Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第八話 森の冒険

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翌朝、ユラト達はまだ太陽が昇っていない時間に起床し、ウッドエルフの村を出て東に向かい、黒い霧が目の前にあるところまで来ていた。

その場所はウディル村から目と鼻の先であったため、まだ朝日は昇っていなかった。

ユラトはこんなにも黒い霧の近くにきたことは無かったので、心の中は好奇心からくる興奮があったが、現実と言う面では緊張と不安が存在していた。

(これが……昔からずっと遠くに見えていた、黒い謎の霧か……)

この黒い霧のせいで、世界は暗黒世界と言われることになった。

霧はゆらゆらと静かに揺れている。

ユグドの木のお陰で、こちら側には来ていない為、この辺りの空間は綺麗に色分けされていた。

こちら側に霧が風によって運ばれてきても、砂浜で寄せてはまた打ち返す波のように元の場所に戻るのであった。

霧の色は禍々しい真っ黒な色をしていた。

この霧の先が全く見えないのだ。

太陽の光も差し込まないと言う。

ユラトは触ってみたり、匂いがあるのか、嗅いでみたりしたが特に無かった。

(んー、特に変わったところはないな……不思議だ)

それを見たジルメイダがユラトにやや呆れ気味に話し掛けていた。

「なーにやってんだい!嗅いでも意味なんて無いよ。影響が出てくるのは長時間この霧の中にいるときさ。だからあんたも、この霧の中には入らないことだね……昔、仲間が一人、この霧の中に入っていって気が変になっちまったよ……」

「……え、そうなんだ……ごめん、こんなに近くにきたのは初めてだったから……」

ダリオもその時に居たようで暗い表情で話してきた。

「もう、随分前のことだ、あんまり、思い出させるんじゃねぇ……」

「ダリオ、よしな!ユラトは悪くないさ……」

二人の表情から察したユラトはそれ以上何も言えなかった。

(きっと……なんか色々あったんだろうな……)

パーティーに少し重い空気が漂った。

それを察知したレクスが気持ちを切り替えようとメンバー全員に聞こえるように言った。

「まだ1日が始まったところだ。今は、ハイエルフの国を探す事に集中するべきだ、違うか?」

ジルメイダもそれにすぐ同意した。

「レクスの言う通りだ!みんな始めるよ!」

それを聞いたパーティーメンバーは気持ちを切り替え、探索を開始した。

まずは、聖石を埋めるため、ユラトは黒い霧のすぐ近くで跪き、辺りに落ちていた木の枝で地面に浅く穴を掘った。

そしてジルメイダが、リュシアに聖石を埋めるように言ってきたのでリュシアは眠い目を擦りながら、ユラトが浅く掘った地面の穴に片手で、ぽいっと投げ入れた。

軽く土をかけ、聖石を埋める。

そして、ユラトは埋められた場所に右の手のひらを地面につけ、目を瞑り、黒い霧を払うために聖石の力を発動させる言葉を呟くように発した。

「大地の神イディスよ……我ら光の民に力と加護を……そして邪悪なる闇の霧を払い給え……」

フワッっと僅かな風が発生し、ユラトの頬を伝った。

そして彼らの周りにあった空気が聖石の方へ、一瞬吸い込まれるような感覚があった。

すると今度は、聖石を埋めた場所が、わずかに一瞬光りを放つと同時に一塵の風が吹いた。

フワワァァ――――

パーティーメンバーの髪や着ているマントが揺れる。

すると、先ほどまでユラト達の目の前に存在していた黒い霧が凄い勢いと速さで森の奥の方へ押されていった。

そして辺りは、霧が払われていく中で出た風によって揺れた木の葉の擦れる音と、流れた風の音がしていた。

霧が払われていくと同時に、早朝の僅かな光が入り込み、森の景色がユラトの目の前に姿を現した。

ユラトは、初めて見た聖石の力に驚いた。

(―――これが聖石の力か。この力を見るとイディスは、やっぱり復活していて存在しているんだなって感じるな……)

