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第十八話 8
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シュリンは慌てて、エルディアに話しかけていた。
「エル先輩!西の彼の元へ行かなくていいんですか!?」
「行きたいけど……だけど、この機会を逃したら、もう二度と入れないかもしれないの……だったら……」
シュリンは、今一つレビアの情報を信じることができなかった。
そしてずっと側でエルディアを見ていたシュリンは、西に行くべきだと思っていた。
(ずっと、会いたそうに手紙を見ていたの、あたし知っているんだから……だから……絶対に会いに行って欲しい……)
それもあってか、本人も気付かぬうちに力を込めてレビアに聞いてしまっていた。
「えっと……レビアさんって言いましたよね?本当に、入れなくなっちゃうんですか!?」
「あ、あたしに、そんなに強く聞かれても……ギルドに書かれていた情報を読んだだけだし……」
「シュリン……」
レビアが、少しシュリンに気おされていると、近くから声がかかった。
「おっ!声がすると思ったら、そこに居やがったか!」
人込みを掻き分けながら、シュリンの兄であるデュランが、エリーシャを伴って現れていた。
「……あ、兄貴」
そこで、デュランはエルディアにも気付いた。
「おう、あんたもいたのか。丁度いいや」
「どうしたの?」
少し残念そうに、エリーシャが話してきた。
「シュリン、あたしたち、そろそろこの町から他の所へ行くことになりました」
「え、兄貴、調べもの終わったの?」
「ああ、次に行く場所が決まってな。それで出発する前に、お前と世話になったって言うあんたに礼を言っておこうって思ってな」
良く見ると、デュランとエリーシャは、旅に出るための服装になっていた。
「……そう……(みんな、居なくなっちゃうんだ……)」
シュリンは、寂しく思った。
しかし、彼女はその本心を隠して、兄に話しかけた。
「それで、今度はどこに?」
エリーシャが答えた。
「西のエルフィニアへ、行ってきます!」
そこで、レビアがエルディアに話しかけていた。
「エルディア、あたしは、あなたでもいいけど、一応カーリオにも話しておくわね!」
「うん……わかった。あとで連絡を……」
「うん!それじゃ!」
レビアは、カーリオを探しに行った。
そして、エルディアがシュリンたちの方へ視線を向けると、デュランが妹に、説明をしているところだった。
「……あれから、何日か大図書館に篭って、色々調べてたら、西のウッドエルフのいる森の辺りに、目的のものがあるらしいんだ。ま、ウッドエルフに聞いてもいいんだろうけどな……」
エリーシャは、興奮気味に話していた。
「エルフっていたんですね!わたし、物語でしか知りませんでした」
そんな人魚の娘を見たデュランは、慌てて彼女をだまらせようとしていた。
「エリーシャ、あんまり喋るな!」
だがすでに遅く、シュリンは「彼女が何者なのか」と思い、再び疑問を持った。
「えっ……(結構前に見つかったって情報があったと思うんだけど……その話題で島中、持ちきりだったのに……エリーシャさんって……一体……)」
デュランは、そんな妹に誤魔化そうと試みていた。
「こ、こいつあんまり情報の入らない、僻地の田舎にいたんだ!そ、そうだ。エルディアだったか、あんたも学院を出て冒険者になるんだってな」
シュリンは、疑いの眼差しで兄を見ていた。
「………怪しい……」
「な、なんだよ、てめぇ。俺らのことより、そっちはどうなんだ?」
どもりながら兄にそう尋ねられたシュリンの表情が沈んだ。
「エル先輩は、冒険者になって北東のレムリアに行くんだって……」
「ほう……あんまり冒険者に向いているようには思えなかったが……そうか……レムリアか……噂だが、ゼグレムがまだいるとか聞いたな……」
エルディアはあまり興味がないようだった。
「そう……」
「まあ、とりあえず、俺らはもう行くぜ。シュリン、勉強頑張れよ!」
「うん……」
