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第十八話 7
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シュリンとエルディアをアルプの放ったブレスが包み込もうとしていた。
何かが腐ったような匂いだったため、シュリンは苦しい表情をしていた。
(くっ………エル先輩だけでも守らないと………)
シュリンは、その睡眠の息からエルディアを守るために、マナシールドを発動させた。
魔法の楯は、すぐに展開されたが、辺りの空気を薄めただけだった。
(あんまり効かないみたい……)
どうやら効果は、無い様子だった。
しかし、飛び込んできた虫の姿の悪魔を弾くことは出来た。
アルプは、地面に叩きつけられるように飛ばされた。
「―――くそっ、シールドを張っていたか……」
シュリンは、すぐにエルディアを引っ張りながら後退した。
アルプは、そんなシュリンを見て、何か思い当たる事があるようだった。
「普通の人間ならば、それなりに効いているはずなんだが……しぶといな……(やはり、この女………僅かだが、抵抗を持っているな……)」
アルプは、再びシュリンに近づいた。
そして今度は、シュリンの方へ棘のついた尻尾を彼女へ向けた。
すると、棘が飛び出し、彼女の腕や頬に小さな棘が刺さった。
「―――痛っ!」
シュリンは、すぐにエルディアの持っていた杖を借り、反撃した。
「―――このっ!」
しかし、アルプはそれを軽く避けた。
そして悪魔は、焦りを感じながら、シュリンを見ていた。
(まだか………早く、効け!)
アルプが放った棘には、息と同じく、睡眠効果があった。
だがこれを使用すると、この悪魔の体力が落ちてしまうため、あまり使いたくはなかった。
そして、シュリンは、目蓋が重くなるのを感じ始めた。
(………あれ……なんか、眠いんだけど……これって……)
シュリンは意識を失い、倒れた。
後ろから声がした。
「―――シュリン!」
クフィンとミレイたちが走ってきていた。
(もう来たのか………邪魔な奴らめ!)
アルプは、シュリンに乗移るための準備を始めた。
体から黒いオーラが放出された。
それは流れ落ち、シュリンの耳や鼻、そして口へ入っていった。
クフィンがすぐ後ろに到達していた。
そこで、ベルフレードが叫んだ。
「通常の武器では、悪魔を倒すことは出来ません!何か、魔力を帯びた物でないと!!」
それを聞いたアルプは、笑い声を上げた。
「はははっ!(よし!こいつの体を手に入れて、すぐにこの場を去るぞ!)
悪魔はシュリンに取り憑くために、飛び上がった。
クフィンのすぐ後ろを走っていたミレイが叫んだ。
「―――クフィン、あたしの剣を使いな!」
彼女はそう言うと、手に持っていた僅かに黄色く光る長剣を、シュリンがいる場所目掛けて投げた。
彼女の投げた長剣は柄を先端にして、真っ直ぐに突き進む。
そして、クフィンの頭上を通った。
走りながら、クフィンは飛び上がり、それを手に取った。
そして、この剣の所有者が目指しているものの一つを思い出した。
(冒険者か……悪くない……)
悪魔は、今まさにシュリンの体へ向かって吸い込まれるように入り始めているところだった。
クフィンは、そのまま、上空から地上へ向けて、斜めに剣を素早く振り抜いた。
「………これが俺の……―――旅の始まりだ!!」
悪魔は肩から胴へ向けて、真っ二つに切り裂かれていた。
「―――ギャアアアァァ!!」
少し羽ばたき、移動した後、地面にアルプは落ちた。
後一歩の所で、倒されてしまったアルプは、悔しさで一杯だった。
(く……そう……あと少しだったものを……)
ここにたどり着くまでの事をアルプは思い出していた。
呼び出されたクリスにすぐに取り憑き、その後、人間たちを知るために様々な所へ行った。
そこで人間の営みや考え方を知った。
そして、どうやって人間たちを支配すればいいのかを考え、魔法学院の学院長からカロンの杖を奪い、エレーナからはニトクリスの鏡を奪った。
(………あとは、ヴァルブルギスを待つか……フフッ……)
だが、悪魔の計画は、人間たちによって阻まれた。
アルプは、悔しさを滲ませながら、手を夜空へ向け、誰かに話しかけていた。
「も……申し訳……ございません……バアル……ゼブブさま……あと少しで、この町にある、あれを……レ……ゲ……ン……を手に入れられた……んですが……」
アルプは、そこで血を吐いた。
「……ガハッ!」
そして、再び話を続けた。
「し、しかし……種は……種はまだ、残っております……いずれ芽吹くときが来るでしょう……人間どもよ……その時は覚悟しろ……ハハハ……………」
アルプの手が地面に落ちた。
どうやら、悪魔は死んだようだった。
黒い灰の塊となった後、崩れ去っていった。
ボルウィンやデュラン、ベルフレードも到着し、悪魔の話を聞いていた。
「なにやら、不吉なことを言っておったな……」
「他にも居やがるのか?」
「種……」
周囲を見ながら、シュリンはクフィンに礼を述べた。
「クフィンさん、ありがとう!」
「……気にするな……それより……」
クフィンは心配そうにエルディアを見ていた。
シュリンはそれに気付き、クフィンに話しかけた。
「エル先輩なら大丈夫ですよ!」
クフィンの表情が和らいだ。
「……そうか……(良かった……)」
デュランは、いつの間にか、妹の近くに来ていた。
そして、妹の無事を確認すると安堵していた。
「ふう……(大丈夫みてぇだな……)」
デュランは、クフィンに礼を言った。
「俺からも礼を言わせてもらうぜ。ありがとよ!」
「ここまで出来たのは俺1人じゃ無理だった……ここに居るみんなでやったんだ。だから気にしなくていい……」
そのとき後方にいた団員がカーリオを背負ってやってきた。
「君たち……どうなったんだ?」
周囲に敵がいないことを確認したボルウィンが部下に答えた。
「事件は一段落着いた……お前は、良くがんばった。そして……彼もな……」
ボルウィンは、亡くなってしまった部下を見ていた。
「隊長……」
団員の男は安心したためか、その場で座り込むと、カーリオを背負ったまま、倒れた。
デュランが慌てて駆け寄った。
「―――おい!」
「大丈夫だ……疲れただけだ……そのまま休ませてやってくれ。あとで私が運ぶよ」
クフィンとシュリン、そして妹のミレイがカーリオを見た。
「カーリオ……お前も良くやった……感謝するぞ……」
「カーリオさん……」
「カー兄がここまでやるなんて、正直驚いたよ。最初は、どうなるかと思ったけど……ははっ!(きっと母さんやダリオさんも喜ぶだろうね……そして父さんも……)」
歌を歌い終えたエリーシャがデュランの元へやってきていた。
「デュラン!やりましたね!」
「……そうだな。みんなよくやったぜ!ははっ!」
皆が嬉しそうにしている中、エクソシスト見習いの少年が、申し訳なさそうに聞いてきた。
「………あのー……後はどうします?」
周囲にはアンデッドはいなかったが、遠くの方にはまだいるようだった。
クフィンが杖の事を思い出し、少年に聞いていた。
「ベルフレード、あの杖を使ってアンデッドどもを、どうにかできないのか?」
クフィンに尋ねられた少年は、表情を曇らせた。
「うーーん………僕に出来るか……分かりません……まだ見習いなもので……(父さんやロゼさんなら、どうにか出来ただろうなぁ……)」
そして、姉のような存在だったリュシアの言葉を思い出していた。
「―――ベル!!あなたは将来アルペティ家を継がなきゃだめなんでしょ。だったら、ちゃんとしなきゃダメ!」
その言葉を思い出したベルフレードは、両手で頭を抱えた。
(ううっ………こんな時まで、リュシア姉さんの言葉を思い出すなんて……)
どうやら彼は、いつもリュシアに叱られていたようだった。
(……だけど、今日は僕1人で結構やれたし……もうちょっと頑張ってみるか……)
少年がそんな事を考えているうちに、ミレイが杖がある場所へ向って歩き出していた。
「取り合えず、回収だけはしとかないとね」
そして彼らは、カロンの杖を回収し、ベルフレードが杖の能力によって現れたアンデッド達を元に戻そうとしたが、まだ見習いの彼ではできないようだった。
だから仕方なく、彼らは周囲のアンデッドと戦うことにしていた。
そして、しばらく戦っていると、自警団の応援部隊がやって来た。
彼らは、応援部隊に後の事を任せることにした。
そして墓地の入り口へと、彼らは戻ってきた。
「君たち、良く頑張ってくれた。自警団を代表して、礼を言おう!」
ボルウィンが、エルディアやデュランたちに礼を述べた。
デュランは、周囲を見ていた。
「まだ、町にはアンデッドどもがいるかもしれねぇな……」
何人もの団員が来て、墓地の中へ入っていった。
「あとは我々自警団にまかせてくれ、応援も続々来ているようだし、大丈夫だ!」
「そうですか……ボルウィンさん、頑張ってください!」
シュリンは、大きな自警団員のこの男を下から見上げるように話しかけていた。
ボルウィンは楯を持ち上げ、笑顔で答えると、現場へ戻って行った。
彼が去った後、残った者たちも、それぞれの場所へ帰ることにした。
「シュリンと……エリーシャと言ったか、エルディアを頼む」
カーリオを背負ったクフィンが、シュリンとエルディアを背負っているエリーシャに頼んでいた。
2人は元気良く答えていた。
「はい!」
デュランは、側にいたエクソシスト見習いの少年の肩に手を置き、話しかけていた。
「ベルフレード、助かったぜ!」
「いえ……お役に立てたのなら……」
クフィンも彼に話しかけた。
「お前なら、良いエクソシストになれるだろう……突然頼んで悪かったな」
「……だといいんですけど……」
「なんだ、お前、もっと自信をもってやれって!凄かったんだからよ!」
デュランは、ベルフレードの背中を軽く叩いた。
「はい……(ううっ……いつもみんなに言われるなぁ……)」
「んじゃ、とりあえず、ここで解散だ。みんな、またな!」
デュランがそう言うと、みな一斉にそれぞれの場所へ向って歩き出した。
ベルフレードは、「ファルヴァ・ディール」と一言言い残すと、教会へ帰っていった。
クフィンは、カーリオを背負って彼が寝泊りしている研究室へ送りに行った。
ミレイも、それに付いて行った。
そしてエルディアは、エリーシャに背負われ、デュランとシュリンを伴って寮へ向っていた。
運ばれていく中、エルディアは夢を見ていた。
それは、今は亡き両親との再会だった。
2人は喋る事無く、ただ彼女へ向けて微笑むのみだった。
それでも、エルディアは嬉しかった。
そして、彼女は両親と離れてからの自分の辿った道について話した。
楽しかった事、苦しかった事、友人と呼べる人物が何人か出来た事。
