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第二章
第六話
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ワンテンポ遅れて悲鳴を上げた楡浬。恐怖感情のスイッチを入れて、脳内電気が流れるまでに多少のタイムラグがある。恐怖心とはそういうものである。
「誰だ~。あたしの呪いを邪魔するヤツは?うらみを増やすつもりかぁ?死ぬだけじゃすまさないよ。」
(で、出たわ!幽霊よ!実体がないのがフツーだけど、特売で実体化した幽霊だわ!)
「楡浬。冷静になるのですわ。実体があるということは、幽霊ではありませんわ。」
(そ、そうなの?じゃ、じゃあ、そこの暗がりにいる、あれは幽霊じゃないのね。)
「そうですわ。だから安心なさい。あれは幽霊ではなく、ゾンビですわ。」
(いやぁ!ゾンビもコワい!食べられちゃうわ!)
「そうですわね。この薄っぺらな胸肉とか、鳥皮みたいでおいしいカモですわ。あら、クラス委員長的になりましたわ。」
(バカ言ってるんじゃないわよ。そこのゾンビ、退治してよ!)
「さっきから、ひとのことを、幽霊だ、ゾンビだとうるさいよ。あたしは天使なんだけど。」
「暗くてよく見えませんわ。ライトを付けてくれませんこと?」
「はぁ?あたしをパシリ扱いするとはいい度胸だね。」
『パチッ』
灯りが点ると、そこにはひとりの女子が見えた。ピンクの長いストレート髪。桃色の瞳は、どんぐりを横にしたような大きくて愛くるしい。
(やっぱり実体があるわ。悪魔に恐怖をもたらすだけの怪物ゾンビだわ!)
「化け物ファンタジーから離れろ!あたしは頭から足の先まで天使だよ。」
「その声。その顔。まさか、桃羅?」
「どうしてあたしの名前を知ってるんだよ。あたしは肩にシュミの悪い人形を乗せている悪魔なんかに知り合いはいないんだけど。パンツ一枚の男子天使とか、ひたすらキモいし。」
「桃羅、肩のフィギュアをよ~く見るのです。」
「むう。ブリーフは真っ白だねえ。シミひとつないのは立派だよ。」
「そこじゃありませんわ!全体をくまなく見ておいでなさい。」
「めんどくさいよ。でもそこまで言うなら、見てみるよ。からだも貧相だね。いちおう白い羽根があるから、天使かな。それも下級のフンイキがプンプンだね。あたしと同じニオイがするよ。・・・。同じニオイ!?そう言えばその顔、ま、まさか、お、お兄ちゃん!?」
「正解ですわ、でもそれは半分だけです。」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!ハグ、ハグ、ハグ~!」
「避け、避け、避け~!」
桃羅の猪突猛進の全力ハグを、巧みなステップでかわす大悟。
「モモの全力ハグを寸分の狂いもなく回避できるのは、この世界で大悟お兄ちゃんただひとり!というより、ハグ対象なんて、お兄ちゃんしかいないんだけどね。てへッ。」
「ぜひ他にもハグをしてもらいたいものですわ。」
「浮気なんかゼッタイしないからね。でもお兄ちゃん、その話し方はどうしたの。お兄ちゃんが使う言葉だから、キモくはないけど、気持ち悪いよ。」
「それは同じ意味ですわ!」
「お兄ちゃん。半分正解とは、精神と肉体をド貧乳女と入れ替えられてしまったということなんだね。」
「そういうことですわ。このド貧乳の体は、使い勝手がたいそう悪いのですわ。」
「それにしても、モモの愛人28号のお兄ちゃんがこのド貧乳女で、凛々しいお兄ちゃん人形の中身がド貧乳女とはねえ。」
(ド貧乳、ド貧乳と連呼するんじゃないわよ!貧乳暗示にかかるじゃない。それに愛人って、何人いるのよ。)
「1号から99号まで全部お兄ちゃんだよ。」
(番号付ける意味がないわ!)
