Dark world~Adventurers~

yamaken52

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第十四話 2

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それを聞いたミレイは、静かに冷たい表情になると、僅かに微笑をたたえ、クフィンに話し掛けた。

「……へぇ、じゃあ、どっちが上か、試してみる?」

ミレイが、背中から長剣を抜き放つと、クフィンも腰にあるロングソードに手をかけた。

「かまわんぞ……相手をしてやろう。俺は、お前の兄のように口だけの男ではないからな……それを見せてやろう」

「酷い言われようですねぇ……私だって……」

カーリオが反論しようとしたとき、エルディアが叫んだ。

「―――いい加減にして!」

2人を睨みつけると、ミレイの手を引張った。

「あたしとミレイで行く。嫌なら、あたし一人で行くわ……」

カーリオがやれやれと言った表情でクフィンに話し掛けていた。

「はぁ……クフィン……ここは、諦めましょう……時に引くことも大事ですよ」

カーリオにそう言われたクフィンは、苦虫を噛み潰したような表情をし、剣をすぐにしまっていた。

「ちっ、しょうがないか……だが、元はといえば、お前が下らない提案をするからだぞ、カーリオ!」

カーリオは気にすることなく、軽く笑った後、エルディアに話しかけていた。

「ははっ、ばれましたか……エルちゃん、何か見つけたらフラッグをお互い出しましょう」

「わかった……そうする」

「エルディア、何かあればすぐに魔法を使って知らせるんだ。何があっても俺は、駆けつける!」

「はいはい、そこまでですよ、クフィン。行きましょう」

カーリオはそう言って、クフィンの背中を押した。

「俺に触るな!」

クフィンはカーリオの手を払いのけ、エルディアに背を向け歩き出した。

そして、カーリオとクフィンの2人は、お互い文句を言いながら、別の方へ向って行った。

それをやれやれといった表情で見送ったエルディアは、自分たちも行こうとミレイに言った。

「ミレイ、私たちも行こう……わたしのことはエルディアって呼んで……」

ミレイは、先ほどとは違い、笑っていた。

「はははっ!わかったよ、エルディア。だけどあの2人、いつもあんな感じなの?」

「……ええ、そうよ……」

「はははっ、カー兄のやつ、全然変わってなくて、なんか安心したよ」

エルディアは目を閉じ、呟いていた。

「2人ともちょっとは、成長して欲しい……」

どちらか片方に会うだけならば、二人とも静かに話すことが出来ていた。

しかし、クフィンとカーリオが一緒になると、先ほどのようなことがいつも起こっていた。

(……でも、何も無い日常よりは……いいのかな……?)

そして、しばらく笑っていたミレイは少し真面目な表情になり、エルディアに話し掛けていた。

「さっきは止めてくれて、ありがとう。あたしってちょっとしたことで熱くなってしまうんだ……よくそれを母さんに怒られるんだよ……」

「気にしなくていい……わたしはただ普通に、このクエストをこなしたいだけ……」

「そういや、あのクフィンって男。剣の腕は、どんなもんなんだい?」

「相当出来るわ……何度か見たことがある……」

「へぇ、そうなんだ……まあ、見た感じだけど、そこそこは出来そうだね」

エルディアは、何度か戦っているクフィンを見たことがあった。

高価な物が学院の敷地内の博物館にあり、強盗団がそこを襲撃したことがあった。

その時、クフィンは3人の強盗と戦い、見事倒していた。

そして他にも暴漢と戦ったりしているのを町の中で見たこともあった。

どれも一瞬で彼は相手を倒していた。

「あの男、あんたのこと気に入ってるみたいだね。目はきりっとしてて背も高いし、中々いい男じゃない。付き合ったりしないの?」

「……興味ない……」

「……ふーん」

エルディアは、何度もクフィンに、あなたとは付き合えないと断っていた。

そして、これから先も好きになることはないと言っていた。

だがクフィンは、エルディアに対する思いを変えることはなかった。

「お前は、それでいい……俺がお前を好いているのは、いつも変わらず故郷の男を思っている……そんなお前が好きだからだ。すぐに気持ちを変えるような女は好かん……それに、俺自身が誰を思おうと俺の勝手だ。お前に迷惑をかけるつもりもない」