今まで、堪えていた感情を表に出し、彼女はひたすら話していた。
父と母は、黙って頷いていてくれた。
そして、2人のところへ近づこうとしたとき、エルディアの両親の全身が薄くなっていった。
彼女は、必死に近づこうと走った。
しかし、なぜか両親に近づくことは出来なかった。
そして今度は、足元から光の粒を出しながら、崩れ去っていこうとし始めた。
そこでエルディアは、自分が夢の中にいることを悟った。
「会いに来てくれて……ありがとう……」
背負っていたエルディアが突然、喋りだしたのでデュラン達は、彼女を見た。
「………ん?」
「エル先輩……」
「大丈夫ですか?」
エルディアは目を覚ました。
そして、周囲を見た。
「………ここは?」
そこは静まり返った町の中だった。
そして少し違ったのは、祭りのためのかがり火があることだった。
そこから、独特の香りと色を持った煙が、夜空へと吸い込まれるように立ち上っていた。
「起きたみたいだな」
「エル先輩、体は大丈夫ですか!?」
シュリンがエルディアの腕に触れたとき、エルディアは体を動かし、エリーシャに話しかけた。
「あの……」
「大丈夫、自分で歩けるから……降ろして……」
最初、シュリンが背負って行こうとしたが無理だったため、デュランがエルディアを背負い込もうとした。
しかし、シュリンがそれを反対したため、エリーシャに頼むことになっていたのだった。
「エリーシャ、降ろしてやれ」
「暗いから、足元気をつけてくださいね」
「ありがとう………」
地面に降りると、デュランが話しかけてきた。
「大丈夫そうみてぇだな」
エルディアは、ここに運ばれてくるまでの経緯を尋ねた。
「ええ、大丈夫……それで、クリスやアンデッドたちはどうなったの?」
「えーっと……ですね……」
シュリンは、彼女が気を失った後について話した。
話を聞き終わったエルディアたちは、再び寮へ向かって歩き出した。
「……そう……じゃあ、もう全て終わったってことなのかな?……」
「それがだな……」
デュランは、悪魔が最後に言っていた言葉をエルディアにも話した。
「………まだ、何かあると見た方がいいのかもしれないわね……」
「その事はとりあえず、ボルウィンさんが自警団に連絡しておくって言ってました」
「そう……」
エリーシャも気になったのか、考えながら歩いていた。
「気にはなりますよねー」
デュランが歩く速度を速め、みんなの前で振り返った。
「ま、あとはあいつらに任せておこうぜ!」
エリーシャはデュランの言葉を聞くと、すぐに考えるのをやめたようだった。
「そうですね」
そして普通に歩き出していた。
「お前……考えてたんじゃなかったのかよ!」
「だって……デュランが任せたほうがいいって……」
そんなエリーシャを見たシュリンは笑い声を上げ、兄がクエストを達成する苦労をなんとなくだが分かった気がした。
「はははっ!エリーシャさん、面白い!(兄貴が大変そうなの、なんとなく分かった気がする!)」
そしてなぜか皆、笑顔になって笑っていた。
そんな中、エルディアも同じように笑顔になって歩いていると、遠くに映った景色に何かを感じた。
「あれは………」
それは夜空に浮かんだ橙色の煙が一瞬、両親を形作ったように彼女には見えたのだった。
彼女は、先ほど夢に見た両親の事を思った。
(お父さん、お母さん。私……ここで頑張っているわ……だから……見守っていて……)
エルディアがそう願うと、煙は星空へ向って吸い込まれるように消え去った。
そして、彼女は父と母の最期を思い出した。
寂しさが込み上げ、心が苦しくなった。
(………っ!)
しかし、すぐに自分だけではない事を思い出し、自分と同じ境遇にある青年の事を思った。
(ユラト……もうすぐ……そっちへ……)
エルディアは歩きながら、遠くにあるかがり火を見つめていた。
それは小さな火に見え、魔女メディアが見せた水晶球の中の光を思い出させた。
(………私は、そんなに強くはないわ……今も、心が折れそうだった……だけど、私なりに頑張ってみる……)
ヴァルブルギスの夜。
それは生者と死者の境を弱くするだけではなく、亡くなった者が会いに来る日でもある。
彼女が見たのは、ただの夢と幻なのか。
エルディアは、亡き両親を思い、感謝し、この日々の中で少しだけ成長した自分を嬉しくも思った。
そして、自分が向うべき場所へ思いを馳せていた。
(エルフィニアへ……)
それから数日が経った。
あの後、アンデッドはクフィンの父親、ジェラルド・ダルグレン自警将、指揮のもと、次々と倒されていった。
アンデッドたちは、町の中央辺りまで現れていたようだった。
そしてレイアークの町は、普段どおりの静けさを取り戻した。
ヴィガル商会は、様々な問題を起こした事で解散にまで追い込まれ、親子で牢に入ることになった。
また、悪魔の言い残した種について、自警団は調べたが、特に何かを見つけることはできなかった。
そして、この町の危機を救ったということで、エルディア達は審議会から表彰を受けた。
この一連の騒動は、すぐに島全土を駆け巡った。
島民たちは驚くと同時に、結界が解けた時の事も思い出し、恐怖した。
「またあのような事に、ならないようにしなければならない」
安全になったと思い、平和ボケしていた島民たちは、再び気を引き締めなければならなかった。
そんな中、無事クエストを達成したことで、エルディアは晴れて学院を卒業できることになっていた。
