魔法少女はダンプカー運転手？

第一章

第二十七部分

「ちょっと、どういうことよ。学校って言えば、冷暖房完備の楽園的な教室で、女子生徒が可憐な花を咲かせる短い時を過ごす場所じゃないの？」
「幻想として消え失せるポエムに溺れるのは勝手だが、ここは勉強するところではない。」
「そんな登校初日に、奈落の底に突き落とすつもりなの？五竜は差別行為がシュミのヘンタイだったのね。」
五竜に言われて不満という文字を耳なし芳一のように全身に書きまくる勢いのヴァーティ。
そんなことは言ってない。ここの生徒に使う校舎は存在しない。
「じゃあ、そこにある校舎はいったい何用なのよ？」
「そんなことを知る必要はない。ヴァーティが行くところは、こっちだからついてこい。
五竜は無理やりヴァーティの手を握って引っ張っていく。」
「ちょ、ちょっと、いきなり何するのよ。」
ヴァーティは五竜の熱い手の体温を感じて、自分の顔が赤らんでいくのを意識していた。
「こんな顔、五竜に見られたら恥ずかしいわ。」
そう思いながら五竜に目をやると、鏡に映されたような表情に見えた。
「五竜もあたしと同じ気持ちなのかしら？でもそんな筈はないわ。」
疑問を振り払いつつも明るい日差しを感じるヴァーティであった。

数分後、ふたりが着いた場所は広々とした野球場クラスの面積を誇るグラウンド。道路や信号機が整備、設置してあり、まるで校舎裏の自動車用コースである。但し道路は滑走路のように真っ直ぐに延びており、５レーンほど並んでいる。
「ようこそ黒魔術自動車研究会へようこそデス。」
「あんたはメイド１号！どうしてこんなところにいるのよ？」
「どうしてと言われても、１号は黒馬学園の生徒で、黒魔術自動車部の部長だからデス。」
「あれ、あんた、いつもどマスクの色が違うわね。しかも黒いジャージなんか着てるし。なんかムカつくわ。」
ジャージは高原の巨乳で殊更に膨脹していた。
高原のマスクは光輝くゴールドであった。
『ザッザッザッ。』
軍隊が行進するような音を立てて、たくさんのジャージ姿が歩いてきた。何コイツら。「みんなマスクしてるところを見ると、教習車のメイドたちなの？」
「教習車以外からも多数の生徒たちが集まってますデス。」
「きっと曰く付きの連中が集まってるのね。すごく異様だわ。」
残念なことに、ヴァーティの感想は自己も異様集合体に包含されることに気づかなかった。