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第3話『コノミとユチカ』
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ハッとしたリーダーたちが、今いる場所からテレパスを交わす。
(わっ、今の誰?)
オリーブが一番最初に反応する。
(たぶん、コノミさんですよ。アヤさんから今、言伝がありましたから)
ランスの言葉にキーツが問いかける。
(何かあったんですか?)
(今回はアヤさんがお世話できないので、パティさんにお願いしたそうです。パティさんは快く引き受けてくださったんですが、コノミさんが突き放されたように感じてしまったらしくて……)
(あー、それは仕方ないかも)
ナタルが言った。
(でも、すっごく透明でキラキラした祈りでしたね!)
ルイスがびっくりして言った。
(それが本当のコノミちゃんなのよ)
トゥーラがしみじみ言った。
(もったいない! こんな素質が眠ってるのに)
ポールが叫んだ。
(というか、ここはポールが行って、安心させるべきなんじゃないの?)
オリーブがすかさず言った。
(そうだ、たまにはボランティアで汗を流しとけ)
タイラーが追い打ちをかける。
(気をつけろよ! デリカシーのない発言はするな)
アロンが注意を促す。
(ランスさん、フォローお願いします)
マルクに頼まれて、ランスは期待を込めて了承した。
(わかりました――!)
ポールとランスが集会所に入ると、先客がいた。
4班のユチカ・ベクトラーだった。
2人が入ってきても動ずることなく会釈して、円卓で片肘をつき足を組んでコノミをじっと見ている。
(……?)
目配せした2人だったが、とにかく今はコノミを優先する。
「コノミさん……?」
顔をぐちゃぐちゃにしていたコノミは、びくっと身体を震わせた。
ランスが労わりながら言葉を紡ぐ。
「アヤさんに聞きましたよ。パティさんにちゃんとお世話になりますと言えたんですってね。できる限りのことをすると約束する、それで何も間違ってないんですよ」
「……ヒック」
さすがランスさん、コノミちゃんの視点まで下りて話をしている。
隣で笑顔を張りつかせながら、ポールは感心していた。
「でも、パティさんは、はっきりした方ですから、何でも自分で考えて仕事するように言われて、心細くなってしまいましたか? 残念ながら今回、アヤさんは別の仕事ですが、パティさんもとても面倒見がいいんですよ。彼女が言った通り、私もそろそろコノミさんに自主的に仕事していただきたいと思っていたところです」
「……」
コノミは顔を真っ赤にして、鼻をぐずぐず言わせている。
ああ、こりゃ大変だ。ポールはそう思わずにいられなかった。
言ってみれば、今まで自転車を補助輪で乗っていたのに、いきなり補助輪を外されて道路デビューするようなものだ。危なっかしくてしょうがない。
ここは別の切り口を見つけんと。ヒントはコノミがかき抱いている本だった。
あれは確か――?
ランスは心を砕いて語りかけていたが、その場に冷たい言葉が割り込んだ。
「——バカみたい」
その声はユチカからだった。
挑みかかるようにコノミを睨み、ハッと息を吐く。
「この子っていつもそうなんですよ。泣いていれば大人が「どうしたの?」って聞いてくれる。それを待つのが常套手段。みんな嘘みたいに引っかかるから、癖になっちゃって。根性悪いだけじゃないですか」
「そんな言い方をしなくてもいいでしょう」
珍しくランスが怒りを抑えて言った。
(おいおい、面倒くさくなってきたぞ。ヘルプ~!)
(けっぱれ)
ポールは仲間に助けを求めたが、何人かがその一言だけ送ってきた。
「コノミさんとお知り合いなんですか?」
ランスは怒っていても冷静だった。話の矛先を変える。
ユチカはふてぶてしく言った。
「——同じ施設の出身なんですよ。私の母親がシングルマザーなのにアルコール依存症になって、育てられないから親戚が施設に入れたんです。別にどうってことないです。どこにでも転がってる話ですから」
(トゥーラさん、ご存知でしたか?)
ランスの問いにトゥーラは短く答えた。
(いえ、本人からは聞いていません……)
「お友達だったんですか?」
「ええまぁ。この通りいい子ちゃんだから、つるんでると都合よくて」
(わっ、今の誰?)
