真・枕営業の魔法少女

木mori

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第二章

第四部分

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しばらくして久里朱は、すでに日が落ちて暗い中で、渋沢家の前に佇んでいた。
「ここが栄知自宅。って、昔から知ってるけど、いままで一度も家に入ったことがなかったわ。お父さん同士は仲がよかったのに不思議ねえ。たしか、妹さんがいたような。将来、あたしの妹になったりして。ああ、おねえさん、って呼ばれるのって、夢だったわ。ゴツン、いたた。」
目を閉じて夢想したまま家の周囲を無意味に歩いたため、何度も壁にぶつかった久里朱。
「どうしよう。栄知の家なのよ。勝手に入るわけには行かないわ。無許可訪問販売になってしまうし。」
家の前で久里朱はソワソワ、モジモジしていた。
『ガタン』
玄関のドアが突然開いた。
「「外がうるさいよ。ひとの家の前で何を騒いでるんだよ?」」
真ん丸な鳶色の目、黄色髪ハーフツインと、ハーフツイン+ツンツンコンビが久里朱の瞳に飛び込んできた。久里朱から見て、左に桜子、右に梅子が横並んでいる。
「何、この鯵のヒラキ的生物は。しかもひとりはバカ殿だわ!」
「「紫陽花が開いたような美少女?ウマイこと言うね。ぽっ。」」
 梅子桜子は同時に同じようににやけ顔になった。
「全然違う意味にとらえているわよ!あたしには、あんたたちと遊んでるヒマはないんだけど。あんたたちが栄知の妹なの?たしか妹はひとりって聞いてたけど。」
「梅子は永遠の妹・梅子だよ!」
「違うよ。桜子がお兄ちゃんの正式な妹だよ!」
「ふたりなんだ。双子っぽいわね。ご、ゴホン、ふたりともあたし、緋口久里朱がそのうち、姉になるからよろしくね。久里朱おねえさんと呼びなさい。」
「だれがおねえさんだ!?」」
「あら?あんたたち、どこかで会ったような?」
「「すでに会ってるよ、やっぱり気づいてなかったんだ。梅子桜子は魔法少女省の役人だよ!」」
「役人、つまり魔法少女なの!?魔法少女省で何かの会議で、会ったってこと?」
「「コイツ、梅子桜子が普段、同じ会議に出席できないことを知ってて、意地悪く言ってるよ!」」
「意地悪?なんのこと?よくわからないけど、あたしはもらい受けに来たわ、お、お、おに、を」
「「鬼?ウチでは飼ってないよ。」」
「鬼じゃないわよ!おに、おに、おにぎりよ!」
「お腹がすいてるのか?」
「違うわよ!もう、はっきり言うわよ。あんたたちのお兄ちゃんに枕営業しに来たのよ!」
「「お兄ちゃんズに枕営業だと?そんなこと、許されるわけないよ。お兄ちゃんズは梅子桜子が毎日枕営業してるんだから!」」
「栄知に枕営業をやってる、それも毎日ですって?そ、そんな、うらやましい、じゃない、フケツだわ。自分たちの兄になんてことを!」
「「お兄ちゃんズは特別だよぉ。だから問題ないよぉ。この前、ヤクザに拐われたから、もうこの家から出さないようにしたんだよぉ。」」
「堂々と拉致宣言したわね。あたしは栄知を解放するために来たんだから。」
「「キャリアの部下にお兄ちゃんズを渡したりできないよ。」」
「キャリアって、オバチャマのことを知ってるの?」
久里朱の反応を見て、梅子が一歩前に出た。狭い玄関に落ちる手前のポジションである。
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