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第四章

第十三話

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((倉井はん、間違うてはいけまへん。その子はあんたはんの嫌いな男子どす。))

「な、なんだと!それは本当か。」
 倉井は血相を変えて、絵里華の胸倉をつかみかかった。

((ゴホッ、ゴホッ、手を放してくれまへんか。苦しうおます。))
 苦しいのは本体だが、語るのはあくまでアルテミス。
 絵里華はやっとのことで、倉井の手を振りほどいた。

「おい、紅葉院。あいつを俺にしょ、しょうかィ・・・。」

((えっ。今何と言いはりました?))

「しょうかい・・・」
 強気な倉井が口ごもる。

((もう一度はっきりと話してくれまへんか。))

「ええい。じれったい。紹介してくれってんだよ。紹介、紹介、紹介。何度でも言うぜ。」

((いきなりどうしたんどす?))

「鈍い女だな。俺はアイツに惚れてしまったんだよ。」

「「「「ええええええええええええ~!!!!!!!!!!!!!」」」」
 四人が一斉に両手をほほに当てて絶叫。目は垂直。

「あいつは俺の仲間だ。外見は女、それもとびっきりの美少女。これぞ、自分が求めていた人。惚れた。」

「「「「ほ、ほ、ほ、ホレたああああああ~!!!!!!!!」」」」
 頬に手のひらを当てて、眼はベクトルマークを継続する四人。
 倉井はビューと音を立てて、疾風のごとく、オレへダッシュ。

「俺とつきあってくれ!」

「・・・。」
 オレは無反応。

「おい、なんとか言ってくれ。」

「・・・。」

「ダメなのか?」

「・・・。」

「ダメだから黙ってるのか?」

「・・・。」

「そうなのか?」

「・・・。」
 倉井は肩を落として、大きく息を吐いた。

((諦めはったんどすな。))
 絵里華は心なしか、笑みを浮かべたように見えた。他の3人も同様のようだ。

「ならばこうしてくれる!」
 倉井は背筋を伸ばして、反り返るようなポーズを取ったかと思うと、顔を前に突き出してきた。

『チュパー!チュパー!チュパー!』
 倉井はいきなりオレに喰らいついた、いや濃厚キスの三連発!
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