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第14話『組合長』
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「なんたって組合長が長老ってんだから、筋も通るわな」
「組合長?」
異口同音にポールとキーツがノリヒトに聞き返す。
「知らねぇのかい? セイルさんはパラティヌス農業協同組合会長だよ」
「えっ⁈」
これにはNWSリーダー全員が驚いた。
「いやぁ、申し訳ねぇが俺たちは三人が三人とも気づかなかったのよ。名前聞いた時には何か引っかかったよ。でも、会報誌でしかお目にかかったことのねぇ組合長さんだとは! すっかり失礼しちまって……」
「こちらこそ、お名前を伺うまでパーマカルチャー運動で名を馳せたお三方とは気づかなんだ。許してくだされよ」
「いえいえ、滅相もない!」
トーマスとルイは手を横に激しく動かした。
「パーマカルチャーって?」
ナタルがアロンに小声で聞く。
「大地に配慮し、人々に配慮し、余剰は分かち合い、消費と再生産には限度を求めよ、っていう環境用語だよ」
「つまり――?」
「有機農業や自然農法、フェアトレード、フォルグ・ホイスコーレ、コンポスト事業……。競争より共生、持続可能性の追求、まだまだあるけどな」
「ひっくるめてパーマカルチャー?」
「そう、その総合的なデザイン科学概念」
「へぇーっ、大したもんだねぇ」
話は長老の真央界での役職に移っていた。
「長老、そんなすごい仕事してたんですね」
ポールが言うと、セイル長老はクックと笑った。
「意外かね?」
「俺はてっきり、場末の芸術家かと……」
「おめぇ、口悪りぃなぁ!」
ゲラゲラ笑うノリヒト。他は全員笑っていない。
「この距離の近さが組合長の器よ。この人が組合長になった年に、俺たちの活動が認められて予算回してもらったんだよ。いや、仕組みは聞いたよ。知らないで万世の秘法の片棒担がされてたとは、さすがの俺でも思いもよらねぇこった」
セイル長老は顔を綻ばせて言った。
「ホッホッホ、みんなノリヒト君たちの田んぼや畑に行ってごらん。それはそれは豊かな生態系が展開しておるから。ちょうどその上の因果界でも、野性に還った稲や野菜が育っておるよ。一見の価値ありじゃ」
「はい、是非」
「そう言えば蛍がいたな」
「こんな大きなバッタもいたぞ」
田んぼを見てきたマルクとタイラーが言った。
「へぇーっ、この辺じゃとんとお目にかかれないのに」
ポールが身を乗り出した。
「自然農法だから、田んぼには水をあんまり張らねぇんだが、オタマジャクシもいりゃドジョウもいる。ザリガニだろ、イモリだろ、タニシ、ヤゴもいらぁな。それ目当てに鷺や雉も来るな。こないだなんざ鶴を見たぜぇ」
「そりゃすごい!」
ナタルが目を潤ませて言うと、ノリヒトは感じ入った。
「そこのでっかい兄ちゃんもわかったかい? ここまで来るのに10年かかった。で、これから事業展開しようと思ったところにあんたらと出会ったわけだ。これぞ天の配剤。ありがたやありがたや……」
ノリヒトは前のめりに手を合わせて拝んだ。素朴な信仰だった。
「組合長?」
異口同音にポールとキーツがノリヒトに聞き返す。
「知らねぇのかい? セイルさんはパラティヌス農業協同組合会長だよ」
「えっ⁈」
これにはNWSリーダー全員が驚いた。
「いやぁ、申し訳ねぇが俺たちは三人が三人とも気づかなかったのよ。名前聞いた時には何か引っかかったよ。でも、会報誌でしかお目にかかったことのねぇ組合長さんだとは! すっかり失礼しちまって……」
「こちらこそ、お名前を伺うまでパーマカルチャー運動で名を馳せたお三方とは気づかなんだ。許してくだされよ」
「いえいえ、滅相もない!」
トーマスとルイは手を横に激しく動かした。
「パーマカルチャーって?」
ナタルがアロンに小声で聞く。
「大地に配慮し、人々に配慮し、余剰は分かち合い、消費と再生産には限度を求めよ、っていう環境用語だよ」
「つまり――?」
「有機農業や自然農法、フェアトレード、フォルグ・ホイスコーレ、コンポスト事業……。競争より共生、持続可能性の追求、まだまだあるけどな」
「ひっくるめてパーマカルチャー?」
「そう、その総合的なデザイン科学概念」
「へぇーっ、大したもんだねぇ」
話は長老の真央界での役職に移っていた。
「長老、そんなすごい仕事してたんですね」
ポールが言うと、セイル長老はクックと笑った。
「意外かね?」
「俺はてっきり、場末の芸術家かと……」
「おめぇ、口悪りぃなぁ!」
ゲラゲラ笑うノリヒト。他は全員笑っていない。
「この距離の近さが組合長の器よ。この人が組合長になった年に、俺たちの活動が認められて予算回してもらったんだよ。いや、仕組みは聞いたよ。知らないで万世の秘法の片棒担がされてたとは、さすがの俺でも思いもよらねぇこった」
セイル長老は顔を綻ばせて言った。
「ホッホッホ、みんなノリヒト君たちの田んぼや畑に行ってごらん。それはそれは豊かな生態系が展開しておるから。ちょうどその上の因果界でも、野性に還った稲や野菜が育っておるよ。一見の価値ありじゃ」
「はい、是非」
「そう言えば蛍がいたな」
「こんな大きなバッタもいたぞ」
田んぼを見てきたマルクとタイラーが言った。
「へぇーっ、この辺じゃとんとお目にかかれないのに」
ポールが身を乗り出した。
「自然農法だから、田んぼには水をあんまり張らねぇんだが、オタマジャクシもいりゃドジョウもいる。ザリガニだろ、イモリだろ、タニシ、ヤゴもいらぁな。それ目当てに鷺や雉も来るな。こないだなんざ鶴を見たぜぇ」
「そりゃすごい!」
ナタルが目を潤ませて言うと、ノリヒトは感じ入った。
「そこのでっかい兄ちゃんもわかったかい? ここまで来るのに10年かかった。で、これから事業展開しようと思ったところにあんたらと出会ったわけだ。これぞ天の配剤。ありがたやありがたや……」
ノリヒトは前のめりに手を合わせて拝んだ。素朴な信仰だった。
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