Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第十話 成長と苦悩

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カーン!カーン!

木の叩き合う音がしている。

ウッドエルフ達の村の中で、戦っている者がいた。

「もっと、脇をしめるんだ!」

「わかった!」

そして、バルガの女戦士が木剣を若い剣士の青年に向け、振り下ろした。

剣士は、それを木製の盾で受け止めた。

「盾をもっとしっかり握り構えるんだ!それじゃ、すぐに体勢を崩されるよ!」

「くっ!……重い一撃だ……」

戦っていたのは、ジルメイダとユラトだった。

どうやらジルメイダに鍛えてもらっているようだった。

そしてその近くでは、もう一人鍛えてもらっている者がいた。

ダリオとリュシアも外に出て、修行をしていた。

「おい、もっと集中しろ!雑念を捨てるんだ!」

「はい!(うう……お腹減った……)」

ダリオは、真剣に教えていた。

「いいか?光を集めるようなイメージを持つんだ」

「はい!」

そして、リュシアの手に光の粒が集まりだした。

それを彼女は、一定量集まったところで、軽く握った。

「よし!今だ、今度は形状を想像しろ!」

「はい!(やっぱり、お腹減りすぎて……)」

だが、短い投げやりのような物に変化しようとした瞬間、それは消滅してしまった。

「ああっ!くそっ、惜しいな……」

「うう……残念です……」

ダリオは、リュシアの心を見透かしたように話し掛けた。

「……お前、腹減ってると、集中力が全く無くなるな……いいか?冒険中は腹が減ってても敵が襲って来やがるんだぞ!」

しかしリュシアは、ふくれっ面になり反論した。

「分ってますよー。だけど、お腹減っちゃってるんだもん……」

それを聞いたダリオは、怒ると練習を再開させた。

「てめぇ……ダメだ!もう一回だ!」

「はーい……」

彼女は少し、しゅんとなり、練習を再開していた。

一方ユラトの方は、そろそろ終わりそうだった。

「よし、剣術は、この辺でいいかね」

「ほんと?」

「だけど、あとは基礎体力をつけるために、この村の外側にある川を10往復するんだ!それが終わったら……」

「はぁ……頑張るか……」

ウディル村で鍛えられている2人のある日の日常風景より。


ユラトはウディル村に戻ってきていた。

あのあと聖石を使ったが、黒い霧が払われた範囲は僅かだったのだ。

その範囲はユラトの家程度の面積しかなかった。

ダリオは怒って説明していたが、どうやら聖石の中でも一番品質の悪いものを今回、支給される石に混ぜているようだった。

「一人一個って聞いていたから、随分気前がいいなって思ってたら、やっぱり、こういうことかよ!ギルドめ、せこいことしやがる!」

ユラトは聖石の範囲がここまで違うのかと驚いていた。

「威力の低いのはここまで低いんだね……知らなかったよ」

ジルメイダも、過去に騙されたことがあったようで、諦めの表情でユラトに話した。

「凄く安い聖石には注意するんだね、大体こんな感じさ」

こうして、ユラト達のこの日の探索は終わったのだった。

そして、村に着くとすぐに、ユラトとリュシアはそれぞれ、ジルメイダとダリオに鍛えてもらっていた。

また、レクスは村に帰ったところで、村のウッドエルフに呼び止められていた。

「レクス様、レファート様がお呼びです」

「―――兄が?」

「はい、族長の家へお願いします」

「……わかった、すぐに行く」

レクスは、すぐに兄のいる族長の家へ向った。

ウディル村のちょうど真ん中辺りにある二本の大きなユグドの木の間に族長の家はあった。

木のまわりに魔力を回復し易くさせる植物、ディスキースがたくさん茂っていた。

その植物の花が発する甘い香りに誘われて、スプライト達が光る鱗粉を撒き散らしながら集まってきていた。

そして族長の住まいは、二本のユグドの木と同化しているような木の根を複雑に絡み合わせ、空間を作り出し、そこを生活のために利用する部屋にしていた。

ユグドの木自体がかなりの大きさであったため、利用できる根の部分はかなりあり、いくつもの部屋を作り出していたため、結構な大きさの家だった。

家の中に入ると、族長が外出する予定だったらしく、やや険しい顔をした族長に遭遇する。

ガルーヴァは家の中に入って来たのがレクスだと分かると表情が少し緩み、やさしい眼差しをレクスに向け語りかけてきた。

「……レクスか、帰ってきておったか。無事で何よりだ」

「はい、族長。……ですが今回も、ハイエルフの国は見つけられませんでした。申し訳ございません」

