Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第十話 続き 2

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それを見ていたレクスがリュシアの代わりに答えた。

「ダメだった、全員やられていた……」

レクスの話を聞いたラグレスは無表情でユラト達に話し掛けてきた。

「……そうか、だめだったのか、残念だね」

レクスはラグレスに視線をやると、手に持っていた卵を見つけ、驚いていた。

「―――その卵は?!」

「さあ、僕は何の鳥かは分からなかったけど、でも、かなり珍しい物には違いないと思うね」

「恐らくだが、スタンファロスって言われる魔物だ」

ダリオは、レクスやラグレス、リュシアに簡単な説明をした。

レクスは知っているようだった。

そして、怒りを込めてラグレスに話し掛けた。

「知っている。葡萄の丘で見た鳥がいただろう。あれはスタンファロスのオスだ。メスはオスより倍以上大きいんだ……あの鳥達はこちらから何もしない限り、襲ってくることはないんだぞ!なぜ襲った!」

「言っとくけど、最初に襲ったのは僕じゃないよ。ここに来る途中で会わなかったかい?」

ユラトは思い出していた。

「そういや、ここに最初に来たときに一人だけ離れて亡くなっている人がいたけど、あの人が?」

「髭を生やした剣士の男で、腕にサソリの刺青をしている男さ」

ダリオが思い出し、呟いた。

「あいつか……確かに、いたな……」

ラグレスは自分が知っていることを話し始めた。

「彼が、最初にあの巣を発見したんだよ。そして、卵を取ろうとして、あの鳥の巣に入ったんだ。そして、あの鳥が襲ってきたみたいでさ、僕は丁度その時、昼ご飯を食べてたのさ。そしたら、叫び声が聞こえてきて……」

ラグレスは説明を続けた。

どうやら、その剣士の男が問題だったようだった。

単独でこの男は巣に入り、鳥が帰ってきた来たところで、戦闘になり、それに気づいたウッドエルフがすぐに仲裁に入った。

しかし、この時期のスタンファロスの特にメスは気性が荒く、ウッドエルフは襲われ深手を負った。

そして、このままではまずいと思った剣士の男はマナフラッグを使った。

このときのマナフラッグがユラト達が感じたものだった。

そこで他のメンバーも気づき、救援に駆けつけようとした。

だが、助けに向う途中で、スタンファロスの鳴き声の魔力に反応し、興奮したゴブリン達の集団に遭遇することになった。

そして、戦闘が行われ敵の数の前にパーティー達は倒されてしまったようだった。

また、剣士の男は深手を負ったウッドエルフを見捨て、一人逃げたところを別のゴブリンの集団に襲われ命を落としていたようだった。

ラグレスは最初、このゴブリンの集団と戦おうとしたが、当初はゴブリンの数が少なかったため、「俺達でなんとか対処できるからラグレスは巣に向って欲しい」と言われたため彼は巣に向った。

そして、巣に向ったところで、巣の中で戦う剣士を発見し、戦闘になった。

剣士の男はウッドエルフを助けに行くと言い、その場所から逃げたようだった。

そして、ラグレスは一度戦いを挑まれれば、勝敗を決するまで戦う男だった。

常に強い者を捜し求め、旅をしていた。

それが彼の生きがいだった。

そして、彼はスタンファロスを戦うべき相手だと認識した。

(なかなか、強そうじゃないか。あの卵もお金になりそうだ、いいね……久しぶりだよ、こういうのは……嫌いじゃない)

