24 / 276
第3話『6班人間模様』
しおりを挟む
「もしもし、肩が怒ってますわよ」
「!」
パティは背中を突かれて我に返った。
「……なんだ、メグかぁ」
友人のマーガレット――メグ・プレイナーが気づかわしそうに見ている。
「今度はどうしたのよ?」
「みんなの呑気さにちょっとイラっとして……」
「もぉー、真面目なんだから。呑気な人は慌てて詰め込まなきゃいけない、ってそれだけだよ。勤勉な人はゆったり構えてられるのがご褒美なんだから、カリカリしただけ大損だってば」
「ちなみにメグはどっち?」
「ウチのリーダー、ナタルさんだよ。補助するくらいの気持ちじゃないと、2班は回っていかないの」
「……それもそっか!」
「そうそう」
「メグさん、パティさん、いよいよですね!」
3班の後輩、ミルラ・ベクトラーが2人に声をかけてきた。
「ミルラは予習するタイプ?」
「はい! プレイナーの資格試験と重なって大忙しです」
「……」
パティがミルラの頭を優しく撫でた。涙を浮かべている。
「? どうしたんですか、パティさん」
「パティはね、やる気ある人大好きなのよ」
「⁇」
話が読めなくて、ミルラが小首をかしげる。
「パティ、ちょっといい?」
「アヤさん!」
後ろから声をかけてきたのは、6班のアヤ・アスペクター。ランスの片腕でスーパーバイザー。同じ班のパティも一目置いている。
「パティの配属先は、ツリー班のポールさんの班よね。私はアース班だから、6班の勤怠管理を代わりにお願いしたいの。あなたの他にはコノミちゃんだけだから、そのフォローも懇ろに。やってくれる?」
「はい、承知しました」
「ありがとう、助かるわ。ミルラちゃんもよろしくね」
「は、はいっ、仲良く頑張ります」
「フフッ、いい子ね。お互い頑張りましょう」
そう言ってアヤはナタルのフォローに戻った。
「はぁ……もう今回の班割が頭に入ってるって感じだなぁ」
「アヤさん、子ども扱いするけど、かっこいいから好き」
メグとミルラが口々にアヤを褒める。
「うん、そうなの。アヤさんが同じ班だから、負けないように頑張ろうって思うんだよね」
「パティさん……!」
またまた後ろから声をかけられた。ボリュームが極端に小さい。
「あ、コノミちゃん。今ね……」
パティがアヤから世話を頼まれたことを婉曲に言おうとすると、コノミ・ベクトラーは必死に遮った。
「知ってます。アヤさんに今回の仕事ではパティさんに頼って、と言われました」
「あっそう……」
拍子抜けするパティに、一生懸命言い募るコノミ。
「あのっ、あのっ、私気が弱いですけど、パティさんの足手まといにならないように頑張ります。至らないことがあったら、どんどん指摘してください」
——ウサギが耳を押さえて、すまながってるような印象だった。
「……あのさ」
パティはどう言ったものか、考えあぐねた。
「は、はい」
ますます委縮してしまう。
「……その状態で仮に私が仕事を指示しても、聞こえないんじゃないの?」
「えっ、えっ?」
言われたことがわからなくて動揺する。
コノミの後ろに回ったミルラが、肩に手を置いて落ち着かせる。
「大丈夫、パティさんは怖いんじゃなくて、情熱が人の3倍あるだけだから」
「……」
「フォローありがとう。あのね、コノミちゃん。私と同じ班だってことは、同じ修法で仕事ができるってことでしょ。つまり、やり方のいいまずいだけの差しかないってことじゃない。違う?」
「……はい」
「うん。アヤさんは常に班の利益になるように、メンバーを動かしていくけど、私ははっきり言ってそういうことが苦手なの。だから、メンバーの自主性を重んじるやり方なのね。コノミちゃんは今まで、アヤさんに言われたとおりにやってればよかったよね」
「はい……」
「今回は自分で考えて行動しなくちゃいけないってことを、まずわかって。逆に言えば、自分に何ができるのかわかる絶好のチャンスじゃない? そのために考える時間も余裕もたっぷりあげる。よっぽどのことがない限り、私は仕事を指示しないから、そのつもりでね」
「はい……」
コノミは所在なく、とぼとぼとアヤのところへ歩いていった。