彼女はユラトのいる、西のエルフィニア大陸へ行く準備をしていた。
卒業の証明を貰うと、すぐに冒険者ギルドへ行き、冒険者の登録を済ませた。
そして寮の部屋の掃除をし、荷物をまとめ、それが終わったので、町へシュリンと買出しに行っていた。
ここで過ごす時間もほとんど無くなってしまったため、最後にシュリンが手料理をエルディアに食べさせたいと言い出したため、2人で食材を買いに店を回って歩いていた。
すると、後ろから声がかけられた。
「あれ、エルディアじゃない!?」
名を呼ばれたので、エルディアは振り返った。
「………え?」
すると、そこには大図書館で出会った、ビーストテイマーを目指している人物、レビア・クレールがいた。
「レビア……」
「やっぱり!」
レビアは人込みを避け、小走りで近づいてきた。
「こんなところでどうしたの?」
レビアは、エルディアに近づくと、すぐに尋ねてきた。
「エルディア!カーリオ知らない?」
「今日は会ってない……」
エルディアにそう言われた彼女は、腕を組み考え出した。
「そう……どこにいるんだろう……」
少し気になったエルディアは、レビアに尋ねた。
「彼に何か用事?」
「うん!実はね……」
するとレビアは、カーリオを探している理由を説明し始めた。
説明によると、彼女は冒険者になって北東の大陸、レムリアへ向うようだった。
どうやら新たに大規模な港町が見つかり、そこには非常に大きな灯台があった。
そして、その町の権力者のいた館にあった資料によると、その灯台の中に、古代の人々が住んでいたと思われる居住の空間が存在するということだった。
また、その空間は町の宝物庫のようにも使われていたようで、そこに大量の金貨や宝石、そして価値のある書物などがあると書かれていた。
そしてその中に、ビーストテイマーに関する本を見たと言う情報をレビアは聞いた。
しかし、灯台の中は魔物がたくさんいて、なかなか中を調べることができない状況だった。
また、その灯台の入り口には大きな門があり、どうやら魔法の封印が施されているようだった。
「その書物の一覧の中に、色々あってカーリオの見たい物もあるみたいなのよ!」
カーリオと言えば、あれしかないと思ったエルディアは、思わず尋ねた。
「……女の人に関する物?」
レビアは、すぐに答えた。
「違うわよ!石よ、い・し!……石に関する本よ!」
そこでエルディアは、あの男が研究していたものを思い出していた。
「………あ、そうか……」
そんな彼女を見たシュリンは、思わずカーリオを庇っていた。
「エル先輩……流石にカーリオさんでも……」
「そうね……ごめん……」
そこでレビアは冷静になり、あの女好きなバルガの魔道師のことを考えていた。
「……いや、あの男なら、そう思われても仕方がないのかも……」
2人の反応を見たシュリンは、思わず吹き出しそうになっていた。
(ぶっ!……カーリオさんって……)
そして、レビアは話を元に戻し、続けた。
「とにかく、色んな書物があるみたいなの。魔法に関する物もあったみたい。特に厳重に保存されているのが、『解呪』のスクロールらしいのよ!」
「………解呪?」
「ええ、詳しくは向うに行かないとダメみたい。それから、灯台へ入るための入り口の門が、一定の周期でしか開かない門らしいの」
解呪と言う言葉が気になったエルディアは、そのことについて尋ねた。
「解呪って、どんな呪いも解くことが出来るの?」
「んー、ディスペルマジック(魔法の効果を打ち消す魔法)なのか……それとも、封印を解除したりする奴なのか……まあ、解呪だし、呪いは消せるのかも?」
エルディアは、そこでレビアの話に興味を持った。
なぜなら、ユラトの左手の甲にある呪いを消せるかもしれないと思ったからだ。
(もし、ユラトの呪いが消せるのなら………)
イシュト村で共に住んでいたとき、たまに彼の呪いの部分が薄っすらと光り、ユラトが痛みに苦しんでいたのをエルディアはずっと見てきた。
そして彼の旅の目的でもあるのをエルディアは知っていた。
「レビア、その灯台の門が開く周期って、次はいつなの?」
「なんかね、魔力溜まりみたいなのが必要らしくて、この前、一回門を開けたときに半分消費しちゃったらしくて、次の二回目で、恐らく無くなっちゃうんじゃないかって言われているみたいなの」
「それが無くなると、どうなるんですか?」
「多分、入れなくなると思う……」
「その魔力は、どうやれば溜まっていくの?」
「さあ、そこまでは、わからないみたいよ。今度を逃したら、何年も待たないといけない可能性もあるみたいだから、2回目の調査でギルドは終わらせたいらしくて、冒険者をたくさん集めて、一気に攻略するつもりみたいなのよ!」
「なるほど、それでカーリオさんですか……」
「うん!パーティーの募集は、ほぼ終わってて、あたしが一応しておいたのよ。向うの大陸じゃ、魔道師がどうやら不足しているみたいなの。魔道師があたし1人だと、少し厳しい局面もあるかもしれないって思って……それで彼を探していたんだけど……」
エルディアは、考えた。
(………どうしよう……。スクロールってことは、一回使ったら無くなるってことよね?……売りに出されても、きっと凄い値段が付きそう……しかも、次はいつ門が開くか分からない………なら……)
どうやらエルディアは、決めたようだった。
(ユラトを待っている暇は、無さそうだし……―――それなら!)
