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第8話『レンナを仲介』

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「あ、レンナちゃん? こんにちは、オリーブです。今何してたの? ああ、みんなとお茶してたの。ちょっと折り入って相談があるんだけど、大丈夫かな。ありがとう、あのね……」
 こんな調子でオリーブはレンナとテレパスで会話を続けた。
「……というわけで、生命の樹に助力をお願いしたいんだけど。うんうん、出来たらすぐ返事を――えっ、OK? すぐ返事もらえた? さすが。フローラ様にも協力していただけるのね、ありがとう! じゃあお願いします。はーい、またね」
 そこでテレパスは終わった。オリーブが晴れやかな笑顔で言った。
「聞いての通りです。エメラさんのお願いは生命の樹が一つ返事で引き受けてくれたそうです。他にも融通してほしいことがあれば、万世の魔女が窓口になります。里への協力体制は私たちが引き受けますが、降霊界は内宮フローラ様自ら協力を呼び掛けてくださるそうです」
「おおーっ」
 快哉を上げる男たち。
「ありがとう、ありがとう!」
 エメラは手を合わせて、生命の樹とかかわった人々に感謝を捧げた。
「よかったですね、エメラさん」
 ランスが言うと、エメラは頭を下げた。
「皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。本たちもどんなにか喜んでいることでしょう」
「……本当だ。すごいことになってる」
 ナタルが本を開いて見ると、ページ全部で人魚が跳ねとんでいた。
「さて……と、引き受けたからには、僕らも集合かけなきゃね」
 キーツが言って、ランスが皆を促した。
「それでは皆さん、帰りましょうか」
「そうしましょう」
「あ、待ってください皆さん!」
 エメラが呼び止めた。
「どうしました」
 ランスが聞くと、エメラはホッとして言った。
「皆さんがここに来る前にお話しされていた、ドリームランド虹球界への入口をファンタジーに仕立てる、というお話。大変興味深く伺いましたわ。もし、お時間が余るようでしたら、私たちも協力いたしますので、お声がけいただけませんか?」
「ああ! そう言えばそんなこと話してたっけか」
 キーツが回想すると、ルイスが少し考えて言った。
「えっと……世界の大変革で、即虹球界に往ける人ってもう決まってましたよね」
「そうですね――カピトリヌスの難民の方たちとか、一般の善良な人たちですよね」
 ランスも口添えすると、オリーブが改めて疑問を口にした。
「その人たちを案内するの? 一人ひとり?」
「うーん、難民の皆さんはドリームランドのゲートが開いた、って感じで、大掛かりな演出を一幕でいいと思うんだけど。一般の人たちは一人ずつ趣向を凝らすしかないかな……」
 ナタルが言うと、キーツが捲し立てた。
「せっかくエメラさんが協力してくれるって云ってるんだから。ホラ、何かあるでしょうが」
「夢が膨らみますけど、エメラさんは余った時間で、と仰ってくださってるんですから、とりあえず里への協力要請を優先しませんか」
「そうですね……エメラさんとの連絡はどうやって取ったらいいですか?」
 オリーブが聞くと、エメラが答えた。
「その『マーメイドリーフの人魚たち』の本が窓口になりますわ。本の中の人魚にお言付けください。そうすれば私がマーメイドリーフまで参ります」
「なるほど、これでよし」
 ナタルが言って、ランスがエメラに言った。
「それではエメラさん、名残惜しいですが私たちは童話の里に戻ります。どうぞお健やかにお過ごしください」
「ありがとうございます。皆さんのお仕事が滞りなく完成しますように」
「さようなら」
「さようなら」














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