「!」
パティは背中を突かれて我に返った。
「……なんだ、メグかぁ」
友人のマーガレット――メグ・プレイナーが気づかわしそうに見ている。
「今度はどうしたのよ?」
「みんなの呑気さにちょっとイラっとして……」
「もぉー、真面目なんだから。呑気な人は慌てて詰め込まなきゃいけない、ってそれだけだよ。勤勉な人はゆったり構えてられるのがご褒美なんだから、カリカリしただけ大損だってば」
「ちなみにメグはどっち?」
「ウチのリーダー、ナタルさんだよ。補助するくらいの気持ちじゃないと、2班は回っていかないの」
「……それもそっか!」
「そうそう」
「メグさん、パティさん、いよいよですね!」
3班の後輩、ミルラ・ベクトラーが2人に声をかけてきた。
「ミルラは予習するタイプ?」
「はい! プレイナーの資格試験と重なって大忙しです」
「……」
パティがミルラの頭を優しく撫でた。涙を浮かべている。
「? どうしたんですか、パティさん」
「パティはね、やる気ある人大好きなのよ」
「⁇」
話が読めなくて、ミルラが小首をかしげる。
「パティ、ちょっといい?」
「アヤさん!」
後ろから声をかけてきたのは、6班のアヤ・アスペクター。ランスの片腕でスーパーバイザー。同じ班のパティも一目置いている。
「パティの配属先は、ツリー班のポールさんの班よね。私はアース班だから、6班の勤怠管理を代わりにお願いしたいの。あなたの他にはコノミちゃんだけだから、そのフォローも懇ろに。やってくれる?」
「はい、承知しました」
「ありがとう、助かるわ。ミルラちゃんもよろしくね」
「は、はいっ、仲良く頑張ります」
「フフッ、いい子ね。お互い頑張りましょう」
そう言ってアヤはナタルのフォローに戻った。
「はぁ……もう今回の班割が頭に入ってるって感じだなぁ」
「アヤさん、子ども扱いするけど、かっこいいから好き」
メグとミルラが口々にアヤを褒める。
「うん、そうなの。アヤさんが同じ班だから、負けないように頑張ろうって思うんだよね」
「パティさん……!」
またまた後ろから声をかけられた。ボリュームが極端に小さい。
「あ、コノミちゃん。今ね……」
パティがアヤから世話を頼まれたことを婉曲に言おうとすると、コノミ・ベクトラーは必死に遮った。
「知ってます。アヤさんに今回の仕事ではパティさんに頼って、と言われました」
「あっそう……」
拍子抜けするパティに、一生懸命言い募るコノミ。
「あのっ、あのっ、私気が弱いですけど、パティさんの足手まといにならないように頑張ります。至らないことがあったら、どんどん指摘してください」
——ウサギが耳を押さえて、すまながってるような印象だった。
「……あのさ」
パティはどう言ったものか、考えあぐねた。
「は、はい」
ますます委縮してしまう。
「……その状態で仮に私が仕事を指示しても、聞こえないんじゃないの?」
「えっ、えっ?」
言われたことがわからなくて動揺する。
コノミの後ろに回ったミルラが、肩に手を置いて落ち着かせる。
「大丈夫、パティさんは怖いんじゃなくて、情熱が人の3倍あるだけだから」
「……」
「フォローありがとう。あのね、コノミちゃん。私と同じ班だってことは、同じ修法で仕事ができるってことでしょ。つまり、やり方のいいまずいだけの差しかないってことじゃない。違う?」
「……はい」
「うん。アヤさんは常に班の利益になるように、メンバーを動かしていくけど、私ははっきり言ってそういうことが苦手なの。だから、メンバーの自主性を重んじるやり方なのね。コノミちゃんは今まで、アヤさんに言われたとおりにやってればよかったよね」
「はい……」
「今回は自分で考えて行動しなくちゃいけないってことを、まずわかって。逆に言えば、自分に何ができるのかわかる絶好のチャンスじゃない? そのために考える時間も余裕もたっぷりあげる。よっぽどのことがない限り、私は仕事を指示しないから、そのつもりでね」
「はい……」
コノミは所在なく、とぼとぼとアヤのところへ歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる