パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
5 / 276

第1話『去年の仕事』

しおりを挟む
 調子づいたポールを止める者はなく、宴もたけなわだった。
 いい感じにお酒の入った大人たちは饒舌だ。
 ポールの冗談に付き合うオリーブと、合いの手を入れるキーツとリアクションの薄いナタル。聞き役に回るトゥーラ、付き合っちゃいられないと言いたげなタイラー。マルクは話が破綻しないかチェックしているし、下戸のランスは御用聞きを役目と心得ていた。
「アロン、ルイス、大人しいね」
 オリーブが隅で話し込んでいる二人に声をかける。
 アロンは赤ワインのグラスを置いて、全員に話題を振る。
「去年の仕事は試行錯誤が多くて大変だったって話をしてたんだ。ルイスはオービット・アクシスで、統括本部とやり取りしながら、やっとこなしたんだってさ。俺も苦戦したからわかるって言ったんだ」
 ああ、と全員が共感の声を上げる。
 NWSは去年、パラティヌスの中央、クラウドドラゴン山脈の麓、フォークロア森林帯で遺跡の発掘作業の仕事をしたのだった。
 発掘とは言っても、そこら中掘り返すのではない。森林の生態系を保護しながら、なおかつ遺跡を保存するのである。
「繁緑の四月辺りが一番大変じゃなかったか? 下生えのスミレやカタクリを避けながら、作業するのに神経使った使った」
 マルクがウーロンハイを飲みながら、半ばうんざりして振り返ると、そうそうとキーツが続いた。
「妖精がわんさか出てきて、やいのやいの云ってくるんだよね。そこは木の根があるから、石柱どけるんなら代わりに土塊を置けとか。花が群生してるから地下から掘り出せとか。「わかってるよ」って言うじゃない? そうすると「いいや、わかってない」って否定されて、何度凹んだことか」
「云われたとおりに仕事していれば、かえって作業効率は上がったのよ?」
 トゥーラに言われて、えっ、とキーツが問う。
「そうなの?」
「自然の専門家だもの、妖精は。任せれば喜んで知恵を貸してくれたわよ」
 トゥーラのカクテルは全然減っていなかった。
「そういえば4班はすごく仕事が早かったけど、そのせいか」
 アロンが納得すると、ランスが補足した。
「トゥーラさんは大地の精霊と親和力が高い方ですから」
「へぇ」
 全員が感心する。
「妖精が出てくるだけいいぞ。俺だと気配は感じるが、遠巻きに見られているだけだからな」
 タイラーが言うと、ルイスがしょんぼりと言った。
「俺なんか間違えないようにするのでいっぱいいっぱいで、気配を感じることもできませんでした」
「お互い勉強不足だな。頑張ろうぜ」
「はいっ」
 ポールが体験談を語る。
「妖精って面白いんだよね。あんななよっとした外見なのに、いざとなったら石柱なんてホイッって一投げだもん。俺が花の上に倒れようもんなら、ものすごいバランス感覚で曲芸かって支え方するし」
 オリーブが頬杖をついて聞きながら呆れる。
「遊んでるねぇ」
「遊んだもん勝ちでしょ、実際」
 わははと笑い飛ばすポール。
「すごいな、その余裕。俺なんかからかわれてばっかりなのに」
 ナタルが尊敬の目で見ると、キーツがボソッと言った。
「絶対、人見てる。あいつら」
 ランスが妖精との仲を取り持つように言った。
「皆さん、今日はお酒が美味しいでしょ。妖精からのお礼ですよ」
 トプンと彼のミルクが王冠を作ったのを、誰も知ることはなかった。

 あちこちのテーブルでグラスが空になり、次々と追加注文された。
 即興の曲を演奏する楽隊。繰り広げられるダンス。野卑た笑い声。踊るように練り歩くウェイター、ウェイトレス。
 老いも若きも一緒になって新年を祝う。
 彼らもNWS同様、パラティヌスのどこかで環境修復を生業、あるいは副業にしている。
「レンナちゃんも来ればよかったのにね。下宿のお仲間と一緒に」
 オリーブがポツリと言った。
「それはどうだろう。フローラ様置いてこれないだろ」
 マルクが苦笑すると、アロンが突っ込んだ。
「それ以前に未成年だから」
 代表、レンナ・エターナリストは、真央界で下宿を営んでいる。
 17歳という若さで、NWSの代表として仕事の交渉を行う。
 このエターナリストというのは位階を表し、最高位が修法者エターナリスト。準じて鳥俯瞰者アスペクター。十人のリーダーたちもここに属するため、名前の後ろに位階名を名乗る。さらにその下に平面者プレイナー方向者ベクトラーと続く。つまり四位階あるということになる。
 NWSの仕事は統括本部を通してエターナリストに伝達される。代表は交渉のみで、実質的にNWSを率いているのは十人のリーダーである。
 故に年下のレンナは年上の彼らにNWSの運営を任せっぱなしである。

















 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした

宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。 「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」 辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。 (この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...