この兄弟は、事件の後の数日間、毎日会って食事を共にとったりしていた。
その時に、色々な話をした。
だから、特に話すことは無いとデュランは思っていた。
元気の無くなったシュリンにエリーシャが近づいた。
「シュリン、またすぐに戻ってきますよ!だから、その時はお料理教えてください!」
「エリーシャさん……」
2人は、名残惜しそうに軽く抱き合った。
そして、デュランとエリーシャは、レイアークの町を出て行った。
「シュリン……いいお兄さんじゃない」
「……いざとなったら、いつもあたしとお母さんに、何かしてくれる兄でした……そう言うの、ちょっとだけ思い出しました……エル先輩、あのエリーシャって人、何者なんでしょうね?」
「シュリン、何か気になることでもあったの?」
「ちょっと変わってるなって思ったんです。良い人なんでしょうけど……」
「大丈夫よ、シュリンのお兄さんってきっと人を見る目はあると思う」
「そうでしょうか……あれから、あたしなりに色々考えたんです……」
「あの2人のこと?」
「はい」
「どんな風に?」
シュリンは拳を握り締め、力を込めて話した。
「きっと、あのエリーシャって人、どこかのお金持ちのお嬢さんなんですよ。それで、兄貴と駆け落ちでもして、逃げて来たんじゃないかって!」
「シュリンには、そういう風に見えたの?」
そこでシュリンは少し目を輝かせて話した。
「きっとそうです!それで兄貴やるなー!って思ったんです!」
「シュリン……」
どうやらデュランの妹は兄とエリーシャと数日間接する中で得た情報から、その様に推測し、自分を納得させているようだった。
「まあ、悪い人じゃないから……どんな身の上だっていいんですけどね……」
「そう……(何か秘密がありそうだったけど……私にはわからない……)だけど、2人とも、真剣に私達を救うために、戦ってくれたんだから、悪い人なわけがないわ……」
「はい……(2人とも、どうか無事で……)」
シュリンは、兄とエリーシャが去っていった方角を見つめながら、2人の無事を祈った。
エルディアとシュリンが買い物から帰ると、寮の近くにカーリオとレビア、そしてクフィンがいた。
「―――あ!帰ってきたみたい!」
レビアが手を振っているのが見えた。
「あの3人は……」
「会えたみたいですね」
そして、そこへたどり着くと、レビアがすぐに話しかけてきた。
「エルディア!カーリオも行くって!」
カーリオは、浮かない顔つきでエルディアに話しかけてきた。
「まさかエルちゃんがレムリアへ行くとは思いませんでした……」
そして、心配そうに話しかけてきた。
「故郷の彼の元へ……行くのではなかったのですか?」
「うん、そうしたいんだけど……」
エルディアの心を読んだかのようにクフィンが呟いた。
「解呪のスクロールか………」
「うん……」
「なるほど……やはりそれですか……まあ、私としては、魅力的な女性方に囲まれる旅も悪くないですが……本当にいいんですか?」
彼女は、本当はすぐにでも行きたかった。
しかし、魔女メディアの占いの結果もあったせいか、エルディアはすぐにでもユラトの体から呪いを解くべきだと強く思うようになっていた。
だから、せっかくの呪いを解く機会を逃したくはなかった。
「出来ることはしておきたいの……」
クフィンは、そんなエルディアを黙って見つめていた。
(エルディア……それほどまでに……ならば……)
そしてクフィンは、決意を秘めた表情で、エルディアに話しかけた。
「俺がその解呪のスクロールとやらを手に入れてやろう」
エルディアは、クフィンに尋ねた。
「……クフィンもレムリアへ?」
「ああ……カーリオだけに、美味しい思いをさせるわけにはいかないからな」
それを聞いたカーリオは片手を広げ、笑みを浮かべた。
「それは残念ですねぇ」
「クフィン……ありがとう」
「気にするな。元々、自警団を辞めた俺はカーリオの研究に付き合ってやるつもりだったんだ。(本当は………ふっ……考えても無駄か……)」
レビアは、パーティーが早くも揃ったことに喜んでいた。
「クフィンも来てくれるってことは、魔道師3人に剣士1人の構成のパーティーが出来たってことね。やったわ!面倒な仕事がこんなにも速く終わりそうなんて!」
