チートアイテム強奪! 残念美女が嗅ぎ付け、俺を守りにやってくる!

jam

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友のいく先

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 しかしその中にアレックスの探す姿はなかった。彼が探しているのは、かつての友、いや、今でも友と信じるアンソニーである。いったいどこへ行ったのかと見まわすと、セントラルパークのはずれ、ひとけのない森のそばで、アンソニーが這いつくばっていた。彼は捕縛の手を逃れるために泥まみれになっている。アレックスは彼の元へ駆け寄った。

「どこへ行く気だ?  お前の友達はここにいるぞ」

「はて。俺の友は今、わからずやの警官どもといるんだけどね」

「そんなこと言うな。お前の友達は悪党じゃなくて、プロレスラーの俺だ。いい加減に目を覚ませよな、と」

 アレックスはアンソニーの手を取って起こそうとした。しかし彼の足は立たないので、肩の下に手を入れて抱え持つ形になった。

「目を覚ませ、か。そうだな、今回の件はいろいろなことがあって、俺は目が覚めた。以前の俺とは違う俺になった。お前はどうだ、アレックス」

「俺も以前の俺とは違う俺になったよ。自分の行動に責任をもとう、正しい行動をしようという気になった。お前にけがさせてしまったせいだな」

「そうか。俺は、どうしても達成したい目的ができた。以前のお前やミスターオーフェンの、目的のために突っ走るっていう姿勢がなんとなくだが理解できるようになった。だから……、こんなことだってできる」

 言うなり、アンソニーはアレックスの手に掴みかかり、プロメテウスのほぐちを奪いにかかった。

「止めろ、落ち着け」

 アレックスが払いのけようとして、もみあいになる。

 アレックスは友人を穏当に押しのけようとしていたが、アンソニーは本気である。手首をねじり上げ、頭突きをしてくる。それでもなんとかいなしていたのだが、アンソニーがかじりついてきた。

「ああああああ」

 アレックスは驚きの声を上げた。アンソニーの歯はアレックスの手でなくプロメテウスのほぐちを嚙み、花の茎半ばから噛みちぎってしまった。

「気をつけろ、来るぞ!」

 ヘラクレスが叫んだ次の瞬間、アレックスの脇腹に衝撃が走った。何か重いものが高速でぶつかってきた。ヘラクレスがアレックスの腕に巻き付いて防いでくれたが、アレックスは衝撃で大きく飛ばされてしまった。

「なんだ、いったい何があったんだ」

「アンソニーのやつが蹴ってきたのだ」

 アレックスがつぶやくと、ヘラクレスが答えた。そんなはずない、アンソニーの足は動かないのに。そう思ってアンソニーを見ると、彼の足首にあるヘルメスのサンダルが淡く輝いている。

 ヘルメスのサンダルは神話の力を取り戻していた。アレックスとアンソニーの二人がいる場所はセントラルパークのはずれにあり、これまで二人を照らしていた警官のライトは、今、オーフェン一味をとらえることに専念している。そのせいでサンダルは星の光を受け、アンソニーは足を動かし空を走ることが可能になっていたのだ。

 淡い輝きを放っているのはサンダルだけではなかった。ヘラクレスと、そして、神話の道具でない、人間であるアンソニーの全身も輝いていた。

「これを食べてしまったせいだろうな」

 アンソニーは呟くと、アレックスからむしり取ったプロメテウスのほぐちを放り投げた。それはもう輝きを放っていない、噛みちぎられて生気を失った、ただのしおれた花だった。芝生の上に音もなく落ちると急速に風化し、そよ風に吹かれて跡形もなく消えてしまった。

 神話の光は、花からアンソニーの体へ移動した。アンソニーは花を食って、自身にとりこんでしまった。彼の全身は神話の淡い輝きを放っており、口からは呼吸に合わせてかすかに炎が漏れている。

「アレックス。プロレス、やめるんじゃねえぞ」

 アンソニーはそれだけ言って飛び上がり、夜空へ走り去ろうとする。

「行くな!」

 アレックスは叫んでしがみつこうとした。

 アンソニーは振り向きざま口から炎を吐き、アレックスを跳ねのける。そのまま振り返ると、今度こそ夜空の彼方へ走り去っていった。

「なんということだ。オーフェンを倒したというのに、それ以上の敵が生まれてしまった」

「敵なんかじゃない。今のアンソニーなら空から火を吐き、毛皮を奪うことだってできる。それをしなかったんだから、アイツは今でも俺の友達さ」

 ヘラクレスの言葉にこたえると、アレックスは夜空を見上げた。決して届かない遠くで、星が輝いている。
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