Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第七話 パーティー

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パーティー。

それは冒険者にとって、命を預けることもある仲間でもあり、手に入れた宝を分け合う、仕事の同僚でもある。

様々な理由や巡り合わせで組むこともあれば、適当であったり、自分の意志で組むこともある。

ユラトは、どんな人たちと組むことになるのだろうか?

そのパーティーメンバーと共に挑む、森の冒険で得るものは何か?

信頼か?

多くの富?

それとも目的のハイエルフの国の発見か?

まずは、パーティーメンバーが集まるところから始めよう……。


ガイン達が森の中へ入っていった後、ユラトは再びパーティーを集める為に番号を叫んでいた。

「17番の番号を持っている方いますかー!」

だが、誰も現れなかった。

(まだ、誰も来ないや……)

そして、しばらく頑張ってみるが、時間だけが過ぎて行く。

少し叫びつかれたユラトは、皮袋に入った水を飲みながら休んでいた。

(ふう……こりゃあ、気長に待つしかないのかな?)

すると森の入り口から、早朝から森に入った冒険者の一団が現れた。

先頭にいる男が嬉しそうな顔をしてウッドランドの町に入ってくる。

その男はここで番号を叫んでパーティーが集まるのを待っている人の中に知り合いがいたようで、その者に向かって叫んでいた。

「おい!新発見があったぞ!」

叫ぶのを中断し知り合いと思われる冒険者がその男の近くへ歩み寄った。

「ん、どんな発見だったんだ?」

男は顔を綻ばせ自慢げに話した。

「実はな、西の方で大きな地下洞窟を発見したぜ!」

その言葉を聞いたユラトや周辺の冒険者達は驚いた。

(地下洞窟!そんなものがあるのか……)

その男は話を続けた。

「規模もかなりのもんだ、だからギルドに報告して他のパーティーにも応援を頼もうかと思ってる。お前のところのパーティーなんてどうだ?」

「俺のところは後一人来れば揃うんだ、揃ったらメンバーに聞いてみる。だからそれまで応援要請はしないでくれ!」

男はしばし考え、それから話し出した。

「……そうだな、後一人ならすぐに集まりそうだな……よし、いいぞ、お前のところと組んでやろう」

「そうか!ありがたい」

そう言って肩を抱き合い親しげに話し合っていた。

ユラトはそのやり取りを見て少し羨ましく思った。

(俺も地下洞窟に行ってみたかったな…まあ、他にもあの森に入れば見つけることがあるかもしれないし、とにかく今はパーティーが集まるのを最優先で考えるか…)