そうなると他のことはどうでもよくなっていた。

そして、今に至るのだとラグレスは語った。

「ま、そういう訳さ」

話を聞いていたレクスは、静かにそして、力強くラグレスに話し掛けた。

「……そうか、訳は分かった。だが、その卵は置いていってもらおうか」

ラグレスは表情を変えることなく、それを拒否した。

「嫌だね。これは僕の戦利品だよ、なぜ渡さないといけないんだ?」

「それは、別の巣に置いてやれば、共に育ててくれるんだ。だから、持っていく必要はない……」

だが、ラグレスはそれを無視し、ここから去ろうとした。

それを察した、レクスはラグレスを呼び止めた。

「待て!」

だが、ラグレスは応じることなく歩き出した。

レクスは、冷酷な眼差しをラグレスに向け、槍を構え静かに言い放った。

それは有無を言わさない意志を感じさせるものがあった。

「渡せと言っている……」

殺気を感じ取ったラグレスは歩みを止め、ゆっくりと振り返った。

そして、それを見たラグレスは、妖しげな色気を纏った笑みを浮かべ、レクスに答えた。

「……僕とやろうってのかい?……あの鳥じゃつまらなかったしね。ふふっ、いいね……君……結構やりそうだし、いいよ……」

ダリオが慌ててレクスを止めようとした。

「待て!レクス!こいつには勝てん。殺されるぞ、やめておけ!」

レクスは無言で槍を構えたままだった。

リュシアは、二人を止めようと思ったが、あまりの殺気に押され躊躇していた。

(あわわ……ど、どうしよ!あのラグレスって人、怖い!)

それはユラトも同じだった。

(まずい……こんな所で争っている場合じゃないのに……だけど安易に声をかけられる雰囲気じゃない……)

