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第18話『タイラーの影』
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「ああ、本当にそうです。父の心の壁を壊してくださったのは皆さんです。父を助けてくださって感謝します」
「いえいえ、お互いさまです。サバラスさんには私たちも大変お世話になってますから。お役に立てて嬉しいですし、息子さんと再会するお手伝いができたのなら光栄です。どうか顔をあげてください」
涙を手の甲で拭きながら、頭を下げたままのヨーザンの心を和らげるオリーブ。
彼もまた、父に拒絶されたと思い込んで苦しんでいた。その打ちひしがれた気持ちが、オリーブには痛いほどにわかったのだ。
ふと、タイラーが言った。
「……これで椅子が四脚必要だった理由がわかったな」
感激してオリーブが言った。
「そうね! きっとそう」
それから親子は辛さを忘れて長いこと話し合った。
贈られた円卓の椅子に腰かけて、降り積もった誤解を思いやりで溶かしていった。
タイラーとオリーブは小屋の裏で五右衛門風呂の準備をしている。
「一番風呂はやっぱりサバラスさんに入ってもらわないとね」
オリーブがウキウキして言えば、タイラーが答える。
「そうだな……今日のことがわかってれば、浴槽を用意したんだが」
「いくらなんでも私たちには無理よ。それに……これからは息子さんの出番だと思うしね」
ホースで水をドラム缶に入れながら、オリーブがスッキリと言う。
「それもそうか。オリーブ、楽しそうだな?」
「えっ? それはそうでしょ、プロポーズされちゃったんだから」
タイラーが笑う。
「勢いに任せて言っちまった。とっておきの日にしようと思ったのに」
「とっておきの日?」
「オリーブの誕生日なんてどうだ」
「あ、そうか……あと一か月。でも! 今日の方がずっと特別。とっても素敵!」
「それならいいんだが」
喜んでもらえたのなら本望だが――と、タイラーは思ったが、ふと聞いてみたいことが浮かんだ。
「オリーブ……」
「なに?」
「もしも――俺がサバラスさんのように心を閉ざして、オリーブを拒んだらどうする?」
言われてオリーブは考えた。初めに思ったのはこの言葉だった。
「ほっとかないよ。とことん向き合って、どこがおかしくなったのか、教えて直してあげる」
「おれは家族から離れて一人きりだ。修復は出来ないと思う。それでも支えてくれるか?」
「当たり前でしょ。それが夫婦だもん」
「頼もしいな」
薪を火の中に投じながら、タイラーが瞳に炎を映して言う。
オリーブにも、タイラーが抱えている孤独が見えた気がした。
「じゃあ、私からも質問!」
「えっ?」
「私が性転換しても好き?」
これにはタイラーも参ってしまった。
彼にとって、泣いている子どもとオカマくらい苦手なものはないのだ。
深刻に考え込むタイラーに、オリーブは我慢できずに吹き出した。
「あのねぇ、いくら私が中性的だからって、性転換するほど悩んでないから!」
「なんだ、人が悪いな」
「あはは、タイラーも人の子だね!」
「俺をイジるのがお上手ですね、奥さん」
「そりゃもう! イジリ甲斐の塊だもん。私の旦那さんは」
「わかった、俺の負け」
「よろしい」
「いえいえ、お互いさまです。サバラスさんには私たちも大変お世話になってますから。お役に立てて嬉しいですし、息子さんと再会するお手伝いができたのなら光栄です。どうか顔をあげてください」
涙を手の甲で拭きながら、頭を下げたままのヨーザンの心を和らげるオリーブ。
彼もまた、父に拒絶されたと思い込んで苦しんでいた。その打ちひしがれた気持ちが、オリーブには痛いほどにわかったのだ。
ふと、タイラーが言った。
「……これで椅子が四脚必要だった理由がわかったな」
感激してオリーブが言った。
「そうね! きっとそう」
それから親子は辛さを忘れて長いこと話し合った。
贈られた円卓の椅子に腰かけて、降り積もった誤解を思いやりで溶かしていった。
タイラーとオリーブは小屋の裏で五右衛門風呂の準備をしている。
「一番風呂はやっぱりサバラスさんに入ってもらわないとね」
オリーブがウキウキして言えば、タイラーが答える。
「そうだな……今日のことがわかってれば、浴槽を用意したんだが」
「いくらなんでも私たちには無理よ。それに……これからは息子さんの出番だと思うしね」
ホースで水をドラム缶に入れながら、オリーブがスッキリと言う。
「それもそうか。オリーブ、楽しそうだな?」
「えっ? それはそうでしょ、プロポーズされちゃったんだから」
タイラーが笑う。
「勢いに任せて言っちまった。とっておきの日にしようと思ったのに」
「とっておきの日?」
「オリーブの誕生日なんてどうだ」
「あ、そうか……あと一か月。でも! 今日の方がずっと特別。とっても素敵!」
「それならいいんだが」
喜んでもらえたのなら本望だが――と、タイラーは思ったが、ふと聞いてみたいことが浮かんだ。
「オリーブ……」
「なに?」
「もしも――俺がサバラスさんのように心を閉ざして、オリーブを拒んだらどうする?」
言われてオリーブは考えた。初めに思ったのはこの言葉だった。
「ほっとかないよ。とことん向き合って、どこがおかしくなったのか、教えて直してあげる」
「おれは家族から離れて一人きりだ。修復は出来ないと思う。それでも支えてくれるか?」
「当たり前でしょ。それが夫婦だもん」
「頼もしいな」
薪を火の中に投じながら、タイラーが瞳に炎を映して言う。
オリーブにも、タイラーが抱えている孤独が見えた気がした。
「じゃあ、私からも質問!」
「えっ?」
「私が性転換しても好き?」
これにはタイラーも参ってしまった。
彼にとって、泣いている子どもとオカマくらい苦手なものはないのだ。
深刻に考え込むタイラーに、オリーブは我慢できずに吹き出した。
「あのねぇ、いくら私が中性的だからって、性転換するほど悩んでないから!」
「なんだ、人が悪いな」
「あはは、タイラーも人の子だね!」
「俺をイジるのがお上手ですね、奥さん」
「そりゃもう! イジリ甲斐の塊だもん。私の旦那さんは」
「わかった、俺の負け」
「よろしい」
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