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第16話『意外な事実』

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「マギーちゃん、俺たちみんなでお料理の店を開くんだぜ。パパは野菜とか果物を作ってくれて、ママが料理してくれるんだって。マギーちゃんにはウエイトレスをやってもらいたいなぁ」
「ウエイトレス?」
「お料理を運ぶ人よ」
 クリスタが補足してくれる。マーゴットはパァーッと顔を輝かせた。
「うん! ウエイトレスするぅ。あのね、パパ野菜作るのとっても上手だよ。ママのお料理は世界一なんだから!」
「そうなんだってね、すっごい楽しみだよ。俺とトゥーラも料理は得意なんだよ」
「ふーん……パエリヤ、作れる?」
「おっ、難易度高いね。作れるよ」
「サムゲタンは?」
「それはレパートリーにないなぁ。トゥーラは?」
「私も作れないわ」
「ほらね、ママが世界一!」
「こら、マギー! 失礼だろ」
 ナタルが𠮟ると、マーゴットはツーンと澄ました。
「ごめん、子どもなんで勘弁して」
 大きな手を合わせて謝る。
「いやいや、クリスタさんがすごいんだよ。サムゲタンって何料理ですか?」
「実は……異世界料理です。降霊界で受信した、コリアという国の料理だとか。鶏を丸ごと使った、薬膳料理なんですよ」
「ええっ⁈」
「ほら、クリスタは表の修法者だから。降霊界所蔵の秘伝レシピが検索し放題なんだよね」
 ナタルがとんでもないことを言った。
「手に入らない材料は、こちらの材料で似た効能のものを使ったりして、オリジナルではないんですけど」
「すっご、じゃあナタルとマギーちゃんって、物凄く舌肥えてんじゃん」
 キーツは言ったが、ポールとトゥーラは顔を見合わせて頷いた。
「クリスタさん、ご指導お願いします」
「あら、お二人が表の修法者になれば問題解決ですわ。皆さん、レベルアップを目指していらっしゃるんでしょう?」
「遠回りなんでは……?」
 ポールが言うと、クリスタは首を振った。
「残念ながら、降霊界で検索したレシピは口外無用なんですよ。料理を食べることに関しては規制はありませんけど。そうやって、降霊界ではオリジナルレシピを広めるという活動をしています。ちなみに世界の大変革後はオリジナルレシピも解禁だとか。それまで待つか、レベルアップをするか、お二人次第です」
 二人は短く打合せする。
「——どれが最優先?」
「やっぱりレベルアップじゃない」
「一緒に勉強する?」
「それはいいけれど……認定試験を受ける順番って、まだ決まってなかったわよね」
「よし、最初の組に二人で志願しよう。事情を明かせば、みんな賛成してくれる」
「そうね」
 やりたいことが後から後から押し寄せてくる二人だった。
 思わぬ展開を見せた『プティ・シェ・ヌウ』の初会合は、クリスタという最強料理人の登場でさらに盛り上がった。
 そして、どうやらメンバー揃ってレベルアップを求められてるらしい、という結論に達した。
 夢は広がる一方だった。















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