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第七話 続き
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ウッドエルフ達の家は色んな所に建てているようで、村の中にいくつか生えている大きなユグドの木の枝の辺りに器用に木を組み上げ、家を建ている者や木の根元に大きな空いている空間があって、そこに家を建てていたり、ユラト達人間と同じように地面に家を建てている者など様々であった。
どの家も建てられてから年月が、それなりに経っているらしく、家の周りに苔が生えていたり、つる草が絡み付いていた。
ユラトは自分が思っていたよりも大きな場所であったので驚いていた。
(結構広いんだな……もっと小さい場所を想像していたよ……あっ!あれは!)
ユラトはある場所に気づいた。
そこは、何頭ものユニコーンが木の塀で囲まれた場所に放し飼いされていた。
ユニコーン達は見事な白いたてがみを揺らしながら走っていたり、軽く角を突き合わせじゃれていたりしていた。
ユラトはその光景をしばらくぼんやり眺めていた。
(へぇ……人間もウッドエルフも、そして馬とユニコーンもすることはあまり変わらないんだな)
すると、ダリオが叫んできた。
「おい、ユラト!早くしろ、置いて行くぞ!」
「あ、すいません!すぐに行きます!」
ユラト達はウッドエルフ達が冒険者のために用意した宿屋へと向かった。
ユラト達は ウッドエルフ達が冒険者のために用意した宿屋兼冒険者ギルドへ着いていた。
建物自体は族長がいくつか持っていた倉庫を貸し出しているらしい。
レクスが入る前にそう説明していた。
二階建ての簡素な作りの建物だった。
一階は料理を楽しんだりする場所とギルドの情報を掲示する場所や聖石の受け渡しなどが出来る場所になっていた。
そして二階は冒険者達が宿泊できる部屋になっている。
その建物の一階で大きな丸い木製のテーブルを囲みユラト達は明日のことについて話し合っていた。
他のテーブルにも冒険者がユラト達と同じようにパーティーメンバーでテーブルを囲み料理を頼んだり、お酒を飲みながら明日の探索について色々話をしていた。
そして各テーブルには、ウッドエルフ達が作った料理や飲み物等が運ばれ、それを口一杯に頬張り、冒険者達は美味しそうに食べていた。
ウッドエルフの料理は香草がたくさん使われていたため、部屋の中は香草の良い香りと冒険者達の声で満たされていた。
また、飲み物の方は絞りたての赤葡萄果汁に香草や木の皮などで香り付けされたワインなどがあった。
フレーバード・ワインと言われるワインである。
どうやら葡萄もたくさん収穫できる場所があるようだ。
ユラトは葡萄果汁を美味しそうに飲みながら話を聞いていた。
程よい酸味とまろやかな甘味があり、僅かに何か爽やかな花の香りを加えられた葡萄果汁だった。
(美味しい……そして香りもいい……こういった物もすぐにウッドエルフの特産品として、オリディオール島にも流通するんだろうな……楽しみだな!)
そして、香草と一緒に蒸し焼きされた鶏もも肉を一かじりすると地図を広げ、ジルメイダが説明を始めた。
「……いいかい、みんな、明日は早朝から探索を開始するよ!今あたし達がいるのはここ、ウッドエルフの村だ。そして、ウッドランドはここ。ウッドランドから北東にあるのがこの村だ。さっきダリオがギルドから貰ってきた最新情報が書かれた紙によると、ウッドランドから西の方と北西方向で新発見があったらしい。西のは大規模な地下洞窟で北西の方は古代の聖堂が発見されたらしい」
それを聞いたリュシアがジルメイダに質問をした。
「あの、古代の聖堂って何の神が祀られていたんですか?」
その質問にダリオが答えた。
「残念だが、お前の望むファルバーン様じゃねぇみてえだ。恐らく『炎の神フレムド』じゃねぇかってことらしいぞ」
しばらく無言で足と腕を組んで座っていた、レクスが呟く。
「森の中に炎の聖堂があるのか……」
ギルドから貰った資料を見ていたジルメイダがメンバーに話し掛ける。
「なぜ、フレムドなのかは、聖堂で炎の神像があったのと新しい火の魔法が発見されたからみたいだね」
それを聞いたユラトは興味と好奇心から、すぐにジルメイダに質問していた。
「どんな魔法?」
「どうやら、支援魔法ってやつらしいね……名前は『ファイアーエンチャント』って書いてあるね」
