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「周防、昨日、ごめんな。俺、つまんない事言った。先祖がどうこうってやつ」
「夏紀」
「ガキの頃からずっと助けてもらってるのに」
「……もしかして、それは本当かもしれない。夏紀の先祖が夏紀を心配するあまり俺を側においたかもしれない」
「周防」
「でもさ、それこそそれは仲のいい友人でいいじゃん。幼馴染みでご近所でも十分、俺は夏紀を助けられるしさ。うちの両親と夏紀んちのおじさんおばさんもずっといい友人関係だろ? ただ夏紀を護るだけならそれで十分なんだよ。だからそれ以外の感情は俺のものだから。俺が夏紀を好きなのは俺だけの感情で……」
「周防」
 周防はまた俺をぎゅうっと抱き締めて、
「夏紀に無理に俺を好きになってとは言わないよ。でも俺が夏紀を好きなのは変わらない。それが嫌で気持ち悪いなら……お祓いに行く時くらいはついて行くけど……これからは距離置いて友人関係でいいよ」
 そう言って周防は俺から手を離したけど、その瞬間、周防の手も声も震えていた。
「でも、俺、今日、周防と飯を食ってる菫ちゃんに嫉妬した。周防は人気者でみんなが周防を好きで友達になりたくて、部活だって引っ張りだこじゃん。周防には俺以外でもたくさん友達いるしって思うと、なんかちょっと悲しかったよ。俺、なんか自分の事、だせえなって思った」
 と言いながら周防の身体から手を離す。
 足元のクロを抱き上げて、
「帰ろうか、疲れちゃったよ。クロもありがとな」
「ニャー」
「夏紀!」
 後ろから周防の手が伸びてきて、俺の肩を掴だ。
「俺は夏紀だけだし! 夏紀がいたら他に友達なんていらないし!」
「何だよ、それ、贅沢。みんな周防と友達になりたいんだぞ」
「夏紀がいたらいい」
 という周防の声はちょっとだけ震えていたし、
「俺も今日、あいつらに襲われそうになって、身体触られるのとか全身鳥肌でさ。周防だったら触られてもなんともないのに。俺、思ってるより周防にめっちゃ気を許してるんだなーって思った」
 と言った自分の声もちょっと震えてた。
「ニャー」
 とクロが俺の腕の中で鳴いて、周防が目を大きく見開いた。
「え、まじで? 夏紀、そんな事言ったんだ?」
「え、何? 周防、クロの言ってること分かるの?」
「今日のピンチを助けてくれたら、べたべたしてもいちゃいちゃしても、匂い嗅いでもキスしても怒らないって夏紀が言ったってクロが言ってる」
「おまっ! 嘘つけ、そんな事言ってないし!」
「にゃはは」
 と真っ黒なクロが笑った。
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