25 / 70
第二章
第五話
しおりを挟む
大悟から離れた委員長はひとりごちていた。
「あの感触、良かったなあ。お兄ちゃんにこんな風にできたらなあ。」
フィギュアを触った手を頬に当ててうっとりする委員長の顔は完熟トマトだった。
(ぞわわわ~。)
「楡浬。どうかしたんですの?」
(なんだか、いきなり寒気がしてきたわ。)
「フィギュアも風邪をひくのでしょうか。注意しませんとね。」
この日の放課後、部室棟にある各部室を回る大悟であったが、答えは一律であった。
「悪魔、大嫌い。」「悪魔の分際で何様のつもり?」「天使をナメるんじゃないわよ。」「キケン!」「悪魔はいるだけでキモイのに、公然ワイセツなフィギュアっていったい?」「早く魔界に戻りな。」
結局、部活から総スカンを食らった大悟。
(ほら言わんこっちゃない。きっとあのド貧乳委員長が、アタシたちを部活に入れないようにふれ回ったはずよ。)
大悟は部室の外に出た。
「どうせこうなることはわかってましたわ。ならばいっそのこと、ド貧乳部でも作りましょうか?」
(そんなの認められるわけないでしょ!それにそこに入るべき部員はド貧乳委員長の方よ!)
楡浬の代わりに大悟がいちおう胸を張ってみたが、張り切れなかった。
(ちょっと、イヤミが過ぎるわ。アタシに張らせなさいよ!)
肩の上からクレームをつけようとした楡浬だが、体はやはり動かない。
(これからいったいどうするのよ。このままじゃ、行き詰まって、放校、膀胱炎よ!はっ。)
とんでもないことを言ったらしい楡浬は、真っ赤になって沈黙した。
大悟は部室棟の裏にある小さなプレハブを見ていた。
「もしかしたら、あそこに何かヒントがあるかもしれませんわ。」
見るからにボロボロの建物とドア。ノブも錆だらけで触るのも遠慮されるようなものであったが、大悟はドアをノックした。返事は当たり前のようになかった。
(ちょっと、こんなところに入るつもり?幽霊が出そうなんだけど。)
「悪魔が幽霊を怖がってどうするんですの?」
(幽霊は別腹、別府パラダイスなのよ!)
「そんな奇妙なテーマパークはありませんことよ。」
大悟はドアノブをひねった。
すでに夕陽が大きく傾いている時間帯であり、中は真っ暗だった。
(ま、まさか、こんな不気味なところに入るなんて言わないわよね。言わないなんて言わないわよね。大事なことだから二回言ったわ?あれ?同じじゃなかったような。むしろ肯定してしまったような気がするけど。首が少し苦しいわ。)
「これで楡浬の許可は取れましたわ。」
大悟がフィギュアの首を捻っていた。
(大悟。勝手にひとの意思を曲げてるんじゃないわよ!)
「口は災いの元ですわ。」
(災いを意図的に現実化してるのは、どこの誰よ!)
「うらめしや~。」
(い、今、何か聞こえなかったかしら?)
「いいえ。特に何も聞こえませんわ。」
(そ、そう。それならいいけど。)
「うらみ、はらさでおくべきか~。」
(ちょ、ちょっと。大悟。あんた、わざと変な声、出してるでしょ。)
「いえ。さっきから口を真一文字隼人にしてますわ。」
(それって誰よ!仮面ライダー2号とか言っても誰も知らないわよ。)
「うらみつらみ、っていうけど、つらみってなに?」
「つらみっていうのは、辛みって書きますわ。こうすれば意味は明快ですわ。」
(大悟!幽霊に正解を回答するんじゃないわよ。って、今度はハッキリ聞こえたわよ。やっぱり幽霊は実在するんだわ!・・・キャーッ!)
「あの感触、良かったなあ。お兄ちゃんにこんな風にできたらなあ。」
フィギュアを触った手を頬に当ててうっとりする委員長の顔は完熟トマトだった。
(ぞわわわ~。)
「楡浬。どうかしたんですの?」
(なんだか、いきなり寒気がしてきたわ。)
「フィギュアも風邪をひくのでしょうか。注意しませんとね。」
この日の放課後、部室棟にある各部室を回る大悟であったが、答えは一律であった。
「悪魔、大嫌い。」「悪魔の分際で何様のつもり?」「天使をナメるんじゃないわよ。」「キケン!」「悪魔はいるだけでキモイのに、公然ワイセツなフィギュアっていったい?」「早く魔界に戻りな。」
結局、部活から総スカンを食らった大悟。
(ほら言わんこっちゃない。きっとあのド貧乳委員長が、アタシたちを部活に入れないようにふれ回ったはずよ。)
大悟は部室の外に出た。
「どうせこうなることはわかってましたわ。ならばいっそのこと、ド貧乳部でも作りましょうか?」
(そんなの認められるわけないでしょ!それにそこに入るべき部員はド貧乳委員長の方よ!)
楡浬の代わりに大悟がいちおう胸を張ってみたが、張り切れなかった。
(ちょっと、イヤミが過ぎるわ。アタシに張らせなさいよ!)
肩の上からクレームをつけようとした楡浬だが、体はやはり動かない。
(これからいったいどうするのよ。このままじゃ、行き詰まって、放校、膀胱炎よ!はっ。)
とんでもないことを言ったらしい楡浬は、真っ赤になって沈黙した。
大悟は部室棟の裏にある小さなプレハブを見ていた。
「もしかしたら、あそこに何かヒントがあるかもしれませんわ。」
見るからにボロボロの建物とドア。ノブも錆だらけで触るのも遠慮されるようなものであったが、大悟はドアをノックした。返事は当たり前のようになかった。
(ちょっと、こんなところに入るつもり?幽霊が出そうなんだけど。)
「悪魔が幽霊を怖がってどうするんですの?」
(幽霊は別腹、別府パラダイスなのよ!)
「そんな奇妙なテーマパークはありませんことよ。」
大悟はドアノブをひねった。
すでに夕陽が大きく傾いている時間帯であり、中は真っ暗だった。
(ま、まさか、こんな不気味なところに入るなんて言わないわよね。言わないなんて言わないわよね。大事なことだから二回言ったわ?あれ?同じじゃなかったような。むしろ肯定してしまったような気がするけど。首が少し苦しいわ。)
「これで楡浬の許可は取れましたわ。」
大悟がフィギュアの首を捻っていた。
(大悟。勝手にひとの意思を曲げてるんじゃないわよ!)
「口は災いの元ですわ。」
(災いを意図的に現実化してるのは、どこの誰よ!)
「うらめしや~。」
(い、今、何か聞こえなかったかしら?)
「いいえ。特に何も聞こえませんわ。」
(そ、そう。それならいいけど。)
「うらみ、はらさでおくべきか~。」
(ちょ、ちょっと。大悟。あんた、わざと変な声、出してるでしょ。)
「いえ。さっきから口を真一文字隼人にしてますわ。」
(それって誰よ!仮面ライダー2号とか言っても誰も知らないわよ。)
「うらみつらみ、っていうけど、つらみってなに?」
「つらみっていうのは、辛みって書きますわ。こうすれば意味は明快ですわ。」
(大悟!幽霊に正解を回答するんじゃないわよ。って、今度はハッキリ聞こえたわよ。やっぱり幽霊は実在するんだわ!・・・キャーッ!)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる