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第四章

第十二話

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「い、いや。アレはアレ。ソレはソレ。コレはコレ。」

((どれどす?))

「ええい!みなまで言わすな!」

((そこどす!))

「はあ?」

((言えないことこそ、倉井はんが女である証拠どす。))

「それは違う。放送禁止用語だからだ。」

((そういうことを言ってるんではないどす。つまり、乙女としての恥じらいがあるということどす。))

「お、乙女?この俺のどこが?」

((全部どす。))

「わからねえ。」

((それは倉井はんが乙女だからどす。))

「だからそうでないと言ってるだろう。」

((それが乙女。男だったら、何にも反応しないどす。当たり前のことには反応しない。それが男どす。今のやりとり、すべて倉井はんは何らかのアクションがありました。それは心が女だからどす。心は健全な肉体に宿るもの。からだは文句なしに女どす。うちの生徒会の由○はんに比べたらはるかに女どすえ。))

「ちょ、ちょっと待ってよ。どうしてあたしがそこに登場するのよ。今はあたしの方が豊満なんだけど。」

((あれ?失礼しましたどす。こんな妖怪ぬりかべのからだで失礼したどす。))

「待ってよ。そのナイスバディのどこかぬりかべ?なのよ。高尾山も真っ青な急峻な起伏の流線型になにを言うのよ。」
 さっきはチョモランマとか言っていた由梨。東京都の山じゃ大幅にスケールダウンしている。

「おい、あいつはなぜ動かないんだ。ってか、眠っているのか。」
 倉井は都に気付いたのだ。

((あの子は日乃本都はんどす。この生徒会会長にして、閻魔大王光後継者候補見習いどす。))

「生徒会長?そんな風情は感じられない。それに閻魔大王後継者候補見習いだと?変なヤツがいるものだな。でもルックスはお前たちよりずっといいように見えるぞ。あっ、これは男目線だからな。おいしそうだな。ジュル。」
 倉井は自分の本性の赴くままのようだ。すっかり目を細めて都を見つめている。
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