パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
120 / 276

第12話『真夏のお昼時』

しおりを挟む
「さぁ、何はともあれ食おうぜ! みんなグラスは渡ったか――?」
 マルクの音頭で、全員がグラスを持ち上げた。
「それじゃ、童話の里のますますの発展を祈念して――!」
「乾杯——!!」
 折りしも真夏のお昼時。長老の心尽くしで21℃の快適な室温が食欲を増進させる。
「か――っ、うめぇ!」
 大食漢のイサクが口に入れた先から頬張る。まるでリスの頬袋のようである。
「遠慮しないでバンバン食え。ポールとトゥーラが腕を奮ってくれるぞ」
 タイラーの言葉にポールが受け合う。
「任しとき――!」
「ポールさんとトゥーラさんって、珍しいコンビですね」
 イサクが横目で二人の姿を追うと、タイラーが言った。
「ああ、あの二人、付き合ってんだ」
「⁈」
 目を白黒させるイサク。吹き出しそうになって慌てて口を塞ぐ。
 ナタルが茶々を入れる。
「ちなみにタイラーとオリーブも付き合ってるよ」
 驚きすぎてイサクは涙目だった。ごくりと喉が派手に鳴る。
「そ、そうなんですか。知らなかったなぁ、おめでとうございます」
 取って付けたようにお祝いを述べたが、その話をフィリップが聞きつけた。
「あんたら、今頃春が来てるわけ?」
 アロンが言った。
「最近、忙しくしてるから、恋愛もしたくなるんだよな」
「アロン先生には敵わないよな」
 フィリップが吹き出すと、アロンはムスッと一言。
「本命がいなくて悪かったよ」
「フィリップって、この間のテルミちゃんだっけ? 付き合ってるんじゃないの」
「鈍いなぁ、オリーブ。テルミの本命はマルクだよ」
「えっ、そうなの?」
 マルクはキーツと話し込んでいて、こちらの話には気づいていない。
「やっぱりな。マルクに麦茶注いでた時、顔赤らめてたし彼女」
 アロンならではの観察眼だった。
「で、実際どうよ? マルクって彼女いるの」
「いるって話は聞かないわよね」
 オリーブが言うと、タイラーも首を捻る。
「いても全然おかしくないんだがな」
 アロンが首を振りながら言った。
「テルミちゃんだっけか、残念だったな。マルクには婚約者がいるんだ」
「なにをーっ!」
「あらーっ、取り澄ました顔してやってくれる」
 タイラーとオリーブが呆気に取られている。アロンが続ける。
「たぶん、俺しか知らないと思うんだけど。前にポールの生産修法のおさらいした時に、ちらっと打ち明けられてさ。幼馴染みで家族ぐるみの付き合いなんだってさ。結婚は世界の大変革の後にしてもらってるらしいよ」
「なるほど……入り込む隙がないな。フィリップ、どうする?」
「そうだなぁ……そういう事情があって、大胆に行動するよりは、諦めて別のいい男を探してもらいたいけどな」
「ねぇ、イサクは⁈」
 このオリーブの思いつきに、さすがのイサクも吹き出した。
「じょっ、冗談はやめてくださいよ、オリーブさん。俺みたいなガキがマルクさんと並び立てるわけがないじゃないですか!」
 ナタルからナプキンをもらって、粗相を始末しながら訴えるイサク。
「それもそうね……」
 ハァッと溜め息をつくオリーブ。その腕をタイラーが肘で突っつく。
「あ、ごめん! ごめんねイサク」
「いえ、いいんです」
「酷いなぁ、オリーブ。余裕ぶちかまさないでくれよ。こいつ、結構気にしいなんだぜ」
 フィリップがフォローする。
「ごめんね、イサク」
「いえ、気にしてないです」
「骨付きチキン食べる?」
「——いただきます」
 これでイサクの気持は済んだのだった。















 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした

宮之みやこ
恋愛
細すぎる一重の目に、小さすぎる瞳の三百眼。あまりの目つきの悪さに、リュシエルが婚約者のハージェス王子に付けられたあだ名は『スナギツネ令嬢』だった。 「一族は皆美形なのにどうして私だけ?」 辛く思いながらも自分にできる努力をしようと頑張る中、ある日ついに公の場で婚約解消を言い渡されてしまう。どうやら、ハージェス王子は弟のクロード王子の婚約者であるモルガナ侯爵令嬢と「真実の愛」とやらに目覚めてしまったらしい。 (この人たち、本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...