腕を組み、どうすべきか迷っているレビアにエルディアは話しかけた。
「レビア、そこへ私も行くわ!」
隣りにいたシュリンは驚いていた。
「―――エル先輩!!」
レビアは、呆気に取られた表情をしていた。
「えっ………いいの?」
エルディアは念を押す意味で、もう一度聞いていた。
「さっき言っていた解呪のスクロールは、そこにあるのよね?」
「うん……ちゃんと、ギルドの情報に書かれているのを見たから、間違いは無いはずよ」
何かが腐ったような匂いだったため、シュリンは苦しい表情をしていた。
(くっ………エル先輩だけでも守らないと………)
シュリンは、その睡眠の息からエルディアを守るために、マナシールドを発動させた。
魔法の楯は、すぐに展開されたが、辺りの空気を薄めただけだった。
(あんまり効かないみたい……)
どうやら効果は、無い様子だった。
しかし、飛び込んできた虫の姿の悪魔を弾くことは出来た。
アルプは、地面に叩きつけられるように飛ばされた。
「―――くそっ、シールドを張っていたか……」
シュリンは、すぐにエルディアを引っ張りながら後退した。
アルプは、そんなシュリンを見て、何か思い当たる事があるようだった。
「普通の人間ならば、それなりに効いているはずなんだが……しぶといな……(やはり、この女………僅かだが、抵抗を持っているな……)」
アルプは、再びシュリンに近づいた。
そして今度は、シュリンの方へ棘のついた尻尾を彼女へ向けた。
すると、棘が飛び出し、彼女の腕や頬に小さな棘が刺さった。
「―――痛っ!」
シュリンは、すぐにエルディアの持っていた杖を借り、反撃した。
「―――このっ!」
しかし、アルプはそれを軽く避けた。
そして悪魔は、焦りを感じながら、シュリンを見ていた。
(まだか………早く、効け!)
アルプが放った棘には、息と同じく、睡眠効果があった。
だがこれを使用すると、この悪魔の体力が落ちてしまうため、あまり使いたくはなかった。
そして、シュリンは、目蓋が重くなるのを感じ始めた。
(………あれ……なんか、眠いんだけど……これって……)
シュリンは意識を失い、倒れた。
後ろから声がした。
「―――シュリン!」
クフィンとミレイたちが走ってきていた。
(もう来たのか………邪魔な奴らめ!)
アルプは、シュリンに乗移るための準備を始めた。
体から黒いオーラが放出された。
それは流れ落ち、シュリンの耳や鼻、そして口へ入っていった。
クフィンがすぐ後ろに到達していた。
そこで、ベルフレードが叫んだ。
「通常の武器では、悪魔を倒すことは出来ません!何か、魔力を帯びた物でないと!!」
それを聞いたアルプは、笑い声を上げた。
「はははっ!(よし!こいつの体を手に入れて、すぐにこの場を去るぞ!)
悪魔はシュリンに取り憑くために、飛び上がった。
クフィンのすぐ後ろを走っていたミレイが叫んだ。
「―――クフィン、あたしの剣を使いな!」
彼女はそう言うと、手に持っていた僅かに黄色く光る長剣を、シュリンがいる場所目掛けて投げた。
彼女の投げた長剣は柄を先端にして、真っ直ぐに突き進む。
そして、クフィンの頭上を通った。
走りながら、クフィンは飛び上がり、それを手に取った。
そして、この剣の所有者が目指しているものの一つを思い出した。
(冒険者か……悪くない……)
悪魔は、今まさにシュリンの体へ向かって吸い込まれるように入り始めているところだった。
クフィンは、そのまま、上空から地上へ向けて、斜めに剣を素早く振り抜いた。
「………これが俺の……―――旅の始まりだ!!」
悪魔は肩から胴へ向けて、真っ二つに切り裂かれていた。
「―――ギャアアアァァ!!」
少し羽ばたき、移動した後、地面にアルプは落ちた。
後一歩の所で、倒されてしまったアルプは、悔しさで一杯だった。
(く……そう……あと少しだったものを……)
ここにたどり着くまでの事をアルプは思い出していた。
呼び出されたクリスにすぐに取り憑き、その後、人間たちを知るために様々な所へ行った。
そこで人間の営みや考え方を知った。
そして、どうやって人間たちを支配すればいいのかを考え、魔法学院の学院長からカロンの杖を奪い、エレーナからはニトクリスの鏡を奪った。
(………あとは、ヴァルブルギスを待つか……フフッ……)
だが、悪魔の計画は、人間たちによって阻まれた。
アルプは、悔しさを滲ませながら、手を夜空へ向け、誰かに話しかけていた。
「も……申し訳……ございません……バアル……ゼブブさま……あと少しで、この町にある、あれを……レ……ゲ……ン……を手に入れられた……んですが……」
アルプは、そこで血を吐いた。
「……ガハッ!」
そして、再び話を続けた。
「し、しかし……種は……種はまだ、残っております……いずれ芽吹くときが来るでしょう……人間どもよ……その時は覚悟しろ……ハハハ……………」
アルプの手が地面に落ちた。
どうやら、悪魔は死んだようだった。
黒い灰の塊となった後、崩れ去っていった。
ボルウィンやデュラン、ベルフレードも到着し、悪魔の話を聞いていた。
「なにやら、不吉なことを言っておったな……」
「他にも居やがるのか?」
「種……」
周囲を見ながら、シュリンはクフィンに礼を述べた。
「クフィンさん、ありがとう!」
「……気にするな……それより……」
クフィンは心配そうにエルディアを見ていた。
シュリンはそれに気付き、クフィンに話しかけた。
「エル先輩なら大丈夫ですよ!」
クフィンの表情が和らいだ。
「……そうか……(良かった……)」
デュランは、いつの間にか、妹の近くに来ていた。