「はっは、そう堅苦しく言わんでもよい、我が息子よ……」

そう言われたレクスは、やや表情を崩し、先ほどとは違う話し方に変えた。

「……わかったよ、父さん。兄さんに呼ばれて会いに来た」

ガルーヴァ・ウッドボルグはレクスの父だった。

ウッドボルグの名前は族長のみが名乗れる、神聖な名前であった。

彼らウッドエルフの社会では森の力を一番強く引き出せる力を持った者で、かつ、心も優れている者が族長になれることになっていた。

血の継承はしないことになっている。

あくまで実力者でなければならない。

ガルーヴァは若くしてウッドエルフの民に認められ、彼等を率いてきた実力者だった。

そして彼は、時にやさしく、時に厳しい、良き父親だった。

また、レクスの母親は既に病気で他界し、この世にはもういない。

だから、この家で父親と兄と三人で暮らしていた。

「そうか、ゆっくりしていくと良い。私は少し出かけるのでな。この森を出てオリディオール島へ行ってくる。人間たちの生活もどんなものかこの眼で見ておきたいのでな。我々も、この世界が開かれ始めたように、ある程度は外の世界も知っておかねばならんだろうからな……森を頼むぞ、レクス」

「はい、どうかお気をつけを」

「では、行ってくる」

ガルーヴァは出て行った。

そして、族長を見送った後、レクスは兄のいる部屋へ向った。

兄のレファートの部屋は一番奥にあった。

部屋に入るとベッドに横たわる兄の姿があった。

レクスより4つほど年上の兄だった。

そしてレファートは、肩にかからないぐらいまでの髪を後ろで束ねていて、ウッドエルフにしては少し太い眉が印象的な男だった。

レファートはレクスが部屋に入ってくるなり、嬉しそうに話し掛けてきた。

「レクス!よく無事に帰ってきたな、人間達との冒険はどうだった?」

レクスは、ユラト達といるときよりも、穏やかな表情をしていた。

「ただいま、兄さん。人間達は思ってたよりも、話の分かる連中だったよ。理解できないこともあったけど、それでも思ったより、分かる連中だったよ」

それを聞いたレファートは表情を変え、両手の手のひらを広げ、忌々しげに虚空を見つめ、呟いていた。

「そうか、俺もこの体さえ良ければ……」

レファートは、最近あまり体調が良くないようだった。

まわりの者の話だと、ディスキースの使い過ぎだと言っていた。

ユラト達人間がやって来る少し前、ウディル村に大規模な魔物の群れがやってきていた。

4本足で歩く、大きな緑色の魔物だったらしい。

夜であったため、青白い人の頭ほどの大きさの空中に浮いている霊体の化物も大量にいたと言う。

そのときレファートは、村を守る為に次期族長として先頭に立ち、戦っていた。

だが、村の戦士達だけでは人数が足りないほどの敵の数だった。

そこで、彼はウッドエルフの中でも一部の者しか使用できないドルイド魔法『フォレストブレス』という魔法を使い、敵を追い払うことに成功したのだった。

この魔法は、森に属するものに森の女神の祝福を与えると言われ、ウッドエルフ達の儀式にも使われる魔法である。

森の力を最大限に引き出し、活性化させることができる。

そうすることで、森に関する様々な物や魔法の威力を底上げすることができるのだ。

しかし、この魔法を使用するには多くの魔力を必要としたため、彼はディスキースを多量に使用していた。

ディスキースは、魔力の回復能力を高める働きがある植物だが、大量に使用すると肉体や魂まで消費して魔力に変えてしまうと言われていた。

レファートは敵を追い払うことに成功したが、同時に体調を崩していたのだった。

レクスは兄を気遣い、休むように勧めた。

だが、レファートはレクスに話があったようで、それを拒否し、レクスに話し掛けた。

「レクス、休むのは後でいい。それより、お前にやって欲しいことがある」

「なんですか?」

「もしものことが俺や父にあった場合、お前がこのウッドエルフの民を率いていかなければならないからな……だからお前にも、フォレストブレスを覚えてもらおうと思うんだ」

レクスは静かに少し間を置いてからレファートに質問した。

「……私にできますか?」

レクスは過去にやらされたことがあったが、全く出来る気配がなかった事を思い出していた。

兄は出来たが自分は出来なかった。

その事がなぜか、ずっと心に残っていた。

他のウッドエルフ達も族長になるのはレファートの方だから出来なくてもよいと思っていたが、常に兄と比較され、民を率いる資格も才能もない、というレッテルをレクスは幼い頃貼られていた為、ずっと劣等感を持ちながら生きてきた。

(誰か他の実力ある者が族長になれば良いのだ……私である必要はない……だが、なぜできんのだ……)

父と兄はそんな自分を信じて、ずっと出来ると思っていてくれた。

それに答えようと、狩りの腕や戦いの力、そして知識も頑張って身につけて来た。

だが、フォレストブレスだけが出来ない。

他の実力は持っているつもりだった。

(だから、あとはこの魔法だけなのだ、これさえ覚える事が出来れば……)

そのことを考えると息苦しく、もどかしい感覚に襲われる。

それが彼にとって、凄く苦痛だった。

そして最近は、諦めかけていた。

そんな時に人間たちがやってきた。

(何か、得られる、もしくは変えられるきっかけになるかもしれない……)

そうなんとなく考えた彼は冒険者の登録をし、ユラト達と出会ったのだった。

レファートは真剣な表情で答えた。

「お前が、この部屋に入って来たときに、お前の表情を見て、出来るかもしれないって俺はそう直感したんだ」

「そんなことで……」

自分の言ったことに理解できないでいる弟の顔を見たレファートは軽く笑うと、思ったことをそのまま口に出した。

「ははっ、俺にはそれで十分だったさ。冒険に出る前のお前は、もっとこう余裕と言うものが無く、張り詰めている感じがしているように見えたんだ。だけど、今のお前は……そう、何かこう、活力や覇気に満ちているように俺には見えたよ」

「そうでしょうか……この村を出たときと変わらないように思いますが……」

「いや、お前は変わったよレクス、前より明るくなったさ。そして、それは良い事だよ」

レクスは考えた、その理由を。

(人間たちとの冒険が私をいつの間にか変えていたというのか……ふっ、馬鹿な……)

その考えを否定しようとしたレクスだったが、先ほど父親に会ったときのことを思い出していた。

(だが、父も私を見たとき何か言いたげだった気がする……変わったのか?私は……)

レクスはその答えを出せずにいた。

レファートはレクスがしばし沈黙し考え事をしているのを黙って見ていた。

それは家族として弟を思いやる、やさしい兄の表情だった。

(もっと、悩むといいさ、お前も……俺も……そして共に成長していこうじゃないか、レクス……)

そして、レクスは結局、色々考えを巡らせて見たものの、答えを見つけられなかったようだった。

「まだ、私にはわかりません。もう少し時間をかけて考えてみたいと思います」

レファートは表情を戻し、レクスに話した。

「それでいいさ、だが、フォレストブレスの習得はしてもらうぞ。父がいない間、私が教えるように、父に言われているからな。そして俺も父の考えと同じだ」

「体は大丈夫なんですか?兄さん」

レファートは右の拳をレクスに素早く突き出して見せ、力強く答えた。

「大丈夫だ!心配するな、お前がハイエルフ探索の冒険からこの村に帰ってきた時はやるぞ、いいな?」

レクスは考えた。

(これは、いい機会だととらえた方がいいのだろうな……確かに人間たちといることで何か変われるかもしれないと思ったからこそ、私も今回冒険者の登録をしたのではなかったか?変わることで新たな部分を成長させてくれるかもしれないと……そうすることで……)

