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第九話 続き3
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そしてジルメイダが、静かに目を閉じ、そのときの様子を思い出しながら、話し出した。
「あいつは、何かを探しているようだった。顔も無いのにどこからか声がして、人の言葉を喋るんだ。「良さそうなのが二つある」って……。そして、奴は目が真っ黒で後は全身ダークブルーの馬に乗っていたんだ。後で調べたんだけど、あの馬は『シェイダー』と言われる闇の馬らしい」
「シェイダー?聞いたことないな……」
シェイダー
闇の種族が好んで乗ることが多い、闇の馬の一つ。
この馬は、日中は速度は遅いが、夜になると人間達が乗る馬よりも早く走ることが出来る。
そして、一番特徴的なのは、この馬の影に入った魔力を持つ生物は、その魔力を吸われるのである。
そして、吸収した魔力を騎乗者に与えると言われている。
特に吸収能力が高まる影は、月明かりで出来た影が一番強力であると言われているため注意が必要なのだ。
ジルメイダはシェイダーの能力についてユラトに説明した。
「そんな馬がいるのか……」
そして、ジルメイダは話を再開させた。
「あたし達は、シェイダーの影の中に入っていたのさ。しかも怪我人もいたからね。そしてあたし以外に、もう一人いた戦士の男が、最初にやられたんだ……。あいつは、血のような真っ赤な剣で襲ってきたんだ。あたしらも怪我人をかばいながら戦ったんだけどね……戦士の次に……クライスがやられたよ……」
そこでジルメイダは一番辛そうな顔をしていた。
(あんなジルメイダの辛そうな顔、初めてだ……これ以上は聞かない方がいいのかな?……)
ユラトは、これ以上話を続けない方がいいのかもしれないと思い、中断しようとしたが、ジルメイダは聞いて欲しいと言ってきたため、黙って最後まで聞くことにした。
「魔力を吸われながらの戦いだったからね、みんな洞窟の探索のあとの疲れもあって、余計厳しかったんだ…そして、あたし達は魔力を吸われすぎたのと疲労で動けなくなってね…死を覚悟したんだ…だけど、あいつは二体の死体に興味があったみたいで、その遺体の首をはねて、頭だけ持ってどこかに行ってしまったんだよ……あたしは、ただ見ているしかなかった…最後の言葉も交わせなかったよ……そして奴は、去るとき何も言わなかったね……何も!……」
ユラトはジルメイダの話を聞き、恐ろしくも思ったし、悲しくもあった。
「そんな……」
ジルメイダの表情は怒りに満ち満ちていた。
強い殺気も感じた。
そして、遠くを睨みながら、ユラトに話し掛けていた。
「あたしが今、旅を続けているのは、あのデュラハンの野郎を倒すことが目的なのさ!だから、もし、あんたもあの首無し騎士を見つけたら手を出さずに、あたしに連絡だけしてくれないか?報酬はちゃんと出すよ!」
彼女は決して、その光景を忘れることは出来なかった。
今も夢に見ることが何度もあった。
夫を失ったことによる、怒りや悲しみ、悔しさ、そして寂しさが、今日までの生きる糧となり、冒険者として旅を続けることができた。
彼女にとってデュラハンは不倶戴天の敵だった。
そしてジルメイダの殺気に、やや押され気味にユラトは答えた。
「……わかったよ、ジルメイダ。覚えておくよ、絶対」
「あいつだけはあたしの手で倒してやりたいのさ。あのおとぎ話が本当なら、哀れに思う部分もあるだろうさ、だけどね、だからってあたしの旦那がやられてやる義理なんて全くないからね!あたしにとってはただの憎むべき仇以外の何者でもないね!」
ユラトはジルメイダの気持ちを理解するとともに、デュラハンの事やこの世界のことを考えていた。
(ジルメイダの怒りも当然だ。確かにおとぎ話がそうだとしても彼女の言う通りだ……しかし、頭を持っていったってことは、物語にもあったように、デュラハンは未だに頭を探しつづけているのか?……あのジルメイダやダリオさん達でも疲れてたとは言え、倒されてしまうぐらいだから、かなりの強敵だと思った方がいいな……やはり、この世界には恐ろしい魔物が一杯いるんだな。デュラハンを見つけてたら必ず、教えてあげよう……必ず……)
ジルメイダは、ユラトに全て言えた事で少し落ち着くことが出来たようで、普段の表情に戻っていた。
「それで、ダリオの奴は助けられなかった事を今でも悔やんでいてね。あたしの子供達にも、よく気にかけてくれるんだよ。その時のあいつはあんな感じじゃないんだよ。それに、あたしは純粋な戦士だから、魔道師がいた方がいいだろうってことで、よくパーティーを組んでくれるのさ。クライスの仇を取るときは俺にも同行させて欲しいって言ってたのもあるしね」
ユラトは少しだけ、ダリオを理解したが、やはり受け入れられない部分もあった。
(なるほど、そんな事があったんだ……だけど、お礼は……今は言いたくない自分がいる……子供なのかな…俺……)
そして、ジルメイダが探索再開を告げた。
「さあって、休憩も終わりにしようか……みんな!聖石があと一つ残っているからね、そろそろ行くよ!」
ユラトとレクスは、すぐにジルメイダの後をついて行った。
そして、丘の上にはリュシアとダリオがいた。
どうやらダリオは最後まで音を鳴らすことが出来なかったようだった。
草の葉を地面に叩き付け、悔しそうな顔で呟いていた。
「くそっ!俺が、ガキんちょに負けるなんて……」
リュシアは、ご飯を食べ満足できたのと、音を鳴らせることが出来たことに満足していたため、元気に答えていた。
