パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
20 / 276

第2話『危険区域検出ソフト』

しおりを挟む
「あったよ、危険区域検出ソフト」
 ナタルは声を上げたが、見つけたのはトゥーラだった。
「これをどうするんだい?」
 考えなしに聞くナタルと違って、トゥーラは半球状のオービット・アクシスをタッチパネルのように操作して、二つのソフトを同期で読み込んだ。
 すると、トゥーラが用意していた準備段階の作業管理ソフトと危険区域検出ソフトの共通項目が大量表示された。
「トゥーラ……」
 情けなく呟くナタルの隣で、トゥーラは炎樹の森の全域図を呼び出した。
「3D表示するわよ」
 言い終わるが早いか、内蔵された3Dカメラが彼らの目線の上に全域図の画像を映し出した。
「おおーっ、壮観じゃないの!」
 ポールが立ち上がって全域図の精巧さに目を見張った。
 ナタルに不安そうな顔を向けられて、トゥーラは意を汲んだ。
「大丈夫よ、ナタル。私の班に私より詳しい、イデ君が残留組にいるから、彼に遠慮なく相談して」
「うん、ありがとうトゥーラ。助かるよ」
 そして全域図を立って見下ろしながら、会話が始まる。
「この赤いマーカーの区域、あるいは箇所が危険予測域と地点だ。青い波紋はレーダーで、秒単位で観測してる。動き回る黄色いマーカーは危険動物……今は冬だから狼くらいだろうが、これで一目瞭然だ。トゥーラ、この作業管理ソフトはまだ完成してないのか?」
 タイラーが問うと、トゥーラが頷いた。
「ええ、決定項目が少ないから、まだ白紙状態」
「いや、大したもんだよ。個人のソフトが既成のソフトとバグもなく同期できるんだから。まっさらだとしても普通こうはいかないからね」
 アロンが高水準の仕上がりに舌を巻く。
「ナタルがこの作業を引き継ぐのね」
 オリーブの言葉に心臓が跳ねあがるナタル。トゥーラが言い添えた。
「完成はウチのイデ君に任せるつもりよ」
「そういえばウチの班にもいます、システムエンジニア真っ青のオタクが」
 ルイスが言い出して、急いで班名簿を確認する。
「あ、やっぱり残留組でした。テリーも仲間に入れてやってください」
「テリ~!」
 所謂、とっつあん坊やなテリーの人懐こい顔を思い出して、ポールとキーツがウケまくる。テリー・プレイナーはNWS結成当初からのメンバーで、中堅を担っていた。
「さて、ソフトの完成に必要な人材も確保できたし、あとはナタルに任せるとして。マーカー班とアース班の人員についても、調整が必要なことがあれば挙げてくれ」
 マルクが議題に戻すと、オリーブがふと思いついた。
「そういえば、ツリーリジェネレーションとアースフォローアップの両方使える2人って誰だったの?」
「6班のアヤさんと10班のハルニレちゃんよ」
「えっ⁈」
 ルイスが驚いて鋭い声を出してしまい、注目を浴びる。
「ルイスのその「えっ」って、アヤさんはともかく、ウチのハルニレちゃんがどうして……の「えっ」?」
 ポールの推察に、やや慌てるルイス。
「は、はい。確か去年のアンケートでは、両方使えなかったはずなので……」
「おや、成長株ですね。木のお名前だけに」 
 ランスが合いの手を入れると、アロンがポンと手を打った。
「もしかして、名前のことがあるからじゃないか? 元々、木に関することに興味があって、修法も木にまつわるものに絞ったとか。女の子ってそういうとこあるよね」
「そうかもしれないわね」
 トゥーラがさらっと聞き流した。
「うーん、それはさ、女の子に限らず個人の傾向があるはずだから、一度集計してみるといいかもね。対応できることがあるのに、俺たちに遠慮して実力出さないの、もったいないじゃないか」
 ナタルの考えに、タイラーが頷いた。
「一理あるな。修法は使いどころがわかるから施せるんだ。基本をマスターしてるのはもちろんだが、応用を覚えるには実践が一番だからな。アイディアが生まれる土壌を用意するのも、俺たちの役目の一つだろう」
「なるほどね。ウチの男どもにも発破かけんと」
 ポールが顎をさすりながら言ったが、オリーブが釘を打つ。
「それ以上プレッシャーかけると、みんな逃げちゃわない?」
「どういう意味?」
「班の中核を担う男性が、全員不参加の異常事態を招いた原因がわからないなんて……監督不行き届きじゃない。自由主義もいいけど、締めるところで締めなかったら、ただの放任主義になりかねないんじゃないの」
 痛いところを突かれてポールが黙り込む。仲裁したのはマルクだった。
「とにかく不明点は仕事開始日までにはっきりさせておいてくれ。参加者にも残留組にも気持ちよく仕事してもらえるようにするのも、俺たちの大切な役割だ。俺たちの至らないところも俺たちでフォローする。それが基本だ」
















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜

碧風瑠華
ファンタジー
「お前はダメだ」と言われつづけましたが、ダメだったのは貴方です。 「せっかく離れたのに、また関わるなんて……!」 ルクレ伯爵家の令嬢セリーヌは、第三王子アランディルの婚約者候補に選ばれてしまった。 根本的に合わないあの人との関わりに、心を痛めながらも逃れる方法を静かに模索していく。 ※第一部完結済 ※他サイトにも掲載中です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...