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第18話『心の栄養失調』
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サバラス老人にとっても、この日は特別な一日になった。
寂しかった一人暮らしに、突然降ってきたたくさんの愛情。
賑やかな食卓。若い二人のプロポーズにも立ち会えた。
こんな日が来るとは。
ちょっと前までは想像することもできなかった。
儂はこんなご褒美をもらえるような善いことをしただろうか?
福々しい二人のすることを目で追いながら考えた。
心のどこかで引っかかることがある。
息子のヨーザンのことだった。
あいつは今頃、何をしとるだろう。
そう思った瞬間、目の前に本物が現れた。
「父さん!」
顔中を心配という二文字でいっぱいにした息子が駆け寄ってきた。
「な、なんじゃ急に。どうしたんじゃ?」
この台詞は、ランスたちが突然訪ねてきた時と、まったく同じだった。
ヨーザンは心外だ、というふうに言った。
「父さんこそどうしたんだよ。急にバリアを解いたりして! 何かあったのかと思ったじゃないか」
「バリア……?」
はて、覚えがない。サバラス老人が困惑していると、ヨーザンは言った。
「俺を近づけさせないように、厚いバリアの中に閉じこもってただろ? おかげで父さんの様子を透視も出来なかったんだからね。民話の里の係員の人にも、様子を知らせてくれるように頼んで、ずいぶん迷惑かけちゃったよ。あーでもよかったよ、何かあったんじゃなくて」
膝に両手をついて、ヨーザンがハァ~ッと息を吐いた。
騒ぎを遠巻きに見ていたタイラーたちが、親子に近づいた。
「こんにちは、サバラスさんの息子さんですか?」
オリーブが場を取り持つように言った。
「ヨーザンと申します。あなたたちはNWSの方々ですね?」
「はい」
「民話の里の係員から聞いております。父を説得してくださったそうで……。ありがとうございます! こんな頑固な父なのに、話し合う余地を作ってくださって。本当にもう死ぬまでこのままなのかって、本気で思ってたんですよ」
「そうでしたか……では、息子さんが会わないようにしていたんじゃないんですね?」
ヨーザンは勢い込んで言った。
「とんでもない! 父とは泣く泣く別れたんですよ。街には興味がないって一点張りで。家族の意見には耳も貸してくれませんでした。初めのうちはそれでも様子くらいは透視させてくれましたけど、いつからかぼやけるようになって、ここ数年はまったく見えませんでした。みんな心配したんだよ、父さん!」
「……」
「どうかしましたか? サバラスさん」
タイラーが聞くと、サバラス老人は首を捻った。
「……バリアというのに覚えがない。儂はそんなものわざわざ張っておらんぞ」
ああ、それは。と、オリーブが考えを話した。
「たぶん、なんですけど……サバラスさんは自分にこだわるあまり、心に厚い壁を作ってしまったんじゃないでしょうか。それから、出来合いのおかずとご飯で、簡単に済ませてしまった食事で。身体こそ壊していなかったものの、心の栄養失調に陥っていたのでは?」
「……なるほど、心の栄養失調か。思い当たることがありすぎだの」
「鋭いな、オリーブ」
タイラーが感心すると、えへんとオリーブは胸を張った。
「料理に目覚めると、いろんなことがわかるの! それはともかく、お二人ともよかったですね。こうして無事お会いできて」
バツの悪そうなサバラスの隣で、ヨーザンは勢いよく頭を下げた。
寂しかった一人暮らしに、突然降ってきたたくさんの愛情。
賑やかな食卓。若い二人のプロポーズにも立ち会えた。
こんな日が来るとは。
ちょっと前までは想像することもできなかった。
儂はこんなご褒美をもらえるような善いことをしただろうか?
福々しい二人のすることを目で追いながら考えた。
心のどこかで引っかかることがある。
息子のヨーザンのことだった。
あいつは今頃、何をしとるだろう。
そう思った瞬間、目の前に本物が現れた。
「父さん!」
顔中を心配という二文字でいっぱいにした息子が駆け寄ってきた。
「な、なんじゃ急に。どうしたんじゃ?」
この台詞は、ランスたちが突然訪ねてきた時と、まったく同じだった。
ヨーザンは心外だ、というふうに言った。
「父さんこそどうしたんだよ。急にバリアを解いたりして! 何かあったのかと思ったじゃないか」
「バリア……?」
はて、覚えがない。サバラス老人が困惑していると、ヨーザンは言った。
「俺を近づけさせないように、厚いバリアの中に閉じこもってただろ? おかげで父さんの様子を透視も出来なかったんだからね。民話の里の係員の人にも、様子を知らせてくれるように頼んで、ずいぶん迷惑かけちゃったよ。あーでもよかったよ、何かあったんじゃなくて」
膝に両手をついて、ヨーザンがハァ~ッと息を吐いた。
騒ぎを遠巻きに見ていたタイラーたちが、親子に近づいた。
「こんにちは、サバラスさんの息子さんですか?」
オリーブが場を取り持つように言った。
「ヨーザンと申します。あなたたちはNWSの方々ですね?」
「はい」
「民話の里の係員から聞いております。父を説得してくださったそうで……。ありがとうございます! こんな頑固な父なのに、話し合う余地を作ってくださって。本当にもう死ぬまでこのままなのかって、本気で思ってたんですよ」
「そうでしたか……では、息子さんが会わないようにしていたんじゃないんですね?」
ヨーザンは勢い込んで言った。
「とんでもない! 父とは泣く泣く別れたんですよ。街には興味がないって一点張りで。家族の意見には耳も貸してくれませんでした。初めのうちはそれでも様子くらいは透視させてくれましたけど、いつからかぼやけるようになって、ここ数年はまったく見えませんでした。みんな心配したんだよ、父さん!」
「……」
「どうかしましたか? サバラスさん」
タイラーが聞くと、サバラス老人は首を捻った。
「……バリアというのに覚えがない。儂はそんなものわざわざ張っておらんぞ」
ああ、それは。と、オリーブが考えを話した。
「たぶん、なんですけど……サバラスさんは自分にこだわるあまり、心に厚い壁を作ってしまったんじゃないでしょうか。それから、出来合いのおかずとご飯で、簡単に済ませてしまった食事で。身体こそ壊していなかったものの、心の栄養失調に陥っていたのでは?」
「……なるほど、心の栄養失調か。思い当たることがありすぎだの」
「鋭いな、オリーブ」
タイラーが感心すると、えへんとオリーブは胸を張った。
「料理に目覚めると、いろんなことがわかるの! それはともかく、お二人ともよかったですね。こうして無事お会いできて」
バツの悪そうなサバラスの隣で、ヨーザンは勢いよく頭を下げた。
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