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第二章

第五部分

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「土ノ中デ、モグラ生活ヲシタケレバ、コチラハ確実ニ勝利ヲ優先サセマス。」
ピッチャーはコントロール重視で、軽くど真ん中にボールを投げた。
『ガギーン!』
除夜の鐘が割れたような音と共に、ボールはレフトスタンドに入って、椅子を破壊して、弾んだ。
「ボク、ドラエロ悶。ホームラン。巨人軍、一点取ったよ。」
「ナ、ナニガ怒ッタノデスカ?」
「いや、怒ったモノはないけど、この秘密のバットが奇跡を起こしたのさ。」
土の中からランボウが出てきた。右手にバットを持っている。しかし、バッターボックスには、空気取り入れ用のバットは刺さったままである。
「マ、マサカ、生殖器ヲ二本持ッテイタッテ、イウコトデスカ。ソンナ、ドーブツ、知リマセンヨ。」
「生殖器じゃない。バットだよ、バット。これでもあたいは、おトメさんなんだから。」
「乙女デハナク、オトメ?ナンダカ、婆サン加齢臭ガシテキマシタ。」
「なんとでも言え。これがランボウの隠し二刀流野球なんだから。」
「ホント、緻密デ、セコい野球デス。ダガラ巨人軍ハ嫌イナノデス。」

次のバッターのナッキーはケガの影響もあって、あっさり凡退し、一回の裏に進んだ。
ピッチャーランボウがコールされた。
ピッチャーのランボウは、なぜか球場全体に響くように、マイクを持っていた。
「戦う前に言いたいことがある。」
「イキナリ何デスカ。汚イ野球カラ、足ヲ洗ウトイウコトナラ、受付ケマスガ。」
「それは立派な戦略なんだから譲りはしない。そういうことではない。巨人軍は病気だから、魔法工房で小さくなれるし、いつか治る可能性がある。でも半巨人は違うよな。」
「ぐぐぐ。」
一番と二番バッターが顔を見合わせた後、三番であるピッチャーをじっと見ている。
「キ、気ニシテハイケマセン。ナ、何デモナイデス、タ、タダノ戯言デスカラ、無視シテクダサイ。」
ピッチャーは下を向くしかなかった。
一番、二番バッターはヘルメットで顔がよく見えないものの、あきらかに動揺していた。一番ファースト、二番キャッチャー、いずれもランボウの速球に、あっさり凡退した。
そして三人目がバッターボックスに立った。
「卑劣ナヤリ方デス。絶対許サレマセン。」
「ウソなら根も葉もないとか、否定すべきなんだけど、それは言わないんだな。」
「ウヌヌヌ。」
三番ピッチャーは、ピンク色の可憐な唇を噛みしめて血が滲んでいる。
ピッチャーの時と同じく筋肉を盛り上げてバッターボックスに立っている三番。
ランボウは涼しい顔で投球する。結果、三球三振だった。いずれもコーナーギリギリのボール球を振り回して、バットは空を切っていた。試合は巨人軍の勝利となった。
「これが巨人軍の野球。汚いけど、勝つためには手段を選ばないということなんだ。」
美散は納得顔であった。
「でも巨人軍と半巨人の違いはよくわからないなあ。」
首を三回捻った美散であった。
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