エルディアは魔道師が多いこの構成に、少し不安を覚えた。
「この4人で大丈夫かな?」
エルディアに尋ねられたレビアは、表情を元に戻すと腕を組み、人差し指を唇に当て考えていた。
「うーん……そうね……確かにあと1人、前衛が欲しいかも……」
クフィンがカーリオに話しかけた。
「カーリオ、お前の妹はどうした?彼女なら、なかなか腕が立ちそうだが?」
クフィンの質問に、シュリンが答えた。
「えーっと、ミレイちゃんは大地の神殿から北にある道が通れるようになったんで、もうバルガの村へ向いましたよ」
カーリオが更に詳しく話した。
「妹は、バルガの成人の儀式をしに行ったんです」
「そんなものがあるのか……」
「ええ……まあ……」
カーリオは、バルガの儀式を思い出していた。
(特に戦士があれをしないと……我々は……)
そして妹の事を思った。
(まあ、ミレイならすぐに終わるでしょうから、心配はしていませんが……)
レビアは、仕方なくといった感じだった。
「じゃあ、向こうで募集をかけるか……」
「そうだな。まあ、俺1人でもかまわんが……」
そこでカーリオが笑みを浮かべながら、レビアに話しかけた。
「あの、できれば……」
レビアはカーリオを睨みつけ、話しを遮るように叫んだ。
「―――却下!!」
「まだ、何も言ってませんが?……」
「カーリオの言いたい事はわかるから!」
シュリンもレビアの言いたい事がわかったのか、疑いの眼差しで彼に話しかけた。
「カーリオさん……どうせ女の冒険者が良いとか言おうとしたんでしょ」
「あら……良くお分かりで」
「はあ……」
みんなそこで、ため息を付いていた。
そして、エルディアが気を取り戻すと、みんな話しかけた。
「そうだ、みんな食事まだなんじゃない?」
レビアがそれに答えた。
「うん、まだよ」
それを聞いたエルディアとシュリンは目を合わせた。
「じゃあ、エル先輩」
「うん、そうしよう……」
その日、彼らは学園の中庭で、シュリンとエルディアが作った料理を食べた。
本当はデュランとエリーシャと共に食べる予定のものだったが、彼らが旅立ってしまったため、レビアたちと食べることした。
皆、楽しそうに彼女らが作った料理を食べていた。
シュリンが手際よく作ったため、エルディアは少し手伝う程度だった。
シュリンは、笑顔を浮かべているエルディアを見ていた。
(これで、料理を共に作るのも最後かぁ……いつも優しくて、私にとっては本当の姉のような人……本当は西に行って欲しかったけど……でも、元気でいてくれたらそれでいいです……また……会えますよね?)
こうして、エルディアの学院生活は、幕を閉じた。
そして、エルディアは今、東のバルディバの港から出航する船の中にいた。
船には、冒険者や商人、そしてレムリアを開拓するために向う人々などが乗っていた。
港全体が活気に満ちており、その活気に反応するかのように海鳥たちも声をあげ、辺りに響かせていた。
波は穏やかで、ほとんど雲の無い空からは日の光が降り注ぎ、船の白い帆をより一層白く、海を青く見せていた。
僅かに強い風が吹き、エルディアのかぶっていた帽子を一瞬、ふわりと浮かせた。
エルディアは、その帽子を手で押さえ、バルディバの町を眺めた。
そして、学院で過ごした日々とシュリンの事を考えていた。
(シュリン……学院での生活が光によって彩られたように見えたのは、あなたのおかげよ……また、島に戻ったら、あなたのいるところに寄るから、その時は、また一緒に雑談をしながら料理でもしよう……本当にありがとう……)
隣りにクフィンとカーリオがやってきた。
「エルディア、そろそろ出港みたいだ。忘れ物はないか?」
「ええ、大丈夫……」
カーリオがエルディアの隣りに来ると、船に手をかけ、話しかけた。
「何かを考えていたみたいですね」
「学院にいた日々のことを……少し……」
カーリオとクフィンは、エルディアと同じ様に、バルディバの町を眺めた。
古い建物が立ち並び、海沿いに宿屋がいくつか存在しているのが見える。
また、近くに魚市もあって、そこに魚介類を求める人が集まっていた。