ジルメイダは満足そうにダリオに話し掛けていた。

「まあ森の中だから、どこまで払われてるのか、奥まで行って見ないとわからないんだろうけど、そこそこの範囲の霧を払うことが出来てそうだね、ダリオ!マナサーチ頼むよ!」

「ああ、任せておけ!」

ダリオはすぐにマナサーチの魔法を唱えるため、ロッドを左手で地面に軽く刺したまま直立する。

そして今度は軽く握った右手の拳を顔の前までもっていくと目を瞑り、人差し指だけをぴんと立て魔法の詠唱を開始した。

「我が体内に宿るマナよ、四散し、魔力を感知せよ……マナサーチ!」

すると、ロッドにはめ込まれた青い石から光の矢が四方へ放たれた。

しばらく目を閉じたまま無言でダリオは、この辺りの情報を探っていた。

リュシアもようやく眠気から開放されたようで真剣な表情でダリオの言葉を待っていた。

すると結果が分かったのか、ダリオが感知した情報をメンバーに告げた。

「……まずは、大きな魔力を持った魔物はいねぇみえてぇだな……あとは魔力を帯びたアイテムなんかも感じなかったな……だが、金属の反応はあったぜ、ここを真っ直ぐ行った所とさらに奥の場所の2箇所だな」

ジルメイダはそれを聞き、少し安心したようにダリオに話しかけた。

「……そうかい、とりあえず、やばい魔物がいないのならありがたいね。この面子でいきなりは勘弁して欲しかったからね。あとはお宝だ、良い物だといいけどねぇ」

「とにかく、行ってみようぜ」

ユラト達は、すぐに一つ目の場所へと向うことにした。

日が昇り始めたらしく、森の木々の間から朝日が差し込んできていた。

また、鳥達の鳴き声も活発に響いていた。

そして所々、足首あたりまで生えた草や降り積もった落ち葉を踏みしめながら目的の場所へ向かって行った。

その場所へは、すぐにたどり着くことが出来た。

「この辺りだな……俺が感じたのは……」

辺りの景色は、特に今までの森の景色と変わらないため、どこにダリオの言う金属の物があるのかは分からなかった。

「ダリオ、マナサーチ、もう一度頼むよ」

「……ああ、わかった」

そういうと再びマナサーチをダリオは唱えた。

そして、ある場所を指差した。

そこは落ち葉が少し不自然な形で盛り上っている場所だった。

ユラトがその場所に一番近かったため、ジルメイダはユラトに頼んだ。

「ユラト、そこを調べておくれ!」

「わかった!」

ユラトは、枯れ葉を落ちていた木の枝を使って、少しずつ丁寧に払いのけていった。

すると、出てきたのは錆びて朽ち果てたショートソードであった。

ユラトは、その剣を拾い上げ、皆に見せた。

「どうやらこれみたいだね……」

ダリオが残念そうに言った。

「なんだよ外れかよ……」

ジルメイダは気にすることなく、次の場所へ行こうとパーティーに促した。

「ま、こういう事は良くあることさ、次の場所に期待しようじゃないか。行くよ!」

そして、ユラト達はすぐにこの場所を離れ、ダリオが感じたもう一つの場所へと向った。

しかし、その場所にあったのは銀製の食器が二つあるだけだった。

その後の探索もこれといった変化は無く、魔物に遭うわけでもなく、何日かそういった日々が続いていた。

その間にユラトとリュシアは鍛えてもらい、パーティーにも連携が生まれようとしていたが、ダリオの尊大な態度は相変わらずだった。

そして、一週間ほど経った頃、変化は訪れ始めた。

その日は、一つ目の聖石を使い、マナサーチで二つ反応があったので一つ目を調べた。

そこは、枯れ葉がたくさん落ちていて、そこに朽ちた小さな木の箱があった。

そして、期待に胸を膨らませ、箱を調べる。

だが、入っていたのは、銀貨が3枚だけだった。

ダリオはイライラしているようだった。

「ケチな森だなあ、おい!」

ユラトも特に何も無い事に、少し焦っていた。

(これじゃ、いくらただで聖石が手に入るって言っても、厳しいんじゃないだろうか?)

