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第17話『途中で放り出した仕事』
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飲み物がきた。
ジョッキとグラスがそれぞれ渡り、シンプルに音頭を取るノリヒト。
「そんじゃ、NWSの未来に乾杯!」
「乾杯——!」
宇宙の九月の暑さも、冷房の効いた店内では無縁である。
「で? あんたらはどんな話をしようと思ってたわけ」
ノリヒトが聞くと、ランスが答えた。
「……NWSは今、生産修法にかかりきりですが、世界の大変革後には役目から解放されます。代表の万世の魔女の身辺は、ご存知の通り慌ただしいでしょうし、交渉なんかも俺たちリーダーで引き受けないといけないでしょう。同時にリーダーのレベルアップもしていきたいと考えているんです」
「ふーん、今までは万世の魔女さんが全部やってたってことかい」
「そうなんです。それで何の不都合もなかったので……」
「大の男が何人もいて……ちと受け身すぎやしねぇかい」
「その点については返す言葉もありません」
「うーん、まぁそこんとこも改善していこうって話し合いなんだな? 結構じゃねぇか、体当たりで行こうぜ! お姉ちゃん、生ビールおかわり」
「はい――!」
慣れているのだろう。女性店員は素早く伝票に書き足していった。
「有望なのは、カピトリヌスのエネルギー浄化作業に加わることだな」
「それから、今年初めに途中で止めてしまった、カエリウスの炎樹の森の仕事ですね」
アロンが意見を言うと、ランスも指摘した。
「うん、カピトリヌスの仕事は長期化するだろうから、慌てなくてもいいだろうが名は連ねておきたいな。NWSの人数が多いのは大きな強みだ。そこをアピールした方がいいと思う」
マルクが言うと、アロンもランスも頷いた。
「カエリウスの仕事は――理由はどうあれ、放り出した仕事だからな。現地の修法者のサバラスさんも渋い顔だったし、交渉になるかどうか……」
「なんだい、そんな仕事があるのか?」
ノリヒトに口出しされて、マルクが説明する。
カエリウスの炎樹の森で、カシノナガキクイムシの被害が大発生し、NWSが木の導管の修復作業にあたったこと。繁緑の四月に呼び返されたのは生命の樹の託宣によるものだったこと。その全体像を掴むのに説明期間があったこと。そして、上から依頼が来て、生産修法の仕事にかかりきりになっていること――。
「そんなわけで、炎樹の森の仕事は、現在も棚上げされたままだと思うんです」
「他に成り手はいねぇのか?」
「おそらく――カエリウスの位階者は、呪界法信奉者の侵入を阻止するのに全精力を傾けているので」
「んじゃ、そのサバラスって人は、なんで炎樹の森を担当してんだい?」
「そもそもカエリウスは、最前線に若手を投入している都合上、環境修復は高齢の修法者が担当していることが多いんですよ。サバラスさんもその一人です」
「……NWSが来てくれることになった時、喜んだろうな、そのじいさん」
「それはもう――」
「で、糠喜びだったと」
「……」
「なんかよ、その万世の魔女さんの頭越しに交渉しちゃいけねぇのかい? じいさんとはあんたらだって懇意なんだろうが。電話するとか、詫び状出すとか。大体あんたらは移動だってテレポートでバビョッと出来ちまうじゃねぇか。フォローしてないんだったら、完璧ヘソ曲げちまうぞ」
「……レンナちゃんは俺たちが直接交渉しても、気を悪くしたりする子じゃないけどな」
「でも、一応意見を聞いておきたいな」
「聞いてみましょうか?」
アロンの言葉にマルクが首肯し、ランスが実際に行動に移そうとする。
「えっ、今ですか?」
「ええ、今。急を要すると思うので」
「ランスさん、もしかして酔ってます?」
「私、酔うとすぐ実行したくなるんです」
と言って、ランスはレンナにテレパスを繋いだ。
ジョッキとグラスがそれぞれ渡り、シンプルに音頭を取るノリヒト。
「そんじゃ、NWSの未来に乾杯!」
「乾杯——!」
宇宙の九月の暑さも、冷房の効いた店内では無縁である。
「で? あんたらはどんな話をしようと思ってたわけ」
ノリヒトが聞くと、ランスが答えた。
「……NWSは今、生産修法にかかりきりですが、世界の大変革後には役目から解放されます。代表の万世の魔女の身辺は、ご存知の通り慌ただしいでしょうし、交渉なんかも俺たちリーダーで引き受けないといけないでしょう。同時にリーダーのレベルアップもしていきたいと考えているんです」
「ふーん、今までは万世の魔女さんが全部やってたってことかい」
「そうなんです。それで何の不都合もなかったので……」
「大の男が何人もいて……ちと受け身すぎやしねぇかい」
「その点については返す言葉もありません」
「うーん、まぁそこんとこも改善していこうって話し合いなんだな? 結構じゃねぇか、体当たりで行こうぜ! お姉ちゃん、生ビールおかわり」
「はい――!」
慣れているのだろう。女性店員は素早く伝票に書き足していった。
「有望なのは、カピトリヌスのエネルギー浄化作業に加わることだな」
「それから、今年初めに途中で止めてしまった、カエリウスの炎樹の森の仕事ですね」
アロンが意見を言うと、ランスも指摘した。
「うん、カピトリヌスの仕事は長期化するだろうから、慌てなくてもいいだろうが名は連ねておきたいな。NWSの人数が多いのは大きな強みだ。そこをアピールした方がいいと思う」
マルクが言うと、アロンもランスも頷いた。
「カエリウスの仕事は――理由はどうあれ、放り出した仕事だからな。現地の修法者のサバラスさんも渋い顔だったし、交渉になるかどうか……」
「なんだい、そんな仕事があるのか?」
ノリヒトに口出しされて、マルクが説明する。
カエリウスの炎樹の森で、カシノナガキクイムシの被害が大発生し、NWSが木の導管の修復作業にあたったこと。繁緑の四月に呼び返されたのは生命の樹の託宣によるものだったこと。その全体像を掴むのに説明期間があったこと。そして、上から依頼が来て、生産修法の仕事にかかりきりになっていること――。
「そんなわけで、炎樹の森の仕事は、現在も棚上げされたままだと思うんです」
「他に成り手はいねぇのか?」
「おそらく――カエリウスの位階者は、呪界法信奉者の侵入を阻止するのに全精力を傾けているので」
「んじゃ、そのサバラスって人は、なんで炎樹の森を担当してんだい?」
「そもそもカエリウスは、最前線に若手を投入している都合上、環境修復は高齢の修法者が担当していることが多いんですよ。サバラスさんもその一人です」
「……NWSが来てくれることになった時、喜んだろうな、そのじいさん」
「それはもう――」
「で、糠喜びだったと」
「……」
「なんかよ、その万世の魔女さんの頭越しに交渉しちゃいけねぇのかい? じいさんとはあんたらだって懇意なんだろうが。電話するとか、詫び状出すとか。大体あんたらは移動だってテレポートでバビョッと出来ちまうじゃねぇか。フォローしてないんだったら、完璧ヘソ曲げちまうぞ」
「……レンナちゃんは俺たちが直接交渉しても、気を悪くしたりする子じゃないけどな」
「でも、一応意見を聞いておきたいな」
「聞いてみましょうか?」
アロンの言葉にマルクが首肯し、ランスが実際に行動に移そうとする。
「えっ、今ですか?」
「ええ、今。急を要すると思うので」
「ランスさん、もしかして酔ってます?」
「私、酔うとすぐ実行したくなるんです」
と言って、ランスはレンナにテレパスを繋いだ。
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