ダリオが更に付け加えるように、その魔法について知っていることを説明していた。
「この魔法はどうやら、武器に炎を纏わせることができるらしいぞ。まあ、あとは実際に使ってみないとわからんな……」
ユラトは、それを聞いて嬉しく思った。
(この森での戦いなら、かなり使えそうだ……)
ジルメイダが紙を見ながら話していた。
「魔法訓練場に登録されることが決まってるらしい」
リュシアも少し嬉しそうだった。
「じゃあ、たくさんの魔法使いさん達が使う魔法になりそうですね。そうなると探索もしやすくなりそう!」
ダリオがやれやれといった表情で呟いた。
「まあ、近々行くことにするか……しかし、面倒なこった……新しいものが、きっとこれから一杯入ってくるだろうからな……この歳で対応していくのは一苦労だぜ……」
それを聞いたジルメイダはダリオの肩を叩き、檄を飛ばした。
「なに言ってんだい!あんたもまだまだいけるだろ、そんなこと言うにはまだ早いよ!」
ダリオは再びやれやれといった表情をしていた。
そして、ジルメイダがワインの香りを軽く嗅ぎ、一気に飲み干すと説明を再開する。
「……まあ、そこでだ、今のところ多くの冒険者達はさっき言った場所辺りと、この村から北の方に多くの者が行くみたいだ。昔の地図によれば、どうやらハイエルフの国はウッドエルフの村から北西方向にあったみたいだね。だからあたし達はそこは避けて冒険者の少ない東へ探索に行こうと思うんだ」
なぜ東に行くのか、ユラトはわからなかったのでジルメイダに聞いていた。
「なぜ東に?俺達も北か北東辺りでもいいんじゃない?」
「東はほとんど手付かずだからね。そうなると聖石を使ってもすぐにこの村に帰ってこれるだろ?ユラトとリュシアはまだ、冒険者としては半人前だ。だから、朝早くから夕方までは探索。それから、夜にはこの村に帰ってリュシアはダリオと魔法の修行、ユラトはあたしが鍛えるよ。そうやって一日でも早く戦力を揃えるためってことさ。それに、昔の地図はあてにはならないさ」
ラスケルクがあった地域は、昔の地図では海になっていた。
また、オリディオール島から東の地域には大陸があった。
だから、冒険者たちはハイエルフの国は必ず北西にあるとは思っていなかったが、とりあえず聖堂や洞窟など色々見つかっているのと「ひょっとしたら一致する場所もあるのかもしれない」という思いもあり、少しでも可能性の高いところへ向おうと言う事で向っているに過ぎなかった。
西側を大方調べ終わったら東側にも冒険者達は、すぐに来るだろう。
この村からの距離が遠くなり、場合によっては1日では帰れないことも当然想定される。
そうなると野営し、夜の森で過ごさなければならない事態になる。
初心者1人なら守る自信はあったが、2人となると少し厳しいだろうとジルメイダは判断したのであった。
そうなる前にジルメイダは、ユラトとリュシアの2人をある程度、連携の取れる人材にしておきたかった。
そして、実はジルメイダにはそれ以外にも理由があった。
それはこの仕事を受ける前にあることを占ってもらおうと有名な占いの館へ訪れていた。
そこはオリディオール島中央、ゾイル地域の南にある。
島で一番大きな森があり、そして、その森の中に湖があり、そこに館はあった。
そこで教えられたのは、「……新大陸の東の方に強い運命と魔力を感じる。そして、そこへたどり着くことで新たな道が開けるだろう」と言う事を言われたのであった。
ジルメイダはその後、エルフ発見の報を聞き、自分の探しているものがそこにあるのだと確信し、チャンスがあれば東へ行きたいと思っていた。
だが仕事で行く以上、東に行くことが無理な場合もある、そのときは諦めようと思っていた。
しかし、ユラトとリュシアの2人が来たことでこの2人を鍛えながらなら、東にへ行けるだろうと、彼女はそう考えたのであった。
そして、若手を鍛えることと両方が出来ることも満足していた。
(ひょっとしたら、このメンバーで集まることがそうなのかもしれないね……)
ユラトはシルドナの町でデュランと見た2体の遺体の事を思い出していた。
あのときの悔しい思いを忘れてはいなかった。
(どんな難局も乗り切れるような冒険者になりたい……学校で習ったことだけじゃ実際は対処し切れなかった……自分で自己完結できるぐらいには最低でもなっておかないとな……そうしないと俺の呪いなんて自分で解けることなんてできないはずだ!)