ここ数日、お金になる物は特に見つかっていなかった。

しかしジルメイダは、なれているようだった。

「こういった日が何日も続くことってのは、よくあるんだよ。まあ気長にやったほうがいいのさ、さあ、次に行こうじゃないか!」

そして二つ目の場所へ移動していた。

今度も先ほどと似たような場所であったため、マナサーチを唱えようとした時、リュシアが何かを見つけたようでメンバーに叫んだ。

「あっ!あれじゃないですか?あれ!」

リュシアが指を指した場所は木の根元に拳が2つぐらい入るほどの穴が空いていて、そこに何枚かの金貨が入っていた。

ユラトは感心し、リュシアを誉めた。

「古代の金貨だね、リュシアよく見つけたね」

リュシアは金貨を拾い、それを見つめながら、故郷での出来事を思い出しているようだった。

目を少し細め、嬉しそうにユラトに話し掛けていた。

「昔、よく森の中で木の実を拾っていたんです。それでこういうの得意みたいで、他の誰よりもたくさん木の実を拾う事ができたんです、あたし……」

ダリオが安堵した表情で2人の会話に入ってきた。

「やっとまともな報酬が手に入ったか……ま、俺様のサーチの精度のおかげが、でかいんだけどな!」

ダリオの度重なる偉そうな態度に、うんざりしていたユラトは無表情でそれに答えた。

「……ええ、そうですね」

ダリオはそれが気に食わなかったようだった。

文句を言いながらユラトに近づいて来る。

「てめぇ……明らかに俺様のおかげだろうが……このやろう……」

そういってユラトのこめかみの辺りを拳でぐりぐりと押し付けてきた。

「痛い!痛いですってダリオさん!やめてくださいよ!」

「うるせぇ!このやろう!すいませんでした、ダリオさんのおかげですって言え!このやろう!」

ユラトは痛さのあまり、ダリオの命令にすぐに従った。

「……わ、わかりましたよ!い、痛い!す、すいませんでした、ダ、ダリオさんのおかげです!」

ダリオは、まだ納得いかないところがあったのか、少し口を動かし、もごもごさせると再び、先ほどの行動を繰り返し始めた。

「……まだ、心が篭ってねぇな……ダメだな!」

「そ、そんな!痛い!」

リュシアは2人を見て慌てていた。

「あ、あの……どうしよ、あの……」

それを見ていたレクスは二人を気にすることなく、ジルメイダに話し掛けていた。

「次の探索しなくていいのか?」

ジルメイダは呆れ顔で二人に言い放った。

「……全く、いい歳して二人とも何やってんだい!次の探索に行くよ!」

「ちっ、てめぇのせいでジルメイダに怒られただろうが!」

ダリオはすぐに立ち上がり、ジルメイダの後へ付いていった。

ユラトは理不尽さに、怒りを覚えた。

「なんなんですか!……ちゃんと謝ったじゃないですか……」

リュシアは呆然とし、座っているユラトの腕を引張った。

「置いて行かれちゃいますよ、さあ、行きましょうユラトさん!」

リュシアに引張られ、渋々付いて行くユラトだった。

(このパーティーでやっていけるのだろうか……)

