失楽園パンツの魔王様?

木mori

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第二章

第十九部分

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翌日の家庭科の授業。
「それでは今から調理実習を始めるよ。今日はバレンタインデーに向けて、チョコを使った『犯し作り』だよ。」
「桃羅、いや先生、漢字間違ってるよ。それに今は6月なんだけど、どうしてこの時期に。」
「バレンタインデーで、男子を犯すのは女子の最大願望だよ。2月の本番に向けて、犯すタイミングを見計らうのは乙女の務めだよ。」
「言ってることがさっぱりわからねえ。」
 エプロン姿に三角巾の女子生徒たちは次々とチョコを手にして湯煎などの作業を開始した。友チョコの流行もあって、チョコ作りはできる子が増加していた。
 とある女子は前後左右を見回していた。チョコ作りでの初心者ステータスを自ら標榜している様子である。
「困ったわ。チョコレートなんて作ったことないし。自分ではできないけど、誰かに教えてもらうのはもっとイヤだし。」
 教師桃羅がユリのそばに来て、耳元で囁く。
「あらら、ユリさん。どうしたのかな。落ち着かない様子だけど、お困りのように見えるけど、先生がどっぷり、たっぷり、タップン、タップン、タップン、お手伝いしようかな。」
 タップン三連発は教師桃羅が上半身を三度揺すった結果に生じた山脈の振動である。
「なんだかムカつくわね。そばにいないでちょうだい。チョコ作りなんて、千年前からひとりでできるわよ。」
「さすが年増泥棒女だね。そんなにお婆ちゃん、いや干からびたミイラだとは思わなかったな。」
「どこが干からびてるのよ!」
「言わずもがなだよね。」
 教師桃羅の視線ベクトルは自分と対照的な貧相な部位に刺さっている。
「し、失礼ね。こんな昼間からどこ見てるのよ。」
「あ~あ。そこがお兄ちゃんにとことん愛撫されたところだね。うらやましい。あたしがやってもらえばよかった。」
「あ、あんなの、凌辱以外の何物でもないわ。」
 ユリは腰を曲げて両腕で胸を隠した。
「オレはいったい何をすればいいんだ。お菓子作りなんてオレの守備範囲を遥かに越えているぞ。」
 大悟は調理実習室の後ろでポッチ状態をキープするしかなかった。エプロンも着けていないことから、ただの食客扱いとみられる。
「お兄ちゃんは、食べるだけの人だよ。年増泥棒女の作る廃棄物を食べて、死なないようにすればいいだけだよ。」
「死んでたまるか!」
「誰のが廃棄物よ!」
「くだらないことをやってるぜです。このスキを捕らえるのがスキだです。このオヤジギャグ、うまいぜです。プププ。痛快の字。」
 オヤジギャグレベルも実にショボい衣好花。
「ちょっと転校生先輩。お兄ちゃんに近づかないように。」
 衣好花は教師桃羅の警戒網に即座に抵触した。
桃羅はユリを小馬鹿にしながらも、衣好花からは後頭部の目を離さなかった。補習の一件から、衣好花は警戒に値する敵となっていたのである。
時間も相応に経過して、生徒たちのチョコはどんどん出来上がってきた。
『キンコンカンコン。』
突然、校内放送が流れてきた。
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