冒険者は聖石を使い、黒い霧を払うと払った場所に確認の証であるホークスアイを埋めるまでは、その場所はその冒険者達が独占して良いことになっている。

しかし、その場所に非常に強い魔物や先ほどのように広大な洞窟など、その冒険者達だけでは手におえない場合に、応援を呼んだりすることがある。

多くの場合は冒険者ギルドで応援の要請をしたり、知り合いに頼んだりと、自由に募集することが出来る。

また緊急の場合には『マナフラッグ』と呼ばれる魔法を使うことがある。

この魔法は周囲の冒険者達に救助や支援を頼むときに使う魔法である。

この魔法を察知した冒険者はすぐにその場所へ向かうこととされている。

ユラトは休憩を済ませると再び番号を叫んでみる。

「17番の番号を持った方いますかー」

すると、後ろ側から声をかけられる。

「17番のパーティーの者だ」

ユラトは直ぐに後ろを振り返った。

すると、そこには紙を持った、ウッドエルフの男がいた。

ユラトはやっと来てくれたことが嬉しくて、声が裏返ってしまいながら話してしまう。

「ど、どうも!俺、ユラトって言います、よろしく!」

そのウッドエルフは特に表情を変えることなくユラトに名を告げてきた。

「私の名はレクス・ミルウッドだ。レクスと呼んでくれ」

その様子をみたユラトは落ち着きを取り戻し、挨拶をし直した。

「わかりました、レクスさんですね。俺は、ユラト・ファルゼインといいます、俺のこともユラトって呼んでください、よろしく!」

2人は軽く握手を交わした。

そしてレクスの事を聞こうかと思ったその時、ユラトの持っている紙に書かれた番号と同じ番号を叫んでいる者の声が聞こえた。

「あの~……17番の番号のかたー……いませんかー」

小さな消え入りそうな声だったが、ユラトの近くにいたためにすぐにユラトはその者の元へ駆け寄る。

「17番の番号を俺も持っています、こっちに来てください。他にも持っている方がいます」

小さい声で話ていた者はユラトより背の低い年下の女の子であった。

「あ、どうも……わかりました……」

そして、ウッドエルフのレクスのいるところへ女の子を連れてくる。

すると女の子は挨拶をしてくる。

「あの私はリュシア・ヴァベルって言います。だからリュシアって呼んでください」

「分かったよ、リュシア。俺はユラトって言うんだ、よろしく!」

「私はレクスだ」

「えっと……ユラトさんにレクスさんですね、わかりました。よろしくお願いします」

そういうと律儀にお辞儀をしてきた。

それを見たユラトはもう少し力を抜くように助言することにした。

「まあ、これから冒険をする仲間だし、そんなに固くならなくていいよ」

それを聞いたリュシアはわかりましたと短く答えた。

そのあと無言で他のパーティーメンバーを待つことになったが、いっこうに後の2人は来る様子が無かった。

(来ないなぁ…確か、ミランさんから聞いた話だと俺のパーティーは5人だったから、あと2人だな…)

そしてユラトは空を見上げた。

ピィィィ―――

黄色と濃い緑色をした大きめの鳥がウッドランド上空を円を描くように旋回していた。

薄い雲が少しあるだけで天候は探索に最適であった。

他のパーティーは既にメンバーが揃い森へ入って行った。

あとはユラトのパーティーだけであったため、その場に留まり待つことにした。

暇であったのでユラトはぼんやりと2人を眺めていた。

レクスと名乗ったウッドエルフは肩ぐらいまである髪にオールバックの髪型で右の長い耳に小さなピアスをいくつも付けていた。

そして、皮鎧にフォレストグリーンの腰までしかないマントを装備していた。

また背は、ユラトより高いが体格はユラト少し細く、背中には柄の部分がぼんやり光る直槍があった。

先ほどから何度かユラトは話し掛けてみたが簡潔に答えるばかりであまり話すことは好きではないようだ。

答えたのは光る槍の部分のことで、どうやらユグドの木で出来た柄らしい。

外壁のために集められた石の所で目を閉じ腕を組みながら背中から持たれかかっていた。

そしてリュシアと名乗った女の子は歳はユラトよりも若く、背はユラトより低く、ショートボブの髪型でふわっとした厚みのある生地のローブを着ていて細かい刺繍がたくさん施されていた。

そして手には武器と祈りに使うための光の神をかたどった彫刻を施されたメイスを持っていた。

装備品は高価そうであった。

話を聞くと、クラスは『クレリック』であると言っていた。

クレリックは光の神の加護を受け主神とし、教会で光の神の教えを説き、人々を光の道へ導く役割の者を言う。

また光の魔法の扱いにも長け、怪我や毒の治療等を行うことが出来る。

くりっとした目で愛らしい容姿をしていたため冒険者には見えなかった。

ユラトは少し不安になった。

(この子ほんとに冒険者なのか?んー……まあ俺も人のこと言えたもんじゃないけど、大丈夫なんだろうか……)