ユラトはこのまま、やっていけるのか不安になっていた。

そして、ユラト達は本日2個目の聖石を使う為に黒い霧の見える場所へ再び向かっていた。



ユラト達は黒い霧のある場所まで移動していた。

森の中は先ほどから景色は相変わらずで、延々と木々が生えている場所を歩いていた。

ダリオの話によると、どうやらマナサーチでは植物など、魔力を殆ど感知できない物は目視で確認するしかないと言う事であった。

パーティーメンバー達は、新しい植物等の発見が無いか、周りを見ながら進んでいた。

しかし、植物や虫のようなものを発見したとしても、価値のあるものでなければ報奨金は出ないことになっている。

また、森の植物はレクスが詳しいため、メンバーは見たことが無い植物を見るたびに彼に聞いていたが、今のところ目新しい発見はなかった。

そして、周りをキョロキョロ見回しながらリュシアがジルメイダにさっき見つけた金貨の事を聞いていた。

「ジルメイダ、なんであんなところに金貨なんてあったのかな?」

「……ん、あんた学校とか親から聞いたことないのかい?」

「えっと、妖精がどうとかは聞いたかも……」

ジルメイダは困った表情をしていた。

「はぁ……しょうがないねこの子は……ユラト、あんたは大丈夫かい?」

ユラトは、知っているようだった。

「知ってるよ、『ボーグル』達でしょ?」

「ああ、そうだ。悪いがあたしは警戒しながら歩きたいからね、ユラト、あんたがあたしの代わりにリュシアに説明してやりな」

「わかった」

ユラトはリュシアにボーグルについて説明した。

『ボーグル』とは、主に黒い霧の中にいると言われている悪戯好きの闇の妖精の総称である。

大きさは人より小さい。

人の拳ぐらいの大きさのものから、幼児ぐらいまで大きさのものがいる。

今現在、冒険者が発見しているだけでもブーカと呼ばれる全身を黒毛に覆われた小さいものから、ゴブリンやホブゴブリンと言ったものまでもがボーグルに入る。

光る物や魔力を帯びたアイテム等に目が無い彼らは、そういった物を見つけると、自分のお気に入りの場所に隠しておく習性がある。

そして彼らは知能はあまり高くないため、隠す場所は単純で宝が無くなってもまた同じ事を繰り返すだけであった。

また、ユラトが前に戦ったブラックアニス等のハッグと言われる闇の精霊の老婆たちは、知能の高さは人間並みであるため、洞窟の奥深くや迷宮の中など、発見され難い場所に隠すことが多いと言われている。

そしてボーグルやハッグ達が集めた宝は冒険者達にとっては貴重な収入源になっていた。

ユラトが説明し終わったすぐ後、再びユラト達の前に黒い霧が現れた。

ジルメイダがユラトに聖石を埋めるように促した。

「ユラト、そこの木の辺りに聖石を埋めてくれるかい」

「うん、わかった!」

ユラトが聖石を埋めようとその場所に近づいた瞬間、黒い霧から何かが現れた。

それは羽音をたてた、黄色と黒の2色の色で構成された生物であった。

大きさは鶏の卵ほどの大きさだった。

それを見たレクスがユラトに警戒を呼びかけた。

「ユラト!下がれ!そいつはキラービー(殺人蜂)だ!」

ユラトはそれを聞くや否や敵を見ることなく、すぐにパーティーのいる場所へ向かった。

(うわぁ!いきなり現れるなんて!とにかくみんなのところへ行こう!)

黒い霧から次々キラービー達が現れた。

それを見たジルメイダは呟いた。

「蜂どもか……剣じゃ少々倒し難いね。しかも、結構な数いるじゃないか」

ジルメイダは本来は大剣類を扱うのが得意であったが、森の戦いであるため、木や枝が邪魔になると思い、今回は短めで、かつ、幅広の剣であるブロードソードを持ってきていた。

ダリオの魔法に頼もうとジルメイダが話し掛けた瞬間、蜂の一匹がリュシアを襲ってきた。

「……きゃあ!」

近くにいたレクスが素早い動きで槍を蜂めがけて投げた。

(蜂たちよ……すまぬ……)

シュッ―――

槍は見事に蜂に当たり木に蜂ごと突き刺さった。

そして、すぐに槍を引き抜くとメンバーに語りかけた。

「この蜂達は黒い霧のせいでおかしくなっているだけで、本来は人に危害は加えない奴らなんだ……だから……聖石で霧を払って、そのまま放っておけば、また邪気が抜けて普通の蜂に戻ってくれるはずだ。だから、ここは下がって他の場所で石を埋めて欲しい……恐らくこの霧の向こう側に蜂の巣があるはずだ。近づいたのは俺達の方だ……」

