Dark world~Adventurers~

yamaken52

文字の大きさ
19 / 65

第九話 続き3

しおりを挟む
そしてジルメイダが、静かに目を閉じ、そのときの様子を思い出しながら、話し出した。

「あいつは、何かを探しているようだった。顔も無いのにどこからか声がして、人の言葉を喋るんだ。「良さそうなのが二つある」って……。そして、奴は目が真っ黒で後は全身ダークブルーの馬に乗っていたんだ。後で調べたんだけど、あの馬は『シェイダー』と言われる闇の馬らしい」

「シェイダー?聞いたことないな……」

シェイダー

闇の種族が好んで乗ることが多い、闇の馬の一つ。

この馬は、日中は速度は遅いが、夜になると人間達が乗る馬よりも早く走ることが出来る。

そして、一番特徴的なのは、この馬の影に入った魔力を持つ生物は、その魔力を吸われるのである。

そして、吸収した魔力を騎乗者に与えると言われている。

特に吸収能力が高まる影は、月明かりで出来た影が一番強力であると言われているため注意が必要なのだ。

ジルメイダはシェイダーの能力についてユラトに説明した。

「そんな馬がいるのか……」

そして、ジルメイダは話を再開させた。

「あたし達は、シェイダーの影の中に入っていたのさ。しかも怪我人もいたからね。そしてあたし以外に、もう一人いた戦士の男が、最初にやられたんだ……。あいつは、血のような真っ赤な剣で襲ってきたんだ。あたしらも怪我人をかばいながら戦ったんだけどね……戦士の次に……クライスがやられたよ……」

そこでジルメイダは一番辛そうな顔をしていた。

(あんなジルメイダの辛そうな顔、初めてだ……これ以上は聞かない方がいいのかな?……)

ユラトは、これ以上話を続けない方がいいのかもしれないと思い、中断しようとしたが、ジルメイダは聞いて欲しいと言ってきたため、黙って最後まで聞くことにした。

「魔力を吸われながらの戦いだったからね、みんな洞窟の探索のあとの疲れもあって、余計厳しかったんだ…そして、あたし達は魔力を吸われすぎたのと疲労で動けなくなってね…死を覚悟したんだ…だけど、あいつは二体の死体に興味があったみたいで、その遺体の首をはねて、頭だけ持ってどこかに行ってしまったんだよ……あたしは、ただ見ているしかなかった…最後の言葉も交わせなかったよ……そして奴は、去るとき何も言わなかったね……何も!……」

ユラトはジルメイダの話を聞き、恐ろしくも思ったし、悲しくもあった。

「そんな……」

ジルメイダの表情は怒りに満ち満ちていた。

強い殺気も感じた。

そして、遠くを睨みながら、ユラトに話し掛けていた。

「あたしが今、旅を続けているのは、あのデュラハンの野郎を倒すことが目的なのさ!だから、もし、あんたもあの首無し騎士を見つけたら手を出さずに、あたしに連絡だけしてくれないか?報酬はちゃんと出すよ!」

彼女は決して、その光景を忘れることは出来なかった。

今も夢に見ることが何度もあった。

夫を失ったことによる、怒りや悲しみ、悔しさ、そして寂しさが、今日までの生きる糧となり、冒険者として旅を続けることができた。

彼女にとってデュラハンは不倶戴天の敵だった。

そしてジルメイダの殺気に、やや押され気味にユラトは答えた。

「……わかったよ、ジルメイダ。覚えておくよ、絶対」

「あいつだけはあたしの手で倒してやりたいのさ。あのおとぎ話が本当なら、哀れに思う部分もあるだろうさ、だけどね、だからってあたしの旦那がやられてやる義理なんて全くないからね!あたしにとってはただの憎むべき仇以外の何者でもないね!」

ユラトはジルメイダの気持ちを理解するとともに、デュラハンの事やこの世界のことを考えていた。

(ジルメイダの怒りも当然だ。確かにおとぎ話がそうだとしても彼女の言う通りだ……しかし、頭を持っていったってことは、物語にもあったように、デュラハンは未だに頭を探しつづけているのか?……あのジルメイダやダリオさん達でも疲れてたとは言え、倒されてしまうぐらいだから、かなりの強敵だと思った方がいいな……やはり、この世界には恐ろしい魔物が一杯いるんだな。デュラハンを見つけてたら必ず、教えてあげよう……必ず……)

ジルメイダは、ユラトに全て言えた事で少し落ち着くことが出来たようで、普段の表情に戻っていた。

「それで、ダリオの奴は助けられなかった事を今でも悔やんでいてね。あたしの子供達にも、よく気にかけてくれるんだよ。その時のあいつはあんな感じじゃないんだよ。それに、あたしは純粋な戦士だから、魔道師がいた方がいいだろうってことで、よくパーティーを組んでくれるのさ。クライスの仇を取るときは俺にも同行させて欲しいって言ってたのもあるしね」

ユラトは少しだけ、ダリオを理解したが、やはり受け入れられない部分もあった。

(なるほど、そんな事があったんだ……だけど、お礼は……今は言いたくない自分がいる……子供なのかな…俺……)

そして、ジルメイダが探索再開を告げた。

「さあって、休憩も終わりにしようか……みんな!聖石があと一つ残っているからね、そろそろ行くよ!」

ユラトとレクスは、すぐにジルメイダの後をついて行った。

そして、丘の上にはリュシアとダリオがいた。

どうやらダリオは最後まで音を鳴らすことが出来なかったようだった。

草の葉を地面に叩き付け、悔しそうな顔で呟いていた。

「くそっ!俺が、ガキんちょに負けるなんて……」

リュシアは、ご飯を食べ満足できたのと、音を鳴らせることが出来たことに満足していたため、元気に答えていた。

「はーーい!すぐに行きまーす!行きましょ、ダリオさん!」

「ケッ!」

ダリオは帽子をかぶりなおすと、ロッドを手に取り、渋々立ち上がり、黒い霧のところへ向い、歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています

柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」  私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。  その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。  ですが、そんな私に―― 「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」  ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

処理中です...