そう言っていた。

そして、学園や町で会っても挨拶や今日の天候の話など、ちょっとした会話程度しか、しなかった。

また、彼がしつこく迫ってくることもなかったので、特になんとも思っていなかった。

自分は、とにかく、今はこのクエストを終わらせて、冒険者になり、ユラトのもとへ行くことしか頭になかった。

「じゃあ、あんたって他に思ってる人でもいるの?」

気が緩んでいたところにいきなり、鋭い質問がきたのでエルディアは、ややうろたえた。

「えっ……別に……あなたに関係ないでしょ……」

エルディアの驚いた顔を見たミレイは、少しにやけていた。

「はっは~ん。こりゃ、いるね」

エルディアは、少し動揺しながら答えてしまっていた。

「ミレイ、今はクエストに集中して……」

「ははっ!そうだね、悪かったよ。(あんたのこと大体分ってきた……ふふっ)」

どうやらミレイは、話を通じて、エルディアがどんな人物か探っていたようだった。

(シュリンと同じ事言わないで欲しい……わたしって……顔に出やすいのかな……)

そして、2人は、しばらく無言で歩いていた。

辺りは相変わらず薄暗く、大きな木が茂っており、そこをエルディアとミレイは見渡しながら歩いていた。

そして、先ほど使用したマナサーチの範囲外へ来ていたので、エルディアが再度、魔法を発動させた。

「マナサーチ……」

杖の先端が光り、青い矢のようなものが、四方へ飛ばされる。

彼女は、目を瞑った。

そして、辺りを探る。

すると、何か反応があった。

「―――!?何か……いる……けど、これは……」

ミレイの目つきが鋭くなった。

「―――どういうこと?この島には、魔物はいないんじゃなかったの?」

ミレイは剣を両手で握り締め、エルディアを守るように、辺りを警戒した。

「こっちの方……」

エルディアが指差した方へ、2人は慎重に向った。

そして、茂みの奥へ入り、その先で見たのは、切り株の上に仰向けに倒れている、小人だった。

大きさは手のひらに収まるほどしかなかった。

「あれは……?」

戸惑っているエルディアにミレイは、その小人の名称を告げた。

「あっ……あれ、知ってる。『ノーム』だよ」

赤く真っ直ぐ尖った帽子とチョッキを着ている、長い髭を持った老人の姿をした小人だった。

【ノーム】

4元素の精霊のうちの一つ、大地を司る精霊。

非常に小さく、人間の手のひらに、軽く乗ってしまうほどの大きさしかない。

見た目は、真っ赤な尖った帽子をかぶっており、その姿は立派な白い髭を生やした老人のような風ぼうをした小人である。

大地の力が強いところに、よく出現する。

また、4元素の精霊の中で最も高い知性を持っている。

2人は、ノームのところへ近づいた。

「寝てるみたい……」

エルディアの言う通り、すやすやと寝息を立てて寝ているようだった。

「こいつは、山にもいるからね。あたしのいた村でも、よく見るんだ」

「そう……」

2人の話し声に気づいたノームは、目を覚ました。

「ん~……―――!?なんじゃ、お前さん達は!」

「じいさん、安心しな、ただ通りがかっただけだよ。危害を加えるつもりはないさ」

「……そうか、ならいいが……」

ノームは少し気が立っている様子だった。

「機嫌があんまり良くないみたいだね。なんかあったのかい?」

ノームは赤い帽子を手に取るとかぶり直し、立ち上がった。

「ん、お前達人間がやったんじゃろ。大地を汚したのは……」

ミレイは、怪訝な顔をし聞いていた。

「大地を汚した……?」

ノームは、両手を握り締め、怒っていた。

「そうじゃ、あんなのは人間にしか出来んぞ!」

「……なんのこと?」

エルディアの質問にノームは、その情景を思い浮かべながら答えていた。

「何か変なものが描かれた奇妙な儀式じゃよ。そのために、大地の力が失われよったわ……わしらは、大地の力のあるところしか存在できんのに……なんてことをしてくれるんじゃ!」

