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第一章
第十六部分
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しかし、中の人への衝撃は別である。しかもドカ~ンのあとに、ぐしゃ。という人間の内部に埋まっている白いモノが砕けたような音がした。
教習車落下の衝撃で、周囲に土埃が舞って視界を奪っていた。
1分後、教習車の全貌がクリアになり、ふたりの姿が見えてきた。教習車の中は、赤い液体がスプラッター状に広かっていた。
『ガタン。』
助手席のドアが開き、高原がゆっくりと出てきて、教習車の回りを見て回った。
「車の外側にキズはないようデス。」
車内では何事もなかったかのような無機質な表情の高原は運転席のヴァーティに声をかけた。
「そう。それは良かったわ。あたしのからだもなんともないわ。さすが、あたしの着地技術がうまかったからね。」
ヴァーティもまったく無傷であるし、車の中に広かっていたと見えた赤い液体は、幻覚だったらしく、補習開始前のきれいな状態だった。
「あたし、夢魔法を使ったみたいね。でもスプラッター的な夢なんてみるかしら。」
ヴァーティは自分が大ケガをして、その刹那に治癒魔法を使われたことに気づいていなかった。
その日の夜のこと。女子寮である事件が起こった。
トイレに立ったヴァーティ。
宿泊料金の安い女子寮は節約志向が極めて強く、トイレまでの廊下はかなり暗かった。
『カサカサ、カサカサ。』
「何、この虫が這うような音は。ま、まさか、これがウワサの人間界の魔界蟲ゴキブリ!?」
魔法界にゴキブリは存在しなかった。しかし、人間界において、最も恐ろしい生物のひとつとして恐れられていることはヴァーティも知っていた。
「ゴキブリ!あたし、食べられちゃう!きゃあああ~!ばたん。」
ヴァーティは恐怖のあまり、心を食べられてヘナヘナと跪いてしまった。
ヴァーティが見たゴキブリは、体長が1メートル60センチぐらいだった。当然、モンスターゴキブリではない。
「ゴキブリにしては大きかったわ。泥棒かしら。」
駐車場に逃げていく姿を見たが、警備員でもないヴァーティはそのまま用を足して大部屋に戻った。
自動車教習所においても警備員はいる。
教習車落下の衝撃で、周囲に土埃が舞って視界を奪っていた。
1分後、教習車の全貌がクリアになり、ふたりの姿が見えてきた。教習車の中は、赤い液体がスプラッター状に広かっていた。
『ガタン。』
助手席のドアが開き、高原がゆっくりと出てきて、教習車の回りを見て回った。
「車の外側にキズはないようデス。」
車内では何事もなかったかのような無機質な表情の高原は運転席のヴァーティに声をかけた。
「そう。それは良かったわ。あたしのからだもなんともないわ。さすが、あたしの着地技術がうまかったからね。」
ヴァーティもまったく無傷であるし、車の中に広かっていたと見えた赤い液体は、幻覚だったらしく、補習開始前のきれいな状態だった。
「あたし、夢魔法を使ったみたいね。でもスプラッター的な夢なんてみるかしら。」
ヴァーティは自分が大ケガをして、その刹那に治癒魔法を使われたことに気づいていなかった。
その日の夜のこと。女子寮である事件が起こった。
トイレに立ったヴァーティ。
宿泊料金の安い女子寮は節約志向が極めて強く、トイレまでの廊下はかなり暗かった。
『カサカサ、カサカサ。』
「何、この虫が這うような音は。ま、まさか、これがウワサの人間界の魔界蟲ゴキブリ!?」
魔法界にゴキブリは存在しなかった。しかし、人間界において、最も恐ろしい生物のひとつとして恐れられていることはヴァーティも知っていた。
「ゴキブリ!あたし、食べられちゃう!きゃあああ~!ばたん。」
ヴァーティは恐怖のあまり、心を食べられてヘナヘナと跪いてしまった。
ヴァーティが見たゴキブリは、体長が1メートル60センチぐらいだった。当然、モンスターゴキブリではない。
「ゴキブリにしては大きかったわ。泥棒かしら。」
駐車場に逃げていく姿を見たが、警備員でもないヴァーティはそのまま用を足して大部屋に戻った。
自動車教習所においても警備員はいる。
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