Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第十四話 調査開始

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「どうだい、兄ちゃん!うちは良いもん置いてるよ!」

ユラトはウディル村で月に一度ぐらいの周期で来る、露天商の商品を見ていた。

(今回は種類が豊富な気がするな……)

この森の中で旅をすることで彼は宿泊や食事以外に、あまりお金を使わなかったため、そこそこ貯まっていたのだった。

そこでユラトは、旅で役に立つ良い装備があれば、思い切って値の張る物でも買おうと思い、色々見ていた。

露天商たちは、この森で見つかった物だけでなく、西の大陸全体で新たに見つかった武器や防具、装身具、他にも調合された薬草、非常食や果実なども並べていた。

「これなんてどうだい?」

見せられたのは、深く落ち着いた赤い色の鞘に入った剣だった。

ユラトは手に取り、鞘から剣を抜いた。

「これは……サーベル?……じゃないな……見たことの無い剣だ……」

片刃で刀身は傷一つ無く、独特の反りをもっていた。

よく見ると鍔が凝っていて、顔は竜で体は鱗を持った鹿のような体で黄金の角と蹄をもった4本足の魔物が彫られていた。

「これはね、ベニグレンと言う名前のカタナだよ」

「カタナ?」

「古代の世界の遥か東の方に存在した、他の国とは違う、少し特殊な国があったらしい。そこに凄い鍛冶師がいたらしくてねぇ。その人物の作品なんだよ」

「へぇ……」

「値段は張るが、切れ味は抜群だよ!なんせユニークレアだからね!」

ユラトはカタナを手に持ち、軽く振ってみた。

「凄い……軽い……」

「軽量化のルーンが付いてるからね!それに、防腐処理とか色々あるよ!……あ、そうだ!鞘に入れて、一気に抜いてごらんよ。鞘にもルーンがあるんだよ、それ」

「え、そうなんですか?(珍しいな……鞘にか……)」

ユラトは、言われたとおりカタナを鞘に戻し、柄に手をかけ、一気に横に刀を抜いてみた。

すると、音を立てることなく凄い速度で空気を切り裂きながら、カタナが鞘から抜き放たれていた。

しかも、刀身から風が出た。

「―――これは!?」

「兄ちゃん……こっちに向けて抜くのはやめてくれないか?……」

「あっ……すいません……その果実買います……」

店の果物がいくつか切れて転がっていた。

「……で、買うかね?」

「いくらなんですか?」

値段を見て彼は驚いた。

「えええっ!!そんなにするのか……」

ウディル村の日常より。


魔法学院からのクエストによって、エルディア、クフィン、カーリオの3人は、調査を早速始めていた。

3人で話し合った結果、まずは学院で聞き込みをしようということになった。

生徒に声をかけ、噂話を集める役目には、カーリオが自ら進んでやると言いだした。

しかし3人で聞いた方が効率が良いと思い、2人にとって苦手な事だったが、なんとか聞いて回っていた。

そして初日は、特にこれといった情報を得る事は出来なかった。

日が沈み、夜になったので初日の調査は終了ということになった。

そして、エルディアが寮の部屋に戻ると、シュリンが待っていた。

部屋に入るなり、彼女はエルディアに学院長と何を話したのか聞かれたので、彼女はシュリンに全てを話した。

シュリンは興味深くエルディアの話を聞いていた。

そして、自分も調査に協力すると言いだした。

両手の拳を握り締め、熱の篭った声でエルディアに話しかけていた。

「エル先輩、あたしも協力しますよ!なんかわくわくします!」

「シュリン……遊びじゃないの……それに危険かもしれないのよ?……あなたには学業があるでしょ」

「大丈夫ですよ、ちゃんとやってます!」

「ほんとに?大変な思いをして、あなたのお母さんが学費を出してくれているんでしょ。だったら一番優先すべきは、勉強のはずよ」