そして、そろそろ日が傾こうかと言うときに ようやく2人の冒険者が同時に現れた。

「どうやら俺達が最後みたいだな」

「そうらしいね、遅れて悪かったね、アンタ達」

そう言うと2人はユラト達のいる場所まで近づいてきた。

一人は中年の女戦士でもう一人も中年で魔法使いであった。

女戦士の方は蘇芳色(すおういろ 黒味を帯びた赤色)の鎧を着ていて赤褐色の肌に腰まである真っ白な長い髪を後ろで束ねていていた。

戦士というだけあってユラトよりも背や体格はよく、若かりし頃は美しかったであろう面影を残した、分厚い情熱的な唇を持った女だった。

男の方は背丈はユラトと同じぐらいで、つばの広い青緑の帽子をやや斜めにかぶっていた。

痩せ型、目が少し釣り目で魔法使い達が良く着ているローブを着ていて、手には青い石がはめ込まれたロッドを持っていた。

レクスが遅れてきた2人に冷たく言い放った。

「随分遅れているな、人間は約束も守れないのか?」

それを聞いた女戦士は軽い笑い声を上げ謝ってきた。

「はははっ、そうだね、悪かったよ。だけど、ちょっと緊急の野暮用ができちまってね」

ユラトは気になったので聞いてみることにした。

「野暮用?」

その時、魔法使いらしき男が、話に割り込んできた。

「おい、まずはここを離れようぜ、日が暮れちまう。説明は歩きながらでもできるだろ」

「そうだね、ああ、そういやまだ名前を名乗ってなかったね、あたしの名はジルメイダ、ジルメイダ・バルドさ」

男の方も名乗った。

「俺の名前はダリオだ。ダリオ・ジレスト」

ユラト達も2人に名を告げた。

そして、これから仕事に向かうと夜になってしまうため、ユラト達はウッドエルフの村へ行きそこで一晩過ごしてから早朝に森の探索をすることになった。

全員がウッドランドの町を出て村に向かって歩き出した。

そしてジルメイダが、先ほどの話の続きをし始めた。

「あたしらがラスケルクの港に着いたときに『シーサーペント』って魔物が現れたのさ」

「海の魔物か……」

シーサーペントは海に生息する魔物である。

大きさは様々で小さい物だと蛇ぐらいのものもいるが大きなものだと、船と同じぐらいの大きさになる場合もある。

姿はいくつか種類があるようで、大きな口にたくさんの鋭い牙があり、固い鱗に覆われたウツボのような姿のものや蛇のような姿である場合もある魔物だ。

彼女は話を続けた。

「それで、あたしとダリオ、それから急遽、ラスケルクにいる冒険者達でそいつらと戦う事になったのさ」

そしてダリオが話に入ってきた。

「しかも小さいのから大きいのまで大量に現れやがってよ、ラスケルクの港で大暴れ…大変だったぜ、全くこっちはこれから仕事だってのによ……」

「そんなことがあったんですか……」

「まあ、それでなんとかシーサーペントどもはなんとか倒したんだけどねぇ……だけど死者や怪我人もそれなりに出たみたいだよ」

「大きいシーサーペントは、あの『ラグレス』の野郎が倒しやがったがな……あいつは化物だな……」

話を聞いていたリュシアが疑問を口にする。

「ラグレスって誰ですか?」

それを聞いたダリオは驚き、リュシアに厳しい言葉を浴びせた。

「お前……知らねーのかよ!……冒険者だったら知っとけ」

消え入りそうな声でリュシアは謝った。

「す、すいません……あんまりそういうの興味なくて……」

ユラトは聞いたことがあった。

「確か、名前はラグレス・オリュム……東側の出身でギルドも東の冒険者ギルドに所属していると聞いたけど、こっちに来てるのか……オリディオール最強と言われる戦士……」

オリディオール島最強と言われる『剣士』はユラトがアートスの町で見た、ゼグレム・ガルベルグ。

そして、『戦士』はラグレス・オリュムと言われていた。

ゼグレムは西のラーケル地域出身の英雄でラーケルの者達にとっては誇りでもあった。

それと同じように東側のマルティウス地域出身であるラグレスも当然、東側の誇るべき英雄であった。

ゼグレムは高い技術をもった技と魔法で戦い、ラグレスは強靭な肉体とそこから発せられる力を武器に戦う。

この2人が戦ったら、どっちが強いのかは誰にも分からない。

この議論を開始するとオリディオールの島民達はゼグレム派とラグレス派に分かれて終わりの無い議論を展開させてしまうため、普通の者は、この話題には触れることはあまりしない。

