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第一章

第十七話

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入り口に近いところの囲みを解くと、さっさと教室を出ていく少女。

「あ~あ帰っちゃった。」

「なんだ、あいつ。全然反省してないな。」

「これだけ言っても気にもしないなんて不思議。」

「カッコウも変だけど、頭もおかしいんだよ。」

 クラスメイトは口々にひどいことを言っている。

 いやひどいこととは限らないな。人数から考えると。

 少女=ひとり<クラスメイト=多数

 これがグローバルスタンダードだな。誰が見ても多勢に無勢。

 民主主義は数。これが現実社会。厳しいのではない。人数が多いことが正しいのだ。

・・・こんなシーンを忘れるはずがない。

 この主人公はオレ以外の何者でもない。

 夢でも見てるのか。でもオレの意識は確実に覚醒している。

 オレの姿は彼らには見えないようだ。

 かつての自分を客観的に見ているオレだが、気持ちは当時に戻っている。

 というのも、心の痛みがぶり返しているからだ。

 傷は癒えたかと思っていたが、厳然と残っているものであることを痛感している。

 切腹ってこんな感じなのだろうか。

 思い出らしきシーンはまだ続く。
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