それを聞いた、エルディアとミレイの表情がやや強張った。

「―――儀式?!」

「じいさん、その場所へ案内してくれないか?」

「あんなもん見てどうするんじゃ、もう終わった後じゃぞ?」

「あたし達は、それを探しているの。だから、お願い……」

ノームは、あまり言いたくないのか、案内を渋っていた。

「しかし……のぅ……」

そんな大地の小人を見たミレイは、彼に近づくと背中から赤い服をつまみ上げた。

「さっさと教えな」

ノームは、体や手足を動かし、抗議の声を上げた。

「な、なにをするんじゃ!年寄りは大切にするもんじゃぞ!」

エルディアが、すぐに仲裁に入った。

「ミレイ、落ち着いて」

ミレイは自分の顔の近くまでノームを摘み上げ、話し掛けていた。

「……分ってる。だけど、じいさん、あたし達にとって重要なことなんだ。だから、早めに頼むよ」

ノームは、抵抗するのを止め、ミレイの言うことに従った。

「……わかったわい、せっかちな奴じゃ……じゃあ、そこの魔道師の姉ちゃんの肩に乗せてもらえるかのぅ……ふぉふぉ」

「いいわ……」

エルディアは、ノームを手のひらに乗せると、今度はそのまま、自分の右肩へ乗せた。

そして、2人はノームの指差した方角へ歩き出した。

「やはり、若いおなごはええのぅ……ふぉふぉ」

大地の精霊は、先ほどより表情を緩め、喜んでいるようだった。

それを見たミレイは剣を抜き放ち、ノームを睨みつけた。

「じいさん、変な事したら、これで叩き切るからね」

ミレイの迫力に押され、ノームの顔は少し青ざめていた。

「な、なんと言う恐ろしい、おなごじゃ……女と言うものはな、もう少し慎み深くじゃな……っ!……ありゃ、よく見れば、お主、バルガの者か?」

「ああ、そうだよ。だから、容赦はしないよ」

「狂神フュリスに魅入られた部族……バルガの戦士……誰もが恐れる者の一つじゃな……おおっと、今度はそっちの方角じゃ」

2人は、この小人の老人の言う通り、方角を変え、辺りを警戒しながら歩いた。

辺りは、相変わらず薄暗い森の中だった。

そしてしばらくノームの言う通り、森の中を進んでいた2人の目の前に、その場所が見えてくる。

先ほどより、開けた場所で、木の間隔が広く、日が僅かに入っていた。

「そこが、そうじゃ。ほれ、そこじゃ!」

ノームが指差した場所には、朽ちた切り株があった。

僅かに日の光が当たり、ぼろぼろで原形を保っていないほどで、苔が生え、その苔から小さな花が咲いていた。

そして、その切り株の辺りに、いくつも枝分かれした、禍々しい形の根が、辺りに這うように盛り上って生えていた。

その広がった木の根の上一帯に、何か模様ような絵が描かれていた。

人が両手を広げたより、一回りほど大きいものだった。

エルディアとミレイは真剣な眼差しで、それを見つめた。

「―――これは!?」

「……魔法陣ね……」

その魔法陣は、外側が赤く、円の形で描かれており、その円の中に、何か奇妙で色鮮やかな羽と刺がたくさん付いた長い尻尾を持った虫のような絵があった。

「この魔法陣は、この木の力を使って行われたんじゃよ。この木は、魔力が他の木よりも高い木じゃからのぅ……」

エルディアが眼鏡を取り出しかけると、朽ちた切り株に近づき、軽く手で触れ、香りを嗅いだ。

そして、あることに気づく。

「少しツンとして苦味を含んだ、この香り……この木は『ラオルバの木』ね……それに何か別の物も……何かな……これ……」

ラオルバの木

魔力が他の木に比べて高い木。

年に一度のヴァルプルギスの一番最初のかがり火に使われる木でもある。

そのままだと苦味のある独特の香りがする。

しかし、火によって燃やされると、深みのある柔らかで甘い香りが出てくる。

そして木が燃えると赤に近い橙色の煙と灰が出る木。

「そうじゃ、さすが魔道師じゃ、よー知っとるわ……ふぉふぉ」

「噂は本当だったのか……これは、やばいかもしれないね……」

「ミレイ、あの2人を呼ぶわ。呼び出された後みたいだから、一応警戒を……」

「わかった!」

そしてエルディアは、クフィンとカーリオを呼ぶための魔法の詠唱を開始した。

ミレイは、剣を抜き放ち、周囲を警戒し、武器を構えた。

「……大気を踊り、風振るう魔力の印よ、大空へ飛翔し、光源の御旗となり、一天に轟け……そして我が魔力の叫びに応じよ……」

エルディアが、魔法の詠唱を済ませると、杖の先端に黄色い魔法の火の玉が宿った。

それを、左手の手のひらで、上空に打ち上げるようにやや強めに叩く。

「……マナフラッグ!」

すると、その火の玉は、黄色い一本の筋を作りながら、一気に上空へ上がると、膨張し、すぐに弾けると強い光を放った。

そして、空気の振動が起こり、広がっていった。

ミレイは、初めてのマナフラッグの感覚に、眉をひそめた。

「……くっ、これが、マナフラッグか……嫌な感覚だね……」

ノームは耳を両手で塞いでいた。

「年寄りには、こたえるわい……」

「少しだけ、我慢して……これでも、範囲を押さえてあるの……もっと広い範囲だと、もっと響くわ……」

そして、エルディアは続けてマナサーチの魔法も使用したが、辺りに反応は何も無かった。

ノームを含めて3人は、無言で辺りを警戒しながら待つことにした。

待っている間にエルディアは、持っていた紙に魔法陣を粗描しておいた。

しばらくして、クフィンとカーリオが、エルディアたちのいる所へ駆けつけていた。

クフィンはいつになく、血相を変えて来ていた。

「エルディア!大丈夫か!」

そして、遅れてカーリオが、荒い息をつきながら現れた。

「待ってください、クフィン……はぁはぁ……全く、あなたは……エルちゃんのこととなると他は何も見えないんですねぇ……」

ミレイは、待ちくたびれているようだった。

「やっと来たか、カー兄……普段から体を鍛えないから、すぐにばてるんだよ」

疲労で顔をしかめ、汗を拭いながら、カーリオは妹に答えていた。

「はぁはぁ……あなたたち、戦士や剣士と違って私は魔道師なんですよ? 体力なんてこんなもんです……全く……ふぅ……」

一方エルディアは、クフィンを落ち着かせようとしていた。

「クフィン、落ち着いて、敵はいないし私もミレイも無事よ……それより、2人ともこれを見て……」

エルディアが無事だと分ると彼は、いつものように鋭い目をもった無表情な顔に戻った。

「……そうか、ならいい……」

エルディアの指差した場所を2人は見た。

「……なんだこれは?」

「……ほう、これは魔法陣ですね……」

エルディアはカーリオに尋ねた。

「カーリオ、これ何の魔法陣だか分る?」

カーリオは、魔法陣に静かに近寄ると、しゃがみ、赤い円の部分を調べた。

「……これは……」

指でつまみ、匂いを嗅いだ。

「召喚は、成功させている可能性が高いですね……」

「なんだと!?」

「だーから、わしが、さっき言ったじゃろうが!もう終わった後じゃと」

クフィンとカーリオは、突然老人の声が聞こえたエルディアの右肩を見た。

「……ん?……おや……」

「―――っ!?魔物か!?エルディア、お前の肩に魔物がいるぞ!叩き落せ!」

クフィンは、素早く剣を抜き放ち、構えた。

「なんじゃ、なんじゃ! 怖いのぅ……」

ノームは驚き、エルディアの首の後ろ側へ隠れた。

すぐに、エルディアが、クフィンに説明をした。

「クフィン、大丈夫よ、これは大地の精霊ノームよ……」

カーリオは、知っているようだった。

「エルちゃんの言う通りですよ、これはノームですね。クフィン、大丈夫です」

「なんだノームか……」

クフィンは警戒を解き、剣をしまった。

そして、無表情になり、何事も無かったかのように静かに魔法陣を見つめていた。

そんなクフィンの態度を見たノームは怒っているようだった。

「謝りもせんのか! 全く、礼儀を知らん奴ばかりじゃ!」

エルディアが自分の肩に乗っているノームの方へ顔を向け、クフィンに代わり謝った。

「ノーム……私が謝るわ、ごめんなさい……」

「ふんっ!……」

ノームは腕を組み、エルディアの肩にあぐらをかいて座っていた。

そしてミレイが辺りを警戒しながら兄に魔法陣の詳細について聞いていた。

「……で、カー兄、これは何なのさ」

カーリオは、魔法陣の近くでしゃがみ込み、匂いを嗅いだまま答えた。

「ああ、そうでした……赤い部分はラオルバの木と灰ですね、それに何か動物の血を混ぜてますね……中の絵は、何かはわかりませんが……様々な色のある石を砕いて砂状にしたもので描いてありますね……」

クフィンがノームの方へ、先ほどより、近づき聞いていた。

「おい、ノームの爺さん。こいつが呼び出されたのは、間違いないんだな?」

しかし、初めて彼と会う者にとっては睨んでいるように見えた。

「ふんっ、ふんっ! お前には言わんぞ!」

ノームは、まだ怒っているようだった。

腕を組んだまま、クフィンから顔を背け、何も言わなくなった。

クフィンは、ノームをもう一度、一瞬チラリと見ると視線を元に戻し呟いた。

「しょうがない爺さんだな……」

それを見たカーリオは呆れながら、この目つきの悪い男に忠告していた。

「はぁ……クフィン……あなたはもう少し他人の気持ちというものをですね……」

クフィンは、カーリオの言葉を無視し、腕を組みながら魔法陣を調べているエルディアを見守っていた。

そして、魔法陣を調べていたエルディアが何かに気づき、代わりに答えていた。

「赤い円状の部分に、薄く焦げ目が付いてるから……ほんとに呼び出された後の可能性が高いわ……」

エルディアの言葉を聞いたクフィンは忌々しげに呟いた。

「そうなると、悪魔がこの辺りにいるかもしれんと言うことか……」

「………」

全員辺りを警戒し、息を呑んだ。

辺りは相変わらず静かな暗い森が広がっていた。

「……とにかく、町に戻ろう」

「そうですね。そして、学院長へ報告をしますか。クフィンは自警団へ連絡を」

カーリオが、そう言いながら地面にホークスアイを埋めた。

「……これでよし、っと……さあ、戻りましょう!」

パーティーは無言で引き返した。

そして森の入り口へ付くと、ノームがエルディアの肩から地面へ飛び降りると話しかけてきた。

「お嬢ちゃん、わしはここらでいい……まあ、あとはお前さん達で頑張ってくれ。わしはこの辺りにおるからのぅ、何か聞きたいことがあるなら尋ねてくるといい……そこの目つきの悪い奴以外は、歓迎するぞ、ふぉふぉ」

「クフィンが、変なことするからですよ」

「……ふんっ、別にかまわん」

「最後まで失礼な奴じゃ!」

エルディアたちはノームと別れ、すぐに学院の敷地に戻った。

時刻は夕方になっていた。

寮の建物の近くまで来ると学生が寮へ出入りしているのが見えた。

「じゃあ、俺は自警団へ知らせてくる……」

「ええ、お願いします、クフィン」

「じゃあ、私たちは、学院長の所へ……」

「後で、いつもの料理屋で会いましょう」

「ああ、わかった」

そして、クフィンと別れたエルディアたちは学院長室へ行き、その事実を知らせた。

オイゲルは驚いた。

「―――なんだと!? 本当だったのか……面倒だな……だが、放っておくわけにも……」

そして腕を組み、視線を下へ向け、どうするか考えていた。

カーリオは、動揺しているオイゲルを尻目に早くクエストの報酬が欲しいらしく、話を切り上げようとした。

「じゃあ、報告はしましたから私たちのクエストは、これで終わりと言うことで……」

学院長は、思いつめた表情ですぐにカーリオたちを呼び止めた。

「いや、すまんがこれで終わってもらっては困る」

「しかし……どうしろと?」

「エルディア君が描いた魔法陣について、悪いが調べてくれないか? どんな悪魔か知っておきたいんでな……」

「それは、自警団に任せては?」

「そうしたいのは山々なんだが、向こうも人数が足りんのだよ……この町には今、最小限の人数の人員しかおらんのが現状だ……だから、応援が来るまで、こっちである程度調査を進めておきたい。何かあっては遅いし、私の責任になってしまう……せっかく学院長になれたと言うのに……」

エルディアは、いくつか魔方陣に関する本を読んだことがあったが、今回のは見たことがなかった。

それだけに、どうすればいいのか分からなかった。

「あの魔法陣は、大図書館の本には載っていないものだと思います……」

彼女の言葉を聞いた学院長は困っているようだった。

「本当か!……まいったな……どうすれば……」

そして、カーリオの方へ視線を向け、話しかけていた。

「………何か他に知る方法はないのかね?」

オイゲルに助けを求められたカーリオだったが、彼も知らない物のようだった。

「私も見たことがないですからねぇ……こういった事に詳しい人物……うーん……」

部屋にいる皆が何か方法はないか考えたが、なかなか良い案は思いつきそうになかった。

ここまで黙って話しを聞いていたミレイが口を開いた。

「ここ以外の地域とかにもないのかい?」

そしてその時、エルディアが何かを思い出した。

「……カーリオ……南の占いの人は?」

カーリオは、エルディアに言われた人物について考えた。

「……確か、有名な占い師、『ビルハッド・ギンチェスター』と言う人物でしたね」

ミレイも知っていたようだった。

「そこって、母さんもたまに行っていた場所だね?」

「ええ、そうです。結構当ると評判ですよ。あそこにしか無い、本がいくつかあるとか聞いたことがあります。その中に、まあ、風の噂程度ですが、召喚関係の本もあるとか……」

カーリオのその言葉を聞いたオイゲルは、机の引き出しを開け、紙とペンを取り出し、エルディアたちに話しかけていた。

「その人物は、知っておる。あそこは予約制だったが、緊急事態だ。私から手紙を書いておこう。それを持って行ってくれ、そうすれば会ってもらえるはずだ」
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