ユラトの心は決まった。
「……分かった。それでいいよ。ジルメイダ、よろしく!」
ユラトの返事を聞いたジルメイダはうれしそうだった。
(ふふっ、ちょっと顔つきが変わったね……いい表情だ。何かこの子なりにあったのかね……)
ジルメイダは満足げに答え、ダリオにも協力を求めた。
「まかしときな!ダリオも悪いけど、やってくれるかい?」
ジルメイダとは対照的にダリオは気だるそう答えた。
「……ちっ……しょうがねぇな……ガキんちょのお守りは好きじゃねぇんだがな。確かに戦力はあればあるほどいいからな……リュシア!きっちり鍛えてやるからな!」
それを聞いたリュシアは、驚きと恐怖の入り混じった声で答えた。
「―――は、はい!よろしくお願いします!」
リュシアは返事をしてから、少し考えていた。
(思わず返事しちゃったけど、ここで、鍛えてもらった方がいいよね……そうじゃないとファルバーン様にも会えないし、お母さんの頼みも果たせない……)
リュシアの母の頼みとは、母の姉、つまり叔母を探し出す事であった。
リュシアの母の姉のエリスは、ヴァベル家の中で一番、光の血を受け継いだ人だった。
ヴァベルを率いる者は最も光の恩恵を受けた者でなければならない決まりだった。
だから次期ヴァベル家の当主になるのはエリスのはずだった。
しかし、リュシアの母が丁度、結婚式を挙げる前日に冒険に出ていたエリスは帰ってこなかった。
リュシアの母、ソフィアと叔母のエリスは中が良く、妹の結婚を心から祝福してくれていた。
そして、もし女の子が産まれたら『リュシア』という名前を付けて欲しいとソフィアに言っていた。
これは、エリスとソフィアが子供が産まれたら、お互い子供の名前を付け合おうと約束していたからであった。
そして、ヴァベルの人脈を使い、色々手を尽くして探してみたが見つけることはできなかった。
冒険者として一流だったエリスは、魔物にやられるはずがないと人々は口々に言っていたし、ソフィアもそれを信じていた。
そして、ソフィアはその後、女の子をお腹に宿した。
突然いなくなった姉を思い、その約束を果たそうと、ソフィアは産まれてくる女の子にリュシアと名づけたのだった。
リュシアは、母からその話を聞いて育った。
聞いた話だと、意志の強い美しい女性だったようだ。
そして、母は叔母に会えないまま、病気で他界した。
リュシアは母を失った悲しみが落ち着いた時に、叔母を探し出す事も自分の目的にしようと決めていた。
母がずっと叔母に会いたがっていた事を伝えたい。
また、どうして居なくなったのか、その理由を知りたいと心から思っていた。
(お母さんの為にも、ここで頑張らなきゃ……がんばろ!)