そして、妹の無事を確認すると安堵していた。
「ふう……(大丈夫みてぇだな……)」
デュランは、クフィンに礼を言った。
「俺からも礼を言わせてもらうぜ。ありがとよ!」
「ここまで出来たのは俺1人じゃ無理だった……ここに居るみんなでやったんだ。だから気にしなくていい……」
そのとき後方にいた団員がカーリオを背負ってやってきた。
「君たち……どうなったんだ?」
周囲に敵がいないことを確認したボルウィンが部下に答えた。
「事件は一段落着いた……お前は、良くがんばった。そして……彼もな……」
ボルウィンは、亡くなってしまった部下を見ていた。
「隊長……」
団員の男は安心したためか、その場で座り込むと、カーリオを背負ったまま、倒れた。
デュランが慌てて駆け寄った。
「―――おい!」
「大丈夫だ……疲れただけだ……そのまま休ませてやってくれ。あとで私が運ぶよ」
クフィンとシュリン、そして妹のミレイがカーリオを見た。
「カーリオ……お前も良くやった……感謝するぞ……」
「カーリオさん……」
「カー兄がここまでやるなんて、正直驚いたよ。最初は、どうなるかと思ったけど……ははっ!(きっと母さんやダリオさんも喜ぶだろうね……そして父さんも……)」
歌を歌い終えたエリーシャがデュランの元へやってきていた。
「デュラン!やりましたね!」
「……そうだな。みんなよくやったぜ!ははっ!」
皆が嬉しそうにしている中、エクソシスト見習いの少年が、申し訳なさそうに聞いてきた。
「………あのー……後はどうします?」
周囲にはアンデッドはいなかったが、遠くの方にはまだいるようだった。
クフィンが杖の事を思い出し、少年に聞いていた。
「ベルフレード、あの杖を使ってアンデッドどもを、どうにかできないのか?」
クフィンに尋ねられた少年は、表情を曇らせた。
「うーーん………僕に出来るか……分かりません……まだ見習いなもので……(父さんやロゼさんなら、どうにか出来ただろうなぁ……)」
そして、姉のような存在だったリュシアの言葉を思い出していた。
「―――ベル!!あなたは将来アルペティ家を継がなきゃだめなんでしょ。だったら、ちゃんとしなきゃダメ!」
その言葉を思い出したベルフレードは、両手で頭を抱えた。
(ううっ………こんな時まで、リュシア姉さんの言葉を思い出すなんて……)
どうやら彼は、いつもリュシアに叱られていたようだった。
(……だけど、今日は僕1人で結構やれたし……もうちょっと頑張ってみるか……)
少年がそんな事を考えているうちに、ミレイが杖がある場所へ向って歩き出していた。
「取り合えず、回収だけはしとかないとね」
そして彼らは、カロンの杖を回収し、ベルフレードが杖の能力によって現れたアンデッド達を元に戻そうとしたが、まだ見習いの彼ではできないようだった。
だから仕方なく、彼らは周囲のアンデッドと戦うことにしていた。
そして、しばらく戦っていると、自警団の応援部隊がやって来た。
彼らは、応援部隊に後の事を任せることにした。
そして墓地の入り口へと、彼らは戻ってきた。
「君たち、良く頑張ってくれた。自警団を代表して、礼を言おう!」
ボルウィンが、エルディアやデュランたちに礼を述べた。
デュランは、周囲を見ていた。
「まだ、町にはアンデッドどもがいるかもしれねぇな……」
何人もの団員が来て、墓地の中へ入っていった。
「あとは我々自警団にまかせてくれ、応援も続々来ているようだし、大丈夫だ!」
「そうですか……ボルウィンさん、頑張ってください!」
シュリンは、大きな自警団員のこの男を下から見上げるように話しかけていた。
ボルウィンは楯を持ち上げ、笑顔で答えると、現場へ戻って行った。
彼が去った後、残った者たちも、それぞれの場所へ帰ることにした。
「シュリンと……エリーシャと言ったか、エルディアを頼む」
カーリオを背負ったクフィンが、シュリンとエルディアを背負っているエリーシャに頼んでいた。
2人は元気良く答えていた。
「はい!」
デュランは、側にいたエクソシスト見習いの少年の肩に手を置き、話しかけていた。
「ベルフレード、助かったぜ!」
「いえ……お役に立てたのなら……」
クフィンも彼に話しかけた。
「お前なら、良いエクソシストになれるだろう……突然頼んで悪かったな」
「……だといいんですけど……」
「なんだ、お前、もっと自信をもってやれって!凄かったんだからよ!」
デュランは、ベルフレードの背中を軽く叩いた。
「はい……(ううっ……いつもみんなに言われるなぁ……)」
「んじゃ、とりあえず、ここで解散だ。みんな、またな!」
デュランがそう言うと、みな一斉にそれぞれの場所へ向って歩き出した。
ベルフレードは、「ファルヴァ・ディール」と一言言い残すと、教会へ帰っていった。
クフィンは、カーリオを背負って彼が寝泊りしている研究室へ送りに行った。
ミレイも、それに付いて行った。
そしてエルディアは、エリーシャに背負われ、デュランとシュリンを伴って寮へ向っていた。
運ばれていく中、エルディアは夢を見ていた。
それは、今は亡き両親との再会だった。
2人は喋る事無く、ただ彼女へ向けて微笑むのみだった。
それでも、エルディアは嬉しかった。
そして、彼女は両親と離れてからの自分の辿った道について話した。
楽しかった事、苦しかった事、友人と呼べる人物が何人か出来た事。
今まで、堪えていた感情を表に出し、彼女はひたすら話していた。
父と母は、黙って頷いていてくれた。
そして、2人のところへ近づこうとしたとき、エルディアの両親の全身が薄くなっていった。
彼女は、必死に近づこうと走った。