「はい!だから、合間に聞き込みだけしときますよ。それだったらいいでしょ?だって、あの2人……特にカーリオさんだけだと、不安ですしね……」

「……そうだけど……」

シュリンは先ほどとは違い、声を落とし、真剣な表情でエルディアに話した。

「……ほんとに大丈夫ですって、聞くだけですから」

そんな彼女の表情を見たエルディアは少し考えた後、シュリンの申し出を受けることにした。

「(シュリンは言い出したら聞かないところがあるから……)……わかった。だけど、絶対に無理はしないでね?」

エルディアが了承したのを見た瞬間、彼女は表情がまた元の明るい顔に戻っていた。

「はい!まあ、知り合いから、聞いてみますよ。だけど、聞いたことないなぁ……」

「シュリン、ありがとう……助かるわ……」

「いえいえ、そんなお礼なんていいですよー。あたしも先輩にはお世話になってるんですから!」

そう言って彼女も協力してくれることになっていた。

そして、翌日から、4人で聞き込みを始めた。

エルディアとクフィンもなれなかったが、2人だけに押し付けるわけにいかないと思い、聞き込みを始めていた。

聞いていく中で、いくつか情報が集まっていた。

どうやらレイアークの町を覆っている森の中で、妖しげなまじないなどを行っている者がいると言う情報を、いくつか入手していた。

そして夕方ごろ、町の料理屋『マルキーの料理店』で、少し早めの夕食を取りながら4人は集り、情報について話していた。

この店の料理は安く量があり、それでいてそこそこの品質の料理を味わうことができるため、学生達が多く利用している場所だった。

中に入り、席に着き、料理をすぐに頼んだ。

辺りは、夕食の時間に近いため、この店自慢の出来立てのスープの湯気がいたるところから立ち上がり、多くの人で賑わっていた。

時間を気にして一心不乱に食事を取る者、仲間と雑談をしながら料理が来るのを待っている者、白熱した議論をしながら食事をする者など、様々な人々が店の中にいた。

また、店の中はスープの香りや焼いたソーセージの煙、西の大陸で発見されたハーブの香りなど、様々な匂いが混ざり、辺り一面に立ちこめていた。

和気藹々とした雰囲気の中、エルディア達4人も食事をしながら、今日あったことについて話していた。

運ばれてきた食事に手をつけながら、シュリンが他の3人に話していた。

「今日は昨日よりは、情報が入ったみたいでよかったですねぇ……全く無かったらどうしようかと思いましたよ」

噂自体聞いたことがなかった、エルディアは半信半疑だったが、実際に噂を耳にすることになったので、少し意外に思っていた。

「ほんとうに噂話はあったのね……」

「俺以外の3人が、森での噂を聞いたと言うことは、明日は森を調べたいが……」

クフィンの言ったことに、シュリンは無理だと主張していた。

「広すぎますよー!かなりの面積ありますよ?」

森は町だけではなく、学院や大地の神殿まで覆っていたため、かなりの面積があった。

3人の意見を聞いたカーリオは、水の入ったコップを見ながら、考えていた。

「うーん……レイアークの町を覆っているだけでは、ないですからね……魔法学院に大地の神殿の方も森で囲まれていますから……」

エルディアが、自分の考えを述べた。

「だけど、学生ってことは、学院の周りの森じゃない?……」

「……そうですねぇ。大地の神殿の周りの森の範囲は狭いですからね。そうなると、エルちゃんが言う通りか、町の方か……」

エルディアの考えを聞いたクフィンは、すぐに決めようとしていた。

「エルディアの言う方にしよう、それが当りだ」

皆、一瞬彼を見て、呆れた表情になっていた。

「クフィン……あなたの個人的な感情を入れてはダメですよ」

カーリオにそう指摘されたクフィンだったが、すぐに睨み付ける様に反論していた。

「それを言うなら、俺は今日、お前が後輩を口説いているという噂をたくさん聞いたんだが?」

それを聞いたエルディアは驚き、呟いた。

「えっ……それ、わたしも聞いた……」