皆、元気な声を出し、てきぱきと動いているのが見え、町全体が活気に満たされているのがわかった。
カーリオは、エルディアやクフィンと初めて会った時の事を思い出した。
そして、表情豊かになった二人の事を思い、満足げな表情になると、笑みを浮かべ、軽く目を閉じた。
「ふふっ……そうですか……」
エルディアが少し寂しげに見えたクフィンは、話題を変えることにした。
「そう言えば、クリスの奴はなぜ、男にならなければならなかったのか……」
「確かに、良く分からないことがありましたね」
エルディアは、顔を動かすと視線を景色から2人の男へ向けた。
「それ、ずっと考えていたんだけど……一つ思い出した事があるの……」
「……ほう、なんでしょう?」
「2人とも、ニーフェの森で出会ったあの夜盗の男が言っていた事を思い出して……」
―――この稼業ってのは、舐められたら終わりなんでな。―――
クフィンとカーリオは、その言葉を何となくだが思い出していた。
「舐められたどうとか言っていた奴か……」
「……なるほど、若い女の人では裏の世界の人々を束ねていくのは、確かに大変なのかもしれませんね……まあ、同情はしませんが……」
「きっと、そう言う事なんだと思ったの……」
「そうなんだろうな……(いくつもの謎は残っている……俺自身もな……)」
クフィンは、父親が実力で冒険者になる道を邪魔してくるのではないかと思っていたが、ジェラルドは、あの後何も言ってこなかった。
(ふんっ……まあ、いいか……俺はもう決めたんだ……だから今は、この道を行ける所まで行くつもりだ……)
そしてエルディア達が雑談をしていると、荷物を抱えながら船に乗ってきたレビアが3人を見つけ、すぐにやって来た。
「みんな!私達が目指す町のことが少し分かったわ!」
「何か情報が入ったのか?」
クフィンが尋ねると、レビアは行き先について話し始めた。
「えっとね、ギルドにさっき入った情報らしいんだけど、西の大陸エルフィニアの大きな森林地帯でハイエルフの国を探している冒険者たちが、新たな情報を発見したらしいのよ!」
新発見の言葉にカーリオは興味を示した。
「ほう、新発見ですか」
「うん、なんかね。あの有名な冒険者フェイ・ファディアスの本らしくて、そこには『世界の七不思議』ってのが書いてあったらしいのよ」
「七不思議?」
「うん、それでその七不思議の一つが、今度私達が行くことになる場所らしいの!」
「そんなのがあるんだ……」
「七不思議ですから7つもあるんですか?」
「うん、そうみたい。全てを知っているわけじゃないんだけど、とりあえず、あたし達が行く町の名前が『アレクシャ』って言う名前で、そこにある『フヴァル』の灯台ってところが、その内の一つで行き先みたい!」
「どんな町なんでしょうねぇ」
「さあ、そこまでは分からないけど、向こうに着くまで結構時間がかかるみたいだから、気長に行きましょ!」
「うん……」
「西の森の方は人が減っているとか聞きましたけど、まだ頑張っている冒険者もいるみたいですね」
「噂だが、ハイエルフの国は無いと聞いたな……」
そこでエルディアはユラトの事を思い出していた。
(ユラト……ごめん……そっちに行くの少しだけ遅れそう……手紙をイシュト村へ出しおいたけど……帰ったら読んでくれるかな……)
その時、出航の合図である、鐘の音が鳴った。
―――カーン!カーン!カーン!
音が鳴ると、船員たちは錨を上げ、忙しそうに動き始めた。
そして船は、バルディバの港から離れていく。
「あっ、出航するみたいよ!みんな、準備はいい?」
「ええ……」
「大丈夫です」
「問題はない……しかし……今さら遅いぞ……」
クフィンにそう言われたレビアは笑い声をあげた。
「あははっ!クフィンの言うとおりね!あたし、景色と鳥たちを見たいから、船首へ行ってくる!」
そう言ってレビアは、元気に走って船の先端へ向っていった。
エルディアはそんな彼女を見送った後、1人船尾へ向い、西の空を見上げた。
そして、心の中でユラトへ言葉を送った。
(ユラト……行って来る……私……頑張るから……あなたもその黒い霧で包まれた世界の最前線で頑張って!)
