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第一章

第十六話

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「・・・。ここはどこだ?」

 辺りは暗いままだが、さっきよりは視界がある。

 暗順応を待ちながら、周囲を見渡す。どうも見覚えのある教室。何だかざわついている。

 かなりの数の子供がいる。二十人以上はいるか。

 それも集団で円を作り、真ん中の女の子を取り囲んでいる。

 女の子はその場にしゃがんでいる。子供たちはオレには気づかない。

 というのも、子供たちの目線はひとつに集中しているからだ。

「また女子の格好をしてる。」
「スカートがお似合いだこと。見苦しいけど。」
「髪もふたつ結びにしてる。」
「ランドセルは赤い女の子用だよ。いくら言っても変えないんだ。へんくつだあ。」
「女の子になりたいなら、『せいてんかん手術』とかいうのをしたら?」
「でも話し方は男っぽいよね。『オレ』とか言ってるし。」
「ホント、気持ち悪い。」
「うちのクラスから出てってよ。」
「他の教室に行っても同じだと思うけど。」
「そうね。転校でもすれば?」


「「「「「「「「「わはははははははははははははははは。ヘンタイ~!」」」」」」」」」」」」」

 真ん中の少女は泣いてはいない。

 たぶん、いつものイジメなんだろう。

 少女はうずくまっていたが、笑いが収まるとすっくと立ち上がった。

「言いたいことはそれだけかな。じゃあ、オレは帰るよ。どいてくれ。」
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