レクスは素直に兄の申し出を受けることにした。

自分の心の底にあるわだかまりを消すために更なる成長をしなければならないと彼は思った。

「はい、分かりました。よろしくお願いします、レファート兄さん」

このときのレクスの表情は、いつもより少しだけ、晴れやかな顔をしていた。

そして、ユラト達は日が落ちる寸前までは探索、村に帰ったら特訓をしていた。

この間も特に新しい発見はなかったが、金貨などは、それなりに手に入れることが出来ていたため、ダリオやジルメイダは、そこそこ満足しているようだった。

そして、更に数日経った、ある日、ユラト達のパーティーはマナフラッグを感知し、別のパーティーの救援に向かうことになっていた。

その日は、聖石を早々に使い果たし、引き上げて村に戻るところだった。

そしてユラト達が手に入れた、その日の報酬は、白くて細長い花をいくつも重ね、両端のところを円く歪ませて描かれた絵がある壺一つだった。

ダリオの見立てでは、古代の有名な職人が作った物だと、花の絵から判断していた。

この花を好んでよく描いていた職人がいたらしい。

さらに、この花とよく似た壺を、オリディオール中央ゾイルの骨董屋で見たことがあるとも言っていた。

その骨董屋で見たとき、値段はかなり高かったのをダリオは覚えていたようだ。

だから、これは相当するに違いないとダリオは強く信じていた。

またレクスは、この花をどこかで見たことがあった気がするとだけ言っていた。

そして、道を引き返している最中、ダリオとリュシアが同時にマナフラッグを感じた。

「―――!?」

そしてその後、ほんの数秒遅れで他の三人にもマナフラッグの感覚が来る。

奥歯で銀製のスプーンを噛んだような、キーンっとする感覚がパーティーを襲った。

「……なんですか今の?」

ダリオがすぐに叫んだ。

「フラッグだ!誰かが上げやがった!」

そしてジルメイダも、すぐに叫んだ。

「救援要請のフラッグだ!方角は向こうだね。ダリオ、おおよその距離はわかるかい?」

ダリオは目を閉じ、さっきの感じた場所を探っていた。

「―――今の感じだと、そこそこの距離だな。急いで行けば夕方前には着けるぐらいか……恐らく、それぐらいだろう……どうする?」

ユラトは初めて実戦で感じたマナフラッグの感覚を、しっかりと覚えておこうと思った。

(これが実際の感覚か……方角は向こうだな……学校で感じたものより強く、そして嫌な感覚だけど、よく覚えておこう)

ジルメイダはダリオの情報を聞くとすぐに自分の考えを決め、パーティーメンバーにも聞いてきた。

「なら決まりだ!助けに行くよ!みんなそれでいいかい?」

レクスが最も早く答えていた。

「私の仲間もいるだろうからな、私は行くぞ!」

続くようにユラトとリュシアも即答していた。

「俺も行きます!」

「私も、頑張ります!」

ダリオも行くことを既に決めていたようだった。

「こりゃあ、行くしかねぇだろ」

ユラト達はマナフラッグが発動された場所へ、急いで向うことになった。

森の中をいつもより早めに歩いた。

完全に疲れてはいけないので、休憩を挟みながら移動する。

そして、その場所へはダリオの予想した通り、日がまだ昇っているときに着くことが出来た。

平らな地面に、所々地肌が見え、木々の隙間から昼の太陽の光が差し込み、鳥の鳴き声も僅かにしていて、風は殆ど吹いていなかった。

ユラト達は辺りの様子をうかがい、慎重に武器を構えながら進むことにした。

(何もないといいけど……)

そして、ある光景が見えてくる。

(―――あれは!?)

人の姿に似ていて肌が赤く、目と口が大きく、下から上へ大きな牙が二本生えていて、大きさは人間の幼児ぐらいの身長で木の皮で出来た服を着ている魔物が大量に倒れていた。

ジルメイダは魔物のことを知っているようだった。

「……『ゴブリン』だね。だけど、こんなにたくさんいるのは初めて見たよ」


【ゴブリン】

ボーグルの一つ。

大きさは最大でも人間の幼児ほどしかない。

真っ赤な肌、大きな顔に大きな目と口、そして大きな牙を2本持っている。

一匹の戦闘能力はそれほど高くはない。

そしてあまり知能は高くはないが、一応下級の魔法を使えるものもいる。

ゴブリンマジシャン、ゴブリンシャーマンなどがいる。

人と比べて小さな体だが、攻撃するときは自分の身長以上飛び跳ねることもできる脚力も持っている。

群れて行動することが多い。

ゴブリンよりも一回り大きく、額に大きなこぶがあるものは『ホブゴブリン』と言われる。

魔力の反応に対して敏感な部分もあるようだ。


ダリオは倒れている、ゴブリンの数に驚いていた。

「……なんつう数だ、こりゃあ、相当やばいんじゃねぇか?」

ここから見えるだけでも、その数は数十はいるように見える。

レクスもこの数のゴブリンを見るのは初めてのようだった。

「一匹一匹は弱いが……これだけの数を相手にするとなると、状況は変わってくる……」

ユラトは初めて見たゴブリンの姿と数に驚いていた。

(何があったんだ、一体……)