どうやら、シュリンも聞いたのか、驚いていた。

「ええっ!?お2人も聞いたんですか?あたしも聞きました!」

クフィンは、カーリオを睨みつけ、彼に聞いていた。

「……おい、お前、今日ほんとに聞き込みをやっていたんだろうな?」

カーリオの視線は泳いでいた。

「み、みんなで、何を言うんですか、酷いなぁ……聞き込みのついでですよー」

「やはり、こいつは外した方がいいんじゃないか?」

エルディアは、カーリオをやや呆れ気味に睨んでいた。

「カーリオ……調査に関係の無いことは聞かないの……」

シュリンは、完全に呆れているようだった。

「そうですよー。全く……男って奴は……」

クフィンは、カーリオと同じには見られたくなかったのか、自分は違うんだと主張していた。

「こいつと一緒にしないでくれ。俺は一本道だ!」

「うわぁ……それはそれで、なんか聞いてるこっちが……」

エルディアが、話を元に戻そうとした。

「話がそれてる……本題に戻すわよ……」

「そうそう、本題は私のことではありませんよ!調査のことを話ましょう!」

カーリオがそう発言したとき、後ろから声がかかった。

「話中、悪いんだけど、ちょっといいかい?」

4人とも、その人物の方へ視線を向けた。

皮鎧の上にカーリオと同じ深い朱色のマントを羽織っている女性が、そこにいた。

また髪や肌もカーリオと同じ白い髪に褐色の肌をもった人物だった。

そして背中まであろうかと言う髪を後頭部の高い位置で一つにまとめ垂らしていて、綺麗な二重の鋭い赤い目とやや厚めの唇が印象的な女だった。

また耳にも、その目の色に似た小さなイヤリングをしていた。

そして背丈は、クフィンやカーリオほどはないが、エルディアやシュリンよりは大きかった。

背中に自分の背丈に近いぐらいの長剣を背負っていて、その剣は、ぼんやりと黄色く光っていた。

そして、その女性を見たカーリオは、驚きの声をあげていた。

「―――ミ、ミレイ!なぜ、あなたがここに!?」

ミレイと呼ばれた女性は、くたびれた様子だった。

眉を寄せ、ため息をつき、カーリオに話し掛けていた。

「はぁ……探したよ、カー兄」

「あなたは、西の冒険者学校に行っているはずではなかったんですか?」

カーリオの問いかけに、彼女はやや気だるそうに答えていた。

「学校の許可を貰って、バルガの成人の儀式に出ようと思ったんだけど……村への道がこの前の大雨で塞がっているみたいでさ……復旧にはもう少しかかるみたいなんだ。だから、それのついでにこっちにも寄ってみたってわけさ」

「……そうでしたか。あっ!紹介が遅れましたね、妹の『ミレイ』と言います」

彼女は、カーリオの妹でもあり、ジルメイダの娘の『ミレイ・バルド』と言う名の人物だった。

エルディアはバルガの戦士を見るのは初めてだった。

(バルガの女戦士……)

シュリンは、興味津々のようだった。

身を乗り出して聞いていた。

「ってことは、カーリオさんと同じ、バルガの方なんですか?」

「ああ、そうだよ。今はアートスのファージア冒険者学校に行っているんだ」

「西のラーケルの方の学校ですかー」

「ああ、そうだよ」

その学校名を聞いて、エルディアは、驚いた。

(―――!?ユラトの行っていたところ……だけど、この子、戦士よね?……ユラトは剣士だし……知っているわけない……)

「彼女はシュリンと同じ歳ですよ、良かったら友達にでもなってあげてください」

「へぇ……あたしよりも随分大人びてますね……カーリオさんも戦士になれば良かったのに……そしたら、もっともてたかもしれませんよ?」

シュリンにそう言われたカーリオは、表情を曇らせ答えていた。

「あの村の人たちは血の気が多くて……合わなかったんですよ……私はあんな野蛮なことは嫌いなんです」

「あたしの家はバルガの中でも特殊だからね。それに父も母も、なりたいものになればいいって言ってくれてたからね。まあ、だけど、魔道師になるとは、父以外は思わなかったみたいだけど……」