ラグレスが相手を敵と認識しようと卵を置き、武器に手をかけようとしたとき、ジルメイダがラグレスに向って叫んだ。

「ラグレス!その辺にしといてくれないか?同じバルガのよしみで頼むよ」

ラグレスの動きが止った。

そして、顔を上げジルメイダを睨み、彼女に話し掛けた。

「その名を出すなよ、ジルメイダ……」

「そうかい、悪かったね。だけど、無駄な戦闘は避けたいんでね。あんただってそれは同じだろ?」

「無駄になるかは、やってみないと分からないさ。それに、ウッドエルフの方も僕と同じ気持ちみたいだよ」

レクスは槍を構えたままだった。

ジルメイダはレクスの方へ顔を向け、戦うのを止めるように叫んだ。

「レクス!あんたの気持ちも分かるけど、今は耐えるんだ!」

ユラトはラグレスの話から、ウッドエルフの仲間のことを思い出した。

「―――そうだ!レクスさん、ウッドエルフの瀕死の方が、まだ生きているかもしれない、探さないと!」

レクスはユラトの言葉で、自分のやるべきことを悟り、武器を構えるのをやめた。

そしてラグレスを睨み、叫んだ。

「そうだったな……すぐに行こう……リュシア!悪いが付いてきてくれないか?魔法が必要になるだろうからな……」

リュシアは、すぐに力強く返事をした。

「はい!行きましょう。レクスさん!」

レクスはリュシアに感謝の言葉を述べると、ラグレスに顔を向け、厳しい表情になり、自らの決意を言い放った。

「ラグレスとやら、今度この森に、おかしなことをしているところを見つけたならば……私は容赦せん……覚悟しろ!」

「その時は楽しみだね……ふふっ、全力で相手してあげるよ」

レクスはラグレスの言葉を聞くと言葉を返すこともなく、すぐに、この場から去っていった。

そして、リュシアも後に付いて行った。

「おや、彼は冷静な男だね。もう少し駆け引きを楽しみたかったのに残念だよ」

ラグレスの顔から殺気が消え、普段の表情に戻っていた。

だが、この場には緊張感は残っていた。

そして殺気が消え、安全であるのを感じ取ったダリオがラグレスに言い放った。

「もうここには用事はないんだろ?だったらとっと行きやがれってんだ、全く……」

ダリオの言葉を無視するかのように、ラグレスは呟いていた。

「……彼もいなくなったし、僕は村に帰るかな……」

そして、ラグレスはユラト達に背を向け、卵を片手で拾うと、歩き出した。

ユラトはそこでようやく、この場に漂っていた緊張感から解放され、自由な意識を取り戻したように感じた。

そして、レクスを追いかけようと2人に言った。

「俺達もレクスさんを手伝いに行きましょう!」

「……そうだな、行こうか」

「はい!」

そして、レクスを手伝いに行こうとした時、ラグレスが再びこちらへ振り向いた。

何かを思い出したようだった。

ユラト達に声をかけてきた。

「……あ、そうだ。君達さ、ゼグレム見なかったかい?」

ジルメイダがそれに答えていた。

「今のところウッドエルフの村じゃ、見てないね」

「俺も知らねぇな……村にいるときに他の冒険者と情報交換する時にも、そんな話は聞かなかったぞ」

「そうか……てっきりこっちに来ているのかと思って来てみたんだけど、いないのか……もう半年以上会っていないのさ」

それを聞いたユラトは一月ほど前にアートスの商店街で見たことを思い出した。

言うか言わないかで一瞬迷ったが、ユラトはラグレスに言うことにした。

「ラグレスさん!あの俺、一月ほど前ですけど、アートスの商店街でゼグレムを見ましたよ」

それを聞いたラグレスは、ユラトの方へ視線を移し、端正な顔を少し歪め、妖しげな笑みを浮かべた。

だが、先ほどとは違い、殺気は感じなかった。

好奇心や楽しそうな表情であったが、他人にとっては不気味な妖しさを感じさせる表情だった。

「ほう……君は……?」

ユラトはやや緊張気味に答えた。

なぜ自分はそんなことを言ったのか、ユラトは自分でも驚いていたが、心の中には、不安や恐怖以外にもラグレスに対して好奇心というものがあったのかもしれないと彼は思った。

最強の戦士と話してみたいと言う欲求や好奇心が不安や恐怖より勝ったのだと。

「俺はユラト・ファルゼインと言います」

ラグレスは、ユラトの顔をじっと見つめ、質問をしてきた。

「ユラト・ファルゼイン……君の名前と顔は覚えたよ……いい情報だ……それで、彼は一人だったかい?」

「いえ、魔法使いの人がいました。名前は……確か、ファリオール・カルキノスだったかな……確かそんな名前でした」

それを聞いたラグレスは、忌々しげに呟いた。

「……ちっ、あいつも一緒にいるのか……面倒だね。他には見なかったかい?」

「俺が見たのはその人だけです」

「そうか……ギルヴァンとロゼリィはいないのか……なら……いや、すでに合流しているかもしれないね……」

(誰のことだろう……全くわからないや……)

ラグレスは、ユラトから視線を横へそらし、手を顎に当てしばらく考えていた。

どうやらゼグレムには、付き従っている者が他にもいるようだった。

「いい情報を聞いた、ありがとう……君に貸しが一つできたね」

「いえ、貸しだとは思ってません。たまたま見ただけですよ」

「いや、これは貸しだ。だから、1回だけ君に力を貸す事を約束するよ。いつでも、言ってくれよ……必ず、力になるよ……」

ラグレスは力強くユラトを見つめ言ってきた。

(うっ……なんか凄く有無を言わさない圧力を感じる……)

断るわけにはいかない空気をユラトは感じ取り、素直にその約束を受けることにした。

「分かりました、何かあったら連絡します」

ユラトの返答を聞いたラグレスは、なぜか嬉しそうだった。

無邪気な笑顔を浮かべ、満足げに何度も相槌を打っていた。

「うんうん、厚意は素直に受けておくべきだよ」

ユラトはそんなラグレスの表情を見ながら少し考えていた。

(最強の戦士の力を借りることが出来るなんて、そうそうあることじゃない……ここは、そういうことにしておくか……力を借りるのはちょっと怖いけど……必要になることがあるかもしれないしな)