オリーブが一番最初に反応する。
(たぶん、コノミさんですよ。アヤさんから今、言伝がありましたから)
ランスの言葉にキーツが問いかける。
(何かあったんですか?)
(今回はアヤさんがお世話できないので、パティさんにお願いしたそうです。パティさんは快く引き受けてくださったんですが、コノミさんが突き放されたように感じてしまったらしくて……)
(あー、それは仕方ないかも)
ナタルが言った。
(でも、すっごく透明でキラキラした祈りでしたね!)
ルイスがびっくりして言った。
(それが本当のコノミちゃんなのよ)
トゥーラがしみじみ言った。
(もったいない! こんな素質が眠ってるのに)
ポールが叫んだ。
(というか、ここはポールが行って、安心させるべきなんじゃないの?)
オリーブがすかさず言った。
(そうだ、たまにはボランティアで汗を流しとけ)
タイラーが追い打ちをかける。
(気をつけろよ! デリカシーのない発言はするな)
アロンが注意を促す。
(ランスさん、フォローお願いします)
マルクに頼まれて、ランスは期待を込めて了承した。
(わかりました――!)
ポールとランスが集会所に入ると、先客がいた。
4班のユチカ・ベクトラーだった。
2人が入ってきても動ずることなく会釈して、円卓で片肘をつき足を組んでコノミをじっと見ている。
(……?)
目配せした2人だったが、とにかく今はコノミを優先する。
「コノミさん……?」
顔をぐちゃぐちゃにしていたコノミは、びくっと身体を震わせた。
ランスが労わりながら言葉を紡ぐ。
「アヤさんに聞きましたよ。パティさんにちゃんとお世話になりますと言えたんですってね。できる限りのことをすると約束する、それで何も間違ってないんですよ」
「……ヒック」
さすがランスさん、コノミちゃんの視点まで下りて話をしている。
隣で笑顔を張りつかせながら、ポールは感心していた。
「でも、パティさんは、はっきりした方ですから、何でも自分で考えて仕事するように言われて、心細くなってしまいましたか? 残念ながら今回、アヤさんは別の仕事ですが、パティさんもとても面倒見がいいんですよ。彼女が言った通り、私もそろそろコノミさんに自主的に仕事していただきたいと思っていたところです」
「……」
コノミは顔を真っ赤にして、鼻をぐずぐず言わせている。
ああ、こりゃ大変だ。ポールはそう思わずにいられなかった。
言ってみれば、今まで自転車を補助輪で乗っていたのに、いきなり補助輪を外されて道路デビューするようなものだ。危なっかしくてしょうがない。
ここは別の切り口を見つけんと。ヒントはコノミがかき抱いている本だった。
あれは確か――?
ランスは心を砕いて語りかけていたが、その場に冷たい言葉が割り込んだ。
「——バカみたい」
その声はユチカからだった。
挑みかかるようにコノミを睨み、ハッと息を吐く。
「この子っていつもそうなんですよ。泣いていれば大人が「どうしたの?」って聞いてくれる。それを待つのが常套手段。みんな嘘みたいに引っかかるから、癖になっちゃって。根性悪いだけじゃないですか」
「そんな言い方をしなくてもいいでしょう」
珍しくランスが怒りを抑えて言った。
(おいおい、面倒くさくなってきたぞ。ヘルプ~!)
(けっぱれ)
ポールは仲間に助けを求めたが、何人かがその一言だけ送ってきた。
「コノミさんとお知り合いなんですか?」
ランスは怒っていても冷静だった。話の矛先を変える。
ユチカはふてぶてしく言った。
「——同じ施設の出身なんですよ。私の母親がシングルマザーなのにアルコール依存症になって、育てられないから親戚が施設に入れたんです。別にどうってことないです。どこにでも転がってる話ですから」
(トゥーラさん、ご存知でしたか?)
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(いえ、本人からは聞いていません……)
「お友達だったんですか?」
「ええまぁ。この通りいい子ちゃんだから、つるんでると都合よくて」
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