この世界の剣士と言われるクラスは剣術と魔法を扱うことが出来る者を言う。

そして更に魔術や剣術のレベルを高めた者を魔法剣士と言ったり魔法戦士と呼んだりする。

主に魔法よりの者を魔法剣士と言い、肉弾戦よりの者を魔法戦士と呼ぶ。

また、これらの総称で剣士と呼ばれることもあるようだ。

そして戦士は、魔法を使わない純粋な近接戦闘クラスのことを言う。

魔法が使えないので、マナサーチが使用できないため、戦士は基本パーティーを組んで冒険をすることが多い。

ジルメイダは気になったことがあったようで、そのことをリュシアに聞いてきた。

「そういや、リュシア。あんたヴァベルって名前、もしかしてあのヴァベルの一族の者かい?」

リュシアは少し間をおいて答えた。

「……はい、そうです」

それを聞いたダリオは少し驚いていた。

「ほぅ、お前……あのヴァベルの者か」

ユラトはその名前をどこかで聞いた事があった。

「さっきは気が付かなかったけど、そうか……ヴァベル家……確か、一族ゆかりの塔を探しているのだったかな?」

リュシアはそれにすぐに答えてきた。

「はい、正確には『ヴァベルの塔』と言われるものです」

ジルメイダがリュシアに質問をしていた。

「その塔に何があるんだい、凄いお宝でもあるのかい?」

「そこに光の神『ファルバーン』が封印されていると聞きました」

それを聞いたレクスは呟いていた。

「光の神はまだ目覚めていないのか……」

その呟きを聞いたダリオが、今現在の神の状況についての説明をしていた。

「光の神どころか、まだお前等ウッドエルフには知らない者が多いのかもしれんが、この世界の神は俺達人間が確認している限りでは、大地の神イディスと娘の森の女神ミエリ、そして一部の光と闇にも属していない、僅かな神々しか目覚めていないんだよ」

ジルメイダがその説明に更に付け加える。

「だから、今のところ我々人間が神の加護を受けられるのは地母神イディス様と僅かな神々だけってことさ」

オリディオールの人々は、イディスのことを女性の神であり、この大地を産んだと言われているため、地母神と言ったり、大地神と呼んだりしていた。

神が目覚める、或いは封印が解かれることによって、この世界の神の影響力が増すのである。

神の影響力とはイディスの場合であれば大地の神であるために大地から栄養やマナを吸収できるため、草木は黒い霧の中でも一年中枯れることは無い。

また人間達も魔法を使用するときに加護を受けることができる。

加護とは魔法を発動した時に加護を受けると魔力の消費を抑えることが出来たり、威力が増したりすることが出来るのである。

だから、今のところ一番強い魔法は大地系統の魔法が強いことになっていた。

他の属性の魔法は使用することは出来るのだが、まだ本来の威力を取り戻してはいないのが現状のようだ。

また、本来ある威力並みに魔法を使うには、それなりの魔力の消費が必要だった。

リュシアは話を続けた。

「それで私達一族は代々、光の神ファルバーンを信仰してるんです。そして、なぜかファルバーン様が復活していないにもかかわらず、僅かですけど光の加護を得ることができるんです……だから絶対にこの世界のどこかにヴァベルの塔があると思っています。それで……私達一族は一定の年齢に達すると塔を探し出す旅にでなければならないんです……ほんとはこういう事好きじゃないんですけど……仕方なくって感じで……あ、でも全くないって訳でも……」