エルディア達が目指すのは世界の七不思議と言われる場所。
一体どんな事が待ち受けているのか?
彼女は潮風を受けながら、不安な気持ちと少しばかりの高揚感を感じていた。
ラドルフィア魔法学院編 -終わりー
「エル先輩!西の彼の元へ行かなくていいんですか!?」
「行きたいけど……だけど、この機会を逃したら、もう二度と入れないかもしれないの……だったら……」
シュリンは、今一つレビアの情報を信じることができなかった。
そしてずっと側でエルディアを見ていたシュリンは、西に行くべきだと思っていた。
(ずっと、会いたそうに手紙を見ていたの、あたし知っているんだから……だから……絶対に会いに行って欲しい……)
それもあってか、本人も気付かぬうちに力を込めてレビアに聞いてしまっていた。
「えっと……レビアさんって言いましたよね?本当に、入れなくなっちゃうんですか!?」
「あ、あたしに、そんなに強く聞かれても……ギルドに書かれていた情報を読んだだけだし……」
「シュリン……」
レビアが、少しシュリンに気おされていると、近くから声がかかった。
「おっ!声がすると思ったら、そこに居やがったか!」
人込みを掻き分けながら、シュリンの兄であるデュランが、エリーシャを伴って現れていた。
「……あ、兄貴」
そこで、デュランはエルディアにも気付いた。
「おう、あんたもいたのか。丁度いいや」
「どうしたの?」
少し残念そうに、エリーシャが話してきた。
「シュリン、あたしたち、そろそろこの町から他の所へ行くことになりました」
「え、兄貴、調べもの終わったの?」
「ああ、次に行く場所が決まってな。それで出発する前に、お前と世話になったって言うあんたに礼を言っておこうって思ってな」
良く見ると、デュランとエリーシャは、旅に出るための服装になっていた。
「……そう……(みんな、居なくなっちゃうんだ……)」
シュリンは、寂しく思った。
しかし、彼女はその本心を隠して、兄に話しかけた。
「それで、今度はどこに?」
エリーシャが答えた。
「西のエルフィニアへ、行ってきます!」
そこで、レビアがエルディアに話しかけていた。
「エルディア、あたしは、あなたでもいいけど、一応カーリオにも話しておくわね!」
「うん……わかった。あとで連絡を……」
「うん!それじゃ!」
レビアは、カーリオを探しに行った。
そして、エルディアがシュリンたちの方へ視線を向けると、デュランが妹に、説明をしているところだった。
「……あれから、何日か大図書館に篭って、色々調べてたら、西のウッドエルフのいる森の辺りに、目的のものがあるらしいんだ。ま、ウッドエルフに聞いてもいいんだろうけどな……」
エリーシャは、興奮気味に話していた。
「エルフっていたんですね!わたし、物語でしか知りませんでした」
そんな人魚の娘を見たデュランは、慌てて彼女をだまらせようとしていた。
「エリーシャ、あんまり喋るな!」
だがすでに遅く、シュリンは「彼女が何者なのか」と思い、再び疑問を持った。
「えっ……(結構前に見つかったって情報があったと思うんだけど……その話題で島中、持ちきりだったのに……エリーシャさんって……一体……)」
デュランは、そんな妹に誤魔化そうと試みていた。
「こ、こいつあんまり情報の入らない、僻地の田舎にいたんだ!そ、そうだ。エルディアだったか、あんたも学院を出て冒険者になるんだってな」
シュリンは、疑いの眼差しで兄を見ていた。
「………怪しい……」
「な、なんだよ、てめぇ。俺らのことより、そっちはどうなんだ?」
どもりながら兄にそう尋ねられたシュリンの表情が沈んだ。
「エル先輩は、冒険者になって北東のレムリアに行くんだって……」
「ほう……あんまり冒険者に向いているようには思えなかったが……そうか……レムリアか……噂だが、ゼグレムがまだいるとか聞いたな……」
エルディアはあまり興味がないようだった。
「そう……」
「まあ、とりあえず、俺らはもう行くぜ。シュリン、勉強頑張れよ!」
「うん……」
この兄弟は、事件の後の数日間、毎日会って食事を共にとったりしていた。
その時に、色々な話をした。