リュシアは両手を握り締め、ここで冒険者として頑張ってみようと決意するのであった。
そして、彼らのやり取りを見ていたレクスはジルメイダに自分はどうすればいいのか聞いてきた。
「……俺はどうすればいいんだ?」
「レクスあんたも付き合ってくれるかい?」
「……そうだな、森から帰ってくる確率も増えるだろうからな……いいだろう」
「そうかい、ありがとよ!」
「ありがとう!レクスさん」
「フッ……気にするな、これもハイエルフを探す為だ」
そしてレクスがジルメイダに他には発見がなかったのか聞いてきた。
「他には新情報とやらはないのか?」
情報が書かれた紙に目を通しながら、ジルメイダは答える。
「そうだねぇ……あとは先行していた他のパーティーが見つけたこの森で出会ったモンスターの情報ってのもあるね……えっと、何々……マンドラゴラってやつにキラービー、それからジャイアントスパイダーそれにワイトってのが今のところ発見された魔物達ってところだね」
ジルメイダが説明した以外の情報には、新しい植物の発見が多く記載されていた。
森であるため、それなりの数の新しい植物が見つかっているようであった。
そして、今度は森以外の情報についてもジルメイダは見ることにした。
すると、何か見つけたジルメイダはにやりとし、ユラトに向かって話し掛けた。
「ユラト!あんたのことも載ってるよ!『ブラックアニス』ってハッグを見つけたらしいね!初めての仕事だったんだろ?初めてにしては上出来じゃないか!少し見直したよ!」
ジルメイダが見た紙には新発見のモンスターのところにブラックアニスと書かれていて発見者の名前の欄に、ユラト・ファルゼイン、デュラン・マーベリックと2人の名前が記載されていた。
それを聞いた、リュシアはユラトを尊敬の眼差しで見つめ、ユラトに話し掛けてきた。
「初めての仕事で新発見なんて、凄いです!ユラトさん!」
ユラトは少し照れくさくなり、無言で頭をかいた。
その様子を見ていたダリオは気に入らないようだった。
ユラトに対し顔を横に向け、片手で葡萄酒を飲み、少し赤くなった顔でけちを付けてきた。
「……けっ!どうせもう一人の冒険者がかなりのやり手だったんだろ!」
「いえ……2人とも今回の仕事が初めてでした……」
それを聞いたレクスとジルメイダは「ほう」っとほぼ同時に呟いていた。
ダリオはそれを聞くと少しの間無言になり、その後小さな声で呟いた。
「……運が良かっただけだろ、お前もその仲間もな……調子に乗るんじゃねぇぞ!」
ユラトはダリオの言う通り、運も良かったと思っていた。
「ええ、ダリオさんの言う通り、運も良かったと思います。(色んな運があったのかもな……)」
そのやり取りを見ていたジルメイダは軽くため息をつき、やれやれと言った表情で話し出した。
「ダリオ、認めるところは認めてやりなよ。……ったく、あんたはいつもそんな調子だね……。まあ情報はこんなもんさ、あとはユラトからブラックアニスとの戦闘の話を酒の肴にして今日は終わりにしようかね!」
そうして、パーディーメンバー達はユラトの初仕事の話を聞いた後、明日に備えるため早々にベッドに潜り込んだ。
こうしてユラト達のパーティーの1日目は終わった。
どの家も建てられてから年月が、それなりに経っているらしく、家の周りに苔が生えていたり、つる草が絡み付いていた。
ユラトは自分が思っていたよりも大きな場所であったので驚いていた。
(結構広いんだな……もっと小さい場所を想像していたよ……あっ!あれは!)
ユラトはある場所に気づいた。
そこは、何頭ものユニコーンが木の塀で囲まれた場所に放し飼いされていた。
ユニコーン達は見事な白いたてがみを揺らしながら走っていたり、軽く角を突き合わせじゃれていたりしていた。
ユラトはその光景をしばらくぼんやり眺めていた。
(へぇ……人間もウッドエルフも、そして馬とユニコーンもすることはあまり変わらないんだな)
すると、ダリオが叫んできた。
「おい、ユラト!早くしろ、置いて行くぞ!」
「あ、すいません!すぐに行きます!」
ユラト達はウッドエルフ達が冒険者のために用意した宿屋へと向かった。
ユラト達は ウッドエルフ達が冒険者のために用意した宿屋兼冒険者ギルドへ着いていた。
建物自体は族長がいくつか持っていた倉庫を貸し出しているらしい。
レクスが入る前にそう説明していた。
二階建ての簡素な作りの建物だった。
一階は料理を楽しんだりする場所とギルドの情報を掲示する場所や聖石の受け渡しなどが出来る場所になっていた。
そして二階は冒険者達が宿泊できる部屋になっている。
その建物の一階で大きな丸い木製のテーブルを囲みユラト達は明日のことについて話し合っていた。
他のテーブルにも冒険者がユラト達と同じようにパーティーメンバーでテーブルを囲み料理を頼んだり、お酒を飲みながら明日の探索について色々話をしていた。
そして各テーブルには、ウッドエルフ達が作った料理や飲み物等が運ばれ、それを口一杯に頬張り、冒険者達は美味しそうに食べていた。
ウッドエルフの料理は香草がたくさん使われていたため、部屋の中は香草の良い香りと冒険者達の声で満たされていた。
また、飲み物の方は絞りたての赤葡萄果汁に香草や木の皮などで香り付けされたワインなどがあった。
フレーバード・ワインと言われるワインである。
どうやら葡萄もたくさん収穫できる場所があるようだ。
ユラトは葡萄果汁を美味しそうに飲みながら話を聞いていた。
程よい酸味とまろやかな甘味があり、僅かに何か爽やかな花の香りを加えられた葡萄果汁だった。
(美味しい……そして香りもいい……こういった物もすぐにウッドエルフの特産品として、オリディオール島にも流通するんだろうな……楽しみだな!)
