代ちゃんにまた妙な霊が憑いてるから祓ってほしいそうだ」
「孫の美代ちゃんて……あの子だろ?」
俺は美代ちゃんを思い出した。
同じ地区だから中学までは同じでその頃は普通の女子だったけど、私立の高校に行ってから出来た友達が悪かったらしく不良化してしまい、今じゃ立派なヤンキー少女だ。
金髪ヒョウ柄、口が悪い、親子喧嘩でプチ家出もざら、近所でも評判だ。
けどおばあちゃんだけは美代ちゃんを心配して、本当は心の優しい子、だと今でも信じているらしい。
「何回目だっけ、定期的にお祓いするけどあの子の素行が悪いのは悪霊のせいじゃないんじゃない?」
と俺は言ったが、
「それで新山さんのおばあちゃんの気がすむならいいんだよ。お祓い料金、ちゃんともらってこいよ」
と親父は言った。
「あのさぁ、親父が行けないんだったら断るか、行ける日を調整しろよ。俺、お祓いなんて出来ないんだからさ」
「周防が側にいるだけでたいていの霊は怯えて離れていくからいいんだよ。お前は拝むふりだけしてろ」
と親父は飯を食いながら事も無げにそう言ったが、
「だから! 周防に迷惑だろ! いつも一緒に来てもらって! だいたい周防の手に負えないような霊だったらどうすんだよ! よその息子さんと実の息子を危険に遭わせていいのかよ!」
と俺は言った。
まったく非常識な親だ。
親父は一瞬驚いたような顔をしたが、ぶっはっはっはと笑って、
「周防の手に負えない悪霊なんかいない」
と言いきった。
「あのなぁ」
「夏紀、俺は平気だ。夏紀といっしょならどんな悪霊にも負けないし」
と周防が言った。
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