特売フイギュアワゴンの中に手を入れたら、人生変わるので注意してください。

木mori

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第二章

第五話

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大悟から離れた委員長はひとりごちていた。
「あの感触、良かったなあ。お兄ちゃんにこんな風にできたらなあ。」
フィギュアを触った手を頬に当ててうっとりする委員長の顔は完熟トマトだった。

(ぞわわわ~。)

「楡浬。どうかしたんですの?」

(なんだか、いきなり寒気がしてきたわ。)

「フィギュアも風邪をひくのでしょうか。注意しませんとね。」

 この日の放課後、部室棟にある各部室を回る大悟であったが、答えは一律であった。
「悪魔、大嫌い。」「悪魔の分際で何様のつもり?」「天使をナメるんじゃないわよ。」「キケン!」「悪魔はいるだけでキモイのに、公然ワイセツなフィギュアっていったい?」「早く魔界に戻りな。」

 結局、部活から総スカンを食らった大悟。

(ほら言わんこっちゃない。きっとあのド貧乳委員長が、アタシたちを部活に入れないようにふれ回ったはずよ。)
大悟は部室の外に出た。

「どうせこうなることはわかってましたわ。ならばいっそのこと、ド貧乳部でも作りましょうか?」

(そんなの認められるわけないでしょ!それにそこに入るべき部員はド貧乳委員長の方よ!)
楡浬の代わりに大悟がいちおう胸を張ってみたが、張り切れなかった。

(ちょっと、イヤミが過ぎるわ。アタシに張らせなさいよ!)
肩の上からクレームをつけようとした楡浬だが、体はやはり動かない。

(これからいったいどうするのよ。このままじゃ、行き詰まって、放校、膀胱炎よ!はっ。)
とんでもないことを言ったらしい楡浬は、真っ赤になって沈黙した。
 大悟は部室棟の裏にある小さなプレハブを見ていた。

「もしかしたら、あそこに何かヒントがあるかもしれませんわ。」

 見るからにボロボロの建物とドア。ノブも錆だらけで触るのも遠慮されるようなものであったが、大悟はドアをノックした。返事は当たり前のようになかった。

(ちょっと、こんなところに入るつもり?幽霊が出そうなんだけど。)

「悪魔が幽霊を怖がってどうするんですの?」

(幽霊は別腹、別府パラダイスなのよ!)

「そんな奇妙なテーマパークはありませんことよ。」
 大悟はドアノブをひねった。

 すでに夕陽が大きく傾いている時間帯であり、中は真っ暗だった。

(ま、まさか、こんな不気味なところに入るなんて言わないわよね。言わないなんて言わないわよね。大事なことだから二回言ったわ?あれ?同じじゃなかったような。むしろ肯定してしまったような気がするけど。首が少し苦しいわ。)

「これで楡浬の許可は取れましたわ。」

 大悟がフィギュアの首を捻っていた。

(大悟。勝手にひとの意思を曲げてるんじゃないわよ!)

「口は災いの元ですわ。」

(災いを意図的に現実化してるのは、どこの誰よ!)

「うらめしや~。」

(い、今、何か聞こえなかったかしら?)

「いいえ。特に何も聞こえませんわ。」

(そ、そう。それならいいけど。)

「うらみ、はらさでおくべきか~。」

(ちょ、ちょっと。大悟。あんた、わざと変な声、出してるでしょ。)

「いえ。さっきから口を真一文字隼人にしてますわ。」

(それって誰よ!仮面ライダー2号とか言っても誰も知らないわよ。)

「うらみつらみ、っていうけど、つらみってなに?」

「つらみっていうのは、辛みって書きますわ。こうすれば意味は明快ですわ。」

(大悟!幽霊に正解を回答するんじゃないわよ。って、今度はハッキリ聞こえたわよ。やっぱり幽霊は実在するんだわ!・・・キャーッ!)
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