だから、特に話すことは無いとデュランは思っていた。
元気の無くなったシュリンにエリーシャが近づいた。
「シュリン、またすぐに戻ってきますよ!だから、その時はお料理教えてください!」
「エリーシャさん……」
2人は、名残惜しそうに軽く抱き合った。
そして、デュランとエリーシャは、レイアークの町を出て行った。
「シュリン……いいお兄さんじゃない」
「……いざとなったら、いつもあたしとお母さんに、何かしてくれる兄でした……そう言うの、ちょっとだけ思い出しました……エル先輩、あのエリーシャって人、何者なんでしょうね?」
「シュリン、何か気になることでもあったの?」
「ちょっと変わってるなって思ったんです。良い人なんでしょうけど……」
「大丈夫よ、シュリンのお兄さんってきっと人を見る目はあると思う」
「そうでしょうか……あれから、あたしなりに色々考えたんです……」
「あの2人のこと?」
「はい」
「どんな風に?」
シュリンは拳を握り締め、力を込めて話した。
「きっと、あのエリーシャって人、どこかのお金持ちのお嬢さんなんですよ。それで、兄貴と駆け落ちでもして、逃げて来たんじゃないかって!」
「シュリンには、そういう風に見えたの?」
そこでシュリンは少し目を輝かせて話した。
「きっとそうです!それで兄貴やるなー!って思ったんです!」
「シュリン……」
どうやらデュランの妹は兄とエリーシャと数日間接する中で得た情報から、その様に推測し、自分を納得させているようだった。
「まあ、悪い人じゃないから……どんな身の上だっていいんですけどね……」
「そう……(何か秘密がありそうだったけど……私にはわからない……)だけど、2人とも、真剣に私達を救うために、戦ってくれたんだから、悪い人なわけがないわ……」
「はい……(2人とも、どうか無事で……)」
シュリンは、兄とエリーシャが去っていった方角を見つめながら、2人の無事を祈った。
エルディアとシュリンが買い物から帰ると、寮の近くにカーリオとレビア、そしてクフィンがいた。
「―――あ!帰ってきたみたい!」
レビアが手を振っているのが見えた。
「あの3人は……」
「会えたみたいですね」
そして、そこへたどり着くと、レビアがすぐに話しかけてきた。
「エルディア!カーリオも行くって!」
カーリオは、浮かない顔つきでエルディアに話しかけてきた。
「まさかエルちゃんがレムリアへ行くとは思いませんでした……」
そして、心配そうに話しかけてきた。
「故郷の彼の元へ……行くのではなかったのですか?」
「うん、そうしたいんだけど……」
エルディアの心を読んだかのようにクフィンが呟いた。
「解呪のスクロールか………」
「うん……」
「なるほど……やはりそれですか……まあ、私としては、魅力的な女性方に囲まれる旅も悪くないですが……本当にいいんですか?」
彼女は、本当はすぐにでも行きたかった。
しかし、魔女メディアの占いの結果もあったせいか、エルディアはすぐにでもユラトの体から呪いを解くべきだと強く思うようになっていた。
だから、せっかくの呪いを解く機会を逃したくはなかった。
「出来ることはしておきたいの……」
クフィンは、そんなエルディアを黙って見つめていた。
(エルディア……それほどまでに……ならば……)
そしてクフィンは、決意を秘めた表情で、エルディアに話しかけた。
「俺がその解呪のスクロールとやらを手に入れてやろう」
エルディアは、クフィンに尋ねた。
「……クフィンもレムリアへ?」
「ああ……カーリオだけに、美味しい思いをさせるわけにはいかないからな」
それを聞いたカーリオは片手を広げ、笑みを浮かべた。
「それは残念ですねぇ」
「クフィン……ありがとう」
「気にするな。元々、自警団を辞めた俺はカーリオの研究に付き合ってやるつもりだったんだ。(本当は………ふっ……考えても無駄か……)」
レビアは、パーティーが早くも揃ったことに喜んでいた。
「クフィンも来てくれるってことは、魔道師3人に剣士1人の構成のパーティーが出来たってことね。やったわ!面倒な仕事がこんなにも速く終わりそうなんて!」
