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第一章

第六十三話

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「す、素敵過ぎるわ。あら、セレブとしたことが、こんなジェントルマンを知らないなんて。セレブも筆の誤りなってことはないんだらねっ。」


((うち、こんな素敵な殿方見たことないどす。これって浮気どすか?))


「まっほ、アイドル仲間で、美男子たくさん見てきたけど、紅白歌合戦のトリをソッコー取れると思う。」


「神を超越することってあり得ないはずだが。」


 オレはからだの異常を確認するため鏡を見た。そこにはこれまで見たことないようなイケメンが映っていた。長くて蒼いエナメルのような髪で片方が隠れた涼しい目、シャープに尖った鼻筋。濃いワインのような淫靡な唇。とてもこれまでのオレとは似ても似つかぬ姿。そしてオレの後ろには奇妙な光景が並んでいた。


 いつも眼を伏せている由梨は真正面を向いて、両手を顔の前で合わせて、アニメ少女のようにキラキラ星を浮かべている。


 絵里華人形は何を思ったのか、着物の前をはだけている。


 万?はナース服のままで、花束を持っている。もらいものか?


 美緒はやおら般若面を外した。すると、千手観音像の背景のように金色の光沢を自ら放つ。ゆえに顔は見えない。糸電話の神コップで『東京スカイツリー』を作っていた。


 しばらくすると元に戻ってしまったオレ。その場には四人が倒れていた。


「都ちゃん、これで閻魔の力わかったかな。そこの四人は都ちゃんのパワーで卒倒したんだよ。をねゐさんもかなりやばかったけどね。」


「つ、つまり、トリガーカードを揃えてしまえば元に戻ることができる。いやそれ以上になってしまうのか?」
「さあどうかな。」


 不敵な笑みを浮かべて首を傾けた閻魔女王。

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