二人のやり取りを見ていたダリオがラグレスに話し掛けた。

「お前、ゼグレムを探してどうするつもりだ?」

「ん、……決まってるじゃないか、戦うんだよ」

「戦う事に意味なんてあるのかい……今は冒険者同士、協力してこの暗黒世界を開拓していくことの方が重要じゃないのかい?」

「魔王が存在しているのなら、それもいいね。だけど、今強いのは魔物よりゼグレムだろ?」

「やれやれ……お前はそればっかりだな……どうかしてるぜ……」

「ははっ、そうかもね……だけど、君はお金ばっかりだろ?それと似たようなもんさ」

そう言われたダリオの頭の中によぎったのはデュラハンのことだった。

目の前で亡くなった親友、クライスの最後。

何も出来なかった自分。

ジルメイダの悲しむ顔。

ジルメイダの二人の子供達。

子供達は太陽のように、いつも明るく眩しかった。

純真な目で捻くれた、この俺なんかを分け隔てなく見ていてくれた。

その時の自分は救われ、癒されていた。

その笑顔を、あいつは奪っていった。

それらの事が一瞬、走馬灯のように駆け巡った。

そしてラグレスの言ったことをダリオは小さい声だったが、思いつめた表情でそれを否定した。

「……俺は、それだけじゃねぇよ……それだけじゃ……」

ダリオの沈んだ表情を見てラグレスは思い当たることがあった。

(そういや、前にジルメイダが仇を探しているとか……聞いたな。ふふっ、そういうことか)

そんなダリオの表情から何かを察したのか、ジルメイダが先に行った仲間の所へ向うことをラグレスに告げた。

「ラグレス!悪いけどあたし達は、仲間の所へ行かせてもらうよ!」

「ああ、わかったよ。僕はオリディオールに帰るよ。ここにはもう、何もなさそうだ……ゼグレムはきっと東に行ったのかもね。僕は彼を追うよ……それじゃ」

ラグレスは、ユラト達のいる場所から去っていった。

そして彼は去っていくときに、色々考えていた。

左手に卵をかかえ、右手の手のひらをぼんやり見つめていた。

(まただ……なぜこうも自分は歪んでいるのか……いつも、そうなんだ、分っていても、最後はこうなってしまう……)

彼は自分の心が歪んでいる事を自覚していた。

(どうしようもなく、歪んでいるんだ!そして僕は、その先も考えなきゃいけないんだ!……なのに……)

また彼は、その原因も知っていた。

(誰か……この苦しみから解放してくれないかな……)

ラグレスは切なげな表情をし、森の木々の隙間から見える空を眺めていた。




ラグレスが去った後、ユラト達はすぐにレクスとリュシアを追った。

追っている途中でユラトはジルメイダに、先ほどのことで疑問に思った事があったので聞いてみることにした。

「ジルメイダ、さっきラグレスさんに、同じバルガ族だって言ってたけど、どういうこと?」

ユラトに話し掛けられたジルメイダは、何か考え事をしていたのか、一瞬戸惑いを見せたように見えたが、すぐに答えていた。

「ん……ああ、そうさ。あいつはバルガ族の血が半分入っているのさ」

「ええ!?そうなのか……」

ジルメイダはラグレスの出生について知っていることを話してくれた。

ラグレスの父親がバルガ族の者であった。

名前を『ガイゼル』と言った。

ガイゼルはバルガの中でも、かなりの強さを誇る戦士だった。

だが彼は、狂神フュリスに精神を一部取り込まれてしまった。

バルガ族は皆、フュリスの影響を少なからず受けて生きている者達だった。

そして、バルガ族の中で稀に産まれて来る者の中に、狂神の影響を強く受けすぎる者が出る事があると言われている。

フュリスの影響を強く受けるとどうなるかと言うと、壁画に描かれているフュリスと同じく、唇が白くなるのである。

ガイゼルもラグレスと同じく、唇が白かった。

二人とも生まれながらに狂神の影響を強く受けていた。

そして、ある日、バルガの村の者をガイゼルは半殺しにさせてしまう事件が起こった。

狂神の影響のせいで、彼は突然暴走してしまうことがあった。

それに巻き込まれたのだった。

この事件により、ガイゼルは村から追放された。

そして、あてどなく向った先にたどり着いたのは、オリディオール島東のマルティウス地域の北東にある、貧しい小さな漁村だった。

彼はそこで、一人の女性と出会い、彼女と結ばれた。

そして、産まれたのがラグレスだった。

また、ラグレスも産まれたときから、唇がガイゼルと同じく髪のように真っ白だった。

ガイゼルは自分の子供が自分と同じ道を歩まなければならないことを知り、嘆いた。

(こいつも俺と同じ……なんて……ことだ……だが、こいつを俺と同じ道に進ませるわけには……)