ウッドエルフ達は森の木々だけでなく、そこに住んでいる生き物も大切にしていた。

だから彼らは、狩りをするときは必要最小限に留めていた。

この蜂たちもまた、この森に住む権利を持った生き物であると思っていた。

ダリオがそれに答えた。

「……それは別にいいんだがよ、周りを囲まれてるぜ?」

蜂たちは一瞬のうちにユラト達を包囲していた。

ジルメイダが叫ぶ。

「躊躇している暇は無いよ!ダリオ魔法でやっておくれ!」

「ああ、わかった。少しの間だけ来ないようにしてくれ!」

その時、キラービーが2匹固まって襲ってきた。

ジルメイダはそれを察知すると、ブロードソードの幅広の部分を使い、切るのではなく蜂を2匹とも叩き落した。

ブンッ―――

蜂はバチバチッっと音を立て潰れ、地面に落ちた。

そして、ジルメイダはレクスに叫んだ。

「レクス、諦めな!こうなったらやるしかないよ。みんな、やるよ!」

ユラトとリュシアもジルメイダに同意し、ダリオを囲んで円陣を組み武器を構えた。

(レクスさんには悪いけど、こりゃあもう、やるしかないよ!)

レクスは諦め切れなかった。

悲痛な表情でユラト達に向って叫んだ。

「……待ってくれ!」

レクスが叫ぶと同時に蜂達が攻撃を仕掛けてきた。

キラービーの針には毒があり、喰らうと、その場所が麻痺を起こす。

一匹の毒はたいしたことは無いのだが、刺されれば刺されるほど、毒の濃度が増していき意識が朦朧としたり、最後には意識を失ってしまう。

毒の濃度によっては死に至る場合もあるのだ。

ユラトは襲ってくる蜂を持っている剣で的確に切っていた。

(……思ったより、当てられる!慎重にやれば、なんとかなりそうかも……)

レクスは蜂達に対処する魔法は自分に使用させて欲しいとダリオに話し掛けていた。

「ダリオ、おまえの魔法だと蜂を皆殺しにしてしまいそうだ。だから私が代わりにドルイド魔法で蜂の動きを一時的に止める!それを使わせてくれ!」

ダリオは、ジルメイダに判断してもらおうと、すぐに聞いていた。

「ジルメイダ!どうする?」

ジルメイダは蜂を3匹まとめて切り捨てると、振り向き叫んだ。

「どっちでもいいさ!とにかく早くしておくれ!」

リュシアも悲鳴を上げながら、ユラトの後ろでメイスを振り回していた。

「きゃあ、こないで!」

ダリオはレクスの案を受け入れた。

「……わかった、早くしてくれ。だが、襲ってくる奴は倒させてもらうぞ!」

ダリオは魔法を中断し、ファイアーボールの魔法に切り替え円陣に加わった。

レクスはお礼を言い、魔法の詠唱に入った。

「ありがとう、では……」

レクスは両手で槍を持ち、膝をついて身をかがめた。

「大地の神イディスの娘……森の女神ミエリよ、森の眷属たる我らに聖なる恩恵を……森の大地よ、言霊と共に叫べ!」

そして、槍を地面に突き刺すと同時に魔法を発動させた。

「―――リーフストーム!」

すると、ユラト達の周りの地面に落ちていた落ち葉が突然、螺旋状に吹き上がる風とともに舞い上がった。

ブワワァァ―――

辺りに生えている木々も吹き上がる風のために大きく揺れ、いくつもの葉が舞い上がっていた。

蜂達が一斉に上空へと誘われて行く。

ユラト達は吹き上っていく蜂達を眺めていた。

「これが、ドルイド魔法か……凄いな」

だが、レクスは起き上がるとすぐにパーティーメンバーに叫んだ。

「今だ!この魔法は一時的なものだ!さあ早く、ここから去るんだ!」

ドルイド魔法『リーフストーム』

森の力と自らの魔力を使い、地面から上空へと螺旋状の風を発生させ、落ちている枯れ葉などを舞い上がらせ、敵の目を欺いたり、鳥や蜂などの飛んでいるものの進路を阻んだりすることができる。