しかし、なぜか両親に近づくことは出来なかった。
そして今度は、足元から光の粒を出しながら、崩れ去っていこうとし始めた。
そこでエルディアは、自分が夢の中にいることを悟った。
「会いに来てくれて……ありがとう……」
背負っていたエルディアが突然、喋りだしたのでデュラン達は、彼女を見た。
「………ん?」
「エル先輩……」
「大丈夫ですか?」
エルディアは目を覚ました。
そして、周囲を見た。
「………ここは?」
そこは静まり返った町の中だった。
そして少し違ったのは、祭りのためのかがり火があることだった。
そこから、独特の香りと色を持った煙が、夜空へと吸い込まれるように立ち上っていた。
「起きたみたいだな」
「エル先輩、体は大丈夫ですか!?」
シュリンがエルディアの腕に触れたとき、エルディアは体を動かし、エリーシャに話しかけた。
「あの……」
「大丈夫、自分で歩けるから……降ろして……」
最初、シュリンが背負って行こうとしたが無理だったため、デュランがエルディアを背負い込もうとした。
しかし、シュリンがそれを反対したため、エリーシャに頼むことになっていたのだった。
「エリーシャ、降ろしてやれ」
「暗いから、足元気をつけてくださいね」
「ありがとう………」
地面に降りると、デュランが話しかけてきた。
「大丈夫そうみてぇだな」
エルディアは、ここに運ばれてくるまでの経緯を尋ねた。
「ええ、大丈夫……それで、クリスやアンデッドたちはどうなったの?」
「えーっと……ですね……」
シュリンは、彼女が気を失った後について話した。
話を聞き終わったエルディアたちは、再び寮へ向かって歩き出した。
「……そう……じゃあ、もう全て終わったってことなのかな?……」
「それがだな……」
デュランは、悪魔が最後に言っていた言葉をエルディアにも話した。
「………まだ、何かあると見た方がいいのかもしれないわね……」
「その事はとりあえず、ボルウィンさんが自警団に連絡しておくって言ってました」
「そう……」
エリーシャも気になったのか、考えながら歩いていた。
「気にはなりますよねー」
デュランが歩く速度を速め、みんなの前で振り返った。
「ま、あとはあいつらに任せておこうぜ!」
エリーシャはデュランの言葉を聞くと、すぐに考えるのをやめたようだった。
「そうですね」
そして普通に歩き出していた。
「お前……考えてたんじゃなかったのかよ!」
「だって……デュランが任せたほうがいいって……」
そんなエリーシャを見たシュリンは笑い声を上げ、兄がクエストを達成する苦労をなんとなくだが分かった気がした。
「はははっ!エリーシャさん、面白い!(兄貴が大変そうなの、なんとなく分かった気がする!)」
そしてなぜか皆、笑顔になって笑っていた。
そんな中、エルディアも同じように笑顔になって歩いていると、遠くに映った景色に何かを感じた。
「あれは………」
それは夜空に浮かんだ橙色の煙が一瞬、両親を形作ったように彼女には見えたのだった。
彼女は、先ほど夢に見た両親の事を思った。
(お父さん、お母さん。私……ここで頑張っているわ……だから……見守っていて……)
エルディアがそう願うと、煙は星空へ向って吸い込まれるように消え去った。
そして、彼女は父と母の最期を思い出した。
寂しさが込み上げ、心が苦しくなった。
(………っ!)
しかし、すぐに自分だけではない事を思い出し、自分と同じ境遇にある青年の事を思った。
(ユラト……もうすぐ……そっちへ……)
エルディアは歩きながら、遠くにあるかがり火を見つめていた。
それは小さな火に見え、魔女メディアが見せた水晶球の中の光を思い出させた。
(………私は、そんなに強くはないわ……今も、心が折れそうだった……だけど、私なりに頑張ってみる……)
ヴァルブルギスの夜。
それは生者と死者の境を弱くするだけではなく、亡くなった者が会いに来る日でもある。
彼女が見たのは、ただの夢と幻なのか。
エルディアは、亡き両親を思い、感謝し、この日々の中で少しだけ成長した自分を嬉しくも思った。
そして、自分が向うべき場所へ思いを馳せていた。
(エルフィニアへ……)
それから数日が経った。
あの後、アンデッドはクフィンの父親、ジェラルド・ダルグレン自警将、指揮のもと、次々と倒されていった。
アンデッドたちは、町の中央辺りまで現れていたようだった。
そしてレイアークの町は、普段どおりの静けさを取り戻した。
ヴィガル商会は、様々な問題を起こした事で解散にまで追い込まれ、親子で牢に入ることになった。
また、悪魔の言い残した種について、自警団は調べたが、特に何かを見つけることはできなかった。
そして、この町の危機を救ったということで、エルディア達は審議会から表彰を受けた。
この一連の騒動は、すぐに島全土を駆け巡った。
島民たちは驚くと同時に、結界が解けた時の事も思い出し、恐怖した。
「またあのような事に、ならないようにしなければならない」
安全になったと思い、平和ボケしていた島民たちは、再び気を引き締めなければならなかった。
そんな中、無事クエストを達成したことで、エルディアは晴れて学院を卒業できることになっていた。
彼女はユラトのいる、西のエルフィニア大陸へ行く準備をしていた。
卒業の証明を貰うと、すぐに冒険者ギルドへ行き、冒険者の登録を済ませた。
そして寮の部屋の掃除をし、荷物をまとめ、それが終わったので、町へシュリンと買出しに行っていた。
ここで過ごす時間もほとんど無くなってしまったため、最後にシュリンが手料理をエルディアに食べさせたいと言い出したため、2人で食材を買いに店を回って歩いていた。
