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第一章

第六十三話

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「ううう。いったい何が起こったんだ。神が倒れたりしたら、この世が終末を迎えてしまうぞ。」


「おはよー!朝だね。まっほは今起きたよ。」


 ちなみに卒倒してから10分しか経過していない。


「ふああああ。セレブがどうして床で寝ているのかしら。」


((うちは伏せ目モードだったみたいどす。))


 言われてみれば人形なので、オレたちと話している時は目を開けたままだな。瞬きが必要ないのは便利だけど、キモイというのは気のせいか。


「ところでババ抜きは誰が勝ったんだ?神が優勝するのが当然だろうな。」


「ちょっと待ってよ。セレブの手を見なさいよ。」


 由梨の左手には、倒産危機で途方に暮れていた社長が一等宝くじを拾ったかのごとく、しっかりとジョーカーが握られていた。


「なんと!それでは勝利の二文字しか知らぬ神が敗北という外来語を明治維新しろというのか。」


 『明治維新する』という言葉は社会のテストに出るかも。


((うちは姑にイジメを受けたんどす。よよよ。))


「誰が姑なのよ!」


 すかさずツッコむ由梨。たしかにからだは姑のように小さいが。特に一部が。


『ガツン』。姑からの憎悪のこもった一撃。


「じゃあ、まっほは二番目に優勝だあ。」


 どこの世界に二番目の優勝というのがある?


「面白くない。神がそう思うとこの世が滅亡することになるが。いいな。」


 良くはない。


((うちは由梨はんが嫌いになります。))


 好きだったのか。


「神は一線を退いて、フツーの女の子になる。死んではいるが。」


((うちは人形に籠るどす。))


 初めから人形内思考しか展開していないが。
 この亀裂が次の展開に少しだけ影響を及ぼすことになるとは神のみぞ知らない?
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