ウッドエルフ達が森で狩りをするときに使用する魔法。

ユラト達はレクスの言う通り、すぐに蜂の来ない所まで後退し、別のほうへ進路を変え黒い霧のところまで来ていた。

日はかなり上がっているようで、森の中に所々出来ている陽だまりは暖かかった。

ダリオが周りを見回し安全を確認し、その場に座り込んだ。

「ふう、災難だったぜ……ここなら大丈夫だろ」

ジルメイダがダリオに同意し、レクスに話かけた。

「そうだね、周りを見たけど、敵も出てこないし、ここなら大丈夫そうだね……レクス、今回は被害がなかったからいいけど、次は、やばいと思ったらすぐに行動に移させてもらうよ。その場合、敵を殺す事だってある。すぐにやらなきゃこっちがやられちまうからね」

ダリオは近くの草を毟り、指先でくるくる回しながら話していた。

「ま、俺達は冒険者であって、森を保全する役目なんてないしな」

「それに朝あんたが言ったようにハイエルフの国を探す事が一番の目的だからね」

レクスはジルメイダやダリオが話すことは分かっていた。

だが、あの場合「ドルイド魔法で避けることが出来る」と言う確信が彼にはあった。

「……ああ、わかっている。だが、私がすぐに先ほどのように対処するならば文句はないだろ?」

ダリオは草を捨て、帽子をやや斜めにかぶり直すと立ち上がった。

「まあ、止めろとは言わねぇよ……どこまで出来るか…まあ、頑張ってみるんだな」

リュシアがレクスを励ますように言う。

「レクスさんの思い、わたしは分かります!森は大切だと思います!」

ユラトは、このやり取りから現実的に考えていた。

(まあ、レクスさん達ウッドエルフが森を大切にする事は分かるけど、やっぱり、みんなが危険な時は、俺もジルメイダが言ってるように動くことを考えた方がいいだろうな……)

そして、一息ついた後、彼らは探索を再開した。

「じゃあ、ここに穴を掘ります……」

リュシアが黒い霧の近くまで行き、持っていたメイスで小さい穴を掘った。

「ユラトさん……聖石、お願いします」

「わかった」

ユラトは周りを見回したあと、聖石を埋め、浄化の力を発動させた。

そして霧が晴れ、そこから新しい森の景色が見える。

ユラト達は新しく現れた森へ視線を向け、警戒しながらダリオにマナサーチをさせることにした。

そして、ダリオがマナサーチを唱え、この辺りの情報を探っていた。

「おっ!結構反応があるな……小さい魔力が固まって大きな魔力になっているところがあるが、ありゃあ、さっきの蜂どもの巣だな。あとは……凄く小せえ反応を含めて3つほど反応ありだな、そのうち2つは金属だな、それから後一つは……魔力の反応と、これも金属なのか?行ってみねぇとわからねぇな…奥の金属反応と魔力の反応の場所は近いな」

「よし、早速、行こうじゃないか!」

ジルメイダの声と共にパーティーは移動を開始した。

そして、一つ目の金属反応のあった場所へ、すぐにたどり着いていた。

そこは、落ち葉の上に木の枝がたくさん落ちている場所だった。

そして、そのなかに小枝が焚き火をするときのように組まれた場所があり、そこを調べると短剣のような物があった。

ユラトがそれを拾い、確認する。

「―――この形状は……ただの短剣じゃないな…しかも錆びていない……」

ダリオが近づき、その短剣らしき物をユラトの手から取り、帽子のツバを少し上に上げ、短剣を眺めながら説明をし始めた。

「こりゃあ、『チンクエディア』だな、作られたのは、この溝の掘り方からすると古代ギルアニア時代中期あたりの代物だろう。錆びていないのは防腐処理のルーンが刻まれているからだ……まあ、これ以上詳しいことは町の鑑定士に聞いてみた方がいいだろうが……値段は…そうだな、あんまり珍しい物じゃねぇからな…凝った装飾もねぇし、ルーンもそれだけだからな、まあ、期待は出来ねぇな」
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