そして、香草と一緒に蒸し焼きされた鶏もも肉を一かじりすると地図を広げ、ジルメイダが説明を始めた。
「……いいかい、みんな、明日は早朝から探索を開始するよ!今あたし達がいるのはここ、ウッドエルフの村だ。そして、ウッドランドはここ。ウッドランドから北東にあるのがこの村だ。さっきダリオがギルドから貰ってきた最新情報が書かれた紙によると、ウッドランドから西の方と北西方向で新発見があったらしい。西のは大規模な地下洞窟で北西の方は古代の聖堂が発見されたらしい」
それを聞いたリュシアがジルメイダに質問をした。
「あの、古代の聖堂って何の神が祀られていたんですか?」
その質問にダリオが答えた。
「残念だが、お前の望むファルバーン様じゃねぇみてえだ。恐らく『炎の神フレムド』じゃねぇかってことらしいぞ」
しばらく無言で足と腕を組んで座っていた、レクスが呟く。
「森の中に炎の聖堂があるのか……」
ギルドから貰った資料を見ていたジルメイダがメンバーに話し掛ける。
「なぜ、フレムドなのかは、聖堂で炎の神像があったのと新しい火の魔法が発見されたからみたいだね」
それを聞いたユラトは興味と好奇心から、すぐにジルメイダに質問していた。
「どんな魔法?」
「どうやら、支援魔法ってやつらしいね……名前は『ファイアーエンチャント』って書いてあるね」
ダリオが更に付け加えるように、その魔法について知っていることを説明していた。
「この魔法はどうやら、武器に炎を纏わせることができるらしいぞ。まあ、あとは実際に使ってみないとわからんな……」
ユラトは、それを聞いて嬉しく思った。
(この森での戦いなら、かなり使えそうだ……)
ジルメイダが紙を見ながら話していた。
「魔法訓練場に登録されることが決まってるらしい」
リュシアも少し嬉しそうだった。
「じゃあ、たくさんの魔法使いさん達が使う魔法になりそうですね。そうなると探索もしやすくなりそう!」
ダリオがやれやれといった表情で呟いた。
「まあ、近々行くことにするか……しかし、面倒なこった……新しいものが、きっとこれから一杯入ってくるだろうからな……この歳で対応していくのは一苦労だぜ……」
それを聞いたジルメイダはダリオの肩を叩き、檄を飛ばした。
「なに言ってんだい!あんたもまだまだいけるだろ、そんなこと言うにはまだ早いよ!」
ダリオは再びやれやれといった表情をしていた。
そして、ジルメイダがワインの香りを軽く嗅ぎ、一気に飲み干すと説明を再開する。
「……まあ、そこでだ、今のところ多くの冒険者達はさっき言った場所辺りと、この村から北の方に多くの者が行くみたいだ。昔の地図によれば、どうやらハイエルフの国はウッドエルフの村から北西方向にあったみたいだね。だからあたし達はそこは避けて冒険者の少ない東へ探索に行こうと思うんだ」
なぜ東に行くのか、ユラトはわからなかったのでジルメイダに聞いていた。
「なぜ東に?俺達も北か北東辺りでもいいんじゃない?」
「東はほとんど手付かずだからね。そうなると聖石を使ってもすぐにこの村に帰ってこれるだろ?ユラトとリュシアはまだ、冒険者としては半人前だ。だから、朝早くから夕方までは探索。それから、夜にはこの村に帰ってリュシアはダリオと魔法の修行、ユラトはあたしが鍛えるよ。そうやって一日でも早く戦力を揃えるためってことさ。それに、昔の地図はあてにはならないさ」
ラスケルクがあった地域は、昔の地図では海になっていた。
また、オリディオール島から東の地域には大陸があった。
だから、冒険者たちはハイエルフの国は必ず北西にあるとは思っていなかったが、とりあえず聖堂や洞窟など色々見つかっているのと「ひょっとしたら一致する場所もあるのかもしれない」という思いもあり、少しでも可能性の高いところへ向おうと言う事で向っているに過ぎなかった。
西側を大方調べ終わったら東側にも冒険者達は、すぐに来るだろう。
この村からの距離が遠くなり、場合によっては1日では帰れないことも当然想定される。
そうなると野営し、夜の森で過ごさなければならない事態になる。
初心者1人なら守る自信はあったが、2人となると少し厳しいだろうとジルメイダは判断したのであった。
