パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

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第4話『赤峡谷』

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 ガーネットラヴィーン、マーカー・トゥーラ班/ツリー・マルク班/アース・ナタル班
 カエリウスの西の国境、シシュ山脈を望む峡谷である。
 山裾を侵食するオカミ川によって、標高差100メートルの深い谷になった。
 切り立った崖のわずかな立地に、抗うように根を張る木々が数多くみられる。
 植生を支える褐色森林土の層の下に、火山砕屑物の堆積した層が20メートル近くある。これが含まれる酸化鉄などで赤く見えることからガーネットラヴィーンの名がついた。
 ただし、一度浸食を受けると脆くなる傾向があり、崖崩れが起こりやすい。
 真央界ではカエリウスとパラティヌスを結ぶ幹線道路が一本しかないくらいだ。
 テレポートで往来が可能な位階者らは、ピンポイントで移動する。
 今回のように、大勢の人間が一時に集まる場合は、始めからサイコキネシスで空中浮遊か体重減殺で対処する。
 童話の里で監視する危険区域検出ソフトには、ガーネットラヴィーン全体が準警戒を示す黄色表示がされているはずだ。
 ここにテレポートしてきた、トゥーラ・マルク・ナタルの班は、マルクから説明を受ける。
 「早速だが、マーカー班はオービット・アクシスの誘導に従って、マーカー設置に当たってもらう。マーカーの取り扱いについては、内蔵のマニュアルに詳しい。全員、作業管理ソフトを起動してくれ」
 約3分で全員の腕時計型オービット・アクシス内臓の管理作業ソフトが起動、同期された。
 マーカー班全員分の作業進行が一人ひとり別々に用意されたことになる。
 それから、アース・ナタル班の4人は、マーカー班の応援に来ている。その作業進行は、ナタルが童話の里で管理している。
 トゥーラから細かい作業指導を受けているの反応は素早い。
 作業開始の合図がトゥーラから出されると、10分もしないうちに182本/0.009㎢の表示が。0.009㎢とは甲子園の芝生の面積ほどの広さである。
 これは1人が1分以内にマーカー設置を完了していることを意味する。
(さすがだな、トゥーラ)
(初日だもの。みんな気合いが違うわ)
(なるほど。こちらも作業を開始するので、よろしく頼む)
(了解)
 マルクとトゥーラのテレパスによる打ち合わせの後、ツリー班の作業開始を待つばかりになった。
 指示を出すマルク。
「ツリー班の作業進行も、マーカー班と同じだ。設置の終わった木はオービット・アクシスが管理している。各自、進行プログラムに従うように。ガーネットラヴィーンは現場保存が一番難しい場所だから、体重減殺しっぱなしになる。そこで2時間おき10分間の休憩を許可する。必ず地盤が安定している、根張りの大きい木を休憩場所にするように。以上だ、作業開始!」
 この言葉を合図に、マルクのツリー班……やはり女性ばかり11名はテレポートで散った。
 集合場所近くのコナラで作業しているのは、2班のメグ・プレイナーだ。
 危なげなく罹患木を見極め、ツリーリジェネレーションを施していく。
 標準作業時間3分以内にやすやすと終わらせる。
 ホッと一息ついたところで、マルクが声をかけた。
「なかなか優秀だね」
「ああ、マルクさん。もしかして見てらしたんですか」
「うん。どうだい、やってみた感想は」 
「そうですね……冬なのでカシナガが木の中に留まってくれてるところがありがたいです」
「確かにね、マーカーは春以降にカシナガが羽化した時のためのものだから。今は楽に大地の精霊界に送還できるのが利点だね」
「そういえば、ちょっと考えたんですけど、オービット・アクシスでナラの位置がわかるなら……マーカーってあんまり意味なくないですか」
 言いながら、次のコナラの木へ移動するメグ。
 マルクも3メートル離れた場所のコナラの作業をする。
「オービット・アクシスに初めからナラ類を管理させていれば、ということだね」
「はい……」
「まぁ……ぶっちゃけて言えば、そういう機能がないってことが一つと、カシナガの追跡に特化したマーカーっていうのは開発段階だったってことだな」
「ああ、なるほど。やっと日の目を見た新製品だから、機能は付加していくしかないと」
「そういうことだね。微に入り細に入り、万世の秘法の環境修復を可能にする機器類開発の読みは本当に鋭いよな。超能力を有する俺たちでも、知識は万全じゃないから、やっぱり補助してくれるものは必要だと思うしな」
「マルクさんでもそうなんですか」
「もちろん。オービット・アクシスがなかったら、と思うとぞっとする。昔は環境修復技術は専門性が高くて、知識に毛が生えた程度の位階者は何にもできなかったらしいよ。けど、技術の進歩と自然の保存状態は比例しなくて、対応できる人材が増えた分、環境問題も多様化してしまったけどな」
「それを考えると複雑です。環境修復に携われるのは幸せだけど、あんまり報われないから」
「まったくだな……」
 マルクもメグも終わりのない仕事と諦めるよりほかなかった。
















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