「はーーい!すぐに行きまーす!行きましょ、ダリオさん!」
「ケッ!」
ダリオは帽子をかぶりなおすと、ロッドを手に取り、渋々立ち上がり、黒い霧のところへ向い、歩き出した。
「あいつは、何かを探しているようだった。顔も無いのにどこからか声がして、人の言葉を喋るんだ。「良さそうなのが二つある」って……。そして、奴は目が真っ黒で後は全身ダークブルーの馬に乗っていたんだ。後で調べたんだけど、あの馬は『シェイダー』と言われる闇の馬らしい」
「シェイダー?聞いたことないな……」
シェイダー
闇の種族が好んで乗ることが多い、闇の馬の一つ。
この馬は、日中は速度は遅いが、夜になると人間達が乗る馬よりも早く走ることが出来る。
そして、一番特徴的なのは、この馬の影に入った魔力を持つ生物は、その魔力を吸われるのである。
そして、吸収した魔力を騎乗者に与えると言われている。
特に吸収能力が高まる影は、月明かりで出来た影が一番強力であると言われているため注意が必要なのだ。
ジルメイダはシェイダーの能力についてユラトに説明した。
「そんな馬がいるのか……」
そして、ジルメイダは話を再開させた。
「あたし達は、シェイダーの影の中に入っていたのさ。しかも怪我人もいたからね。そしてあたし以外に、もう一人いた戦士の男が、最初にやられたんだ……。あいつは、血のような真っ赤な剣で襲ってきたんだ。あたしらも怪我人をかばいながら戦ったんだけどね……戦士の次に……クライスがやられたよ……」
そこでジルメイダは一番辛そうな顔をしていた。
(あんなジルメイダの辛そうな顔、初めてだ……これ以上は聞かない方がいいのかな?……)
ユラトは、これ以上話を続けない方がいいのかもしれないと思い、中断しようとしたが、ジルメイダは聞いて欲しいと言ってきたため、黙って最後まで聞くことにした。
「魔力を吸われながらの戦いだったからね、みんな洞窟の探索のあとの疲れもあって、余計厳しかったんだ…そして、あたし達は魔力を吸われすぎたのと疲労で動けなくなってね…死を覚悟したんだ…だけど、あいつは二体の死体に興味があったみたいで、その遺体の首をはねて、頭だけ持ってどこかに行ってしまったんだよ……あたしは、ただ見ているしかなかった…最後の言葉も交わせなかったよ……そして奴は、去るとき何も言わなかったね……何も!……」
ユラトはジルメイダの話を聞き、恐ろしくも思ったし、悲しくもあった。
「そんな……」
ジルメイダの表情は怒りに満ち満ちていた。
強い殺気も感じた。
そして、遠くを睨みながら、ユラトに話し掛けていた。
「あたしが今、旅を続けているのは、あのデュラハンの野郎を倒すことが目的なのさ!だから、もし、あんたもあの首無し騎士を見つけたら手を出さずに、あたしに連絡だけしてくれないか?報酬はちゃんと出すよ!」
彼女は決して、その光景を忘れることは出来なかった。
今も夢に見ることが何度もあった。
夫を失ったことによる、怒りや悲しみ、悔しさ、そして寂しさが、今日までの生きる糧となり、冒険者として旅を続けることができた。
彼女にとってデュラハンは不倶戴天の敵だった。
そしてジルメイダの殺気に、やや押され気味にユラトは答えた。
「……わかったよ、ジルメイダ。覚えておくよ、絶対」
「あいつだけはあたしの手で倒してやりたいのさ。あのおとぎ話が本当なら、哀れに思う部分もあるだろうさ、だけどね、だからってあたしの旦那がやられてやる義理なんて全くないからね!あたしにとってはただの憎むべき仇以外の何者でもないね!」
ユラトはジルメイダの気持ちを理解するとともに、デュラハンの事やこの世界のことを考えていた。
(ジルメイダの怒りも当然だ。確かにおとぎ話がそうだとしても彼女の言う通りだ……しかし、頭を持っていったってことは、物語にもあったように、デュラハンは未だに頭を探しつづけているのか?……あのジルメイダやダリオさん達でも疲れてたとは言え、倒されてしまうぐらいだから、かなりの強敵だと思った方がいいな……やはり、この世界には恐ろしい魔物が一杯いるんだな。デュラハンを見つけてたら必ず、教えてあげよう……必ず……)
ジルメイダは、ユラトに全て言えた事で少し落ち着くことが出来たようで、普段の表情に戻っていた。
「それで、ダリオの奴は助けられなかった事を今でも悔やんでいてね。あたしの子供達にも、よく気にかけてくれるんだよ。その時のあいつはあんな感じじゃないんだよ。それに、あたしは純粋な戦士だから、魔道師がいた方がいいだろうってことで、よくパーティーを組んでくれるのさ。クライスの仇を取るときは俺にも同行させて欲しいって言ってたのもあるしね」
ユラトは少しだけ、ダリオを理解したが、やはり受け入れられない部分もあった。
(なるほど、そんな事があったんだ……だけど、お礼は……今は言いたくない自分がいる……子供なのかな…俺……)
そして、ジルメイダが探索再開を告げた。
「さあって、休憩も終わりにしようか……みんな!聖石があと一つ残っているからね、そろそろ行くよ!」
ユラトとレクスは、すぐにジルメイダの後をついて行った。
そして、丘の上にはリュシアとダリオがいた。
どうやらダリオは最後まで音を鳴らすことが出来なかったようだった。
草の葉を地面に叩き付け、悔しそうな顔で呟いていた。
「くそっ!俺が、ガキんちょに負けるなんて……」
リュシアは、ご飯を食べ満足できたのと、音を鳴らせることが出来たことに満足していたため、元気に答えていた。
「はーーい!すぐに行きまーす!行きましょ、ダリオさん!」
「ケッ!」
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