チートアイテム強奪! 残念美女が嗅ぎ付け、俺を守りにやってくる!

jam

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迷い2

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「だったらやっぱりプロレスを優先すべきだ。このチャンスを逃したら次なんて無いかもしれない。それに、この試合が終わったらしばらく休みだし、ネバダでもテキサスでも別の国でもどこにでも行くよ。テレビ出演の依頼が来たって断る。誓ったっていい。だから頼む、少しだけ待ってくれ」

 ほとばしる熱意に押され、アンソニーとヘラクレスとフィオナは顔を見合わせた。三人ともアレックスのプロレスに対する熱意をよく知っている。特にアンソニーは古くから近くで見ていたため気持ちが揺れるが、だからといって譲っていいわけがない。いったいどうしたものかと、アンソニーは大きく息をついた。

「ねえ、延期してもいいんじゃないかしら。せっかくアレックスが上手くいってるんだから少し遅れるくらいいいと思うんだけど」

 言ったのはフィオナだった。夢追う仲間として気持ちは痛いほど理解できる。
 それに対し、ライオンがうなり声をあげる。

「何言ってるんだ、お嬢ちゃん。オーフェンの危険性を一番わかっているのは記者志望のおまえだろうに」

「わかっているからこそ言ってるのよ。ここ一か月オーフェンの動きを探っていたけど、スポーツ用品メーカーを買収したぐらいで、本業のビジネスに集中してる感じ。悪事を働いている様子はないわ。一週間くらい遅らせても大丈夫なはずよ」

「大丈夫な『はず』か。確証もない話には付き合えんな。古くから、行動が遅れてろくなことになったためしはない」

「そうだぜ。ヘラクレスの言う通り、すぐにでもオーフェンの元へ行くべきだ」

 アンソニーが手を上げて話を始めた。

「なあフィオナさん、あんたは、最近オーフェンの活動について、スポーツ用品メーカーを買収しただけだと言った。それについては俺も知っている。そのメーカーはプロレス用品も手掛けていたからな。そして悪事について『働いた様子はない』と言ったが、本当にそうかな。つい最近『美術館が襲撃されて燃やされた』というニュースがあった。記者志望のあんたなら当然知ってるよな?」

「え、ええ。もちろん知ってるわ。怖いわよね」

 フィオナは一瞬息を詰まらせ、それから答えた。これは、オーフェンがヘルメスのタラリアを奪い取った事件であったが、警察もフィオナもそこまではわかるはずもなく、ただ美術館が襲撃され燃やされたと報道されていた。

「この事件は妙なもんでな、焼け跡には激しい銃撃戦の痕跡があるにもかかわらず、美術品は盗み出されていなかったそうだ。妙だよな。せっかく襲撃という働きをしたのに、報酬の美術品を持ち出してないなんて。これについてどう思う?」

「ああ……、ええと、持ち去るためのトラックを忘れたとか? 何かミスがあったんでしょうね」

「……そうか。それがあんたの考えか。俺の考えはこうだ。美術品は盗まれていなかったんじゃなく、一つだけ盗まれたために気づかれてないんだ。ここまで言えば俺の言いたいことがわかるよな?」

「つまり、トラックがないから手で持てる分だけ盗んでいったってこと? ずいぶんかわいらしい盗賊たちね」

「おいおい、とぼけないでくれよ。襲撃したのはオーフェンで、盗まれたのは一品だけあった神話の道具なんじゃないのか? この事件はすべての始まりと同じじゃないか。あんたがオーフェンのことを嗅ぎ付けた事件を思い出してみろ。同じく館が燃やされて、美術品は手つかずで焼けるまま放っておかれただろう。これが偶然のわけがない。
 フィオナ、お前だって本当はわかっているんだろう? 何もないところからオーフェンの悪事を見出したあんたが、警戒している状況の今、気づかないはずない。正しく行動すべきだ」

「それはそうだけど……。プロレスがうまくいって、アレックスがこんなにうれしそうにしてるのよ。それを無視するなんて……」

 アンソニーの言葉に、フィオナはそれだけ言ってうつむいた。彼女自身、アンソニーの言葉が正しいとわかっていた。だからこそ美術館の火事を怪しく思いながらも調べず、スポーツメーカーの買収等、悪事と関係ない報道ばかりを追っていた。アレックスを後押ししたかったからである。同じく夢を追う者として、また、行動を共にすることで好意を持ったので、多少の無理なら通してやりたかった。

「このままじゃ話がまとまらない。投票で決めようぜ」

「投票で決めることじゃないと思うが……、仕方ないか」

 アレックスが提案するとアンソニーはしぶしぶ了承した。

 しかしヘラクレスが猛烈なうなりを上げる。

「何を言うか愚か者め。今の話を聞いて考えを変えないとはどういうことだ。奴は順調に悪行を積み重ねている。今すぐにオーフェンを討ちに行け。これは神の託宣である。従え」

「あのなあ、前も言ったと思うけど。もうそういう、神様とかの時代じゃないんだ。人間は自分で考えて、責任もって自分で決める。神様に命じられるまま動くことはない。そういう時代なんだ」

「何をこざかしい。しょせんお前たちは愚かな人間だ。どうせ投票で決めた結果、大きな間違いをいくつもしているんじゃないのか? 例えば……、口車に乗せられて邪悪なリーダーを選んだり、後の世代に負担を押し付ける法を作ったり。どうだ、心当たりはないか」

「うげ」

 アレックスは息をのんだ。このライオン……、神だっていうのは伊達じゃない。なんていい攻撃をしてくるんだ。これがプロレスだとしたら、スター選手のフィニッシュホールド級、ガツーンと強烈な一発だ。ノックアウトされて、全く言い返すことができない。

 とはいっても、ヘラクレスの言う『大きな間違い』の詳しい内容まではわからない。悪いリーダーはだれかとか、どんな法律が駄目なのかとか。けどテレビではいつも皆が政治に怒ってるし、歴史の授業は昼寝の時間だったが、くそったれの独裁者や大バカ者が選挙でリーダーになったのも知っている。

 俺たち人間は間違える生き物だ。はっきり言って、ヘラクレスの言っていることは正しい。オーフェンが悪事を行うかもしれない以上、早くぶちのめしに行くべきだ。学校を昼寝用のベッドにしていた俺だってそれくらいはわかる。けど……、一週間、たった一週間遅らせてくれれば全面的に協力する。ヘラクレスやアンソニーはこの一週間すら惜しんでいるが、それは本当に正しいのだろうか。あくまでも悪事をしでかす『かもしれない』、しでかした『かもしれない』だ。絶対に起こるわけじゃない。その『かもしれない』のために、夢にまで見るスターへのプラチナチケット、スポンサー様の主催する試合を放り出すのか? 俺はどうすべきなんだ……。

「う、う、ううううう……」

 アレックスは考えに考え、うめき声をあげた。
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