エルディアは魔道師が多いこの構成に、少し不安を覚えた。
「この4人で大丈夫かな?」
エルディアに尋ねられたレビアは、表情を元に戻すと腕を組み、人差し指を唇に当て考えていた。
「うーん……そうね……確かにあと1人、前衛が欲しいかも……」
クフィンがカーリオに話しかけた。
「カーリオ、お前の妹はどうした?彼女なら、なかなか腕が立ちそうだが?」
クフィンの質問に、シュリンが答えた。
「えーっと、ミレイちゃんは大地の神殿から北にある道が通れるようになったんで、もうバルガの村へ向いましたよ」
カーリオが更に詳しく話した。
「妹は、バルガの成人の儀式をしに行ったんです」
「そんなものがあるのか……」
「ええ……まあ……」
カーリオは、バルガの儀式を思い出していた。
(特に戦士があれをしないと……我々は……)
そして妹の事を思った。
(まあ、ミレイならすぐに終わるでしょうから、心配はしていませんが……)
レビアは、仕方なくといった感じだった。
「じゃあ、向こうで募集をかけるか……」
「そうだな。まあ、俺1人でもかまわんが……」
そこでカーリオが笑みを浮かべながら、レビアに話しかけた。
「あの、できれば……」
レビアはカーリオを睨みつけ、話しを遮るように叫んだ。
「―――却下!!」
「まだ、何も言ってませんが?……」
「カーリオの言いたい事はわかるから!」
シュリンもレビアの言いたい事がわかったのか、疑いの眼差しで彼に話しかけた。
「カーリオさん……どうせ女の冒険者が良いとか言おうとしたんでしょ」
「あら……良くお分かりで」
「はあ……」
みんなそこで、ため息を付いていた。
そして、エルディアが気を取り戻すと、みんな話しかけた。
「そうだ、みんな食事まだなんじゃない?」
レビアがそれに答えた。
「うん、まだよ」
それを聞いたエルディアとシュリンは目を合わせた。
「じゃあ、エル先輩」
「うん、そうしよう……」
その日、彼らは学園の中庭で、シュリンとエルディアが作った料理を食べた。
本当はデュランとエリーシャと共に食べる予定のものだったが、彼らが旅立ってしまったため、レビアたちと食べることした。
皆、楽しそうに彼女らが作った料理を食べていた。
シュリンが手際よく作ったため、エルディアは少し手伝う程度だった。
シュリンは、笑顔を浮かべているエルディアを見ていた。
(これで、料理を共に作るのも最後かぁ……いつも優しくて、私にとっては本当の姉のような人……本当は西に行って欲しかったけど……でも、元気でいてくれたらそれでいいです……また……会えますよね?)
こうして、エルディアの学院生活は、幕を閉じた。
そして、エルディアは今、東のバルディバの港から出航する船の中にいた。
船には、冒険者や商人、そしてレムリアを開拓するために向う人々などが乗っていた。
港全体が活気に満ちており、その活気に反応するかのように海鳥たちも声をあげ、辺りに響かせていた。
波は穏やかで、ほとんど雲の無い空からは日の光が降り注ぎ、船の白い帆をより一層白く、海を青く見せていた。
僅かに強い風が吹き、エルディアのかぶっていた帽子を一瞬、ふわりと浮かせた。
エルディアは、その帽子を手で押さえ、バルディバの町を眺めた。
そして、学院で過ごした日々とシュリンの事を考えていた。
(シュリン……学院での生活が光によって彩られたように見えたのは、あなたのおかげよ……また、島に戻ったら、あなたのいるところに寄るから、その時は、また一緒に雑談をしながら料理でもしよう……本当にありがとう……)
隣りにクフィンとカーリオがやってきた。
「エルディア、そろそろ出港みたいだ。忘れ物はないか?」
「ええ、大丈夫……」
カーリオがエルディアの隣りに来ると、船に手をかけ、話しかけた。
「何かを考えていたみたいですね」
「学院にいた日々のことを……少し……」
カーリオとクフィンは、エルディアと同じ様に、バルディバの町を眺めた。
古い建物が立ち並び、海沿いに宿屋がいくつか存在しているのが見える。
また、近くに魚市もあって、そこに魚介類を求める人が集まっていた。
皆、元気な声を出し、てきぱきと動いているのが見え、町全体が活気に満たされているのがわかった。
