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第10話『絶不調』

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 そこへキーツとルイスがやってきた。
「なに話してたのさ」
 キーツが気軽に聞くと、マルクが答えた。
「いや、いい仕事したな、ってさ」
「ふーん、自画自賛?」
「そう言ってもいいだろう、今日ぐらいは」
 タイラーがさっぱりして言うと、キーツも二度頷いた。
「もちろん、いいんじゃない。本格的に暑くなる前に終わってよかったね」
「そうだな――落雨の六月も降りっぱなしじゃなかったしな」
 マルクが振り返ると、ルイスが言った。
「生命の樹が手心加えた、って言うのはないですかね」
「それいい! 六大精霊界にも呼び掛けて、僕らに味方してくれてたりしてね」
「そいつはどうか知らねぇが、物事が完成すればなんでもおかげさまだからな」
「謙虚じゃん」
「俺でもお天道様が見てるってのを、信じないわけにはいかねぇのさ」
 しんみりしていると、ポールとランスがやってきた。
「なぁ、マルク……ちょっと長老に掛け合ってくんない……」
 のろのろとポールが言う。
「なにを?」
 尋ね返すマルク。
「そうこの土地造成する時に出た大量の竹があったじゃない? あれを竹炭にして……倉庫の脱臭剤にすればって、ランスさんが言うんだよ……」
「そりゃ名案だな」
 マルクが頷くと、タイラーが言った。
「ガーデニング用品にするって案よりは、今の状況に有効なんじゃねぇの」
「僕に言ってたら、流しそうめんの道具にされてたね」
 キーツが舌をチロッと出す。クスクス笑うランス。
「それもいいですね。夏もたけなわですし、提案してみては?」
「やりぃっ!」
「さすがキーツ、夏バテ知らず……」
 ポールがうえっと舌を出す。
「なに? どうしたの」
「ポールさんはちょっと食傷気味なんですよね」
「なに食べたのさ」
「——スイカ半分」
「調子乗りすぎ」
「いやぁ……我ながら旨そうな出来だったからさぁ……つい、ね」
「没収決定! 帰りに取りに行くから」
「すんません」
「ナタルとアロンは?」
「4番倉庫に氷作りに行ったよ――そんなことより、そこはオリーブは? だろ」
 ポールが腹を抱えてヒューヒュー言うので、タイラーはその哀れな様子に一言いった。
「変なとこだけ律儀な、おまえって」
「……お褒めに預かり……」
「褒めてないつうの」
 ルイスがどこからかパイプ椅子を持ってきた。
「はいはい、ポールさん座ってください。間違ってもビール飲んじゃダメですからね。腹下しますよ」
「おありがとうごぜぇます」
「情けな」
 キーツが一言いった。















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