「ミレイ、それで、私に何か用事でも?」

「母さんから、カー兄に渡すように言われたんだ。これ……」

そう言って、ミレイは腰にぶら下げていた手のひらに収まるぐらいの大きさの袋をカーリオに渡した。

それを受け取り、袋を開けて中を見たカーリオは、喜んでいた。

「おおおっ!やはり、持つべきものは良き母ですね!これだけあれば、研究を進める事が出来そうです!」

どうやら、袋の中身はお金のようだった。

「無駄遣いはするなって言ってたよ。あと、ダリオさんからお金借りてないだろうね?」

それを聞いたカーリオは突然、苦悶の表情を浮かべ、お腹を両手で押さえた。

「ん……うっ、お腹が痛い!」

それを見たクフィンは、横目でカーリオを見ながら呆れていた。

「都合の良い腹痛だな、カーリオ。まだ、ほとんど食べてないだろ」

シュリンやエルディアもそれをすぐに見抜いていた。

「カーリオさん、誤魔化しても、無理ですよー!」

「カーリオ……嘘が下手……」

カーリオの下手な演技を見たミレイは呆れていた。

「……呆れた……あれだけ母さんに言われていたのに……」

お腹を抱えていたカーリオは突然顔を上げ、必死に弁明しようとしていた。

「ち、違いますよ!ダリオさんの方からですね……」

そんな兄の姿を見たミレイは、疑いの眼差しを向けながら兄に聞いていた。

「じゃあ……母さんに言うよ?」

ミレイに母に言うと言われたカーリオは動揺を隠せないでいた。

「い、妹よ、あ、兄を脅すんですか!……もし、ばれたら……」

ミレイは涼しい表情でカーリオに話し掛けていた。

「顔の形が変わるまで、殴られるだろうね……そりゃあもう、ボコボコにさ……」

頭を抱え、思わず悲鳴を上げるカーリオだった。

「ひぃ!」

そしてよほど怖いのか、顔を青ざめながら、呟いていた。

「……あの人なら絶対にそうしますね……なんと恐ろしいことか……」

クフィンは、不思議そうに尋ねていた。

「お前の母親は一体どんな人物なんだ?」

カーリオは、困った表情なり答えていた。

「母は、戦士なんです……それもかなり腕の立つ……」

そんな兄とは対照的にミレイは嬉しそうに、そして誇らしげに、母について話した。

「はははっ!そうさっ!強くて優しくて……あたしが憧れ、そして目標でもある、凄い戦士なんだ、母さんは!カー兄は相変わらず、母さんが怖いんだね!」

カーリオは怒りを込めて妹に話していた。

「当たり前です!ミレイ、私がずっと大変な思いをして、あの村で生きていたのを、あなたは知っているでしょう!」

「あたしが知っているのは、母さんが苦労していたことだけさ。そして、よく殴られているカー兄を見て、自分はああはなるまいと思っただけだよ、ははっ!」

ミレイは、昔のカーリオを思い出し、笑っていた。

「全く……あなたは、相変わらずですね……ミレイ……」

カーリオは目を細め、ミレイの顔を見ながら、父親が亡くなった日のことを思い出していた。

(父が死んだと分ったとき、あなたは凄く落ち込んでいたのを今も覚えていますよ……だけど、あなたはすぐに涙を拭いて立ち上がった……そして母がいない時に、私に言ってきた……)

「カーにぃ……あいつを、倒したい!そのためにあたしは、母さんのバルガの剣を受け継いで強くなるよ!誰よりも!」

「……ええ、そうですね、ミレイ、わたしもそう思います……だから、あなたはあなたのやり方で、私は私のやり方でお互い進みましょう」

(そして共に復讐を誓った……あの日の事を私は今もしっかりと覚えています……あなたも私も……そして母も。その後、みんな忙しい日々を過ごし、いつしかあの悲しみから少しだけ解放され、またもとの笑いのある家族に戻れて良かった……だけど、その笑いは心の底から来る笑いではないんですよね……だから、いつの日か……)

その日から、この2人の兄弟は、いつかデュラハンを倒そうと心に決めていた。

父の仇を討ち、母をこの憎しみにまみれた世界から解放してあげようと。

(……そのためにも……あれを……)

カーリオが自分の考えに深く入ろうかと思ったとき、クフィンが彼を現実に引き戻すことを皆に聞いていた。

「……で、目的の調査の方はどうするんだ?」

シュリンが良く煮込まれたスープを木製のスプーンで一口飲むとそれに答えていた。

「今日はここまでにするとしても明日からですよねぇー……うーん、相変わらず、ここのは美味しい!」

「シュリン、口の周りに少しスープが付いてるわ……」

皆のやり取りを聞いていたミレイが興味を持ったのか、兄に尋ねていた。

「調査?カー兄、一体何をしているんだい?」

カーリオは、ミレイに今回のクエストのことについて話した。

「……なるほど、そんなことがあるんだね……ちょっと面白そうじゃない」

そんなミレイを見たカーリオは、皆に提案をしていた。

「……あなたは昔から好奇心がありましたからねぇ……どうです、みなさん、ミレイもしばらくは村に行けないみたいですし、調査に加わってもらうというのは?」

エルディアは、少しだけ考えると、カーリオの提案に同意した。

「……そうね……人が多い方が早く調べられそう……それに前衛はクフィンだけだし……もう一人ぐらい前衛がいた方がいいのかも……それに、カーリオも真面目にやると思う……」

エルディアがカーリオの提案を同意するのを見たクフィンも、少しの間をおいてから、渋々了承していた。

「この町は島の中央だから魔物なんていないはずだ。だから俺一人でも前衛はかまわないが……そうだな、エルディアの言うとおり、少しはまともにクエストをこなしてくれるかもしれんな……」