両親は、ラグレスを狂神に飲まれないようにするために、肉体だけではなく精神も鍛えようと思い、ラグレスに厳しく接していた。

決して狂神の影響に飲まれてはならないと。

意思を強く、心の奥に強い芯を持てと。

ラグレスの日々はそこから、いや、すでに生まれたときから、狂神との戦いの日々だったのかもしれない。

成長していく中で彼は、自分の心の中に狂神が常にいることを悟った。

(……これに、抗わなくてはいけないのか?強大な……この強い衝動に……)

そしてある日、ガイゼルはまたしても、狂神に身を委ねてしまうことがあった。

母は、無残にも父に刺されていた。

夜の寝ている時に。

ラグレスは自分にも襲ってくる父に対して必死に抵抗し、なんとか逃げることができた。

そして、父親はラグレスが逃げた後、正気を取り戻したが、自分の行いにすぐに気づき、狂ったように声を上げ、そのまま家を出ると消息を絶った。

ラグレスは母のことを思い出し、すぐに家に戻った。

そして母を見つけると、慌てて彼女のもとへ近づき、手を握った。

既に母親は瀕死だった。

そして最後の力を振り絞り、冷たくなった手を彼の頬に寄せ、ラグレスに言葉を伝えると息を引き取った。

ラグレスは今でも、その時のことを夢に見ることがあった。

彼の容姿は母親似だった。

母は美しく、物静かな人だった。

彼女は実家が貧しかったため、その美しさを買われ、マルティウス地域にある娼館で働く予定だった。

しかし、ラグレスの父親と知り合い、結ばれてしまった。

報酬を期待していた家族は怒っていたが、ガイゼルは気にしなかった。

そしてあの日、母は、いつもより大きな声で自分に何かを言っていた。

夢の中では、いつも母が最期の言葉を発し始めたときに、目が覚める。

確かにラグレスは聞いた覚えがあったが、なぜか思い出せないでいた。

(母さん……あなたは最後、僕になんて言ったんだ?……)

ラグレスはユラト達から、かなり離れた森の中にいた。

突然、右手で額を押さえ、よろめいた。

そして、近くの木にもたれかかった。

(くっ!……また、破壊の衝動だ……狂神に身を委ねるわけにはいかない……)

父親、ガイゼルは狂神に身を委ねた。

心の強い人ではなかった。

だが、この衝動に耐えられるほど人は強くないのかもしれない。

そして、あんな結末になった。

だが、ラグレスは絶対に父親の様には、なりたくはなかった。

(僕は……死んでも……あいつのようには……ならない……よ、母さん……)

選択肢は2つ、身を委ね、狂人となるか、抗うか。

ラグレスは、父とは違う道を選んでいたのだった。

それは辛く厳しい、心の戦いの日々を意味していた。

拳を握り、歯を食いしばった。

(ゼグレム……君と戦っているときだけさ……全てを忘れられるのは……それに、君に勝つことが出来れば何かが変わる気がするんだ……だから、君には悪いけど、相手をしてもらうよ……)

ゼグレムと戦う事を考えると、衝動をなんとか押さえられた。

そしてラグレスは、先ほどまで高ぶっていた衝動が押さえられ、小さくなっていった。

彼は衝動を押さえることに成功した。

心が落ち着きを取り戻し、視界が広がっていく感覚があった。

そして、ふとあることを思い出していた。

(ふう……そういや、さっきのユラトとか言う子の左手にあった模様……どこかで見た気がするな……何か気になる子だったね……まあ、今はゼグレムと戦うことだけを考えるか……)

彼は表情を元に戻し、再び歩き出した。

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