すると、後ろから声がかけられた。
「あれ、エルディアじゃない!?」
名を呼ばれたので、エルディアは振り返った。
「………え?」
すると、そこには大図書館で出会った、ビーストテイマーを目指している人物、レビア・クレールがいた。
「レビア……」
「やっぱり!」
レビアは人込みを避け、小走りで近づいてきた。
「こんなところでどうしたの?」
レビアは、エルディアに近づくと、すぐに尋ねてきた。
「エルディア!カーリオ知らない?」
「今日は会ってない……」
エルディアにそう言われた彼女は、腕を組み考え出した。
「そう……どこにいるんだろう……」
少し気になったエルディアは、レビアに尋ねた。
「彼に何か用事?」
「うん!実はね……」
するとレビアは、カーリオを探している理由を説明し始めた。
説明によると、彼女は冒険者になって北東の大陸、レムリアへ向うようだった。
どうやら新たに大規模な港町が見つかり、そこには非常に大きな灯台があった。
そして、その町の権力者のいた館にあった資料によると、その灯台の中に、古代の人々が住んでいたと思われる居住の空間が存在するということだった。
また、その空間は町の宝物庫のようにも使われていたようで、そこに大量の金貨や宝石、そして価値のある書物などがあると書かれていた。
そしてその中に、ビーストテイマーに関する本を見たと言う情報をレビアは聞いた。
しかし、灯台の中は魔物がたくさんいて、なかなか中を調べることができない状況だった。
また、その灯台の入り口には大きな門があり、どうやら魔法の封印が施されているようだった。
「その書物の一覧の中に、色々あってカーリオの見たい物もあるみたいなのよ!」
カーリオと言えば、あれしかないと思ったエルディアは、思わず尋ねた。
「……女の人に関する物?」
レビアは、すぐに答えた。
「違うわよ!石よ、い・し!……石に関する本よ!」
そこでエルディアは、あの男が研究していたものを思い出していた。
「………あ、そうか……」
そんな彼女を見たシュリンは、思わずカーリオを庇っていた。
「エル先輩……流石にカーリオさんでも……」
「そうね……ごめん……」
そこでレビアは冷静になり、あの女好きなバルガの魔道師のことを考えていた。
「……いや、あの男なら、そう思われても仕方がないのかも……」
2人の反応を見たシュリンは、思わず吹き出しそうになっていた。
(ぶっ!……カーリオさんって……)
そして、レビアは話を元に戻し、続けた。
「とにかく、色んな書物があるみたいなの。魔法に関する物もあったみたい。特に厳重に保存されているのが、『解呪』のスクロールらしいのよ!」
「………解呪?」
「ええ、詳しくは向うに行かないとダメみたい。それから、灯台へ入るための入り口の門が、一定の周期でしか開かない門らしいの」
解呪と言う言葉が気になったエルディアは、そのことについて尋ねた。
「解呪って、どんな呪いも解くことが出来るの?」
「んー、ディスペルマジック(魔法の効果を打ち消す魔法)なのか……それとも、封印を解除したりする奴なのか……まあ、解呪だし、呪いは消せるのかも?」
エルディアは、そこでレビアの話に興味を持った。
なぜなら、ユラトの左手の甲にある呪いを消せるかもしれないと思ったからだ。
(もし、ユラトの呪いが消せるのなら………)
イシュト村で共に住んでいたとき、たまに彼の呪いの部分が薄っすらと光り、ユラトが痛みに苦しんでいたのをエルディアはずっと見てきた。
そして彼の旅の目的でもあるのをエルディアは知っていた。
「レビア、その灯台の門が開く周期って、次はいつなの?」
「なんかね、魔力溜まりみたいなのが必要らしくて、この前、一回門を開けたときに半分消費しちゃったらしくて、次の二回目で、恐らく無くなっちゃうんじゃないかって言われているみたいなの」
「それが無くなると、どうなるんですか?」
「多分、入れなくなると思う……」
「その魔力は、どうやれば溜まっていくの?」
「さあ、そこまでは、わからないみたいよ。今度を逃したら、何年も待たないといけない可能性もあるみたいだから、2回目の調査でギルドは終わらせたいらしくて、冒険者をたくさん集めて、一気に攻略するつもりみたいなのよ!」
「なるほど、それでカーリオさんですか……」
「うん!パーティーの募集は、ほぼ終わってて、あたしが一応しておいたのよ。向うの大陸じゃ、魔道師がどうやら不足しているみたいなの。魔道師があたし1人だと、少し厳しい局面もあるかもしれないって思って……それで彼を探していたんだけど……」
エルディアは、考えた。
(………どうしよう……。スクロールってことは、一回使ったら無くなるってことよね?……売りに出されても、きっと凄い値段が付きそう……しかも、次はいつ門が開くか分からない………なら……)
どうやらエルディアは、決めたようだった。
(ユラトを待っている暇は、無さそうだし……―――それなら!)
腕を組み、どうすべきか迷っているレビアにエルディアは話しかけた。
「レビア、そこへ私も行くわ!」
隣りにいたシュリンは驚いていた。
「―――エル先輩!!」
レビアは、呆気に取られた表情をしていた。
「えっ………いいの?」
エルディアは念を押す意味で、もう一度聞いていた。
「さっき言っていた解呪のスクロールは、そこにあるのよね?」
「うん……ちゃんと、ギルドの情報に書かれているのを見たから、間違いは無いはずよ」
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