魔境放眼は地獄へ行く

木mori

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第一章

第十五話・生徒会長はデヴィ夫人?

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「お、お兄ちゃんのバカ!」

桃羅は泣きながらリビングの奥に消えていった。

 
 こうして楡浬と大悟は饅頭人討伐隊として日夜ではなく、放課後限定で職務遂行することとなった。

 饅頭人リサーチは魔法伝家協会が行い、大悟たちに知らせるという仕組み。しかし、協会からの連絡は地域までの指示に留まり、そこにいる女子たちの中から饅頭人を特定する作業は大悟しかできない。つまり、大悟は手当たり次第に女子にキスして饅頭人判別をやらざるを得なかった。

 こうして『キス魔=キッシンジャー』というありがたくない称号が哀れにも誕生したのである。
さらに楡浬は毎回目の前で大悟のキスを見せられて、怒り。

「キャー!キッシンジャーが出たわ。それに愛人二号も一緒だわ。キモイ!」

「大悟のせいで、清楚でセレブなアタシまで、野蛮な罵声対象に成り下がったんだからね。しかもどこから湧いたのか、愛人二号なんて妹の膿が使う呼び方が世間に流布してるわ。インフルエンザも真っ青だわ。」

「仕方ないだろう。オレだって好き好んでやってるわけじゃ。ぐぐぐっ。ジュルジュル。」

「口というふぬけた空洞をよだれで満たしながらしゃべるのはやめなさいよ。それより饅頭人をすぐに消すわよ。」

「はいよ。ほら、乗れよ。どうしたんだ。早く。」

「ちょ、ちょっと待ってよ。今、ブースターを付けているところなんだから。」

 楡浬は自分の背中に銀色の亀のような形のものを装着している。

「まだか?」

「準備完了よ。レディゴー!」

背中に孫亀湯たんぽを装備した楡浬を、子亀として背負った親亀の大悟が、饅頭人に向かっていく。
ほぼ毎日お経のように同じトークと行動を繰り返した大悟と楡浬。
 
 ある日、協会からの連絡のあった学校にいってみると、やたら太った女子ばかり。校内に饅頭店があった。そこで格安な饅頭が販売されていた。

 生徒会長はデヴィ(でぶい)女子高生だった。大悟たちと面談最中に、生徒会長はたまたま生徒手帳を落とした。その写真ではスレンダー美少女だった。太ったことを嘆く生徒会長だが。

「遠慮なさらずに召し上がってください。」

 デヴィ生徒会長は言いながら自ら食べていく。大悟はさすがにキスしたくなかったが、楡浬に促された。

「相手がデブで安心できるわ。」

 楡浬は一旦そのように口にした。

「いやなんでもないわ。」

 政治家のようにあっさりと前言撤回した楡浬。

「早くキッシンジャーしなさいよ。」

 ニンマリしながら大悟に命令する楡浬。大悟は仕方なく生徒会長をキッシンジャーすると、すごく甘い。

「これはすごくいいテイストだ。こんな甘さ、経験ないぞ。」

 大悟のキスはすっかりディープになってしまった。

「ちょ、ちょっと大悟。キッシンジャーは饅頭人の判別のために行うものよ。今のあんたは違う次元を走っているわ!」

 慌てて大悟を抑える楡浬。結局、生徒会長は饅頭好きで太っただけで、饅頭人ではないことが判明した。他のデヴィ生徒を当たったがやはり甘いだけで饅頭人ではない。
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