カーリオは、エルディアやクフィンと初めて会った時の事を思い出した。
そして、表情豊かになった二人の事を思い、満足げな表情になると、笑みを浮かべ、軽く目を閉じた。
「ふふっ……そうですか……」
エルディアが少し寂しげに見えたクフィンは、話題を変えることにした。
「そう言えば、クリスの奴はなぜ、男にならなければならなかったのか……」
「確かに、良く分からないことがありましたね」
エルディアは、顔を動かすと視線を景色から2人の男へ向けた。
「それ、ずっと考えていたんだけど……一つ思い出した事があるの……」
「……ほう、なんでしょう?」
「2人とも、ニーフェの森で出会ったあの夜盗の男が言っていた事を思い出して……」
―――この稼業ってのは、舐められたら終わりなんでな。―――
クフィンとカーリオは、その言葉を何となくだが思い出していた。
「舐められたどうとか言っていた奴か……」
「……なるほど、若い女の人では裏の世界の人々を束ねていくのは、確かに大変なのかもしれませんね……まあ、同情はしませんが……」
「きっと、そう言う事なんだと思ったの……」
「そうなんだろうな……(いくつもの謎は残っている……俺自身もな……)」
クフィンは、父親が実力で冒険者になる道を邪魔してくるのではないかと思っていたが、ジェラルドは、あの後何も言ってこなかった。
(ふんっ……まあ、いいか……俺はもう決めたんだ……だから今は、この道を行ける所まで行くつもりだ……)
そしてエルディア達が雑談をしていると、荷物を抱えながら船に乗ってきたレビアが3人を見つけ、すぐにやって来た。
「みんな!私達が目指す町のことが少し分かったわ!」
「何か情報が入ったのか?」
クフィンが尋ねると、レビアは行き先について話し始めた。
「えっとね、ギルドにさっき入った情報らしいんだけど、西の大陸エルフィニアの大きな森林地帯でハイエルフの国を探している冒険者たちが、新たな情報を発見したらしいのよ!」
新発見の言葉にカーリオは興味を示した。
「ほう、新発見ですか」
「うん、なんかね。あの有名な冒険者フェイ・ファディアスの本らしくて、そこには『世界の七不思議』ってのが書いてあったらしいのよ」
「七不思議?」
「うん、それでその七不思議の一つが、今度私達が行くことになる場所らしいの!」
「そんなのがあるんだ……」
「七不思議ですから7つもあるんですか?」
「うん、そうみたい。全てを知っているわけじゃないんだけど、とりあえず、あたし達が行く町の名前が『アレクシャ』って言う名前で、そこにある『フヴァル』の灯台ってところが、その内の一つで行き先みたい!」
「どんな町なんでしょうねぇ」
「さあ、そこまでは分からないけど、向こうに着くまで結構時間がかかるみたいだから、気長に行きましょ!」
「うん……」
「西の森の方は人が減っているとか聞きましたけど、まだ頑張っている冒険者もいるみたいですね」
「噂だが、ハイエルフの国は無いと聞いたな……」
そこでエルディアはユラトの事を思い出していた。
(ユラト……ごめん……そっちに行くの少しだけ遅れそう……手紙をイシュト村へ出しおいたけど……帰ったら読んでくれるかな……)
その時、出航の合図である、鐘の音が鳴った。
―――カーン!カーン!カーン!
音が鳴ると、船員たちは錨を上げ、忙しそうに動き始めた。
そして船は、バルディバの港から離れていく。
「あっ、出航するみたいよ!みんな、準備はいい?」
「ええ……」
「大丈夫です」
「問題はない……しかし……今さら遅いぞ……」
クフィンにそう言われたレビアは笑い声をあげた。
「あははっ!クフィンの言うとおりね!あたし、景色と鳥たちを見たいから、船首へ行ってくる!」
そう言ってレビアは、元気に走って船の先端へ向っていった。
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ラドルフィア魔法学院編 -終わりー
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