そうなる前にジルメイダは、ユラトとリュシアの2人をある程度、連携の取れる人材にしておきたかった。
そして、実はジルメイダにはそれ以外にも理由があった。
それはこの仕事を受ける前にあることを占ってもらおうと有名な占いの館へ訪れていた。
そこはオリディオール島中央、ゾイル地域の南にある。
島で一番大きな森があり、そして、その森の中に湖があり、そこに館はあった。
そこで教えられたのは、「……新大陸の東の方に強い運命と魔力を感じる。そして、そこへたどり着くことで新たな道が開けるだろう」と言う事を言われたのであった。
ジルメイダはその後、エルフ発見の報を聞き、自分の探しているものがそこにあるのだと確信し、チャンスがあれば東へ行きたいと思っていた。
だが仕事で行く以上、東に行くことが無理な場合もある、そのときは諦めようと思っていた。
しかし、ユラトとリュシアの2人が来たことでこの2人を鍛えながらなら、東にへ行けるだろうと、彼女はそう考えたのであった。
そして、若手を鍛えることと両方が出来ることも満足していた。
(ひょっとしたら、このメンバーで集まることがそうなのかもしれないね……)
ユラトはシルドナの町でデュランと見た2体の遺体の事を思い出していた。
あのときの悔しい思いを忘れてはいなかった。
(どんな難局も乗り切れるような冒険者になりたい……学校で習ったことだけじゃ実際は対処し切れなかった……自分で自己完結できるぐらいには最低でもなっておかないとな……そうしないと俺の呪いなんて自分で解けることなんてできないはずだ!)
ユラトの心は決まった。
「……分かった。それでいいよ。ジルメイダ、よろしく!」
ユラトの返事を聞いたジルメイダはうれしそうだった。
(ふふっ、ちょっと顔つきが変わったね……いい表情だ。何かこの子なりにあったのかね……)
ジルメイダは満足げに答え、ダリオにも協力を求めた。
「まかしときな!ダリオも悪いけど、やってくれるかい?」
ジルメイダとは対照的にダリオは気だるそう答えた。
「……ちっ……しょうがねぇな……ガキんちょのお守りは好きじゃねぇんだがな。確かに戦力はあればあるほどいいからな……リュシア!きっちり鍛えてやるからな!」
それを聞いたリュシアは、驚きと恐怖の入り混じった声で答えた。
「―――は、はい!よろしくお願いします!」
リュシアは返事をしてから、少し考えていた。
(思わず返事しちゃったけど、ここで、鍛えてもらった方がいいよね……そうじゃないとファルバーン様にも会えないし、お母さんの頼みも果たせない……)
リュシアの母の頼みとは、母の姉、つまり叔母を探し出す事であった。
リュシアの母の姉のエリスは、ヴァベル家の中で一番、光の血を受け継いだ人だった。
ヴァベルを率いる者は最も光の恩恵を受けた者でなければならない決まりだった。
だから次期ヴァベル家の当主になるのはエリスのはずだった。
しかし、リュシアの母が丁度、結婚式を挙げる前日に冒険に出ていたエリスは帰ってこなかった。
リュシアの母、ソフィアと叔母のエリスは中が良く、妹の結婚を心から祝福してくれていた。
そして、もし女の子が産まれたら『リュシア』という名前を付けて欲しいとソフィアに言っていた。
これは、エリスとソフィアが子供が産まれたら、お互い子供の名前を付け合おうと約束していたからであった。
そして、ヴァベルの人脈を使い、色々手を尽くして探してみたが見つけることはできなかった。
冒険者として一流だったエリスは、魔物にやられるはずがないと人々は口々に言っていたし、ソフィアもそれを信じていた。
そして、ソフィアはその後、女の子をお腹に宿した。
突然いなくなった姉を思い、その約束を果たそうと、ソフィアは産まれてくる女の子にリュシアと名づけたのだった。
リュシアは、母からその話を聞いて育った。
聞いた話だと、意志の強い美しい女性だったようだ。
そして、母は叔母に会えないまま、病気で他界した。
リュシアは母を失った悲しみが落ち着いた時に、叔母を探し出す事も自分の目的にしようと決めていた。
母がずっと叔母に会いたがっていた事を伝えたい。
また、どうして居なくなったのか、その理由を知りたいと心から思っていた。
(お母さんの為にも、ここで頑張らなきゃ……がんばろ!)