「愛撫の仕方が違うんだから、きちんと区別されてるんだよ。」
「桃羅。少々自粛してくださいませんこと?それより、ここは正式な部活ですの?」
「誰だ~。あたしの呪いを邪魔するヤツは?うらみを増やすつもりかぁ?死ぬだけじゃすまさないよ。」
(で、出たわ!幽霊よ!実体がないのがフツーだけど、特売で実体化した幽霊だわ!)
「楡浬。冷静になるのですわ。実体があるということは、幽霊ではありませんわ。」
(そ、そうなの?じゃ、じゃあ、そこの暗がりにいる、あれは幽霊じゃないのね。)
「そうですわ。だから安心なさい。あれは幽霊ではなく、ゾンビですわ。」
(いやぁ!ゾンビもコワい!食べられちゃうわ!)
「そうですわね。この薄っぺらな胸肉とか、鳥皮みたいでおいしいカモですわ。あら、クラス委員長的になりましたわ。」
(バカ言ってるんじゃないわよ。そこのゾンビ、退治してよ!)
「さっきから、ひとのことを、幽霊だ、ゾンビだとうるさいよ。あたしは天使なんだけど。」
「暗くてよく見えませんわ。ライトを付けてくれませんこと?」
「はぁ?あたしをパシリ扱いするとはいい度胸だね。」
『パチッ』
灯りが点ると、そこにはひとりの女子が見えた。ピンクの長いストレート髪。桃色の瞳は、どんぐりを横にしたような大きくて愛くるしい。
(やっぱり実体があるわ。悪魔に恐怖をもたらすだけの怪物ゾンビだわ!)
「化け物ファンタジーから離れろ!あたしは頭から足の先まで天使だよ。」
「その声。その顔。まさか、桃羅?」
「どうしてあたしの名前を知ってるんだよ。あたしは肩にシュミの悪い人形を乗せている悪魔なんかに知り合いはいないんだけど。パンツ一枚の男子天使とか、ひたすらキモいし。」
「桃羅、肩のフィギュアをよ~く見るのです。」
「むう。ブリーフは真っ白だねえ。シミひとつないのは立派だよ。」
「そこじゃありませんわ!全体をくまなく見ておいでなさい。」
「めんどくさいよ。でもそこまで言うなら、見てみるよ。からだも貧相だね。いちおう白い羽根があるから、天使かな。それも下級のフンイキがプンプンだね。あたしと同じニオイがするよ。・・・。同じニオイ!?そう言えばその顔、ま、まさか、お、お兄ちゃん!?」
「正解ですわ、でもそれは半分だけです。」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!ハグ、ハグ、ハグ~!」
「避け、避け、避け~!」
桃羅の猪突猛進の全力ハグを、巧みなステップでかわす大悟。
「モモの全力ハグを寸分の狂いもなく回避できるのは、この世界で大悟お兄ちゃんただひとり!というより、ハグ対象なんて、お兄ちゃんしかいないんだけどね。てへッ。」
「ぜひ他にもハグをしてもらいたいものですわ。」
「浮気なんかゼッタイしないからね。でもお兄ちゃん、その話し方はどうしたの。お兄ちゃんが使う言葉だから、キモくはないけど、気持ち悪いよ。」
「それは同じ意味ですわ!」
「お兄ちゃん。半分正解とは、精神と肉体をド貧乳女と入れ替えられてしまったということなんだね。」
「そういうことですわ。このド貧乳の体は、使い勝手がたいそう悪いのですわ。」
「それにしても、モモの愛人28号のお兄ちゃんがこのド貧乳女で、凛々しいお兄ちゃん人形の中身がド貧乳女とはねえ。」
(ド貧乳、ド貧乳と連呼するんじゃないわよ!貧乳暗示にかかるじゃない。それに愛人って、何人いるのよ。)
「1号から99号まで全部お兄ちゃんだよ。」
(番号付ける意味がないわ!)
「愛撫の仕方が違うんだから、きちんと区別されてるんだよ。」
「桃羅。少々自粛してくださいませんこと?それより、ここは正式な部活ですの?」
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