それを聞いたダリオは呆れた様だった。

「仕方なくって……お前なぁ……見たところ冒険もあんまりしてなさそうだが……どうなんだ?」

リュシアはローブの端を握りながら、すまなさそうに答えた。

「あの……実は……今回が初めてなんです……すいません」

それを聞いたジルメイダがやや諦めたように言った。

「まあ、最初見たときからそうなんじゃないかって思ってたさ。あとユラトも初めてかい?」

ユラトはそれに答えた。

「いや、俺は初めてじゃないですけど、まだこれを入れて2回目です……」

それを聞いたダリオは頭を抱えた。

「くそっ、ギルドめ!2人も初心者を押し付けやがって!」

ジルメイダもこれには参っているようだった。

「初心者は1人だと思ってたんだけどねぇ……これじゃ今回はあんまり儲けられそうに無いねぇ……」

リュシアはそれを聞き、ローブの端をきつく握ると、少し強い口調でジルメイダとダリオに向って話し掛けていた。

「け、けど、やる気はあります!足を引張らないようにしますから!」

ユラトも同じように決意を込めて言っていた。

「俺も頑張ります!」

2人の発言を聞いたダリオは、ため息をついた。

「はぁ……全く……ガキのおもりかよ……ジルメイダ……こりゃあ、やめたほうがいいんじゃねーか?」

(似ている……か……それにこれはもしかしたら……あいつの……)

ジルメイダは少し考えると真剣な表情になり、ユラトとリュシアに話し掛けてくる。

「あんた達の気持ちはわかったよ、だけど、こればかりは、まあ2人ともわかっているんだろうけど、お金だけじゃなくて命もかかってるんだからね!アタシとダリオの指示にはちゃんとしたがってもらうよ、いいね?」

ジルメイダは、ユラトとリュシアの目を交互にしばらく見つめていた。

そして2人は、「はい」と力強く答えた。

そして、ジルメイダは話を続けた。

「それはそうとアタシのことはそんな畏まった話し方しなくていいさ、もっと砕けた話し方でいいよ」

2人はそれに答えた。

「わかったよ……ジルメイダ、よろしく!」

「うん!よろしく!」

それを聞いたダリオが面倒くさそうに話した。

「俺様のことはちゃんと敬意を持って話し掛けろよ」

「はい、わかりました。ダリオさん」

「よろしくお願いします」

そのやり取りを見ていたレクスが呟いていた。

「人間は色々と大変なんだな……」

その呟きを聞いたジルメイダが、にやりと顔に笑みを浮かべ、レクスに話かけていた。

「レクス、あんたはなかなか使えそうだね、期待してるよ!」

レクスは余裕そうに答えた。

「フッ……森は我々ウッドエルフの世界だ、人間なんぞに遅れはとらんよ」

それを聞いたジルメイダは満足したのか、軽い笑い声をあげ、ダリオにも決めるように言った。

「ははっ、いい返事だ!ダリオ、あんたも決めな。アタシの気持ちは決まったよ、このパーティーで頑張るよ!バルガの名にかけて!」

ダリオは少し考えた。

(このウッドエルフはいい動きしそうだな、なら3人いればなんとかなるか……そうなら……)

ダリオは諦めたように話す。

どうやらジルメイダには弱いようだった。

「チッ、わかったよ……ジルメイダがそういうならやってやるよ……」

バルガと言う名称を聞いたユラトは思うことがあったのでジルメイダにそのことを聞いてみる。

「ジルメイダってひょっとしてあのバルガ族?」

ジルメイダは、当然のようにその質問に答えた。

「そうさ、この肌の色に真っ白の髪といえばバルガ族しかいないさ」

「そうだったんだ……」

バルガ族とはオリディオール島中央ゾイル地域北部の山間部にいる少数民族である。

古代の壁画に描かれた狂神の姿がバルガ族の特徴に似ていた為、狂神の生まれ変わりとも言われている。

赤褐色の肌、真っ白い髪。

そして強靭な肉体を持っている。

そのため、聖石の元になるタイガーズアイの鉱山で働く者も多い。

「よし!それじゃ大体の自己紹介も済んだし、ウッドエルフの村へ急ぐとしようか!」

ユラトのパーティーはウッドエルフの村へ向かうため、森の奥へ更に進んだ。

辺りは降り積もった落ち葉の香りが漂っていた。

また所々にくるぶしぐらいまでの高さの草も生えていた。

森の中は静かでユラト達が踏みしめる落ち葉の音と、たまに吹く緩やかな風のせいで揺れる木の葉の擦れる音、その二つがこの辺りの音と言われるものであった。

ユラト達は無言でしばらく歩いていた。

そして、いつの間にか日が沈み夜のとばりが下りた頃、今までとは少し違う雰囲気の場所が見え始めた。

リュシアがその光景を最初に発見し、皆に聞いていた。

「……なんですか……あれ……木が光ってる?」

リュシアが言うように、ユラト達の目の前にはぼんやりと黄緑色に光る木が生えていた。

それも、辺り一面に。

レクスがそれに答えた。

「これは、聖なる木『ユグドの木』だ。光っているのは聖なる力の証だ。この光が黒い霧から我々の村を守ってくれている」

レクスの言葉にユラトが少し目を見張り呟いた。

「これがユグドの木なのか……暖かい光だ……」

この辺りのユグドの木はまだ若いようで背丈はユラトとほとんど変わらないくらいの大きさだった。

しかし、更に奥に進んでいくと徐々に大きなユグドの木が見えてきた。

しかも木の周りに何かが飛んでいた。

黄色い光を放っていて、小さな羽虫のようにも見える。

それを見たダリオがレクスに聞いていた。

「おい、ありゃあ……ひょっとしてフェアリー(妖精)か?」

レクスが表情を変えることなく答えた。

「そうだ、光の妖精の一つ『スプライト』と言われるフェアリーだ」

スプライトは光の妖精の一つである。

羽虫のような姿で能力も特になく、害を与えることも無い、聖なる場所を好みユグドの木や神聖な泉などに生息する光の妖精種である。

そしてレクスが先のほうを指差し、誇らしげにパーティーメンバーに話し掛けた。

「……あそこが俺達ウッドエルフの村、『ウディル村』だ」

ユラト達はウッドエルフの村『ウディル村』へとたどり着いていた。

村の中は夜であるにもかかわらず、黄緑色に光る苔とスプライト達がいるおかげで幻想的な光に包まれ、昼間ほどではないが明るかった。

そして村の周りにはびっしりと苔の生えたユグドの木があり、その内側にはユグドの木と同じように村を囲むように川が流れていた。

また、その川は村の中央にある湖へと繋がっていた。

川の周辺には白い小さな花が固まって咲いている。

村の中はそれなりの広さがあるようだ。

見えるだけでも、家が数十件以上はある。

また、村の中央の湖のほとりに苔の生えた特別大きなユグドの木が2本生えていた。

そして、その木を覆うように『ディスキース』と呼ばれるツル性の植物がその木にたくさん張り付いていた。

成長することで葉が大きくなり、やがてそこに空洞ができ、そこからも根が張り出し、そこに水や養分を溜め込む貯水嚢(ちょすいのう)と呼ばれる部分が出来る。

この部分の水を飲むと魔力が回復し易くなる成分が含まれていると言われている。

ディスキースは、発光する小さな淡い水色の花を咲かせ、その花から出る強い光と甘い香りに誘われたスプライト達がたくさん集まっていた。

そして大きな2本のユグドの木の間に家があり、レクスの説明によると、そこには族長が住んでいるということだ。

湖の水深はあまり深くはないようだ。

ウッドエルフの子供達が湖に入って立っていても腰から肩の辺りまでしかない。

無邪気に笑い声を上げながら遊んでいた。

子供達が湖に波紋を作るたびに湖に咲いている人の手のひらを広げたような形の水草の花が揺れていた。

夕飯が近いのか、大人のウッドエルフが子供のウッドエルフを迎に来ているのが見えた。

そして辺りには畑もあり、オリディオール島には無い作物がいくつか実っていた。
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