リュシアは両手を握り締め、ここで冒険者として頑張ってみようと決意するのであった。
そして、彼らのやり取りを見ていたレクスはジルメイダに自分はどうすればいいのか聞いてきた。
「……俺はどうすればいいんだ?」
「レクスあんたも付き合ってくれるかい?」
「……そうだな、森から帰ってくる確率も増えるだろうからな……いいだろう」
「そうかい、ありがとよ!」
「ありがとう!レクスさん」
「フッ……気にするな、これもハイエルフを探す為だ」
そしてレクスがジルメイダに他には発見がなかったのか聞いてきた。
「他には新情報とやらはないのか?」
情報が書かれた紙に目を通しながら、ジルメイダは答える。
「そうだねぇ……あとは先行していた他のパーティーが見つけたこの森で出会ったモンスターの情報ってのもあるね……えっと、何々……マンドラゴラってやつにキラービー、それからジャイアントスパイダーそれにワイトってのが今のところ発見された魔物達ってところだね」
ジルメイダが説明した以外の情報には、新しい植物の発見が多く記載されていた。
森であるため、それなりの数の新しい植物が見つかっているようであった。
そして、今度は森以外の情報についてもジルメイダは見ることにした。
すると、何か見つけたジルメイダはにやりとし、ユラトに向かって話し掛けた。
「ユラト!あんたのことも載ってるよ!『ブラックアニス』ってハッグを見つけたらしいね!初めての仕事だったんだろ?初めてにしては上出来じゃないか!少し見直したよ!」
ジルメイダが見た紙には新発見のモンスターのところにブラックアニスと書かれていて発見者の名前の欄に、ユラト・ファルゼイン、デュラン・マーベリックと2人の名前が記載されていた。
それを聞いた、リュシアはユラトを尊敬の眼差しで見つめ、ユラトに話し掛けてきた。
「初めての仕事で新発見なんて、凄いです!ユラトさん!」
ユラトは少し照れくさくなり、無言で頭をかいた。
その様子を見ていたダリオは気に入らないようだった。
ユラトに対し顔を横に向け、片手で葡萄酒を飲み、少し赤くなった顔でけちを付けてきた。
「……けっ!どうせもう一人の冒険者がかなりのやり手だったんだろ!」
「いえ……2人とも今回の仕事が初めてでした……」
それを聞いたレクスとジルメイダは「ほう」っとほぼ同時に呟いていた。
ダリオはそれを聞くと少しの間無言になり、その後小さな声で呟いた。
「……運が良かっただけだろ、お前もその仲間もな……調子に乗るんじゃねぇぞ!」
ユラトはダリオの言う通り、運も良かったと思っていた。
「ええ、ダリオさんの言う通り、運も良かったと思います。(色んな運があったのかもな……)」
そのやり取りを見ていたジルメイダは軽くため息をつき、やれやれと言った表情で話し出した。
「ダリオ、認めるところは認めてやりなよ。……ったく、あんたはいつもそんな調子だね……。まあ情報はこんなもんさ、あとはユラトからブラックアニスとの戦闘の話を酒の肴にして今日は終わりにしようかね!」
そうして、パーディーメンバー達はユラトの初仕事の話を聞いた後、明日に備えるため早々にベッドに潜り込んだ。
こうしてユラト達のパーティーの1日目は終わった。
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アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
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以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
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