いたるところに足跡と争った形跡があった。

よく見ると、ゴブリン達は手に種類の違う武器を持っていた。

槍であったり、短剣であったり、中には杖を持っている者もいた。

ゴブリンの遺体の辺りは所々、黒く焦げている所があったり、小さな若い木は折れ、倒されていた。

リュシアが倒れている冒険者を発見し、皆に叫んでいた。

「こっちに冒険者の方がいます!」

ユラト達は急いでそこに集まり、倒れている冒険者の状態を調べて見た。

中年の男で、装備からすると剣士か戦士であるようだった。

そして、皮の鎧を着ていて栗色の髪に無精ひげを生やし、腕にはサソリの刺青があった。

体中に切り傷や刺されたようなあとがあった。

息をしていなかった。

それに気づいたジルメイダは呟いた。

「ダメだ、死んでいるよ……」

「そ、そんな……」

ジルメイダはすぐに気持ちを切り替え、周囲を見ながらダリオにマナサーチを頼んだ。

「ダリオ!まだこの辺りに生存者か魔物がいるかもしれない、こちらの位置がばれてもいいから、マナサーチをやっておくれ!」

「わかった!周りの警戒頼むぜ!」

ダリオはマナサーチの魔法を唱えた。

「……マナサーチ!」

そして、辺りの様子を探った。

ユラト達のいる周辺は、先ほどと特に変わりは無く、静かだった。

ユラトは他の人達のことを考えた。

(他のパーティーメンバーはどこにいるんだ?)

すると、すぐにダリオは何かを見つけたようだった。

「向こうの方角にホークスアイの魔力を複数感じる……恐らく、冒険者のバッジの魔力だな……この集団は動いてねぇな。それから……北の方で二つの魔力を感じる。一つは恐らく冒険者だな、もう一つは多分魔物だ!戦っているのかもしれんぞ!」

ジルメイダは、すぐにメンバーに指示を下した。

「なら動いていない方はリュシアが行っておくれ、まだ生きている可能性があるかもしれないからね!レクスもリュシアの護衛として、付いて行ってくれるかい?」

リュシアは、メイスを両手で強く握り締め、険しい表情で返事をしていた。

「はい、行きます!」

ジルメイダは少し成長したリュシアを見て内心嬉しく思っていた。

「(少しは冒険者らしくなったね、いい顔だ!)いい子だ、頼んだよ!」

そしてレクスは、了承したが何かすることがあるようだった。

「わかった、だが、ちょっと待ってくれ」

そう言うと、落ちている木の枝と落ち葉などを急いで集めていた。

そして、木の枝を一本握り締め、魔法を唱え始めた。

「……イディスの娘、森の女神ミエリよ、森の眷属たる我らに聖なる恩恵を……森を守りし者へ、堅牢なる守護の盾を与え給え!……ウッドシールド!」

すると、握り締めた木の枝に次々と先ほど拾い集めた木の葉や木の枝などが集り、組み合わさり、盾の形状を作り出していった。

また、組み合わさった所に草のツルが這い回り、更に強固な盾を形作った。

そして、木をベースに作られた盾が一瞬で出来上がった。

その盾をレクスはユラトに投げて渡した。

「ユラト、これを使え!」

ユラトはその盾を受け取った。

「―――これは?!……盾?」

レクスは説明する。

「ドルイド魔法の一つ、『ウッドシールド』の魔法だ。その盾は炎には弱いが、弓矢や軽い衝撃ぐらいなら、なんとかなるはずだ。気休め程度かもしれんが、持っていって損は無いだろう」

「レクスさん、ありがとう!ありがたく使わして貰うよ!」

レクスはしゃがんだまま、ジルメイダのいる方へ顔を向け、盾がいるか聞いた。

「ジルメイダもいるか?もう一つぐらいなら出せるぞ」

彼女は、笑みを浮かべながらレクスに話し掛けていた。

「あたしはいいよ。それより、なかなか気が利くじゃないか、ふふっ」

それを聞いたレクスは、ジルメイダに背を向け、立ち上がった。

「フッ……これ以上犠牲者を出したくないだけだ」

準備が整ったのを見たダリオは歩き出し、皆に呼びかけた。

「よし、行こうぜ!」

ユラトはレクスから渡された木で出来た盾をしっかりと持ち、レクスとリュシアに注意を喚起し、ダリオの後をついて行った。

そしてジルメイダも歩き出し、ダリオ達に追いつこうとしたが、途中で止まると後ろを振り返り、叫んだ。

「リュシア、レクス、危険だと思ったら、すぐにこっちに来るんだよ!」

それを聞いたリュシアは、返事をし三人を気遣った。

「うん!わかった!そっちも気をつけて!」

レクスは無言で頷いていた。

「まかしときな!じゃあ、行ってくるよ」

そして、ジルメイダはそれに答えるとダリオとユラトを追いかけるために走り去った。

レクスが走り去ったジルメイダを確認するとリュシアに話し掛けていた。

「リュシア、私たちも行こう」

「はい!」

レクスとリュシアは、冒険者たちが固まっている場所へ、向った。
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