そんな2人とは違い、シュリンは嬉しそうだった。

「ミレイちゃんって呼んでいい?私はいいと思いますよ!戦士だなんてかっこいい!」

「ん、好きに呼んでくれていいよ、あんたのことはシュリンって呼ばせてもらうよ」

「うん!それでいいよ、よろしくミレイちゃん!」

どうやら2人は、すぐに打ち解けたようだった。

そして、クフィンが明日の予定について話した。

「それじゃあ、明日は学園の西の森から、調べるか」

「私は、それでいいですよ」

「はい、そうしましょう!」

エルディアは、少し心配した表情でシュリンに話し掛けていた。

「シュリン、あなたは、勉強があるでしょ、それにパン屋の店番も……」

シュリンは、母に出来る限り負担をかけたくなかったため、学校が終わった後、パン屋の店番を週に何日かしていた。

「はい、でも、それもちゃんとやった上でならいいですよね?」

「そうだけど……」

カーリオもまた、シュリンが一度決めたら最後までやる人物だと分っていた。

柔らかい表情で、エルディアに話し掛けていた。

「エルちゃん、彼女はどうしてもやりたいみたいですよ。やらせてあげましょう」

「わかったわ……だけど、ほんとに出来る範囲でいいから……ね?」

シュリンは嬉しそうに、元気に答えていた。

「はい!そうします!」

そしてクフィンが、本日の調査の終わりを告げた。

「じゃあ、今日はここまでにしよう……」

こうして、2日目の調査は終わった。


そして、3日目の朝、エルディアたちは、シュリンを除いた4人でパーティーを組み、魔法学院の敷地の西の森にいた。

大きな木が茂る森で、鳥達はなぜか殆どいない場所だった。

森の木々の隙間から日の光が僅かに入る程度で暗い森だったため、丈の高い草は、ほとんど生えていなかった。

そんな中をエルディアたちは歩いていた。

彼女は魔法が必要になる場合もあるだろうと思い、先がぐにゃっと、くの字に曲がった木の杖を持ってきていた。

それに、三日月の刺繍が施され、かぶる所が尖った円形の広いつばのついた紺色の帽子をかぶっていた。

そしてあとは、文字などを読むときのために眼鏡を持ってきていた。

またカーリオの方は、ダリオに買ってもらった、赤い玉の付いたロッドを持ってきていた。

それ以外のクフィンとミレイは、昨日と同じ装備だった。

そして、4人は辺りを見回しながら、歩いていた。

たまに、杖や剣で低い木の茂みのあるところを押さえたり、払ったりしながら、進んでいた。

辺りを見回しながら、クフィンは呟いていた。

「やはり、闇雲に探しても、これだけ広い範囲となると、厳しいな……」

ミレイが、あることを閃き、他の3人に聞いていた。

「そうだ、マナサーチ。ここなら、人もいないだろうし、いいんじゃない?」

「そうですねぇ、ミレイの言う通り、この辺りなら、使用できますね」

「……じゃあ、私が範囲を絞ってやってみる……」

エルディアが、マナサーチを静かに唱えた。

基本的にマナサーチやマナフラッグなどは、人の多い場所での使用は禁止されていた。

なぜなら、マナサーチが使用された場合、全ての人がその魔力を一々感知してしまうためである。

そのため、使用しないことが共通のマナーとして存在した。

エルディアは、辺りの情報を探った。

「…………ちょっと絞りすぎたかも……何もないみたい……」

サーチの結果を聞いたカーリオは、少し考えていた。

「そうですか……んー、どうしますか……とりあえず、二手に分れて、調べましょうか?その方が効率がいいですからね」

珍しく、クフィンがカーリオの意見に同意していた。

「これだけ広いと……そうだな、この島には、どうせたいした魔物なんていないからな。その方がいいな」

「じゃあ、エルちゃんと私で!」

カーリオが突然、エルディアと行くと言いだした。

それを聞いたクフィンが、カーリオの発言に敏感に反応した。

「―――おい!魔道師2人で行ってどうする!」

カーリオはとぼけて見せた。

「あっ、そうでしたね……」

「お前と言う奴は……」

カーリオを睨み付けた後、今度はクフィンが、分ける構成について提案しだした。

「俺とエルディア、カーリオとミレイ、これでいいだろ」

すると今度はカーリオが、呆れ顔でブルーアッシュの髪の男に話しかけていた。

「クフィン……ちょっと露骨すぎやしませんか?」

クフィンはすぐに、反論していた。

「何がだ!両方ともバランスがいいだろ」

「やれやれ……あなたと言う人は……」

しかし、2人のやり取りを聞いていたエルディアは、別の組み合わせで行くと言った。

「あたしとミレイ、クフィンとカーリオでもバランスがいいわ……それで行く……」

それを聞いた男2人は、すぐに顔をしかめ、抗議の声を同時にあげた。

「ちょっと待ってください!最悪の組み合わせじゃないですか!」

「こんな奴とは組みたくない。エルディア、俺の方が腕は確かだぞ!」

それを聞いた、ミレイはクフィンを睨みつけ、叫んでいた。

「待ちなよ!あたしの腕が未熟だって言いたいのかい!」

クフィンはミレイを一瞥し、言い放った。

「……悪いが、そういうことだ」
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