魔法少女はダンプカー運転手？

第一章

第二十三部分

タイヤが一気に摩耗してしまったような音がしたが、暴走教習車は停車せず、ガードレールを緩衝材とするしかなかった。つまりガードレールに激突し、これを突き破った。
「ふうっ。何とか止まったようだな。しかし、車が不安定な動きをしているな。こう、前後にシーソーのようにだな。・・・。ははは。」
教習車の現況説明は容易である。カーブで急ブレーキ踏んで宙ぶらりん。教習車の前部がガードレールの外に顔をこんにちわしているという笑える状態である。
「さっき通せんぼしていたガードレールを軽く湾曲させてから、どかせたんだけど、あたしたち、いったいどうなっちゃったのかしら。」
ヴァーティは状況が飲み込めていなかった。しかし、教習車の前が下方に傾いた時に初めて現況を理解した。
「きゃあああ！このままだと、あたし、谷底に落ちて生命体としての機能維持が不可能になるわ！」
「今更、変な表現をするな。オレが何とかするから、そこから動くな！」
「そんなこと言われても、重心が前に移動してるから、もう落ちるしかないわ！」
ヴァーティは口走りながら前傾姿勢を進行させたため、教習車はより強く崖下に好意を示した。
「もうダメだ～！助からない～！」
『ガラガラ～！』
教習車は五竜の絶叫ともども、強烈な重力のなすがままになっていた。
「うわわわ～！」
『ガタガタドタン！』
ヴァーティが出した大声に反応した教習車がバクテンして道路に戻っていた。つまり後ろ向きに一回転して着地したのである。

教習車が着地してから１分間経過した。　
あまりの衝撃によりふたりとも声が出ず、車内は沈黙していた。
「今のはいったいなんだ？」
死地にまみれるしかなかった体勢から、幸運という概念を超えた、奇跡としか言いようのない生還。
「もう死んだと思ったのに、あたしは夢魔法を使ってるのかしら。」
「オレは夢を見ているのか。」
『バシバシ！』
「痛い！」「痛いわ！」
ヴァーティと五竜はお互いのほっぺを親の仇のように、平手打ちした。