パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
21 / 276

第2話『会議の詰め』

しおりを挟む
 その後も細かい人材配置の調整は続き、情報の交換と共有、不明点の確認、備品の点検などを話し合った。
 午後4時、就業時間終了まで一時間を切ったところで、トゥーラが閉会の挨拶をする。
「それでは、炎樹の森での害虫防除対策会議を終了します。お疲れさまでした」
「お疲れ様でした――!」
「よっしゃーっ! 全員呼び出して問い質したる」
 ポールがザッと椅子から立ち上がって、ディバックを肩にかけて出口に向かった。
「上から行くなよ!」
 マルクが声をかけると、ポールは指で輪っかを作って、グイッと呷った。
「潤滑油も忘れちゃいないよ」
 ポールが行ってしまうと、一種の気怠さが9人を襲った。
「あいつ、午前様だな」
 タイラーがあの勢いをぶつけられる、5班の男性メンバーを気の毒に思った。
「トゥーラ、会議資料と議事録のまとめを頼む」
「了解。それから、今日見てもらった作業管理ソフトは、運用までもう少し時間をもらってもいいかしら。改善点もあるし」
「わかった。もしよかったら、イデ君やテリー君を交えて調整してもらっていいか?
危険区域検出ソフトの有効利用法も煮詰めてほしいんだ」
「ええ」
 マルクとトゥーラが会議の総まとめをするのは、いつもの光景だ。
 そこにナタルが加わった。
「トゥーラ、その話し合いに俺も混ぜてくれないかな? 知識の点ではお荷物だけど、なるべく情報を把握しておきたいんだ」
 トゥーラは頷いて了承した。
「そうね、それがいいと思うわ。あと、会議資料を集めるのも協力してもらってもいい? 国立図書館に缶詰めだけど、都合がつくかしら」
「やります、やります!」
「それさ、居残り組全員にやってもらったら? カエリウスについて物騒なイメージが先行してるから、不参加なんだと思うし。もしかしたら、得た知識次第ではもう少し参加者が増えるかも」
 アロンがそう助言して、急遽話し合いが始まる。
「確かに予備知識がなかったら、今回の仕事は二の足踏むかもね」
 キーツが身を乗り出して言った。
「仕事には臨場感が必須なんだがな。普通はこういう仕事をすると決まった時に、勉強して知識の補強や不安感を払拭するのも、同時進行でやるから身につくんだぞ」
「まったくその通りだと思うけど、アンケートを取ったのは勇気を試すためのものじゃなかったじゃない。前もって心の準備が必要な人もいるのよ。私たちでさえ、仕事の安全性と妥当性を検証できたのは、ついさっきじゃないの。その時点では……踏み切れないのは当然だわ」
「……」
 タイラーの主張はオリーブによって見事に分析されて、リーダーたちに吸収された。
「そうですね……安全が保障された仕事環境と、不透明なそれでは、慎重にならざるを得ませんからね。逆に言えば、安全性や妥当性が立証されれば腑に落ちるわけで。不参加組の方たちに知識を深めてもらうのは順当なことだと思います」
 ランスの言葉に、タイラーも納得して頷いた。
 それまでずっと黙っていたルイスが口を開いた。
「あの……安全性も妥当性も立証されていないのに、どうして女性メンバーは参加に踏み切れたんでしょうか? ポールさんが言ったように、中には勇気という言葉が不似合いな女性もいるのに」
「使命感の方が上回ってるからじゃない?」
 キーツがにべもなく言った。
「それもあるけれど、有り体に言って生産性が高い仕事だからじゃないかしらね。弱ったナラを治すとか、負のエネルギーから森を守るというのは、本質に訴えるものがあるのね。恐怖が下地にあるのがドラマティックだったりしてね」
 トゥーラの言葉にルイスがのけぞった。
「そんな理由で呪界法信奉者が怖くなくなるんですか!」
「女性には大義名分なんて必要じゃないのよ。理由がないことの方が手をかけられるから。そうさせてくれるところがあれば、女性の慈愛は水のように浸み込むのよ」
「勉強になります!」
 ルイスがトゥーラの言葉を手帳にメモする。
「だから、行動に大義名分を必要とする男は、恐怖が必要以上にデカく見えるんだよな」
 アロンがこめかみを押しながら言った。
「ポールのとこみたいに、不参加の理由がわからないなんてかわいいもんさ。ウチなんか十中八九、班体制が崩れて適当にサボれないからだし」
「あーわかる。ウチも絶対それ」
 キーツが眉をしかめて、ついでにこめかみをごしごし擦る。
「そういう連中は俺に任せておけ」
 タイラーが頼もしく言い切った。
 新春早々、暴風警報が発表されそうなNWSだった。

















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした

宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。 「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」 辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。 (この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...